From 『AC+E NO2』
2001年7月
韓国では有名な音楽プロデューサーであるキム・ヒョンソクによる2作目の作品集にして2001年の韓国映画『猟奇的な彼女』のサウンドトラック。現地レーベルyou2pia Entertainmentで版元はユニバーサルとなっている。CDに日付が記載されておらず、2001.07までの表記しかないため、正式な発売日は不明。
映画『猟奇的な彼女』は遅れて2003年に日本でも公開されるも劇場公開時は規模も小さくさほどヒットせず、レンタルDVD(VHSもあった末期の頃)に出てからロングランヒットして日本で有名な韓国映画の1つとなった。各国でもリメイク版が制作されており、アジア以外にアメリカでもリメイクされた。日本でも2008年になって草彅剛と田中麗奈でTBS「日曜劇場」枠でドラマ化された。
この『AC+E NO2』は2003年の日本公開時に発売されたサントラ盤とはタイトルもジャケットも内容も異なり、韓国でしか発売されていない。映画に参加してほしいという要請が映画サイドからDEENに持ち掛けられてキム・ヒョンソク提供による新曲「Another Life」でこのアルバムにDEENが参加することになったと語られている。
当時からファンの間で映画を見たが使用されていなかった、どこで使われていたのか分からなかった…等言われていて、メンバーも参加したけど使われなかったような発言をしているが、実際に日本で流通していた映画『猟奇的な彼女』は一部カットされたインターナショナル版であったらしく、そちらでは使用されていなかったようだ。編集が異なる韓国オリジナル版でちょっと使用されているらしいと噂になって韓国版DVDを見たというファンの声でも「Another Life(Intro)」はちょっと流れたが曲本編は結局無かった等言われていた。どうも流れるシーン自体が本編カットになってしまっていて特典映像送りになってしまったとかなんとかだが未確認のため不明。最新の証言となる『DEEN 30周年公式ガイドブックALL SONGS STORIES 1993-2024』では主題歌という話だったのにクライマックスでイントロしか流れなかったとしている。いずれにせよ参加してと言われて参加したのに扱いが悪かったというのは確かである。
なおその後、人気沸騰を受けて2005年に改めてディレクターズ・カット特別版が日本でも発売されており、これは韓国オリジナルに相当するものと思われるがこれに使用されているのかも不明。
DEEN版「Another Life」は2008年の『PERFECT SINGLES+』のボーナストラックで日本及びDEENサイド初収録となった。「Another Life(Intro)」をくっつけて1曲にしたものと認識していたが、オリジナルとミックス違いだとの情報を頂いたので取り寄せて急遽今回の全曲回顧に追加とした。
なおこのアルバム、日本人の参加はDEENだけかと思いきやしれっと上田正樹の「Hands of Time」が収録されている。これは1999年に発表されたアジアの作家陣に声をかけてのコラボアルバム『HANDS OF TIME』収録曲でタイトル作である「Hands of Time」がキム・ヒョンソクの提供作であったことからこの機会に引っ張ってきたものと思われる。
音源が配信解禁されていないB社時代となるが、この曲の権利はB社には無かったようで、一部配信サイトでは配信されている。配信されているのが確認できたのはApple Music,YouTube Musicの2つのみで、Amazon,Spotify,KK,LINE,タワレコ,楽天では検索しても出てこなかった(AWAはアプリ外で検索できなかった)。
Another Life(Intro)
1つ前に収録されている前奏。ストリングスによるインストだが演奏より先に女性の声が聞こえてきてその後も延々と女性が泣き叫んでいるという一歩間違えるとホラー音源。どうやら作中の場面を被せてそのまま収録しているようだが…サントラでそんな事ってある…?台詞がかかってない音楽だけを聴きたいからサントラ盤が存在するんじゃないの?と素朴な疑問が浮かんでくる謎音源である。
後の『PERFECT SINGLES+』では台詞を排除した上で本体と合体して曲本編の前奏としてまとめて収録された。『PERFECT SINGLES+』初回特典のプレミアム楽曲着うた全員プレゼントとして使用されたのは台詞をカットしたこの音源と同サイズのものだった。
台詞が被さっている影響もあるとはいえ、明らかに今作の音源はミックスが少し異なっていて演奏開始時は音が少し小さめに入ってくる。
Another Life
アルバムは一部演奏楽器を除いてプロデュース、作曲、編曲、ピアノ&シンセ、録音まで全てキム・ヒョンソク一括クレジットだが、「Another Life」だけはDEENサイドで録音されているため個別のクレジットが長く表記されている。
Words by Shuichi Ikemori&Romeo V.Gonzaga、Arranged by DEEN(Vocal Shuichi Ikemori/Keyboard Koji Yamane/Guitar Shinji Tagawa)
Orchestra Arranged & Conducted by Daisuke Ikeda
Piano:Masaki Hayashi
Orchestra:TAMA MUSIC
English Advisor:Romeo V.Gonzaga
Produced by DEEN
Piano:Masaki Hayashiと堂々表記されているのでイントロで聞こえるピアノ演奏リーダーじゃなかった案件。レコーディングに様々なスタジオミュージシャン呼んでたAOR期までの時期、けっこうリーダーの担当パートはサポートに取られがち。
編曲やレコーディングが日本サイドで行われているためか、意外な事にこの曲だけプロデュースもDEENになっていて、キム氏は作曲を担当しているだけという全面プロデュースの今作の中では異例の扱い。上田正樹や現地アーティスト歌唱の楽曲も収録されているものの彼らの写真は無く、キム氏の御姿か映画のカット写真を使用したブックレット内においてもこの曲の歌詞が掲載された横のページは直近2000年の『’need love』初回盤フォトブックに掲載されていた写真を引っ張ってきているなどDEENだけ異例の扱い。
韓国では日本語での歌唱が解禁前だったため、ハングルで歌ってみたが発音がダメと即断されてしまったようで英語で歌う事になったという説明はされている。これは2010年の武道館で初めてDEENバージョンをライブで演奏したので演奏前に長めに説明のMCをしていて映像で残されている。ただDEEN版とは別にキム・ヒョンソクのアレンジによる別バージョンが制作されてSHUとして日本でリリースする事になった経緯は明かされておらず、何故にDEENとソロで2バージョンになったのかは不明。
オリジナルミックスとなるこのバージョンは全体には淡泊な印象。ストリングスやサビ以降本格化するバンドサウンドも淡々とした響きとなっていてストリングスも広がりが無い。ミックス処理がなんか素人っぽい?というか変な感じ。メインの弦楽器の音色が絞られ過ぎているせいでやたらとハープのチャラララン♪(っぽい音)が多用されているように聞こえるし、最後のサビ以降で入ってくるコーラスも謎の女性コーラス(コーラス担当者の表記無し)っぽい声のみで山根さんがコーラスしているっぽい声は聞こえない。この辺りの音の仕上げ方は韓国サイドでのミックス・マスタリングによるところが大きかったのかなと思う。
『PERFECT SINGLES+』収録時はIntroと繋げて1曲にまとめ「ANOTHER LIFE」と大文字表記に変更、全体に音の響きをゴージャスに調整し直した感じ。ストリングスの広がりが増して全体にふわーっと美しく響き渡り、後半のコーラスも山根さんらしき声に変わっている。
★★★★☆
オリジナルミックスDEENサイド未収録
5thベスト『PERFECT SINGLES+』(Introと合体、ミックス変更「ANOTHER LIFE」)
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