2022年6月17日公開。
2019年秋クールフジテレビ月9ドラマ『シャーロック』の映画版。
シャーロック・ホームズを原典として現代日本に置き換えた内容で、シャーロック・ホームズ相当の誉獅子雄(ディーン・フジオカ)、ワトソン相当の若宮潤一(岩田剛典)、レストレード警部相当の江藤(佐々木蔵之介)と部下の小暮(山田真歩)の4人のレギュラーメンバーのみが続投。今作はタイトルそのままに『バスカヴィル家の犬』を原点としているが一部要素を引用している以外は基本的にはオリジナルストーリー。そもそも現代日本に置き換えているため、バスカヴィル家も蓮壁家と特有の似た響きの日本名に置き換えられており、バスカヴィル家は出てこない(強いて言うなれば『蓮壁家の犬』にすべきだがこれでは…)。
連ドラは最終回では謎を残したまま獅子雄と宿敵守谷壬三がもみ合って海に転落したまま失踪。翌週の特別編のラストにて3年後2022年12月24日に獅子雄が突如生還して幕を閉じたが、今作はその後の話なのか特に言及がない。最初から2人で探偵業をやって依頼を受けている場面から始まり、これまでの流れも設定の説明も一切ないままで物語が始まる。唯一時系列を示しているのが江藤が会話の中で昇進した事を明かしている場面だが、これも連ドラ時代終盤で昇進が決定するも獅子雄が帰還した2022年12月24日で「また課長になれる!」とか言って喜んでいたので獅子雄不在の3年間の間で事件解決がほとんどできずに昇進話が流れたか降格した様子だったが…。いずれにしても連ドラとの繋がりがほとんどないのでとりあえず今作単独でも成立するようになっている。
瀬戸内海の島に住む資産家である蓮壁千鶴男(西村まさ彦)は精神科医時代の若宮の知り合いだったため、娘の紅(新木優子)が無傷で戻ってきた謎の誘拐事件の犯人捜査をリモートで依頼してきた。しかしリモートで話し合っている最中に狂犬病で亡くなってしまう。現地に出向いた若宮と獅子雄だったが、息子の千里(村上虹郎)も魔犬の呪いのように怪死。やがて驚愕の真相が明らかに…。
という離島モノ2時間サスペンスみたいな内容だが、前半がかなり退屈。後半はかなりたっぷり時間をかけて真相と事件背景が明らかになっていくが悲劇的な背景は何だか別のドラマのよう。かなり強引ながらこんなお涙頂戴的なドラマだったっけ?そして唐突な大地震によるゲスト登場人物全滅ENDはこれはさすがに…。生きて希望を見出す展開にだっていくらでも持っていけるだろうにどうしてこうなった。
『シャーロック』感があまりないのは、出演者がカッコよくカメラに向かってサインしたり、事件解決前に謎の獅子雄のヴァイオリンソロ演奏が入ったりという連ドラで毎回おなじみだったカッコつけ演出がことごとくカットされた事と、今作では獅子雄がほとんど単独行動していて登場人物たちとあまり絡みが無く、一緒にいる若宮の方が事件に巻き込まれているうちに獅子雄が真相を掴んできて暴くという流れであまり謎解きの過程が描かれない。また冨楽夫妻(渋川清彦・広末涼子)による回想のみで裏で動いていた紅(新木優子)の様子が描かれるのみで本人による独白が無い。無くても真相はほぼ判明はするが、真相を暴かれた後の本人の言い分や若宮との会話による心変りといった要素がオミットされてしまい眠ったまま最後に少しだけ起きてあのBAD ENDでは救われない。衝撃的な後味の悪さで印象には残るし、たぶんそれが狙いだったとは思うんだけど、もう少し救いが欲しかった。
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