生きるとは
No | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 備考 |
1 | 生きるとは | 熊木杏里 | 熊木杏里 | 伊藤立(agehasprings Party) | 11/13先行配信 |
2 | 小さな部屋 | 熊木杏里 | 熊木杏里 | 秋浦智裕(agehasprings Party) | |
3 | 名前のない雨降り | 熊木杏里 | 熊木杏里 | 伊藤立(agehasprings Party) | |
4 | 一度死んだぼくら | 熊木杏里 | 熊木杏里 | 伊藤立(agehasprings Party) | 11/20先行配信 |
5 | 地球から愛はなくならない | 熊木杏里 | 熊木杏里 | 秋浦智裕(agehasprings Party) | |
6 | 働き蟻 | 熊木杏里 | 熊木杏里 | 伊藤立(agehasprings Party) | |
7 | 牛乳サンキュー | 熊木杏里 | 熊木杏里 | 伊藤立(agehasprings Party) | |
8 | 雨と海月 | 熊木杏里 | 熊木杏里 | 伊藤立(agehasprings Party) | |
9 | 美しかったもの | 熊木杏里 | 熊木杏里 | 伊藤立(agehasprings Party) |
リリースデータ
2024年11月27日 | 初登場67位 | 売上0.08万枚 | Produced by 熊木杏里 | ヤマハ |
熊木杏里14thアルバム。前作から2年ぶり。前作以降新曲発表は無く、全曲新曲。8月25日に発売告知後、発売2週前に「生きるとは」、1週前に「一度死んだぼくら」が先行配信された。フルアルバム(14th)扱いだが、10曲未満なのは初となる。
初回盤は8月25日に渋谷7thFLOORで開催された弾き語りライブ「歌でたどる”生きるとは”」ライブ映像とメイキングを収録したBlu-ray付。
通常盤はCDのみ。
単なる上位互換の2種だが、初回限定盤/通常盤W購入キャンペーンが開催され、2種に封入された応募券2つを送ると全員に"「生きるとは」をテーマにした本人直筆「ひとこと」メッセージ入りサイン色紙"プレゼントとなっている。サイン色紙のための2枚買い推奨商法となった。
サイン色紙全員プレゼントで無理やり2種買わせようとするのもなかなかだが(初回盤が9400円+通常盤3300円)、そもそも初めて10曲に届かない曲数となったのに通常盤が300円値上げ(初回盤は前作は2CD+Blu-rayで1万円だったのでそれ以前と比較すればやはり実質値上げ)、完全にアレンジャー1人オケ制作となり、熊木杏里、伊藤立、秋浦智裕の3人しか参加していない超省エネ制作体制…とここに来てさらに予算が激減しているような厳しい状況が見え隠れする。ピアノが熊木杏里、「生きるとは」のみ伊藤立にもピアノがクレジットされているが生演奏はこれだけのようでProgramming&All other Instruments:伊藤立になっているし、「生きるとは」以外はProgramming&All Instrumentsで伊藤立と秋浦智裕が表記されている。このような書き方なのでギターやベースはAll Instrumentsに含まれないと思われる。1人オケ制作でも大抵はGuitar,&Other Instruments,Programmingみたいにギターは弾いてますよ的なクレジットがあるものだがギター奏者のクレジットすらないのは熊木杏里史上初なのでは…。表向きには"サウンド面では今作から新たな制作陣とタッグを組み、近年の作品にはなかったシンセを多用したサウンドメイクが施され、歌の世界観をより広げるアレンジ"と物は言いようを地で行くような書き方をしているが、これは明らかに極限まで人員を削減した超省エネなだけだろう。10曲に乗せる事もできずに通常料金での9曲でもバンドでの制作は不可能で、前作のようなアコースティックギターピアノ時々ベースと打ち込みのマンネリアコースティック編成になってしまうくらいだったら打ち込みに振り切った今作の方が新鮮ではある。ただ元がフォーク風味な作風でギター前提のような演奏がシンセや打ち込みのギター風のシンセ(?)(ノンクレジットでアレンジャーが部分的にギター弾いているのかは不明)で代用されているような箇所がちょくちょく出てくるのはやはりコレジャナイ感が気になった。最低でもアコースティックギターとピアノサウンドの使い分けくらいはしてくれ…。
ただ全体には異色のサウンド面を押し出すよりもあくまで"言葉"のアルバムであり、40代となり生きる事にある程度の答えを見出したような少し達観の領域に入った歌詞が進化を感じる部分なのかなとは思う。今作では明確に自分とは異なる視点の他者を主人公に据えて彼らの心情を代弁したような曲が多く、様々な人の生き方を写し出しているのも特徴的。その中には悩める若い世代に対しての道標のような曲もありちょっと人生の先輩感も出てきている。
結婚出産を経た30代は『無から出た錆U』的なアルバムを作りたいなどと言い出して『生きているがゆえ』という今作に近いタイトルのアルバムを出していたが率直に煮え切らなかった。『飾りのない明日』でのインタビューでは日々の生活を惨めと表現してしまい年上のインタビュアーにそれは"老い"という事だとフォローされてしまい、続く『群青の日々』では意識したのか"老い"に対して向き合って"怖い"と表現していた。そこからの前3作では世界変異を経た『なにが心にあればいい?』にバンドサウンドが強調されていた以外は大きな迷いを感じる部分は無く良くも悪くも安定していた印象。『生きているがゆえ』が早10年前(32歳当時)となり、そこからの"老い"を受け入れてフラットにもう1度生きる事について向き合ってみたのが今作なのかなと。そんなに希望に満ちているわけではないけどそんなに未来を絶望視したり惨めだと思っているわけでもない、そんな今を生きるリアルがここにあるようなそんな印象のアルバム。
これが芯のあるバンドサウンドや暖かみのあるアコースティックサウンドで奏でられているとまたかなり印象が違ったと思うんだけど、ふわふわしたシンセサウンドや味気ない打ち込みリズムになっている事でどこか曖昧というか感情が薄めな感じにもなっているんだけどこれをどう捉えるか…。
印象度★★★☆☆
2024.12.21更新