ウルヴァリン:X-MEN ZERO

09年公開。00年〜06年まで3作公開された『X-MEN』シリーズのスピンオフ作品。1作目の『X-MEN』以前(15年以上前)のウルヴァリン=ローガンが記憶を無くす前の活躍を描いている。『X-MEN』シリーズからは主役のヒュー・ジャックマンがそのまま今回も主役となっている。それ以外にはプロフェッサーXはパトリック・スチュワートがそのまま続投している(1シーンのみ)。また『X-MEN2』に出てきてウルヴァリンの過去に大きくかかわっていたストライカーも出演しているが、1作目よりもかなり昔ということもあって別の役者を起用している(『X-MEN2』では老人、今作ではまだ中年)。それ以外に目からビームのサイクロップスも少年として出演している(当然若い役者)。ビクター=セイバートゥースは1作目に出てきた人物と名前も能力も同じだが、演じている役者は別。今作ではウルヴァリンの兄ということになっているが、1作目公開時に原作にその設定が無く、お互い初対面のように描かれていたので(ウルヴァリンは記憶喪失で、セイバートゥースも完全に獣化して記憶を失っていたと解釈は可能)、厳密に同一人物かどうかは不明

シリーズの時系列としては開始は『X-MEN:ファーストジェネレーション』よりも前の時期になるが、冒頭の戦争ダイジェスト時点で『X-MEN:ファーストジェネレーション』よりも後の時代に話が飛び、基本的には『X-MEN:アポカリプス』と同時期から『X-MEN』の間の時期に起こった出来事という事になる。

ただし『X-MEN:フューチャー&パスト』の出来事により歴史が改変されたため、今作での出来事も大半が無かったこと、もしくは近い別の出来事があった事となり、『X-MEN:アポカリプス』で描かれている状況と今作の出来事でクロスする出来事には違いが生じている。

1845年。少年時代のローガンは父親が殺害される現場を目撃し、手から爪が生えるミュータントに覚醒し、父を殺害したグランドキーパーを殺害。だが直後にそいつこそが父だと教えられる。同じような能力を持つグランドキーパーの息子であるビクターと実の兄弟であることが発覚。再生能力を持つため老化も遅く年を取らない2人はその後100年以上に渡って、その能力を生かし、戦争の最前線で活躍。だが第一次世界大戦、第二次世界大戦、ベトナム戦争と戦争を重ねるうちに次第にビクターが力に溺れて殺戮や破壊を楽しむようになり凶暴化。2人の間に溝が生じ始める。やがてビクターが暴れて無為に村人を殺したり、上官を殺害してしまったために2人は死刑にされてしまう。不死身の肉体を持つため、死ななかった2人の元にストライカーが表れ、ミュータントで構成された特殊チームへ勧誘。

結成されたミュータントによるチームの非人道的なやり方に疑問を感じたローガンは間もなく離脱。間もなくチームも瓦解した。それから6年後、恋人と平和に暮らしていたローガンの元に、かつてのチームの仲間で脱退した者たちが続々殺されているという警告がストライカーからもたらされる。恋人をビクターに殺されたローガンはビクターに戦いを挑むも敗北。暴走するビクターを始末したいと言うストライカーはローガンの再生能力を生かして、アダマンチウムによる改造手術を提案する。復讐の為に手術を受けたローガンは、手の爪も金属に強化される。しかしストライカーのたくらみは別のところにあった。記憶を消そうとしている事に気づいたローガンは脱出。単身ビクターを追うが、その裏ではさらに強大な陰謀が渦巻いていた…。

 

『X-MEN』の出演者はほとんどいないし、ちゃんと話が繋がるのか不安だったが、ビクターの件が少々苦しいくらいで一応記憶を失って15年後の『X-MEN』に繋がるようにはなっている。単純な復讐劇ではなく、ストライカーはこの頃から色々やってくれるのでストーリーも二転三転してなかなか引き込まれた。その結果ビクターが何をしたかったのかがさっぱり分からなくなってしまった気もするけど…。複雑な弟への感情は速いテンポの中ではちょっと分かりにくく、ストーリーを整理したうえでもう1回見ると納得できる部分が多い。

戦闘描写としては比較的直接攻撃系が多いので『X-MEN』3作よりも泥臭い感じ。超能力というより攻撃に特化した能力者ばかりだからだと思うけど、アクション自体の迫力はそこまででも無かった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後の作品にも登場するので繋がりがややこしい登場人物のまとめ

ウルヴァリン…ローガンを名乗っているが本名はジェームズ・ハウレット。病気がちな少年時代を過ごしていたが、父ジョンがトーマスに殺されるのを目撃したことで、手の甲から生の爪が出る能力に覚醒し、トーマスを殺害。しかし実は母親が不倫していて実の父がトーマスの方だったと絶命寸前のトーマスに聞かされ錯乱し、家出。追いかけてきた実は兄だったことが発覚したビクターと共に生きていくことを決める。やがて150年以上戦争の最前線で戦いに身を投じていたが、徐々にビクターの凶暴性についていけなくなる。そんな矢先にストライカーにチームXへ勧誘されて参加するがますます凶暴化していくビクター、さらにチームXの非道に嫌気がさしてチームを離脱。6年後、恋人ケイラと静かに過ごしていたがビクターにケイラを殺害され激怒。ビクターに挑むも歯が立たずに敗北し、ストライカーにそそのかされてアダマンチウムを注入される改造手術を受ける。ビクター及びストライカーを追って研究施設を訪れ、デッドプールとの戦いの中でビクターと一時共闘するも袂を分かつ。最後はストライカーのアダマンチウム製の銃弾による銃撃を脳に喰らったことで記憶喪失に陥る。

当時はこれで『X-MEN』1作目の記憶喪失に繋がるという事になったが、『X-MEN:フューチャー&パスト』で歴史が改変された。どの程度今作の出来事が改変されたかは不明だが、『X-MEN:アポカリプス』では改造されたまま閉じ込められていて既に記憶喪失になっており、ジーンにより開放され施設から逃亡しているので経緯が異なっている。施設内で記憶を失っていたためビクターをめぐるあれやこれやもなく、今作での「島」でのラストバトルは行われなかった可能性が高い。

 

ビクター…別名セイバートゥース。ローガンの兄で、弟の事は今でもジェームズと呼んでいる。少年時代に能力に目覚めた弟に2人で生きていこうと約束し導いた。150年の戦争参加経験から徐々に殺戮を楽しむようになり、ローガンと考えに溝が生まれ始めるも自身は変えずにますます凶暴化。ローガンがチームXを抜けたことで裏切られたと感じ、以降ローガンに執着して憎みながらも愛すという歪んだ兄弟愛を見せる。今作での彼の行動は基本的にはその歪んだ愛情をストライカーに利用された形だが、これにより結局お前何したかったんだよ状態に。

ローガンと違い指先の爪が伸びる以外は回復能力も同等だが、ストライカーによればアダマンチウムの改造には適合していないらしい。ただ手がつけられなくなるのでそういう事にした可能性もあるような…。改造したらストライカーの話術も通じずに一撃で殺しにかかってきそうだし…。好戦的な性格も手伝って、改造前のローガンを圧倒。しかし改造後はさすがに歯が立たなかった。終盤ではデッドプールと戦闘中のローガンと共闘するが、その理由も「お前を殺すのは俺だ」というものだった。和解はせずに去っていったが、このままでは『X-MEN』のセイバートゥースにはつながらないため謎が多い。

 

ウェイド…別名デッドプール、もしくはウェポンイレブン。二刀流の日本刀の使い手といてチームXに参加していたミュータント。その後、ストライカーの実験台にされてウェポン]Tとして改造されていた事が判明。おしゃべりだったためか口が縫合されており、様々なミュータントの遺伝情報が組み込まれているため様々な能力を使う。改造途中だったが、ウルヴァリンが施設内で暴れ始めたので起動させられ、ウルヴァリンと交戦し追い詰める。ビクターが乱入した後の2VS1でも2人を圧倒していたが、サイクロップスの能力であるビームを喰らって赤く熱されたウルヴァリンの爪により首をはねられて死亡…したとされたがラストシーンでは瓦礫の中で生存を思わせる描写がある。

演じたのはライアン・レイノルズで、彼は2016年の映画『デッドプール』に同じ役で主演している。元々今作でのデッドプールが設定を大幅改変された別物に近いキャラクターで、映画『デッドプール』は原作に沿ったキャラクターとして制作したものとなる。このため今作と『デッドプール』に繋がりは無いが一応今作の出来事が歴史改変でなかったことになったため、改変された新たなウェイドの歴史を描いたのが『デッドプール』シリーズという捉えた方も可能。

 

ストライカー…『X-MEN:2』の黒幕だった人物の中年時代の姿。今作では「島」と呼ばれる施設でミュータントをかき集めて実験を繰り返していた。『X-MEN:フューチャー&パスト』の歴史改変の影響で、今作の出来事も大半が無かった事になった模様。ウルヴァリンと関わる経緯に変化が生じたらしく、『X-MEN:アポカリプス』では結局アダマンチウムの移植は完了しており、さらに記憶喪失にした状態でローガンを確保していた。

スコット…少年時代のサイクロップス。能力が発動しており、ビクターによって捕えられ「島」で大勢のミュータントと同様に監禁された。ウルヴァリンやケイラの活躍で他のミュータント同様に解放され、ビームを駆使して追っ手を撃破し、プロフェッサーXの導きを感じ取り、仲間を誘導し、プロフェッサーXの元へたどり着いた。

当時は『X-MEN』3作の登場キャラの若い頃ということでサービス的な出演だったが、『X-MEN:フューチャー&パスト』の歴史改変の影響で、今作の出来事が綺麗さっぱりなかった事になり、スコットが学園へやってくる経緯は違うものへと変更されている。

 

プロフェッサーX…終盤で1シーンだけ登場。その姿はパトリック・スチュワートをCGで若返らせた状態で、つるっぱげだがまだ歩ける状態で登場。今作で救った子供たちが学園の生徒たちになったという設定。

X-MEN:フューチャー&パスト』の歴史改変の影響で、スコットが学園に来る経緯、ハゲた経緯なども異なったため、この出来事も無かった事になっている。

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★★★★☆

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