2025年6月13日公開。
2023年の『きさらぎ駅』の3年ぶり続編。前作主人公(恒松祐里)に助けられた本田望結が新たな主人公となった。前作同様にDVD発売と配信のみ、3ヶ月後の9月にはもうAmazon Primeで追加料金なし配信が始まるというスピード展開だった。
3年前に生還した宮崎明日香(本田望結)だったが、現実世界では失踪から20年経過しており、見た目20歳ながら実年齢40歳(というか当人は本当に17歳で帰還したのに同級生が37歳になっている未来の時間軸に来てしまってその3年後という方が正しい)。自身を救ってくれた堤春奈(恒松祐里)救出のために奔走するも「きらさぎ駅」の話を信じてもらえずにインターネットの悪意に晒され、オカルトクレイマーの異名で呼ばれる有名かつ不気味な存在となって精神的にも孤立していた。序盤は映像ディレクター角中瞳(奥菜恵)の制作する明日香のドキュメントという形で進行。この中で3年間の空白の時間が明かされており、明日香脱出時のきらさぎ駅メンバーのうち、今も行方不明なのは春奈と飯田(寺坂頼我)の2人のみ。松井美紀、岸翔太、花村貴史(芹澤興人)は帰還していた事が明かされる。本人が登場したのは花村のみで、岸は精神を病んで自殺(出番なし)、松井もまた精神を病んで包帯グルグル巻きで病院で意志が通じない状態(顔も見えないので演じた莉子の出演はなし)となっていた。さらに前作のラストできさらぎ駅に向かった凛(瀧七海)も無事帰還していたが世間を恐れた純子により自宅に監禁されており、ドキュメンタリー撮影中に不審に思った明日香や取材班にそれを暴かれた事で純子も退場(たぶん逮捕?)。この過程で明日香の理解者だったはずの純子も壊れていた事、さらに凛の話から春奈は明日香を助けようとしたのではなく、自分が助かろうとして明日香を先に行かせた、それは純子が仕掛けていた罠だった事も知る事となる。
ドキュメントの放送が中止になってしまい、意を決した明日香はついに「きさらぎ駅」に乗り込む。そこには春奈と飯田、そして抜けた3人に代わるハヤト(大川泰雅)、鎌田夫婦(柴田明良、中島淳子)が入っていた。春奈に声をかけるが春奈の記憶は最初に明日香を助けに行った初回のままで止まっており、飯田も初対面状態だった。とりあえず足早に今までの事を説明し、春奈が裏切った事も聞かせたので春奈としては気まずかったが、地獄の3年を生きてきた明日香本人が全く気にしてないのでそのまま結託。見知った罠の数々を前作よりも爽快ギャグ的にこなしていく2人だったが、早々に言う事聞きそうにない他の3人を見捨てた=死んだメンバーも罠の一員となるルールから終盤に追い詰められてまさかの2人揃って死亡(さらにまたも春奈の裏切り付)。
全滅すると記憶を保持したまま最初からやり直しになる事が判明し、次からは全員なるべく生かす方法で進めていくが…2度目も失敗。3度目でようやく光の扉の出現まで至るが、この世界の主のような巨大な目玉のバケモノが周囲を守っておりなすすべなく毎回全滅してしまうループ状態に。この繰り返しの中で全員に連帯感が生まれるようになり、みんなで策を練りながら、「高鬼」ルールを発見。高い所にいると目玉が出現しないため、教室から椅子や机を持ち出して通路を作るが足りなくなってしまう。結局どっちみち1人しか助からないから残りの距離は他のメンバーが犠牲になり、その隙に1人だけ扉に到達できればいいという事に。
しかし今までの自身の土壇場で保身に走って明日香を見捨てる行動に走る自身を反省した春奈は本来は自身が帰還者として全員納得で指名されていたのに土壇場で明日香を突き飛ばして明日香に扉を通させる。
…しかし何も起こらなかった。またも全滅ループとなり、扉すらフェイクだったという事でこんなに難易度がおかしなことになったのは明日香が2度目だからではないかと明日香が気にする中、最後にたどり着いた回答は「きさらぎ駅」で降りない。明日香は春奈を電車内に残し、これにて春奈は脱出に成功。春奈は角中と遭遇して明日香からの話を聞いてドキュメントを海外に売り込んで放送させることに成功。
しかし角中は公開後に明日香の意図に気づく。ドキュメント内で駅への行き方は明示しないように明日香本人が言っていたが、実際には名探偵インターネッツの力を駆使すれば特定可能であり、ドキュメント公開後に「きさらぎ駅」への行き方が特定され、「きさらぎ駅」はホームで人が溢れる大盛況の観光地状態になっていた。
「きさらぎ駅」到達に湧く名探偵インターネッツの面々だったが本当に怪異が始まるとパニックに陥り、その中でインターネッツの悪意に晒されてきた明日香が不敵な笑みを浮かべてTHE END。
前作は割と最後投げたというか、凛(瀧七海)が次の犠牲者に…っていう続編というかホラー的なオチで終わっていたのでどうするのかと思ったら力業で全部まとめて3年後に繋げてきた。これにより序盤で判明した他の帰還勢がどのように帰還できたのかは明かされなかったが、「全滅すると記憶を保持したままやり直し」、「誰か脱出すると記憶リセット」というルールが今回判明し、凛が自分も春奈に助けられたと言っていたので、春奈が明日香・凛にしたのと同じ事を3人にした事で帰還できたという事か。そこまで春奈が助けようとしているのに帰還できない飯田って…。
ラストシーンで明日香が記憶を保持しているのかどうかは不明だったが、インターネッツに混ざっているハヤト、飯田、鎌田夫婦は明らかに記憶なさそう(一緒に逃げ惑っている)。2回目という特殊条件の明日香は記憶を保持している可能性もあるが、明日香がついに「きさらぎ駅」再訪を決めた時点で春奈を現実世界に返せれば目的が達成できるような仕込みは全て済んでおり、記憶が無かったとしても春奈がいなくなっている事と人が溢れた状況から目的を達成したのは分かるのでどっちみち最後の不敵な笑みは変わらないか。
現実世界に帰還すると相当未来へワープしているという設定もあったが、今回は新たに来た者がいた時間軸に帰還者が帰るという形になってさほど年数は経過していなかったのかもしれない(角中が明日香の失踪に気づいて探し回って途方に暮れるくらいの時間は経っているので数日~数ヶ月は飛んでいそうではあったけど年単位では無さそう)。純子の時は純子IN→純子OUTで来た者と帰還した者が同一で何故か7年後に飛ばされたがこれが特例で、春奈IN→明日香OUTの時は春奈のいた時間軸に帰還(明日香にとっては20年後だが、純子が待ち構えていた事や純子の姪の行動が春奈INの前と地続きになっている)しているので、そっちが採用されているっぽい。
前作で出てきた罠は全て既知なので前作以上に攻略方法知っているハイパー無敵ギャグ描写で流し、さらに今回は延々ループも入るのでみんながどんどん仲良くなっていって車運転パートで免許も持ってないのでメチャクチャ下手だった明日香の運転が上達していって拍手まで出てくるとかギャグもパワーアップ。そこからのダークなオチは何とも言えない後味で、前作でまっすぐで純粋な女子高生だった明日香が20年進んだ現実世界で孤立を深め、現実世界に罠を張って戻らない覚悟で「きさらぎ駅」に向かう…だもんなぁ…。その世界の中での思わぬ苦戦をきっかけに仲間達と絆を深めていく過程は明日香にとってもある意味充実した時間だったのかもしれない。また当初は追い込まれると最後に保身に走って裏切るという習性が抜けなかった春奈も今回は記憶が蓄積されるために自身の習性を自覚してそれに抗い、「高鬼」ルールを発見して独占せずにちゃんと情報を共有、最後には自身を犠牲にしても明日香を助けようとするまでになったのはグッとくる部分だった。
3年の間で本田望結がだいぶ成長(年齢的な変化もだが、ややふっくら気味になっている。20歳になって酒を飲むようになったらおつまみ中心で食べ過ぎなくなった事で自然と10キロ減に成功したとの事で今作公開時点ではだいぶシャープになっていた)したのが役柄の変化ともリンクしていたのも絶妙だった。
★★★★☆
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