役者犬のうた/SARD UNDERGROUND

2023年9月20日
初回盤A,B,通常盤
初登場9位 売上0.8万枚

B0CBSJJY3L

シングルCDは7ヶ月ぶり。配信曲「その結婚、正気ですか?」からは1ヶ月でのリリース。

初回盤A,B,通常盤の3種発売。2曲目のZARDカバーライブ音源が3種で異なる。3曲目の朗読と4曲目のoff vocal(カラオケ)は3種共通

今回も3種発売だが今回は新規のZARDカバーが無く、3曲とも全てスタジオ音源既出のZARDカバー曲のライブ音源となる。DVD付属もなく、3種全て800円と廉価に設定された。

B社が拒絶していて全アーティスト未配信のAmazon Music以外での配信は表題1曲のみ。ライブ音源や朗読やカラオケは全て未配信。

1.役者犬のうた

作詞:鮫島琉星、作曲:長戸大幸、編曲:徳永暁人
鮫島琉星というのは初めて見た名前だが、演歌歌謡系の大御所(?)作詞家っぽい(一部記事では「数多くの歌謡作品を手掛ける作詞家」と紹介)。長戸大幸が自ら単独作曲するのはかなりレア。再度姿を見せるようになった2000年代半ば以降、作家との共同名義で作曲や編曲に名前が出てくる機会はちょいちょいあって、SARDでも鶴澤夢人との共同アレンジを大半の楽曲で担当していたが、ここ最近は他者に任せつつあるような状況になってきていた。そんな中での単独作曲ということは完全にプロデューサー案件、今回曲は俺が用意したこれを歌えと有無を言わせない強権発動的な1曲のように見えてくる。鮫島琉星と親交のある長戸大幸が老境の思い出作りにSARDを使ったかのようだがこれは…。

実際に一部記事では

「映画撮影所に迷い込んだ野良犬が『役者犬』となるも、その後再び捨てられ…」そんな哀しき実話をもとに鮫島琉星は歌詞を綴り、「人間の都合に翻弄される不幸な動物を無くすためにこの物語を歌にして、より多くの人に聴いて欲しい」という想いを旧知の仲である音楽プロデューサー長戸大幸に伝えると、長戸は自ら作曲を担当。

とあるので、経緯は概ね予想通り。

ていうか「作詞:鮫島琉星」とはなっているけどこれ歌詞じゃなくない?これ作文じゃないの?曲が乗るの前提にしてない普通の文章じゃないか…。京都の撮影所に野良犬が住み着いて愛着の湧いたスタッフにより役者犬として迎え入れられ一躍スターとなるも、吠えるのがうるさいという理由で上からのお達しで手放すことになり野性に帰そうとした撮影所スタッフ御一行は琵琶湖でかくれんぼのフリしてそのまま置き去りにして帰ってしまう。2週間後にボロボロの犬が撮影所に帰還。衝撃を受けたスタッフたちは泣きながら抱き寄せるが安心した犬は死んでしまう…と喪失感で終わるのが地味にキツイ物語。実話を基にしているとは言うが明らかに創作で盛っている箇所が散見され、悲劇の部分にフォーカスあてすぎて肝心の「役者犬」感が無い。冒頭2行は野良犬として撮影所にやってくる導入部で3行目で「役者犬」に抜擢されて活躍するんだけど4行目は近所の犬も祝福してくれたとか明らかに盛った描写をしているだけでスターになった、として5行目からはもう会社に処分を言われてしまうというスピード展開。そこからは置き去り話に移行してしまうので作中で「役者犬」なのが全体のうち序盤の2行ポッキリ(3~4行目)しかない。もう少し役者としての活躍を描いてくれてもいいじゃないか。

琵琶湖に置き去りにした後も去っていったロケバスを“何日も何日も待ち続けた”とあるが、何故かサビを挟むと2週間後にボロボロになって撮影所に戻ってきた事になっていたりと置き去りにした後の誰も知らない空白の2週間のうちの”待ち続けた”期間が何日も何日もあったと想像しているのもちょっと謎。ただこれは恐らく京都の撮影所というのが東映の撮影所だとすると琵琶湖まで最短部分(南端付近)で20キロ、琵琶湖大橋まで35キロ、最北端まで行くと120キロ近くになるので(琵琶湖のスケール改めてデケェ)具体的にどこで琵琶湖ロケがあったのか分からないが、距離から考えて置き去りにされてから帰還を開始するまでにその場に留まっていた日数がそこそこあったと推測したのかもしれない。

そんな作文に淡々としたメロディーがつけられ、往年のフォーク調のようなノリを感じさせながら淡々と展開。作文過ぎてサビになるような部分が無いので”NaNaNa… NaNaNa… NaNaNa… 役者犬のうた”とナナナをサビにしてなんとか曲を盛り上げて1コーラスを締める構成。徳永暁人の手腕によりある程度J-POPっぽくまとまってはいるがなんだか妙な曲である事は違いない。
★★★☆☆

初回限定盤Aのみ
2.揺れる想い[tribute 2023](LIVE ver.)

作詞作曲編曲クレジットはスタジオ音源のまま記載。わざわざ今年5月に作り直したtribute 2023なので編曲も麻井寛史になっている。いつのライブ音源なのかは不明だがワンマンツアーは昨年10月に行ったきりで2023年の開催はこの後だったのと観客の声援が復活している事から今年になってからは確定になり、そうなると春から夏にかけて何度か行われていたGIZA御用達でおなじみだったhillsパン工場「THURSDAY LIVE」での音源なんだろうか。歓声があるとはいえあまり人数が多そうに聞こえない感じが狭いライブハウスっぽいし。

tribute 2023に変えた時点でだいぶ良くなっていたがさらにドラムの入ったバンド演奏となり、サウンド面はしっかり。
★★★☆☆

初回限定盤Bのみ
2.マイ フレンド(LIVE ver.)

ZARDのオリジナルと違ってSARDバージョンはちょっとひねったリズムパターンだったがこれは今回も変えずにそのまま演奏されている。ストレートなZARDバージョンのリズムパターンの方が勢いあっていいと思うんだけどな…と改めて思った。
★★★☆☆

通常盤のみ
2.負けないで(LIVE ver.)

何のひねりもなくZARD三大ミリオンヒットシングル3曲のライブバージョンをそのまま3曲収録。ライブラストも定着しており、定番感が強い。SARDアレンジでもほとんど変更を加えていないのもあって1番面白味が無いライブ音源だったりもする。まあ分かってるから1枚800円に抑えたんだろう…。
★★★☆☆

3.朗読「役者犬のうた」朗読:神野友亜

歌詞というよりまんま作文のようだった作文をそのまま朗読するというトラックでBGMもなく朗読の声のみ。メロディーをつける際に用意したと思われるサビに該当するNaNaNa… NaNaNa… NaNaNa…は実際の歌唱(ナーナナナナーナー…)ではなく歌詞の表記通りに「ナナナ…ナナナ…ナナナ…役者犬のうた」とNaNaNaをまんまナナナ朗読しているのはシュール過ぎる。展開に合わせて全ナナナに変化をつけて朗読している辺りに神野友亜の努力の跡も垣間見えるナナナ表現術である。

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