これは経費で落ちません!

2019年7~9月NHKドラマ10枠で放送。全10話。2016年から6冊、2017年末からは漫画化もされている短編小説集が原作。

とある会社の経理部の生真面目で優秀者な経理部員森若さん(多部未華子)が経費の領収書から社内の様々な出来事や問題点を洗い出して解決していくというお仕事ドラマ。比較的真面目な話だが、生真面目な森若さんの生真面目っぷりと休日のおひとりさまライフを満喫する姿が面白かったり、後半からは猛烈にアタックしてきていた年下の営業マン山田太陽(重岡大毅)と初めての恋に落ちてアタフタするなど生真面目な中にも人間味があって主人公だけでも魅力的だが、脇を固める面々も個性的で面白かった。

1番最初は経理部の森若さんと後輩の真夕(伊藤沙莉)、上司の田倉(平山浩行)、部長の新発田(吹越満)が出てきて、さらに営業部の嫌味な部長吉村(角田晃広)と覚えやすい人数の登場人物の印象付けを行ってから1話では営業部員の山田への疑惑をメインとしたストーリー展開。これで山田にかかった不正経理の疑惑を森若が晴らしたことで山田が森若にホレ込み2話以降は猛アタックを開始。2話では広告塔として経費をジャブジャブ使う広報課の皆瀬(片瀬那奈)が登場して、3話では不正を行う社員に岡崎体育がゲスト出演したが、これに憤慨する同僚社員として希梨香(松井愛莉)がピックアップされ、4話ラスト(実質5話)からは経理部に麻吹(江口のりこ)が新たに加わったりと1回限りのゲストもいたものの、社内の人間は大概が最初は背景か、そもそも出ていなかったものの1度登場してからはレギュラー、準レギュラーになっていくという登場人物が覚えやすい範囲内で増えていくのが優しい作りで良かった。

最初からどいつもこいつも名前と肩書付きで出したところで覚えられないし、逆にピックアップされる回だけ出て後は全く出てこないとかだといかにもゲスト出演感が出てしまうが、ほとんどの社員はメイン回以外でも再登場していて自然だった。

若干悪どい秘書として登場したベッキーが森若さんと麻吹に問題を追求されておとなしくなって以降も再登場して再度暗躍、今度は会社を売ろうとしていたというトンデモな裏切りを暴かれて一転、買収話をぶっ飛ばして逆スパイだった事にして会社を救って罪を帳消しにするなどなかなか強かな展開も予想外で面白かった。

多部未華子は2年前の「ツバキ文具店」も良かったけど、独身最後アラサーにしてようやく映画デビュー直後連ドラ進出前の存在感の良さが戻ってきた。連ドラ進出以降は『山田太郎ものがたり』でのハイテンションっぷりやワンコになってしまった某ドラマなどイロモノ色が強くなってしまって正直少し残念に思っていたんだけど、今回は生真面目さの中に出てくるチャーミングさが過去最高に良かった。

ルパンの娘

2019年7~9月、全11話。

代々泥棒一家Lの一族の三雲華(深田恭子)と代々警察一家の桜庭和馬(瀬戸康史)は結婚を考える恋人同士だったが両親への挨拶の際に華は和馬が警察一家だと知ってしまう。以後結ばれない愛に苦悩しながらもLの一族であることを隠しながら交際を続けるが…。

原作小説には無いダッセェ泥棒スーツ仮面姿に変身して謎のダンスを踊りながら仕事モードに入り、悪党とアクションを繰り広げたりと中途半端にやれば見ていられないようなハイセンスな要素を、全力で振り切ってやった結果、意外と面白くなった…という奇跡の茶番ドラマ。随所に飛び交うオマージュギャグやおふざけなどもあるが、後で実は伏線になっていたり、締めるところはちゃんと締めていたりと、そこそこ真面目なドラマに限ってありがちな前提破綻が無かったのも何気に凄かった。

振り切るというかメチャクチャだったのが登場人物の年齢設定。深田恭子が実年齢より数歳若い役を演じるのはもうアラサー付近になってからほぼ毎回なので今更違和感はないが、これに伴い02年の『First Love』では教師と教え子で禁断の関係だった渡部篤郎が17年ぶり共演で父親に。そして美魔女設定により深田恭子と5歳しか離れていない小沢真珠が母親(一応55歳設定)、深田恭子の12歳も年下の栗原類が引きこもりの兄役(喋れない設定なので台詞ゼロでPCに打ち込んだ人工音声で会話するが最終回では喋った)ので、実年齢還暦手前(59歳)のどんぐりが76歳の祖母役…とトンデモな事に。

いやこれ実年齢ではどんぐり(祖母)が深田恭子の母親役でも別におかしくない。59歳と36歳なのでむしろそれでもまだちょっと若いくらいである。

こんなキャスト的にメチャクチャな家族でもなんだかんだ浮世離れした展開によりけっこう自然に見えてしまう上に、渡部篤郎が父親として娘をちゃんと心配している様子が描かれたり、現Lの一族当主としてきちんとしきっているところも出てきたり、終盤では祖母の若い頃の話から一族間の因縁に深みを与えるなどストーリー的にも面白い部分も多かった。

一方で肝心のメインのラブストーリーである華(深田恭子)と和馬(瀬戸康史)のカップルは何だかあまりしっくりこない感じで、華は仕事モードの時はキレッキレなのに普段はウジウジしすぎだし、和馬はまじめすぎて面白味が無いしで何より運命が運命だけにほぼ最後まで2人のシーンは苦悩苦悩また苦悩で重苦しい…。ウジウジと熱血馬鹿真面目の組み合わせだけに重い×重い…。

華は幼馴染のミュージカル泥棒(大貫勇輔)との方がノリと相性が合っているかのように描かれているし、和馬も途中で登場した他人と目が合わせられないコミュ障のエミリ(岸井ゆきの)との方がなんだか合っていた。特に後者の方は不器用ながら好意を伝えようと頑張るエミリと、エミリに対しても誠実に優しく対応する和馬…という和馬の真面目さがとても良く出ているというお似合いっぷり。終盤別れてからはこの2組のカップルで結婚まで行く流れになったが、本来運命に引き裂かれて悲しいという展開のはずがそっちの方がお互い良くね?と思えてしまうという。

結局、華と和馬の祖父同士が元親友で華の祖母とも60年来の親友。当時は和馬の祖父と華の祖母が華の祖父の後押しで付き合う事になり、付き合ってからも3人で仲良くしていたという関係だったが、華がLの一族である事を告白したことでぎくしゃくし、さらに華の祖母を60年前に襲撃した犯人がエミリの祖父(後の警視総監)。当時は犯人の顔を華の祖父が目撃したのみで正体が分からなかったが、顔に傷を負った華の祖母は姿を消し、警察一家とLの一族では付き合えないとあきらめた和馬の祖父に代わって密かに華の祖母を思っていた華の祖父はLの一族の婿養子に入るために独自でスリの技術を習得して現在に至っていた。

そして華の祖父はようやく元警視総監が当時の犯人だと突き止めるも真相を掴んだ華の祖父が殺される事件をきっかけに(結局戸籍をもらって偽名に使っていた浮浪者の男性が殺されたので本人は生きてた、また殺したのはエミリの従兄で和馬の元上司だった)、元警視総監がエミリに和馬と結婚して監視するように命じていたことも発覚してお似合いに思われたカップルも破綻。晴れて…もないが華と和馬は結ばれる。

警視総監の件が無かったらエミリがちょっとかわいそうなだけだったけど、エミリはギリギリまで元警視総監の言いなりになって和馬を窮地に追い込むなどこれなら仕方ないかという終わり方になった上に(本心は好きだったんだろうけど祖父の命令だったので好きじゃなかったと最後にコメントし、和馬はお礼を言って別れた)、このおかげで躊躇なく茶番的ハッピーエンドにもっていけて予想外にライトな結末になったので終わり方も良かった。予想以上に楽しいドラマになった。

びしょ濡れ探偵 水野羽衣

テレビ東京水曜深夜(30分)枠の2019夏連ドラ。舞台中心の女優活動になっていた大原櫻子が2年ぶりのドラマ出演にして初主演。ついでに主題歌も担当。

映画の主演主題歌デビューを果たしてから6年近くも経過してのようやくの初主演ってあまりに遅すぎるというか、既に大学も卒業する年齢になってしまっていて逆に今更主演主題歌って…。

ドラマ出演に関しては所属事務所を転々としてきた影響が露骨に出ていて要するにドラマによく出ていたのはフジパシフィック所属時代だけ。出演歴を見れば分かるように2014年夏~2016年まですべてフジテレビ限定出演女優だったという分かりやすさ。

そんなわけで今作では就活中の女子大生というギリギリの学生設定。水をかけられると任意の過去にタイムリープできて、タイムリープ先で自ら水を被れば元に戻る、そしてタイムリープ先では過去その時濡れていなくてもびしょ濡れな状態のまま行動する事になる、という特殊な設定。

ストーリー自体は、事件といっても殺人レベルの事件は起こらず、父が経営するラブホテルの一室で兄が探偵事務所をやっていて、主にそこに持ち込まれたけっこうくだらない案件の解決を手伝う、というもの。毎回の進行は非常に緩い展開で、しかも父も兄もボケ倒しのハイテンションキャラ友人はカタコトの台湾人でやはりボケ倒しの破天荒…ゲストの依頼人もぶっ飛んだ人ばかりで主人公大原櫻子以外に真面目でまともな人間がいないので終始ハチャメチャ、基本的に1人真面目に頑張る大原櫻子の正統派アイドルドラマといった装い。ホントなんで今!?というというくらい3,4年はやるのが遅い企画のドラマだったと思う。

ストーリー自体の緩さに加えて今作はテレ東がやっているネット放送Paraviと連動しての「ドラマパラビ」枠のため、Paraviと契約しないと話が真に完結しない作りになっていた。TVだけでほぼ完結している回もあったが、回によっては依頼人がA,Bと2人いてTVでは片方しか事件を解決させず、もう片方の依頼人の解決はParaviで!という露骨なParavi加入誘導回もあったが、別に加入してまで見たい話でも…という内容だけに何とも言えない感じ。

また兄、父親、友人がそれぞれメインの回や、主人公がタイムリープしない(どころかパズルにハマって没頭しているという設定でほぼ出てこない)回もあるなど、基本パターンに捕らわれずにかなり自由な作りであっちこっちへとボケ倒し、ふざけ倒すというなかなかシュールなドラマだった。

最終盤になって失踪していた母親(ふせえり)が登場。それまではエンディングでまるで見守っているかのようなナレーションだけしていたが、実際見守っていたらしく、これまで過去から戻る際に毎回都合よく水の入ったバケツや桶などがその場に置いてあるのはギャグ描写ではなく、毎回母親が仕込んでいた事が判明。しかしそれだけならそこそこ感動的だったはずが、母親を超絶に最低に描くという斜め上を行くシュール展開となり、娘にタイムリープ能力が発動したので自分も苦しめられたその能力に嫌気が指して逃げた事、逃走先で不倫キメこんでいた事、パチンコ依存症になっていた事、ブチ切れた羽衣に逆ギレして家に戻らないと言い放った挙句にその発言を過去に戻ってなかったことにしようとする兄妹を体を張って阻止し続けて水を被りまくった挙句にこれだけ被ったんだから許せと言い放つ外道っぷり。ギャグにしてもトンデモすぎる…。

そんなわけで終始ユルユルテキトーであったが、大原櫻子がナチュラルアイドルかわいいという点においては正しくアイドルドラマだった。違う回もあったが大体兄の手伝いでタイムリープするため、兄に水をかけてもらって発動する回が多く、その際に毎回「お兄ちゃん!来てっ!」と妹キャラ感醸し出してくるのもアイドルドラマだった。

ベスト盤のジャケットとかあんな誰だか分からないような写真にせずに、今作のエンディング映像の最後でカメラに向かって水をかけて笑顔な瞬間とかにしていれば2倍とは言わずとも+1万枚は売れていたのではないか…。ていうか本人が相当大人っぽく行きたいっぽいのと深夜ドラマで実家がラブホテル経営でびしょぬれなんて設定だからてっきりもっと露骨にアダルト路線のドラマかと思ってたらここまでアイドルPV的なドラマになるとはなぁ…。

2019夏

ピュア!~一日アイドル署長の事件簿~

NHKで2019年8月13~15日に3夜連続という変則的な形で放送された全3話のドラマ。腹黒な売れないアイドル黒薔薇純子(浜辺美波)が1日署長を務めた警察署管轄内で殺人事件が発生し、駆けつけた本庁の東堂(東出昌大)を引きずり回して捜査して事件を解決するという内容。

東堂はエリート気取りの偉そうな刑事で一見賢そうだが意外と無能で、順子は腹黒ゆえの計算高さから頭の回転が速く、謎を解くのに長けている…といった設定で凸凹コンビながら掛け合いも面白く、腹黒くて性格が悪いといっても終始ニコニコしながら暴言を吐く純子の明るさはノー天気さもあって嫌味が無く、振り切った浜辺美波のアイドル演技もハマっていて緩めのお気楽ドラマとしては思いのほか面白かった。東出昌大は『コンフィデンスマンJP』でもそうだったけど見た目かっこいいんだけどなんか抜けているという役柄がハマる。

3話しかないのにきっちりパターン化(一日署長先が舞台、マネージャーの六角精児は純子を連れてくるだけですぐ帰る、事件発生で藤堂登場、巻き込んで2人で捜査、純子の背後に黒い薔薇が育ち始めて閃くと黒い薔薇が咲いて謎が解ける…が全部解けてなくてその後で迷ったり、もう一山危機に陥る)されてまとまっていたし、普通に連ドラでも行けたんじゃないかと思う。

電影少女-VIDEO GIRL MAI 2019-

18年冬クール放送の『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』の続編。今年1月の特別編で最終回手前の補完が行われたが、この際に洋太(戸次重幸)と人間あい(西野七瀬)が回収していたビデオガールのパッケージ一覧から神尾まいのものだけ抜け落ちている事を危惧していて早く探さなくては…と焦っていたのが今作へ繋がっている。

キャストは洋太(戸次重幸)のみ続投。神尾まいは原作にも登場したビデオガールで、前作にも原作登場人物の25年後の清水が登場したが、今作では原作登場人物では松井直人(岡田義徳)が登場する。今回は原作から25年後とされた前作から1年経過して26年後と思われるが、作中では普通に25年後として扱われている。

山下美月は今作撮影の多忙から体調不良で両立が困難となり、シングル『Sing Out!』には不参加となり、本業の乃木坂46を休業して今作のみに専念する形で活動を制限した。 「電影少女-VIDEO GIRL MAI 2019-」の続きを読む…