シャーロック

2019年秋ドラマフジ月9。フジテレビ×ディーン・フジオカで古典的な海外の文学作品を国内仕様に変換してドラマ化した「モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-」、『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』(単発)に続いて今度は有名なシャーロック・ホームズを原典として現代日本に置き換えたもの。

ディーン演じるシャーロック・ホームズに該当する主人公の名前は誉獅子雄、ワトソンに該当する精神科医の名前は若宮潤一(岩田剛典)と設定されていて、特に作中であだ名としてシャーロックと呼ばれている様子も無いが、イニシャルが一致するようになっている。2人以外のレギュラー陣も原典相当者とイニシャルが一致するように設定されているため、基本的に原典の該当人物から大きく外れるような設定はされていないように仕掛けられている模様。

誉獅子雄はフリーの犯罪捜査コンサルタントで、警部の江藤(佐々木蔵之介)が捜査の際に頼り切りにしているため、実質的に警察同様の捜査権限を持っている(手が回らない調査の部分は何でも屋的な存在の情報屋レオ(ゆうたろう)が動き回って情報収集&サポートする)というか、常に誉獅子雄が偉そうに警察そっちのけで容疑者に接触したりしているので、中にはあまりにナチュラルに現場に入っているので事件関係者の中には刑事の1人なんだと勘違いして受け答えしているような様子も…。江藤としても事件解決時には手柄を全て自分のものにして表彰されて浮かれていたりするので全面的に任せるといった寸法。

また誉獅子雄がフリーの犯罪捜査コンサルタントなる謎の肩書の職業でどのように金銭を得ているのか探偵とどう違うのか全く明かされまいまま話が始まってそのまま進行していたが、話が進むにつれて江藤が報酬の話を何度か持ち出しているため、基本的に江藤が手柄を見返りにして個人的に報酬を支払っているっぽい。しかしこれだと大した額にならないのでは…?という細かい疑問に応えるかのように、終盤になるといつの間にかフリーの犯罪捜査コンサルタントじゃなくて普通に貧乏探偵呼ばわりされるようになっていたので、単にディーン的演出カッコつけてフリーの犯罪捜査コンサルタントとか自称させていただけっぽい。

初回では学生時代に不正に医師国家試験のテスト内容を入手して医者になっていた赤羽(中尾明慶)が死亡する事件が発生。同じく不正受験仲間精神科医になっていたのが若宮で事件を解決していく中で、最終的に不正が明るみに出てしまう可能性が出たためずっと気にしていた若宮は事件解決後に医者を辞めてしまい、無職になったところに誉獅子雄が家に乗り込んできて同居する事になるという形で強引にコンビになった。このことに不満を抱いた若宮が念のために記録として日記をつける事にしたという事でワトソン役に。誉獅子雄以上に完全に無収入になってしまった若宮が家賃を貯金以外でどうにかできるとは思えなかったが触れられないままこれまた話が進行し続けていたが最終回で大家さんが登場し、家賃滞納状態だったことが判明した。

このような出会いのため、2人の仲は良くなく、毎回誉獅子雄が偉そうで若宮が反発するという仲違い系コンビになってしまい序盤が特にギスギスしててしんどかった。

また誉獅子雄の偉そうな態度といい、事件が解決する前にカメラ360度回転しながらヴァイオリン弾く謎の決めカットといい、ちゃっかり自分で主演主題歌パターンといい、すっかりディーン・フジオカ自体がブランドになってしまっていてそれを月9でもそのままやるとは思わなかった。ディーン氏の出演ドラマを見るのは『探偵の探偵』『ダメな私に恋してください』『今からあなたを脅迫します』以来だったけど、ここまでではなかったはずで、モンテ・クリスト、レ・ミゼラブルを経てブランド化が進行したのか…?

月9らしい豪華ゲスト俳優攻勢やストーリー自体の重みもあって面白いには面白いだけにちょっとキザすぎる。ヴァイオリン決めカットとかいくらなんでもディーン氏のプロモーションビデオすぎるだろ…と思ったんだけど、実はディーン氏は全く弾けなかったのに練習して弾けるようになったとコメント。マジか…。そして結局そんだけ不自然にキメまくっても結局カッコいんだから凄い

基本1話完結ながら、3話の犯人で刑事の市川(伊藤歩)が逮捕後に心酔している守谷なる人物の名を出したのを皮切りに6話で出てきた精神科医の20年前の殺人事件の告白映像に出てきた告白した女性=8話の犯人長谷川京子と判明し、彼女が心酔して殺人を言われるがままに行った相手もまた守谷。この守谷は誉獅子雄が長年追いかけている人物らしく、徐々に誉獅子雄と若宮に別れの予感を漂わせながら10話ラスト~最終話冒頭にかけて市川ら4名の囚人が脱走。脱走シーンと並行して江藤が1人で屋上で「君が代」を熱唱して突如ラスボス感を醸し出す『20世紀少年』や『怪盗山猫』の佐々木蔵之介がまた出たのかみたいな展開に。

最終話では直後にOPタイトルのキメカットで江藤がレストレードとサイン。これは原典のレストレード警部に相当する人物であることを改めて明示したもので要するにそれはイコール黒幕じゃないよっていう事なだけど、レストレードだけじゃ分かりにくいためか、続けて若宮がワトソン、ダメ押しのように誉獅子雄がシャーロックとサインして今回のサインは単にドラマタイトルなだけじゃなくて原典の該当人物のサインだよとしつこくアピール。

というのもこの後も江藤が実は守谷を逮捕していたが、誉獅子雄には逮捕されていた事すら黙っていた事、突如情報を一切出せないと言い出したので2人が決裂してしまう挙句に、出世した江藤は上層部から脱走した守谷は政財界の黒い繋がりが多かったが警察関係者の中にも献金を受け取っていた者がいるため、ニュアンス的に「再逮捕ではなく見つけ次第殺せ」と命じられていた。このため人が変わったように部下に見つけ次第殺して問題ないと厳しい態度を見せたので直属でずっと一緒にやってきた小暮(山田真歩)でも不審に思うレベル。以降も誉獅子雄に結局泣きついたと思ったらやっぱりバカのフリして徹底して利用しようとしたりとけっこう黒い部分を急に出しまくってきたので早めにレストードサインを出して黒幕じゃない事を示したかったのかも。元々江藤が出世目当てで案外ドライだったりするのも描かれてはいたがこの展開のせいで突如キャラ変しすぎて見えてしまったし、台詞でも人が変わったみたいだと言わせたくらいなので、せっかく佐々木蔵之介なので黒幕ミスリードで遊んだというのもあったのかもしれないが…。

そしてついに守谷壬三(大西信満)に辿り付いた誉獅子雄だったが…。そもそも探していた目的は何か特別な恨みがあるとかではなく、犯罪を重ねる守谷壬三について知りたいという知的好奇心程度で、守谷壬三にしても退屈を抱えている点で我々は共通しているとか、似た者同士感を醸し出すなど意識高い系トークを繰り広げるばかりで双方会いたかったらしいけど結局会ってお互いどうしたいのか何だかハッキリしない始末。特に守谷壬三が今回繰り返し行ったのは手配しておいた囚人脱走計画ばかりだし、目的が全く分からない…。

最後は更なる囚人脱走の合図のスマホ1プッシュを止めるか止めないかを誉獅子雄に迫る守谷。いやあんたどんだけ囚人脱走にこだわってんの…?とますます意味不明になってくる中、誉獅子雄が止めようとするとそのまま誉獅子雄ごと引きずり込んで海へダイブ。双方発見されず、飛び込む瞬間しか見てない若宮・江藤・小暮の3人は直前まで何があったのか知らないのでそもそもどうして海へダイブしたのかも分からない。まあ見ている方も守谷壬三が「本当に私が守谷壬三と思いますか?」と偽物感をアピールしながらいきなり誉獅子雄を引きずり込んでダイブした事くらいなのでなんでそうなったのかよく分かってないんだが…。

そしてそのまま誉獅子雄も守谷壬三も行方不明のまままさかのTHE END。

また最初に脱走した他の3名のうち3話の犯人市川(伊藤歩)は誉獅子雄らと接触して再逮捕、田中(渋谷謙人)という男は誉獅子雄に追い詰められて情報をしゃべろうとした際に側近に殺され、その側近も即自殺で終了したが、春日(北原里英)という女は10話の都知事に爆弾送りつけてニヤリしたのを最後に出番終了。その他、守谷壬三が手引きして脱走する名もなき囚人数名も脱走シーンのみで出番終了。

肝心の守谷壬三も全く迫力の無い地味なフツーのオジサンで(役者も初回から有名なドラマ俳優を散々起用してきたのにここで急に映画主軸の俳優でテレビでの知名度は高くない人という…)、もうちょっと渋くて低い声を想像してたら割と声も高くて理屈っぽい割には威厳が無い。正直数々の犯罪者(特に女性陣)が心酔するようなカリスマ性も皆無で、理屈っぽいといっても言っている事は良く分からないし、声に感情がこもってないので終始無機質な棒読みみたいに聞こえてますます話が入ってこない。最後に偽者かもよ?アピールをやはり棒読み調に淡々と行うしで終始機械のようで(演技派の俳優さんだと思うので演技が下手なのではなく恐らくそういう演出)何が何だか…。

まあこの終わり方は有名な「ライヘンバッハの滝」オマージュなんだろうけど、こんな崖でも無く高さも無い埠頭で低予算で片づけるとは思わなかった。日本で崖をやると出た2時間サスペンス定番wwwとか笑われそうな気もするし、寒空の下リアル滝まで出向いてロケするのもしんどそうではあるが…。

投げっぱなしで終わりかお得意の映画化かと思ったら放送内容未定だった翌週が特別編となる事が判明。門司かれん(木南晴夏)というフリージャーナリストを名乗る女が若宮を訪ねてきて誉獅子雄の功績を記事にしたいと言ってきて改めてこれまでを振り返る事になるというあらすじが公開されていたので総集編かと思ったら…。

門司は家賃を滞納していた若宮の家賃を大家に渡して報酬を先払いしてしまったので強制的に手伝う事に。犯人への聞き取りは恨んでいる可能性が高いから私がやると宣言し、門司は歴代犯人たちへと面会、若宮は事件関係者で結果的に救う事になった面々に会いに行く…という両面で話が進行した。

歴代ゲスト陣が再出演して事件後を語るという展開上、簡単な回想シーンも多かったが総集編というよりも各回の追加の補完+続編という構成で予想よりも面白い展開に。犯人の中で長谷川京子だけは自害しているのでそれを除くと2話の犯人(菅野美穂)のみ写真だけ出てきて「菅野美穂に出演面会拒否された」と。犯人側はイカれた思考のやつが多かったので反省してないか、更に壊れてるかとかばかりで、1話犯人(松本まりか)相手に門司も挑発言動に及んでいきなり怪しさMAXになってしまう始末。半分ほどして門司は若宮に問い詰められて、元夫のDVに苦しんで殺されたフリをして逃げる大騒動を起こしたがその後始末で誉獅子雄に救われたという過去を語る。

若宮が接した関係者は救われた人たちなので若宮含めて感謝の思いを伝える(若宮も相手によって誉獅子雄行方不明の件を話したり話さなかったり)というほっこりとした流れに。

しかし結局特に何か明らかになるでもなく、誉獅子雄のコートだけが打ち上げられ、そこに遺書のような若宮宛のメッセージが発見された事で、若宮は区切りをつけて前へ進むと宣言。門司は誉獅子雄に会うまではあきらめないと告げて2人は別れ…。

3年後、降格した江藤と小暮が現場に到着すると何故か若宮は白衣で偉そうに誉獅子雄の真似ごとをしていたが、その推理は間違っているとして鑑識のフリをしていた男が正解を説き始める。何事も無かったかのように誉獅子雄が生還した2022年12月24日、堂々完結。江藤だけ「また課長になれる!」とか言って喜んでて吹いた

生還するのは原典通りなのでどう帰ってきてどう経緯が語られるのかを期待していたのに、まさか「3年後帰還」だけ原典にきっちり合わせてきて、経緯は綺麗にバッサリカットとは。思わせぶりだった「本当に私が守谷壬三と思いますか?」とか何だったんだよ…。しかも守谷の方から突き落としてきた、2人して転落するのが確かに目撃されている、というのは原典と明確に異なっているぞ…。

兄役(マイクロフトに相当)に高橋克典を起用しておいて出番が少なかったのでこの帰還には兄が関わっていて出番があるかと思ったら無いし。てっきり高橋克典の協力で身を隠しているとかそういう設定で活躍するもんだとばかり…。更なる補完続編を狙っているのだろうか。まさか本当に2022年にやるつもりじゃ…。

事件関係者のその後が垣間見えたのは面白かったけど、結局肝心なところが全部投げて終わってしまったのは残念だった。