I WiSH 20周年シングル回顧~2003-2005,2008~
2002年秋、当時人気だったフジテレビ系恋愛バラエティ「あいのり」新主題歌に起用され、正体不明の男女ユニットとして2003年2月にデビュー。現役女子高生のボーカルaiと現役大学生のキーボードnaoの2人組とされたが、当初は顔出しもせずに正体不明の覆面ユニットだった。
一方で2002年に路上ライブを開始し、手売りでCD販売を行っていた川嶋あいはインディーズで着実に人気を集めていた。川嶋あいのファンは当初から声が全く同じであるためI WiSHのaiが同一人物だと半ば公然の事実となっていたようであるが、I WiSHが大ヒットしている中で川嶋あいも2003年8月に渋谷公会堂での単独ライブへと到達。I WiSHの次のシングルがドラマ主題歌としてOAされて発売を控えている中で、川嶋あいがI WiSHのaiだと公表し、話題となった。以後I WiSHと並行して川嶋あいのソロ活動の方がむしろ積極的にシングルリリースを重ねていく事となった。
案の定2005年にソロ専念としてI WiSHは解散した。なおai=川嶋あいばかりピックアップされる一方でnaoもなかなかの謎の人物でまともに顔が分かるような写真が掲載されたのは最後のアルバム『WISH』のブックレット内であった。
生い立ちエピソードの見せ方、その後同じ「あいのり」デビューになったMiにおける過剰なまでのキャッチコピーの付け方も含めて、元々事務所のつばさレコードは過剰ともいえる演出・煽りを入れてくるところがあり、どうにもこうにも境遇やピュアさを押し売りしすぎた感はある。その結果、熱狂的な固定ファンは一定ついたものの、川嶋あいの売れ方は当初からトップ10ヒットにはなるんだけど2週目以降に急落してしまうなどかなり閉鎖的になってしまっていた印象がある。
2008年にはデビュー5周年を記念して一時復活。「明日への扉」の再録音とリミックス2曲+未発表曲を収録した豪華シングルと全曲集3枚組BOX『The Complete Collection of I WiSH』をリリースした。
デビュー20周年企画として2023年2月14日にI WiSH名義での新曲が発表されたのを記念して以前の過去曲回顧をリメイク。
1st 明日への扉
2003年2月14日
作詞作曲:ai、編曲:nao,小澤純
フジテレビ系恋愛バラエティ「あいのり」主題歌。ゆず、Every Little Thing、GLAYに続く番組4年目、4作目として2002年10月からOAされていた。ゆずはアルバム曲だったが、ELT、GLAY共に大ヒットを記録しており、最もヒットが約束された大型タイアップとして番組は全盛期にあった。バラエティのタイアップは通常エンディング付近でバックでかかっている程度の扱いであることが多いが、この番組では現在旅をしている面々の紹介と共にOP映像が毎回流れていたので、すっかり浸透したタイミングでの絶妙な発売となり、前2年は大ヒット。今作も誰が歌っているのか正体が謎のままでも曲が既に浸透していて問題なく大ヒット。わざわざバレンタインデーに合わせて金曜発売にしたため初登場4位から2週目3週目に2週連続1位となった。80万枚に迫る売上を記録したダントツ最大のヒット作となり、番組史上ではELTに続く2番ヒット。2003年のO社年間チャートでは6位という2003年を代表するヒット曲。
元々は川嶋あいの持ち歌だった卒業ソング「旅立ちの日に…」をまるっきり改作した曲だった事が後年明かされており、2006年にソロで改めて原曲「旅立ちの日に…」としてもリリースされている。ただ先に聞いたせいがあるにしても、「あいのり」という大型タイアップのために恐らく大手レコード会社ソニーが全面的にバックアップして“受ける・売れる”作り直しを徹底したと思われ、その甲斐あって完成度は抜群だと思う。スーッと耳に残ってくるメロディーと何よりピュアで透明感のあるボーカルは唯一無二だった。“天使の歌声”なんて繰り返して売りにしていたけど、この曲でのボーカルは確かにそう感じられた(ただその後も”天使の歌声”過剰アピールしすぎるのがつばさレコードって感じ)。
結局これしか覚えてないってリスナーが大半だと思うんだけど、20年も経つと「あいのり」も知らないし曲も知らない人も増えているのかもしれない。でも20年経っても通じる名曲なんじゃないかなとは思う。
★★★★★
1stアルバム『伝えたい言葉~涙の落ちる場所~』
ベスト『BEST WiSHES』
ベスト『BEST WiSHES』(Orchestra version)
全曲集『The Complete Collection of I WiSH』
全曲集『The Complete Collection of I WiSH』(Orchestra version)
2nd ふたつ星
2003年8月27日
作詞:ai、作曲:ai&nao、編曲:家原正樹、nao
日テレ系ドラマ『14ヶ月~妻が子供に還っていく~』挿入歌。主題歌は小室哲哉が参加していたユニットGABALLが担当していたが21位に終わっていて、挿入歌である今作の方が初登場6位となり10万ヒットとなった。ただ川嶋あいがaiだと正体を告白して話題になった直後で話題作だった割にはかなり地味な推移だった。ドラマは高岡早紀が若返りの薬を飲んだら若返りすぎてどんどん子供になっていく(アポトキシンなんちゃらではない)というストーリーで、主人公である高岡早紀が小学生まで若返った姿を演じていたのは菅野莉央だったんだけど、薬の開発者であり自らも小学生に若返ってしまった灰原哀ではない主人公の旧友(つまり中身はOVER 30’s)を演じたのが新人子役の伊藤沙莉であった。当時から特有のハスキーボイスでどう見てもリアル版見た目は子供、頭脳は大人を地で行く演技を見せた伊藤沙莉がなんか凄いと話題になっていたので、確か最終回だけちょっと見た記憶がある。確かにこの落ち着き払った大人声な子役スゲーなと思った記憶があるが、その後も順調にキャリアを重ね、近年はすっかり人気女優である。
今作は作曲が2人の共作。静かに始まり徐々に盛り上がっていく良メロバラード。素直にこっちを主題歌にしていればもう少しヒットしたのではないか。ソロ専念のためかI WISHの作曲はこの最初の2曲のヒット以外はほとんどnaoとなったが、C/Wやアルバムまで聞くとどうにもこうにもnao曲は普通にいい曲止まりの曲が基本的にほとんど。今作は数段突き抜けたメロディーの良さがあると思うし、そこはやはり共作の力、シンガーソングライターとして川嶋あいの方がnaoより実力が高かったというところは率直にあったように思う。
★★★★☆
1stアルバム『伝えたい言葉~涙の落ちる場所~』
ベスト『BEST WiSHES』
全曲集『The Complete Collection of I WiSH』
3rd 約束の日
2004年5月19日
作詞:ai:山口光、作曲:nao、編曲:家原正樹,nao
2003年10月にリリースした1stアルバムは30万枚を超えるヒットを記録したが、そこからも半年以上、シングルとしては9ヵ月ぶりとブランクが空いた。前作の1週間前に川嶋あいが本格的にソロでシングルをリリースするようになり、2月に2作目、そして翌月に3作目を控えていたのでむしろちょっと忙しいくらいのスケジュールだった。このためか今作以降は作曲はほとんどnaoが担当するようになった。
ゼクシィとのコラボソングとしてストレートな結婚ソング。実は前2作から続く恋愛三部作だった事が明かされ、歌詞中に”二つの星””明日への扉”という前2作を意識した言葉も盛り込まれている。出逢い、恋を経て結婚をゴールとした三部作完結とされた。当時の川嶋あいは高校卒業したばかりで結婚はまだ先の想像でしか無かったと思われ、作詞も共作になっている。しかしあまりにストレートすぎる理想のプロポーズ、理想の結婚みたいな内容はさすがに同世代としても結婚を歌うにはまだちょっと早すぎる、無理があるんじゃないかとは当時も思った。前2作に魅了されていた当時のリスナーも10代が多かったと思われ、いきなり結婚までぶっ飛んでしまうのはちょっと展開が追いつかないだろう。ピュアさが魅力というよりかは、なんか子供の頃思ってた結婚のイメージってこんな感じだったよね…みたいな。
曲自体も一気にフツーになってしまった感じでこれはちょっと当時から厳しい感じはしたし、初登場12位と早くもトップ10落ちしてしまったのも仕方なかったように思う。
★★★☆☆
2ndアルバム『WISH』
ベスト『BEST WiSHES』
全曲集『The Complete Collection of I WiSH』
4th キミと僕
2004年8月18日
作詞:ai、作曲:nao、編曲:家原正樹,nao
アニメ『SDガンダムフォース』エンディング。ガンダムではあるが不人気作だったようで、1つ前のエンディングだったnobodyknows+「ココロオドル」が大ヒットした以外はタイアップシングルは軒並み大コケ。初登場14位で前作の半分の売上となった。Whiteberryは最初から解散前最後のシングルとして発売したが、シングル3作目だった新人バンドの晴晴゛はこのタイアップがコケるとそのまま活動不可能に追い込まれて解散になってしまうなど散々であった。I WiSHも理由違うけど翌年解散してて解散しすぎ…。
淡々と進行していき派手さのない楽曲だが、ズンズン進んでいくアレンジはそれなりにがっしりしているし、けっこう何度も聞ける良曲。nao作曲の中では今作がダントツで飽きない良作だったと思う。
★★★★☆
2ndアルバム『WISH』
ベスト『BEST WiSHES』
全曲集『The Complete Collection of I WiSH』
5th Precious days
2005年2月9日
作詞:ai、作曲:nao、編曲:家原正樹,nao
デビュー以来ずっとシングルはレーベルーゲートCD、レーベルーゲートCD2だったが前作リリース直後に一斉終了となったため、今作は通常CDで発売された。ソニーレーベルはアルバムでの導入は2004年になってからだったのでI WiSHの場合アルバムでの導入は最初から自動回避できており、1st~4thシングルのみが犠牲となっていた。この後、4シングルも通常CDで再発されている。
既にI WiSHをやる気が無くてソロに専念したいのではないかという噂は流れまくっており、公式発表寸前にすっぱ抜かれた事もあって、公式サイトでも急遽解散を発表。まあ予定より少し発表を早めた程度だったんじゃないかとは思うんだけど、ラストシングル、ラストアルバムの発売も発表された。タイアップも何もなく解散するという話題だけで本人稼働のプロモーションも特になかったのであまり話題にならず初登場17位だった。
川嶋あいが行っていた路上ライブも3月に1000回達成を間近に控えていてこれを区切りとして路上から卒業というのも重なって、この春は卒業づいていた中で最良の卒業ソング…ではあったんだけど正直かなりフツー。王道的に歌い上げるバラードで詞も曲も声も普通にいいんだけど…フツー。
★★★☆☆
2ndアルバム『WISH』
ベスト『BEST WiSHES』
全曲集『The Complete Collection of I WiSH』
6th LOVE SONGS 4 YOU
2008年2月14日
結成5周年記念盤として唐突な一時復活を宣言しての発売。媒体によって情報が錯綜しているが、「明日への扉」のみ完全な再録音で2曲はNew Mix、「永遠というこの瞬間に」は公式には新曲とされていた。三部作ではなくここに来て“恋愛4部作”なんて都合のいい言葉も…。
同時発売でこの4曲以外の全曲全バージョンを網羅した3枚組コンプリートベスト…というか全曲集『THE COMPLETE COLLECTION OF I WiSH』を発売。このアルバムの初回盤はBOXケースに空のスリーブが収納されており、この空スリーブに今作を収納する事が出来るようになっていた。
あまりに唐突なアナウンスだったため、知らないリスナーも多かったのか、今作は初登場40位に終わっている。
なおSpotifyでもAmazon Musicでも全シングル、アルバムがST配信されているが(カラオケが無かったり、Amazonの方は1stC/Wが消え去っていたりと不備はあるものの結局全曲集『THE COMPLETE COLLECTION OF I WiSH』があるので問題はない)、珍しくAppleではアルバムのみでシングル単位で配信していないので今作も巻き込まれて未配信。よって全音源の中でAppleではこの4曲だけ聞けない状態になっているようだ。
明日への扉~5 years brew Version~
1stシングルの再録音。アレンジはそのままだが原曲には表記が無かったドラムがクレジットされていて生バンド演奏で再録音されている模様。I WiSHはほとんどの曲がバンドサウンド風だがほぼ全部ドラム打ち込みだったのでこの再集結で生バンド演奏が実現したのは意外。アレンジそのままなのでパッと聞き変わらないがドラムの質感は確かに変わって生ドラムっぽくなっていてこっちの方がオケは好き。
一方でボーカルは変化をつけようとしたのか、5年の間で大人になった事により当時しか無かったものが失われたのか、随分と雰囲気が異なる。やや抜き気味に歌っているようにも聞こえてくるほど、すっかり落ち着いている。たぶん技術的にはうまくなっているんだろうけど、原曲の煌めきがごっそり無くなってしまってちょっとこれは残念…。2019年のソロでのセルフカバーはさらに大人になったボーカルを聞く事ができるが、そっちはそっちですっかり年月を重ねた「明日への扉」として聞けるんだけど、今作の5年でこの変化はなんかなぁ…。とりあえずこの生演奏オケに原曲ボーカルを乗っけるリミックスとかあればベストなんだけどな。
★★★★☆
このバージョンはアルバム未収録
ふたつ星~Dramatic Mix~
2ndシングルのリミックス。3曲の中で最も変化が分かりにくいが、オリジナルよりストリングスのラインが強調されて壮大になった感じ。Dramatic Mixなのでドラマティックにそこを盛り上げたんだろうけど…違う、そうじゃない。
★★★☆☆
このミックスはアルバム未収録
約束の日~Happy Wedding Mix~
3rdシングルのリミックス。曲自体がド直球にHappy WeddingなのにさらにHappy Wedding Mixって…と思ったらサビの後のAngel of…の英語詞の部分にリバーブかけまくってたりとウェディング感(?)をさらに強調。違う、そうじゃない。なんかそのままで十分だったのをさらに強調してバランスおかしくなっちゃったリミックス2曲という感じだった。
★★★☆☆
このミックスはアルバム未収録
永遠というこの瞬間に
作詞:ai、作曲:nao、編曲:家原正樹,nao
新たに登場した4部作の新曲。当時の基本制作陣で制作されており、当時の大半のC/W、アルバム曲そのままのI WiSHっぽいフツーな1曲。当時のソニー公式に
恋愛4部作(『明日への扉』=出会い、『ふたつ星』=恋愛、『約束の日』=結婚、新曲=新しい生命の誕生)
なんて超後付け説明していたが今作の歌詞の内容は新しい生命の誕生、つまり2人の間に子供が生まれるような内容にはなっていない。年月を重ねた2人がこれからも永遠に一緒だと改めて愛を再確認するようなラブソングになっているもののこれのどこに”新しい生命の誕生”が含まれているのか。歌詞からは”新しい生命の誕生”への暗喩すらも全く読み取れないんだけどどういうことだ…?当初の予定から変更になったのに載せたままになっているのだろうか。
★★★☆☆
アルバム未収録
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