高橋瞳 シングルレビュー〜2005-2011〜
小柄(FC名は当時の身長147cmから)で少年のような風貌、声も少年のような感じでいきなり登場した高橋瞳。いきなりの1位獲得という鮮烈なデビューを飾ったものの…その後はソニーアニメ典型パターンに陥り、アニメで何とか上位に戻ってくる程度しかファンを獲得できず低迷した。ロックという軸はしっかりしていたが、アニメソング系ロックからTAKUYAプロデュースによるクセのあるロックを経て徐々に非売れ線のフェス系ロック(?)へ方向転換。かといってフェス出演どころかライブそのものを積極的にこなしたわけではなかったのであっという間に残っていたファンが激減してしまい、2012年3月31日ひっそりと事務所との契約切れになってしまった。果たしてカムバックはあるのか?というか本人がやりたいロックとはどの方向性だったのか?そんなこんなで全シングルを振り返る。
1st 僕たちの行方
05年4月13日
アニメ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」OP。デビュー作でいきなり初登場1位を獲得。単独ソロとしては平成生まれ初の1位!グループからのソロデビューではない純粋な女性ソロデビュー作としても内田有紀以来10年ぶりとなる1位!などいきなり脚光を浴びた。どちらかというとソニーよりもエイベックスが得意とするようなハードなギター、スリリングな弦も入って後は打ち込みという攻撃的ロック。1stアルバムは全体的に生バンドサウンドだったのでこの曲だけ少し浮いていた。発売当時はスルーしていたが、1ヶ月後くらいに急に凄くいい曲なんじゃないか!とドハマリしてレンタル落ち中古品をゲットした記憶がある。こういう暴力的なエイベクシーロック(?)よりは生音主体のロックの方が好きな事もあり、その後の2シングルの方が気に入ってしまったのでけっこう早いうちに飽きたという…。
★★★★☆
1stアルバム『sympathy』
2nd evergreen
05年8月10日
昼ドラ「新・キッズ・ウォー」主題歌。夏休みの昼ドラはヒットする法則も00年〜02年までで当時はもう廃れつつあったものの、この枠最大のヒットになった「キッズ・ウォー3」主題歌だったZONE「secret base〜君がくれたもの〜」にあやかりたいという大人の思惑は尚続いていた。「キッズ・ウォー」シリーズは無理に続けた挙句に限界を越えて終了したのでキャストを一新してもう1度始まった。一応この「新」シリーズも続編が制作されたので不評だったわけではないだろうけど、主題歌のヒットには繋がらず22位と撃沈。1位デビューでさっぱりファンがついていなかった…。全体的にかなりロック色は強いものの明らかに「secret base」を意識したかのようなミディアムバラード。作詞家との共同名義で作詞にも参加。ドラマは見ていないが、純粋に「secret base」路線の楽曲がメチャクチャいいじゃないか!ということで唯一新品購入したシングルだったので、まさか22位と知った時は驚いた。後からチャートを上がっていくと信じていたのだが…。改めて聞いてもやはり色あせない夏のノスタルジー系名曲である。アニメしか売れないソニーアニメ典型パターンはこうしてソニーグループ全体を覆い尽くして深まっていったのだった。どういうわけか北海道の荒野まで行って撮影したというPVは2番カットのショートバージョン。6分以上の曲ならまだしも5分20秒弱の曲でわざわざ遠くまでロケしたのに何故にショート…。
★★★★★
1stアルバム『sympathy』
3rd 青空のナミダ
05年11月30日
アニメ「BLOOD+」OP。再び土6アニメタイアップで、2度目にして最後のトップ10ヒット(8位)。決意を込めた歌詞にスピード感ある曲調といい、非常に耳に残るヒットチャートロック。直前まで買うか迷い、さらにタイアップ先のアニメも見よう見ようと思いながら結局買わなかった、見なかったのが当時の思い出。主人公の声優って喜多村英梨だったのか。PVでは地下に迷い込んだ高橋瞳が、敵に苦戦する「BLOOD+」主人公の元に到着。主人公が落とした刀を拾うと覚醒して、敵を両断。主役の座を奪って地上に戻ると敵による侵略が始まっており…というバトル展開だった。少し前にT.M.Revolutionが似たようなPVを作っていたので少々二番煎じ感も…。シングルバージョンは全体的にバンドが少し抑えられている感じになっているが、後にTAKUYAプロデュースでリメイクされた際はよりロック色を強めてバンド感が増しており、攻撃的な仕上がりになっている。このリテイクの方が印象はいいが、唯一ボーカルコンディションが原曲ほどには良くないのが欠点。
★★★★☆
1stアルバム『sympathy』
7thシングル『強くなれ』C/W('07 Ver.)
4th コミュニケイション
06年7月12日
今作から2ndアルバムまで元JUDY AND MARYのTAKUYAがプロデュース。C/Wやアルバムでは175RやらガガガSPを招くなどパンクっぽい方向も加味しつつTAKUYAのアバンギャルドなロックが炸裂。王道の売れ線アニメロックからは少し外れた路線へと移行する。今作もいきなり分かりにくい。なかなかサビに到達しない溜めに溜めまくる構成はこれまで以上に本格ロックという感じがして聞き込むほどにカッコいいのだが、いかんせん売れる気がさっぱりしない。1stアルバムでも何とかトップ10入りしていたのに、3月発売のアルバムからでも4ヵ月、シングルとしては8ヵ月も開けてしまった事もあり、いきなり60位に沈んでしまった。タイアップも実質無いし(音楽深夜バラエティ「音楽戦士」とかあってもなくても変わらないタイアップ)、致命的な失策だったと思う。
★★★★☆
2ndアルバム『Bamboo Collage』
5th コ・モ・レ・ビ
06年11月1日
山田孝之、沢尻エリカが主演した映画「手紙」主題歌。兄の玉山鉄二が殺人犯になってしまったという山田孝之の苦悩を中心に描いたけっこう暗い内容の映画だったが、映画クライマックスで感動的にかかっていたのは小田和正の「言葉にできない」であり、その後にこの曲がEDとしてかかるという扱いだった。一応映画にしっかり合わせていった曲で、かなりしっとりしたバラードナンバーになっており、ギターはアコースティックとなっている。1stアルバムでも見せなかった新たな一面を提示した1曲でもあった。普通の曲構成であれば軽く5分越えしてしまうところを、ラストに繰り返しのサビをやらずに、2コーラス後にAメロに戻って終了するので5分に満たず、この手のバラードとしてはコンパクトな仕上がり。単独で聞けばそれなりに名曲でもあったのだが誰もが知るスタンダード「言葉にできない」で盛り上げられた後には正直もう何がかかってもペンペン草も生えないような状態でありどうしようもなかった。前作より順位は上がるも50位に終わった。アルバムでは流れに合わないためか、ロックサウンドに180度方針転換したアレンジで収録。原曲より30秒ほど短くなっている。曲調に合わせて元気なボーカルスタイルになっているが、原曲のイメージで完成されていたので持ち味が無くなってしまったような印象。
★★★☆☆
シングルバージョンアルバム未収録
2ndアルバム『Bamboo Collage』(Bamboo Ver.)
6th キャンディ・ライン
07年3月7日
本人がファンだというアニメ「銀魂」ED。初の本人単独作詞。ここにきてようやくJUDY AND MARYからの流れでTAKUYAに期待されるようなアバンギャルドながら、ヒット性のあるロックが登場。しかもドラムにはJUDY AND MARYの五十嵐公太を起用したことで50%JUDY AND MARYに。声をひっくり返してシャウトしたりと、かなりブッ飛んだ感じなので好みは分かれそうだが個人的には久々に1発で引っかかった。トップ10には届かなかったが14位まで回復した。せっかくTAKUYAを起用していたんだからもっとこういうはっちゃけたロック路線を連発すれば良かったのに…。
★★★★☆
2ndアルバム『Bamboo Collage』
7th JET BOY JET GIRL
07年8月1日
3度目となる土6アニメ「地球へ…」OP。土6の女王なる冠を携えての登板だったが既にこの枠のアニメが何でもヒットするわけでは無くなっており、それに伴い主題歌ヒット規模も縮小。33位とあまり大した結果が上がらず、土6の女王なんて呼べた状態ではなくなり、以降一気に干されモードへ突入していく。タイトル通り、ジェット機のようなイメージの曲だが、どちらかというと飛び立っていくのではなく滑走準備〜助走が始まるくらいのノリのまま曲が終わってしまうので何とも消化不良である。
★★★☆☆
2ndアルバム『Bamboo Collage』
8th 強くなれ
07年9月12日
柳楽優弥、石原さとみが主演した映画「包帯クラブ」主題歌。傷ではなく傷ついた箇所に包帯を巻いていくという一風変わった青春映画だったが、こっちから世界観に入っていかないと非常に分かりにくい内容だった。映画自体超コケしてしまったとされている。例によってED黒バックでかかっても印象が薄い上に、タイトルからは強気なアップナンバーを予想するが、1回聞いただけでは耳に残らない超シンプルなバラード。ドン…ドコン…ドン…ドコンと刻まれるドラムが印象的なアコースティックナンバーだが、こういうのは1番だけで2番以降は普通にバンドインしそうなものだが、まさかのドン…ドコン…ドン…ドコン…のまま曲が終わる。ある意味斬新。現役高校生代表の同世代応援歌というのがキャッチコピーで、映画の少し冷めた石原さとみのキャラクターにもハマってはいたが…もう少し色々アレンジしても良かったんじゃないだろうか。ていうかそもそもアルバム先行シングルとして切る曲じゃない。今作まで3作連続で50%JUDY AND MARY(ギターTAKUYA、ドラム五十嵐公太)だった。
★★☆☆☆
2ndアルバム『Bamboo Collage』
9th あたしの街、明日の街
08年6月8日
アニメ「図書館戦争」OP。高校卒業して地元仙台から東京で音楽活動1本でやっていく事になった本人の決意が歌われている(と思われる)1曲。シングルとしては2作目の単独作詞。TAKUYAプロデュースから離れての1作目でミディアムながらストレートなロック。パッと聞きは地味で当時の印象もあまり良くなかったが、抑えた平メロから感情剥き出しのサビの盛り上がりは秀逸でかなり聞き込める曲である。初期のアニソンロック、TAKUYA時代のクセのあるロック、末期のやりたい放題ロックのどれにも属さないという印象もある。C/W含めて全面的に作編曲を担当したのはUVERworldにも関わっている平出悟だった。これ以上ファンを減らさないのであれば平出体制をもう少し続けておけば立て直すことは可能だったかもしれない。ただ今作は43位に終わり、以降1年以上干されてしまい、3rdアルバムのロック畑の人たちとのコラボ路線とは方向が異なることもあってアルバム未収録のままとなった。
★★★★☆
アルバム未収録
10th ウォーアイニー/高橋瞳×BEAT CRUSADERS
09年9月9日
アニメ「銀魂」ED。1年以上干されたものの2度目となる「銀魂」タイアップ。結果的に最後のアニメにして最後のトップ100ヒットになったが14位まで食い込み存在感をアピールした。作詞は本人だが、ビークルとのコラボで、演奏だけでなくコーラスとしてビークルメンバーも参加。個性的だったTAKUYA時代含めてもかなり印象の異なるクセのあるロックナンバーとなった。特にヒダカトオルには気に入られたようでこの後にビークルは解散してしまうが単独名義で3rdアルバムにも再度提供してもらっている。個人的にはこのクセがあまり好きになれず、苦手な1曲。売れはしたものの、今までとは方向性が完全に変わってしまった上に、この頃にはかなり容姿も変わってしまっていたのでわずかに残っていたファンも離れたものと思われる。
★★★☆☆
3rdアルバム『PICORINPIN』
11th 恋するピエロッティ
10年7月21日
ローリー寺西提供のキュンキュンロック。ビジュアルも激変、作詞は何故かHitomiHitomittiという名義に変わった。突如「キュキュンキュン♪」と叫びだすにぎやかロック。完全に違う方向に向かってしまい、ついに100位圏外(121位)となってしまった。いきなりどうしてこんな超個性派路線に…?とにかく唖然。唖然とするしか無かった怪曲。アレンジが変わったわけではなく、シングルではフェードアウトした後に再び戻ってくる構成だったが、アルバムではフェードアウトしたまま戻ってこずに曲が終わるのでかなり短くなっている。何が修学旅行なのかは不明。
★★☆☆☆
シングルバージョンアルバム未収録
3rdアルバム『PICORINPIN』(修学旅行Ver.)
12th MUSIC
11年2月23日
元SUPERCARで現在はiLLのKoji Nakamura提供曲。かなりシンプルなロックナンバー。今作も単独作詞。特徴が無いのが特徴とでも形容すべきか、淡々としており、2パターンのブロックを2回繰り返すだけで終わるので3分ちょっとしかない。前作はあまりに個性派すぎてついていけなかったが、今作は地味にハマった。メロディーだけ取り出すと恐ろしく地味だが、音全体に浸って聞くとこれがなかなかノレる1曲である。
★★★★☆
3rdアルバム『PICORINPIN』
13th プールサイド/高橋瞳"Hello"H ZETT M
11年7月27日
2作連続200位という珍記録を打ち立てた結果的にラストシングル。作詞はHitomiHitomittiとH ZETT M&micciと共作。H ZETT Mというのはキーボディストで初期の東京事変メンバーだったこともあり、PE'Zのメンバーである。前作が不振すぎてついに近所のレンタル屋全店で入荷が見送られてしまい、今作のみシングル盤を手に取らずアルバムで聞くことになった。ピアノがはじけまくるロックナンバーでとにかく演奏が早いがメロディーは案外そうでもなく比較的ゆったりしている。そのためメロディーよりも忙しない演奏の方が耳に残る曲である。前作や3rdアルバム全体がそうだったが、メロディーだけでなく演奏含めて聞き込むとけっこう良さが見えてくる。ただこの急転換はどこに向かうのか分からないというか、ロキノン系とかフェス系のミュージシャンと、アニメでヒットしてきたJ-POPど真ん中の高橋瞳のリスナーでは双方が双方を理解しがたく、全く噛み合わなかったのではないかと思う。そういう意味で3rdアルバムというのは中途半端でどっちつかずな内容だったのかもしれないが、J-POPすぎたらそれはそれで飽きるし、フェス系すぎてもなかなか良さを感じられない俺としてはバランスが良くて意外とこの末期、好きである。
★★★★☆
3rdアルバム『PICORINPIN』