深田恭子 シングルレビュー
現在は女優としてのイメージしか無い深田恭子だが、女優としてのブレイクは98年のドラマ「神様、もう少しだけ」の大ヒット。放送時間が次の「GTO」がもっと大ヒットしていたので大ヒット感がやや取られた感じはあったが、それでも一躍人気を獲得した。そしてその翌99年に歌手デビューを飾る。幼少の頃からピアノをやっていたということで、ピアノインストミニアルバム『Dear...』を発売し、1曲だけだが作曲も手がけるなど当初はアイドル歌手的な方向を抑えてシリアスな方向を打ち出していた。最終的には02年までにシングル7作、アルバム2作、インストミニアルバム1作、リミックス1作をリリース。歌手活動末期の方がアイドルっぽいという通常とは逆の路線変遷をたどった。また唐突に歌手活動は終了してしまったが、特技のピアノを生かして05年11月〜11年3月まで長期間にわたって「新堂本兄弟」ではピアノを担当(ただし番組の大半を占めるトークコーナーではゲストの背後で置物と化していたので声が放送される事は稀だった)。現在はベスト盤がリリースされることもなく(『ゴールデン☆ベスト』辺りでとっくに出てもおかしくないのだが…)、歌手活動は半ば忘れられかけているが、それらを掘り起し、振り返ってみる。
1st 最後の果実
99年5月19日
アイドル女優的なブレイクとはいえ、当時の深田恭子のイメージはおとなしい雰囲気だったので、明るいアイドルポップスは避けていこうということになったのか当時16歳だったにも関わらず物凄くシリアスな楽曲。ジャケット、ブックレット共に笑顔皆無。楽曲の雰囲気は前年のaikoのデビュー作「あした」そっくりでほとんどパクリのようだが、作編曲が小森田実で同じ。シングルにはクレジットが無かったが1stアルバムのクレジットをよく見るとコーラスに小森田とaikoが参加。さらにSecret Voiceとしてaikoが単独クレジットされている。これは曲中のBメロで「許されるのなら」の直後に歌詞には無いパートで聞こえるボーカルパートだが、確かにaikoの声である。というわけで当時「あした」はそんなに売れたわけでもなかったので、原曲歌唱者を連れてきてリサイクルした、というわりと前代未聞の曲。当時は「あした」の方を知らないので普通にカッコいい曲だなと思っていた。深田恭子の歌唱は華原朋美に憧れていたというだけあって、伸びていく高音は確かに華原を髣髴とさせる部分もあって魅力的だが、やや感情に乏しく棒歌唱っぽい部分もある。当時の深田恭子のイメージにはわりとハマっていたとはいえ、このシリアスさは異色でもあったのと、女優の歌手デビューがやや収束しつつあった時期なので、大ヒットというほどのヒットにはならなかった。それでも4位に食い込んだしこれが最高ヒット作。初回盤は1曲多く、通常盤は代わりにカラオケが入っている。
★★★★☆
1stアルバム『moon』
2nd イージーライダー
99年9月1日
前作から一転して明るめのポップス。今回はアイドルっぽいなとは思ったが、今にしてみれば末期に比べるとわりかし普通のポップスといった域は出ていない感じも。前作と異なり、C/Wがリミックスという手抜きに走った事もあり、また前作からの勢いでトップ10ヒットにはなり、10万枚も越えたがアレンジもちょっと薄味でやや印象が薄い1曲。
★★★☆☆
1stアルバム『moon』
3rd 煌めきの瞬間
00年2月2日
自身が黒木瞳と親子役でW主演したドラマ「イマジン」主題歌。ドラマはOLの深田恭子とキャリアウーマンの黒木瞳の2人がそれぞれに恋をするというわりとほのぼのした展開のドラマだった。曲もメロディー自体はわりかしポップなものだったが、編曲を担当した亀田誠治は当時の椎名林檎での仕事と同様の暴力的ロックサウンドをそのまま全面展開。とてもドラマ主題歌とは思えない歪んだノイジーな破壊的サウンドが全編に渡って爆音で響き渡るというぶっ飛んだ仕上がりに。近年では亀田誠治っていきものがかりの「風が吹いている」の人でしょ?というストリングスイメージも強くなっているが、登場当初の亀田誠治といえばロックだったのである。あまりにもクレイジーな編曲だが、しかしそんな爆音の渦の中でも全くペースが崩れない棒歌唱のボーカル(感情に欠けるだけで声自体はいいしそこそこうまい)というギャップが生み出した奇跡の怪・名曲。ドラマ自体も地味な存在だったのでトップ10落ちになってしまったが、「TSUNAMI」や「恋のダンスサイト」が2週目というハイレベルな時期だったので初動は実は4.5万くらいは出ていた。アルバムではAlternative Mixとされたのでさらに凄いことになっているかと思いきや、音圧を抑えたミックスになっている。シングルがフェードアウトなのに対してアルバムではしっかりと演奏が終わるものの、シングルの音圧でのクレイジー破壊サウンドこそが真骨頂。シングルCDで聞け!!
★★★★★
シングルバージョンアルバム未収録
1stアルバム『moon』(Alternative Mix)
4th How?
00年7月19日
主演映画「死者の学園祭」主題歌。ホラー映画の主題歌だったのに、清涼感に溢れたビーイングっぽいポップナンバー。というか作曲:織田哲郎、編曲:葉山たけし、なのでそのまんまなんだけど。ZARDの「息もできない」がビーイングでのこのコンビでの最後の提供だったので、まさかこんなところでこの組み合わせが聞けるとは!と今だったら歓喜するところだが当時はまだこの組み合わせを意識していなかったのが本当のところ。
★★★★☆
2ndアルバム『Universe』
5th スイミング
01年6月6日
制作陣は異なるが、前作からの流れに沿ったバンド系の爽快サマーポップ。再び亀田誠治をアレンジに起用したのでバンド色の強い仕上がりだが、今回は「煌めきの瞬間」のような破壊的な要素は皆無で、あくまで女優さんが歌うバンド調の曲レベルにとどまっている。それでもシングルの中では「煌めきの瞬間」に続いてロックな曲だろうか。「How?」よりもスピード感もあってかなり好きな1曲だ。ジャケットだけ見るとここから急にはじけたように見えるが、楽曲そのものは今作までと残りの2作で分断されると思う。まあ今までに比べれば明るいけど。この爽快バンドポップ路線で継続してほしかったなぁ…。
★★★★☆
2ndアルバム『Universe』
6th キミノヒトミニコイシテル
01年10月3日
2nd以来のトップ10復帰を果たしたのだが、小西康陽プロデュースで路線をガラッと変更。歌詞の途中で「深田も最近〜」と自らの名前を出したり、呪文のように繰り返されるキメのフレーズ「マメミムメモ・マミメムマモ・マメミム・マジカルビーム」といい中毒性のあるアイドルポップスになっている。確かにインパクトはあり、7作のシングルの中でもパッと浮かぶ度(?)はトップ級ではある。しかし、浮かぶのと好きは別であり、あまりこういうのは望んでいなかったし、デビュー頃にやるならまだしも今になってやるなんてなんだかな、と今でも残念な感じがある。同時期に公開された北野映画「Dolls」にはアイドル役で出演し、全体的に暗めだった映画のトーンの中でこの曲を歌唱しているシーンもあった。インパクト自体は残し、代表曲というともしかしたらこの曲なのかもしれないが、実は週のレベルもあって初動も累計も前作を下回っていたりもする。C/Wにリミックスバージョンが入っているが、何故か2ndアルバムではこのリミックスバージョンを1曲目に置き、オリジナルも8曲目に配置するという構成になっているのでしつこかった。
★★★☆☆
2ndアルバム『Universe』
7th ルート246/深田恭子&ザ・ツートンズ
02年5月22日
2ndアルバムを経て、前作に続いて小西康陽プロデュース。今度はついにサビで「深田もゴゴッゴー♪」などとふざけて見せ、変な白髪のヅラを被ったりとイロモノっぽさが強まった。どっからどう見ても完全に滑っていたが、実際ファンがマジで一斉にいなくなり、初のDVD付という当時はまだ珍しかったサービスまでしたのに28位に沈み、大事故(大コケ)に。結局このまま音沙汰が無くなり歌手活動が終わる。今にしてみれば確かにザ・昭和のかほり全開な古い歌謡曲を徹底的にパロっていて楽曲的に面白い事は面白いのだが、その面白さを理解するには当時のメインリスナーは若すぎたし、02年という時代も微妙だった。単にダッセーとしか思えなかった。サビで名字を出してゴゴッゴーはやっぱり無ぇよ…って感じだし(そもそも深田恭子は自分の事を「深田」とは言わず「恭子」と言っていたはず)、とにかく寒すぎる。またC/Wのキョーコとよしおの東京ラヴストーリーmixはいわゆるリミックスだが新たによしおくんに対しての深田恭子の疑似デートケンカボイスみたいな台詞が随所で挿入されるという珍作。連呼される「よしおくんのバカッ!」はかわいさとシュールさと展開の謎っぷりで頭がおかしくなりそうだ。
★★☆☆☆
アルバム未収録