劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ

2023年5月12日公開。

B0CGHTY3MF

2022年秋クール朝日放送テレビ「ドラマL」(日曜23:55~0:25)、テレビ朝日では日曜(土曜深夜)2:30~3:00で放送された連ドラ版続編。連ドラ放送終盤に映画化が発表されており、最終回から5ヶ月での映画となった。キャストは全員続投…というか連続してそのまま撮影されたものと思われる。

映画版まではあまり見る気はなかったが、久々にHulu再加入(1ヶ月限定)したら配信されていたのでこの隙に視聴。

冒頭5分で連ドラ時代を回想して基本設定をさらっとおさらい。連ドラの再放送や再構築にダラダラ時間をかけずにそのまま続きの話へ突入する。冒頭5分の回想だけでも分かりやすいストーリーではあるのでついていけなくなる事は無いが、積み重ねや成長・変化の部分はどうしても伝わりきらないし、基本的には連ドラを見ているのは前提。

悪天候により、えりぴよ(松村沙友理)、くまさ(ジャンボたかお)、基(豊田裕大)のいつもの3人以外が劇場にたどり着けずライブが中止になり、さらに雨漏り回収でしばらくChamJamのライブが出来なくなってしまった。この間に東京進出で路上ライブでもするかという話になり、ChamJamは東京へ。岡山の地下アイドルなのにいつもの運営の告知の遅さが原因で、ファンには直前に都内での路上ライブが告知される事となり、岡山からのファンの到着が間に合わず1回目のライブはファンがおらず誰も立ち止まってくれないという冷たい街東京を地で行く展開となり心が折れかけるChamJam一行。そりゃこんな都内のアイドルファンもいないようなサラリーマンがメインで往来しているような普通の路上で地方ローカル地下アイドルがいきなり踊り出したって…。

一方でえりぴよは更なる資金稼ぎのためにパン屋のバイトに奮闘。新商品開発にも積極的に取り組んでおり、舞菜(伊礼姫奈)のイメージカラーを取り入れたトリッキーな「さーもんぴんくパン」のアイデアをプレゼンしていたため、くまさ、基からの連絡も届かず駆け付けた時にはライブが終わっていた。基の妹でえりぴよに次ぐ舞菜推しの玲奈(片田陽依)は受験生でその関係で東京に一時来ていたタイミングだったため現地合流し、その他のトップヲタ達もようやく駆け付けたため2回目の路上ライブはある程度いつメンのコアファンが揃ってなんとか形になった。しかしその場にえりぴよがいなかったため、えりぴよ不在を気にしていた舞菜はコケてしまい足を負傷

岡山に戻ってからしばらくすると会社社長からの地元ローカルCMのオファーが入った。2回目の路上ライブの前に奮闘してビラ配りをしていた際に文(和田美羽)がたまたまビラを渡したおじいちゃんがこの社長だった(ただライブ自体は見に来ていなかったようで路上ライブ時には姿は見えず、文が思い出したのもビラを渡した時の姿だけだった)。そのCMはドアストッパーのCMだったため、メンバーはストッパーアイドルとしてストッパー感を示すために揃って手足プルプルの組体操ポーズを次々とキメるという内容だった。このため足を負傷している舞菜だけ参加できずCMは6人となってしまった。立っているだけで済む1シーンとか集合カットだけ7人にするとか7人で出る方法は確実にあったと思われるが…ここの運営、偉そうな態度も取らずメンバーとの関係も良好で基本的にいい人たちで熱心な割には告知が遅かったり変なところで抜けがあるので(クソ運営呼ばわりもされる)、そういう抜けている悪いところが出たのかもしれない…。

その珍妙なCMは岡山では街頭ビジョン等でも広く流され、あまりの珍妙さに岡山県内では大いなるバズとなったが、ChamJamは6人組と思われてしまう。続くめいぷる♡どーるとの対バンライブで焦って復帰しようとした舞菜だったが完治していなかったので結局出れなくなってしまい、舞菜に無関心なファンの間ではこのまま卒業説も流れてしまい、落ち込んだ舞菜は吉川(立石ケン)に卒業した方がいいのではないかという意思を伝える。

何故に吉川に?と思ったが、スタッフ3名のうち唯一の男性で主に握手時のストップウォッチ&剥がしを担当しているこの吉川、単なる現場スタッフではなく運営トップの事務所社長だったのかよ…。吉川は青天の霹靂だったようで待ってくれと焦り出すと思いとどまるように言って一旦保留。現実的に不人気、精神的にも1番弱く不安定な舞菜をあまりケアしている様子は無かったものの、いざ辞めるとなるとそんな事になるとは思ってもいなくて大切なメンバーとして扱っている世界線は今作らしくどこまでも綺麗な世界観だ。

えりぴよは卒業の噂を聞いてさらに奮闘。商品化された「さーもんぴんくパン」がかなり好評だったので、開発者権限(?)で本格的に舞菜の写真やパネルを用意してポップにも舞菜をイメージした舞菜パンのような扱いで勝手に装飾しまくり、舞菜を宣伝。それを知った玲奈が舞菜への手紙をスタッフに託し、公演時間外だったが特例で受け取ってくれたスタッフが舞菜に渡し、舞菜がパン屋に出向き、えりぴよがパンで応援してくれているのを実際に目撃。

2人が遭遇する事は無く、舞菜は入り口だけで帰ってしまったが、同僚の美結(あかせあかり)が舞菜に気づいて「さーもんぴんくパン」を渡して補足説明(東京には行っていたがパンのプレゼンで間に合わなかった事など)してくれたので、えりぴよの知らないところでえりぴよの奮闘と「さーもんぴんくパン」が舞菜に届いた(ただしアイドルと推しの関係としては一線を越える微妙なラインでもあるためか、美結はこの事はえりぴよには伝えていないっぽい。えりぴよは「さーもんぴんくパン」を舞菜が食べた事は知らず、舞菜も言っていない様子)。いずれにせよこれで舞菜は立ち直った。舞菜が落ち込んで立ち直るのは連ドラと同じ展開だが、今回はえりぴよが直接思いを届ける形で励ますのではなく、周囲のフォローでえりぴよが知らないところでえりぴよの思いが届き、舞菜がほぼ自力で立ち直ったのは成長か。

続けて例のCM効果で地上波番組へのゲスト出演が決まったが、CM出演メンバーだけと言われてしまったので舞菜は1人見学。逞しさを増した舞菜は動じずにスタッフと一緒に出演を見守っていたが、リーダーのれお(中村里帆)がもう1人メンバーがいて7人組だと主張したのでスタッフサイドにいた舞菜もカメラに映し出され、司会者がどうせならこちらへどうぞと言って私服のまま出演する事に。とはいえ相変わらずおとなしく放送事故級にあまり喋れない舞菜だったが、私服で来ていた背びれヒラヒラ装飾がついた謎のSEBIREシャツが個性的だったので司会者にイジってもらえて、480円で買ったシャツだと返すと場も盛り上がった。えりぴよがあまりに熱心過ぎて現場では他のファンが近寄りにくくなっていてファンがなかなか増えない、潜在的に舞菜を気にしているファンも少なくないという設定でもあったので、元々の美少女っぷりがこのTV出演で“発見”され「480円の子」「480円ちゃん」として人気に火が付き始めた。

嬉しさと複雑さを感じながら握手に出向いたえりぴよだったが、舞菜は名前を呼んでくれるのはえりぴよ(と玲奈)だけでみんな「480円ちゃん」としか呼んでくれなくて…と告げる。そのすぐ横では吉川が新規ファンに480円ちゃんのレーンはここかと聞かれてはいそーですよーと平然と「480円ちゃん」で話が通っており、えりぴよは「スタッフさんまで…」と衝撃を受ける。おい社長吉川…そういうところだぞ…。えりぴよが、他の並んでいる新規ファン達に480円ちゃんじゃなくて市井舞菜だからちゃんと名前で呼んであげてくれと訴えかけた事で、この日の新規ファンはちゃんと名前で呼んでくれるようになった。さすが頼れるTO。見方によっては自分では言いにくい事をえりぴよに言わせた感も無くはないが、そもそも連ドラ時代はそういった舞菜が困っている事をえりぴよに話したりするどころか、普通の会話も弾まないほどぎこちなかった事を思えば…舞菜の成長だろう。

「さーもんぴんくパン」も出しては客が即殺到する超人気で「舞菜パン」と通称が変わり始める(ファンではなく一般人のおばちゃんが「舞菜パンまだあります?」と発言)。舞菜人気が高まる中で、えりぴよが最初に舞菜を見てファンになったのと同じ商店街の七夕イベントでのライブ。ここでは持ち歌が連続披露され、最後に披露した新曲「私たちが武道館にいったら」はなんとその場でサプライズでれおが舞菜センターで披露すると宣言。当の舞菜は聞かされていなかったようで、その前にれおが「この七夕祭りのイベントはあるメンバーにとって大切なステージです」と前フリMCを始めた際も誰なんだろーみたいな不思議そうな顔をしていて「今日はそのメンバーがセンター」と宣言しても全く自分に来ると思っていなかったようで、れおに指名されると「え?」とおとぼけ顔。反応からしてれおのアドリブ独断ではなく、6人のメンバーで示し合わせていたようだが、舞菜の性格考えたらステージ上でいきなりサプライズセンターやらせるのはムチャすぎるだろ…。ただでさえ怪我で少し出遅れていたはずの初披露新曲、しかも定位置の隅っこでの振付を練習してきてセンターの振付なんか練習してないはずだし…。「いつもれおの背中見ているからいけるよ」みたいにも励ましていたが、「ずっとChamJam」「Fall in Love」といった古くからの持ち歌ならまだしも覚えたて初披露新曲で出していい言葉じゃねって

メンバーがひとしきりやれるよと声をかけても戸惑いフリーズしたままの舞菜に、ファン達も察して客席で今こそ出番だ声をかけてあげるんだとばかりに軽いえりぴよコール状態となり、それを受けたえりぴよが励ましの言葉を送り、決意した舞菜がセンターに立ち新曲を披露。くまさが自分の立ち位置をえりぴよに譲り(くまさはセンターのれお推しTOなので最前中央付近が定位置だが舞菜は左奥なのでえりぴよは最前でもいつも左寄りが定位置)、クライマックスを迎えた。最後の握手会で遠い存在になりそうだと不安をのぞかせるえりぴよに舞菜は出会いとなった握手会(七夕イベントの時はえりぴよが通りがかって偶然見かけて衝撃を受けたまま終わっていて握手会には参加していないので最初の握手会はそれより後の劇場での握手会だった様子)で、自分を好きと言ってくれた最初のファンだったと告げると武道館に行くまで応援し続けれくれるようお願いし、えりぴよも張り切って終了。

原作も続いているし、武道館はまだ遥か遠く(今は結成4年でようやく劇場を満員に出来たレベル)、舞菜の人気が出始めたところまででの完結となったが、無理やりすっ飛ばして武道館サクセスを示唆するよりも夢を掲げたまま続いていく感じで良かったのかも。

いっそ「舞菜パン」を「480円」で売り出せばシャレが効いてますますヒットするんじゃないかとも思うが、こういうところには疎い運営がまだパンの存在を把握していないから成立している肖像権無視の無断使用だし、あまり便乗しすぎると後がまずいことになりそう。早めにパン屋側から運営に話を持ち掛けていくらか上納する形で公認商品として手を組んだ方がいいのでは。

しかし出演者、今作以外であまり見かけないな…。伊礼姫奈は即新世代の10代俳優の筆頭人気になりそうなくらい華があるように思うが、同時期にJTBのCM出演の縁でCMタイアップだった秦基博「Paint Like a Child (JTB Collaboration Movie)」にメインで出ていたり、同年に映画『シンデレラガール』主演もしているので着実にステップアップはしているようだが…連ドラレギュラーは無くてまだそこまで知名度が高くなっていない。ChamJam7人のうち伊礼姫奈含む3人がアイドルではない俳優で、4人がさくら学院出身で2019年に@onefiveで今作でも主題歌を担当。しかし方向性は大きく異なるようで曲自体もスタイリッシュ系だし、連ドラ時代や映画の頃まででも今作よりクールで大人っぽい雰囲気ではあったけどまだ面影はあった。今作から1年以上が経過する頃には全員やさぐれ系に変貌していて、今作での姿とは全く一致しなくなっている…。

★★★★☆

コメント

タイトルとURLをコピーしました