7thAl ROAD CRUISIN’
2004年8月18日
前作から9ヶ月という過去最短ペースでのオリジナルアルバム。シングルは複数あったが実は夏のオリジナルアルバムは初で夏を意識した楽曲が多い。“極上のDrive Music 完成!!!”と銘打たれていた。
シングルに続いてアルバムでも初回盤はDVD付を採用。DVDにはシングル2曲のMV&メイキング映像を収録。MVは後に『ONE DAY LIVE’04 END of SUMMER&6CLIPS』、『PERFECT SINGLES+』初回盤DVD『THE GREATEST CLIPS 2003-2007』にも収録。現在はメイキング映像部分が今作のみの収録。
「レールのない空へ」MVメイキングは韓国の空港での撮影模様(ソウル到着までの機内や移動の映像もわずかにあるものの観光は無し)、今作のジャケット撮影メイキングを挟み、「STRONG SOUL」のメイキングでは東京ヴェルディ1969から三浦淳宏、高木義成、日テレ・ベレーザから小野寺志保、酒井與恵、小林弥生、日本テレビアナウンサー森麻季らを招いてのコーラスパートのレコーディング映像とキッズダンサーと共に撮影したMV撮影の模様などが収録されている。「STRONG SOUL」のあのコーラスは1人1人ではなく数台のマイクを並べて横一列に並んで全員一気に合唱してレコーディングされていた事が明らかとなっている。
DEEN’S AORを銘打って後に三部作と呼ばれたのは今作までとなり、鈴木寛之らの作家陣やドラムの沼澤尚などAOR期に初参加していたサポートメンバーとのアルバム制作も今作が最後となった。
今作発売の10日後8月28日には初の野外ライブ「DEEN ONE DAY LIVE’04 -END of SUMMER-」をよみうりランド オープンシアターEASTで開催。天候不良であった事もあり、メンバーはいずれもう1度やりたいと語っていたが以後イベント的な野外(沖縄シーサイドとか)はあるが、本格的な野外ライブは行われていない。続けて1ヶ月後の9月25日~11月14日にかけて『DEEN LIVE JOY-Break 9 ~ROAD CRUISIN’~』が開催されたが何故かこのツアーは映像化されておらず、Break7と並んでわずかな資料写真が公開されるのみとなっている。
この時期の曲は2006年以降の通常ライブでほぼ一気に姿を消していく事となったが、該当するBreak6~9のうち、ツアー本編が映像化されたのはBreak6のみで、Break8はAOR期の曲を減らして旧曲を増やした韓国公演、7と9は映像化すらされていないのでけっこう当時のライブ映像が残されずじまいになった曲が多い。2012年にこのAOR三部作時代の曲を中心に演奏するというコンセプトでBillboard会場での新ライブシリーズ『DEEN AOR NIGHT CRUISIN’』が始まり、以後不定期に開催されている。
2002~2004年のAOR期はファンサイト文化がブログ文化へ移行していった時期とも重なるが、AOR期のみを応援するファンサイトが出現するなど(今作までを高く評価していたがこの後の路線変更に伴い更新が停止して消滅した)ファンサイト文化末期だったこの時期は売上に反して一定の評価を得ており、当時良く分からなかったファンも後年になるほど大人になってこの時期の良さに気づくなど評価は比較的高めとなっているように感じる。ただ当時の手応えとしてはメンバーももう1つ感じられなかったのかもしれない。戸惑っているファンが多かったのともっとライブを盛り上げようという方向に変えていく事になって路線変更という事になったのかなとは思う。裏事情的には全体のCD不況に伴う予算縮小とDEENも例外なく売上が下がり続けていてレコーディングで毎回毎回曲ごとに異なるミュージシャン起用するほどの予算が出なくなったのもありそう。
1.レールのない空へ
2.ROUTE 466
作詞:池森秀一、作曲:前嶋康明、編曲:DEEN
Horn Arrange&Strings Arrange:山根公路
国道466号をタイトルにしているが、歌詞中に466は登場せず、環状八号、第三京浜、横横(横浜横須賀道路)、逗葉(逗葉新道)が登場しており、メキシカン・レストラン、HOTEL CALIFORNIA、伊豆諸島も登場し、東京からこれらを経由しながら海へ向かっていく様子が描かれているという純然たるドライブミュージック。”極上のDrive Music 完成!!!”と銘打たれたアルバムの中でも具体的な地名を連発してリアルドライブを歌詞に落とし込んでいるという今作を象徴する1曲。ただこっち方面って全く行った事無くてさっぱり分からないんだよな…。
この時期らしい低め(+ふいに裏声で高音)のサビメロで落ち着いた雰囲気のミディアムナンバーなのでやや地味目ではあるが、ブラス・ストリングスが華やかにサウンドを盛り上げる。AOR期らしいゴージャスな仕上がり。
★★★★☆
11thアルバム『クロール』初回特典『ナツベスト~DEEN SUMMER TIME MELODIES~』
39thシングル『心から君が好き~マリアージュ』初回特典CD『“DEEN AOR NIGHT CRUISIN’~1st Groove~”』(at Billboard Live OSAKA 2012/3/17)
3.STRONG SOUL
4.OCEAN
作詞:池森秀一、作曲:鈴木寛之、編曲:DEEN&鈴木寛之
Strings Arrange:鈴木寛之&時乗浩一郎
今作のリード曲としてPVが制作され、韓国語バージョンも制作された大バラードナンバー。穏やかなAメロからBメロで盛り上がっていきサビは雄大に盛り上がっていく、AOR期の王道バラードといった装い。前作の「星の雫」同様に最初に聞いてまずリード曲っぽく思える1曲だった。サビの大半が英語なのは珍しいが、それゆえに英語そのままで済むので韓国語バージョン制作に選ばれたところもあるかも。
ただ当時リード曲にしてPVまで制作して、韓国盤のボーナストラック用に韓国語バージョンまで制作(日本では次のシングルC/Wに収録)しておいて「星の雫」を遥かに越える不遇っぷりとなった。Break9が映像化されなかったもののその前の野外ライブで演奏していたのでその映像は残された。しかしその後『ALL TIME LIVE BEST』にも『Ballads in BlueⅡ』にも選曲されなかったところまでは「星の雫」と同じ境遇だったが(当時のアルバムリード曲が2作連続で当時のライブで演奏したっきりというのもどうかと思うが)、今作に関してはその後も延々スルーされ続けてしまい、マニアックナイト入りすらしないという真マニアック曲になってしまった。2022年Break24で18年ぶり(?)演奏となったが、何故そこまで不遇だったのだろう…。
★★★★☆
30thシングル『愛の鐘が世界に響きますように…』C/W(The Korean Version)
5.明日へのOFF ROAD
作詞:池森秀一、作曲:吉川慶、編曲:DEEN&時乗浩一郎
沼澤尚がドラムを担当しているAOR期の楽曲の中でかなりエレキギターが前に出てロックバンドっぽい勢いのあるドライブ感溢れるロックナンバー。ロック調の曲だと「Break it!」「STRONG SOUL」「Good Good Time!!」のようにドラマーを変えていたのでこの曲で変えなかったのは少々意外。エレキギターがデュクデュク鳴り響いているのがそのまま車のエンジン音のような効果を生んでいる。同時にキーボードの存在感もあり、非常にバランスの良いポップロックナンバー。大平勉によるシンセブラスは入っているものの基本バンド編成主体でライブでも生演奏主体で盛り上がる曲になりそうであった。
…と思ったものの全く定着せずBreak9が映像化されなかったので映像化難民となり、2014年のマニアックナイトで演奏されるまで10年間ライブ映像が残されていなかった。この時はアンコール最終曲という10年の不遇を吹き飛ばす好待遇だった。
★★★★☆
6.南の風
作詞:池森秀一、作曲:池森秀一&時乗浩一郎、編曲:DEEN&時乗浩一郎
今作唯一の池森&時乗楽曲となったが、妙にゆる~いノリの独特のポップソング。鮮やかだねべイベ、ウベイベー心地いいね♪と歌詞に書かれていないがベイビーを挟んでくるなどとにかくリラックスしたような雰囲気。
歌詞のスケールが何気にデカく、冒頭で“やっと来たね 南の赤い大地”とあり、この”南の風”が吹いている場所は一体どこなのか。旅先である事は間違いないが、”見た事ない”ような”こんな大きい夕日”が見え、”そこでほらワラビーが笑っている”とナチュラルにワラビーが登場。DEEN史上どころか日本語詞全般でもワラビーが笑っている曲はなかなか無いのではないか。自身の小ささを実感して”地球の一部なんだと気づく”ようなそんな大自然が描写されているのでオーストラリア辺りの旅行記的な歌詞と思われるが何故突然そんな海外に…。ワラビーって。ワラビーって…。
映像化難民曲の1つで2011年のリゾートライブの音源1つ、2013年のAOR NIGHTで初映像化かな。
★★★☆☆
11thアルバム『クロール』初回特典『ナツベスト~DEEN SUMMER TIME MELODIES~』
7.月光の渚
8.Good Good Time!!
作詞:池森秀一、作曲:田川伸治、編曲:DEEN
Horn Arrange&Strings Arrange:田川伸治
『STRONG SOUL』初回盤DVDのレコーディング映像で制作が進められていた楽曲。今作の中では唯一ドラムがHIDE。いくつかの曲でも参加している宮野和也がベースでライブと同じリズム隊で演奏されている。レコーディング映像では池森さんが低音でフ~ウフ~ウ♪フ~ウフ~ウ♪フ~ウフ~ウ♪フ~ウフ~ウ♪とかやたら連呼している様子が映し出されており正直そこだけ聞いているとビミョーすぎるコーラスを入れていてこれがDEEN’sオーディエンス(※)がライブで歌うパートですと言われても何とも言えない感じだったが、いざ完成してみるとフ~ウフ~ウ♪はそんなに気にならない感じに目立たなくなっていた。それより仮歌のフェイクイングリッシュではカッコいい感じでレチュダウとかゴイナウとか言ってたサビが“でかい でかい”とかあまりカッコよくない日本語になっていたのでちょっとえええ…!?という感じはあった。正直あった。ブラスやストリングスも入ってだいぶ賑やかになっているし、もう少しギター主体でストレートにガツンとしたロックナンバーが来るのかと思っていたのでちょっと期待から逸れていってしまった。※武道館公演やるようになった頃を境にしていつの間にDEEN’sフレンズという言い方に変わっていたがそれ以前はけっこう長い事ファンの総称をDEEN’sオーディエンスと言っていた。
冒頭の“準備はいいですか?過去最高最大の一夜限りのParty”というフレーズは発売直後に開催された唯一の野外ライブ「ONE DAY LIVE ’04-END of SUMMER-」(8月28日よみうりランドオープンシアターEAST)を見据えての一文となっている。本来一夜限りの暑い夏の野外ライブをさらに熱く盛り上げるはずだったが、台風到来による荒天により気温がダダ下がりし、目論見通りには行かなかった。
盛り上げナンバーとして重宝され、後半のメドレーで以後も使われることが多く、今作のアルバム曲の中では後々まで演奏されていく1曲になった。
★★★☆☆
9.ミラクル ボーイ!
作詞:池森秀一、作曲:田川伸治、編曲:DEEN
Horn Arrange&Strings Arrange:田川伸治
同じく『STRONG SOUL』初回盤DVDのレコーディング映像で制作が進められていたファンキー&ダンサブルな感じの楽曲。これもカッコいい感じのジャストウィルラビン♪とか歌われていたフェイクイングリッシュの歌詞が“ドジ踏もうと”に変わってしまいちょっとえええ…!?という感じで映像が終わっていたが完成版はトランペット、トロンボーン、ヴァイオリンも交えた独特の仕上がりになっていた。AORよりもソウル、ダンスミュージックに近いノリでロック系でもないので沼澤尚でもHIDEでもなく、今作では『’need love』「秋桜~more&more~」やBreak5ツアー以来となる藤沼啓二が久々にドラムを担当。少しダンサブルなノリが『’need love』でのイメージと合致するところがあったんだろうか。このように曲によってミュージシャンを変えるっていう柔軟な対応も良かったんだけど、こういう起用方針がやれたのって今作が最後になるんだよな…。
★★★☆☆
10.雨上がりの空、この道を行こう
作詞:池森秀一、作曲:tanatonote、編曲:DEEN
Strings Arrange:田川伸治
失恋して落ち込んでいる相手を優しく励ます暖かみのあるミディアムナンバー。アコースティックを生かしつつAORサウンドによる大人っぽさにより上質な味わい。静かに前を向いて歩いて行けるような低めだけど暖かいメロディーラインもいい。当初はあまり印象的ではなかったが、じわじわ好きになった曲の1つ。
Break9は日替わりでセットリストを変更していたらしく、今作に関しては雨が降ったらやろうという事で考えていたら割と天気が良くてあまりやる機会が無かったと振り返られていた。2011年のリゾートライブの音源が2011日本武道館の特典ライブCDに収録されているが、ライブ映像は2人になってからの2019年AOR NIGHTが唯一だったかな。
★★★★☆
11.遠い日のシャボン玉
作詞:池森秀一、作曲:山根公路、編曲:DEEN
10代の頃の夏を思い返すノスタルジックなアコースティックナンバー。歌詞が1コーラス分しか無く、1番+間奏+サビ繰り返しで終了するのでややあっさり気味。今作のメンバークレジットで山根さんにアコーディオン表記があり、今作で思いっきり聞こえるのでこの事を指していると思われる。
今作は池森作詞ボーカルになっているが、このノスタルジック系な世界観は上海ロックスターではない時の山根ソロで後年歌われる世界観に近いものがあり、今作の影響がどこかあるのかなと思ったりもする。
★★★☆☆
12.歌に願いを~SONG FOR YOU~
作詞:池森秀一、作曲:シオダマサユキ、編曲:DEEN
Strings Arrange:山根公路
ストリングス4名とボーカルのみで進行し、後半はピアノとアコースティックギターも入るメンバー+ストリングス編成でリズム隊参加は無し。池森さんの歌への思い、これまでとこれからに向けた決意がじっくりと歌い上げられていく。シンプルな歌の力を感じる1曲。故郷(海の見える街)への言及は過去にもあったが、幼少期の歌への目覚めにまで遡って言及しており、改めて原点に立ち返る重要な1曲と言えるかもしれない。
★★★☆☆
12thアルバム初回特典2ndバラードベスト『Ballads in BlueⅡ~The greatest hits of DEEN~』
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