6thAl UTOPIA

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6thAl UTOPIA

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2003年11月5日
前作から1年ぶり。これまでオリジナルアルバムは大体2年おきだったので1年でのアルバム発売は初だった。“初のLAレコーディング!”と銘打たれ、ジャケットアートワークもLA郊外で撮影、「ユートピアは見えてるのに」MVも現地で撮影されていた。しかしクレジットを良く見ると確かにRecorded & MixedでLAにあるThe Village Studioの名称が記されているものの末尾であり、いつものTAKE OFF studioがトップ記載されているほか、エンジニア勢もいつもの面々で、Mixed by Al Schmittの表記はシングル3曲にしかない。The Village Studioが該当するのはMixedの部分のみで3曲のミックスだけなのではないか。LAのドキュメント映像も公開されているが、ほとんど旅と撮影の模様ばかりで、現地のスタジオでの作業はAl Schmittと会ってAl Schmittがミックス作業をしている部分のみで新たに現地で録音作業をしている様子は無い。正直これではLAレコーディング!…ではないのではないか、LAに直接出向いてAl Schmittにシングル3曲のミックスをお願いして現場にも立ち会ったというのが正確なところだろう。Al Schmittは1930年生まれなので今作当時で既に70歳を越えた大ベテランだった。2021年に91歳で亡くなっている。

初回盤はシングル3作に続いてエンハンスドCD仕様。「ユートピアは見えてるのに」VIDEO CLIPとドキュメントフィルム「DEEN in U.S.A.」収録。これはLAのThe Village StudioでAl Schmittのミックス作業立ち合いとコメント映像、ラスベガスへ移動して「ユートピアは見えてるのに」クリップ撮影&今作のジャケット撮影のメイキングなどを収録したドキュメント映像。映像内で何度か”アルバムを購入したみなさん”と購入者向けに呼び掛けているので当初から特典として収録するために撮影していた模様。さらにスペシャルパッケージ(前作では店舗特典だったスリーブが今作では初回特典として付属)仕様。シングル「ユートピアは見えてるのに」との連動特典応募シート付属。

シングルでは応募ハガキとなっていたがシートに変更され、自分でハガキを用意して貼り付ける方式に変わった。また予告されていた応募者全員プレゼントは「スペシャル収納BOX」と判明。これは2003年のシングル3作、今作の4枚を封入できるDEEN 2003 WORKSと銘打たれたスリーブケース(組み立て式)が送られてくるというのものだった。加えて抽選100名様にエンハンスドCDに収録されている「DEEN in U.S.A.」ロングVersion VIDEOプレゼントとなっていた。わずか100名という事で超絶レアなビデオとなっていたが、時は既に2003年でDVD普及が始まっておりVHSは廃れる寸前だった。このロングバージョンの映像は2008年『PERFECT SINGLES+』初回特典DVD『THE GREATEST CLIPS 2003-2007』特典映像としてDVD化された。

アルバムチャートのレベルはまだまだ高く、初登場20位と一気にトップ20入りギリギリとなった。累計は1.6万枚で「翼を風に乗せて~fly away~」以外の2作を上回った。

1.ユートピアは見えてるのに~Twilight style~(Al Schmitt MIX)

27thSg ユートピアは見えてるのに
27thSg ユートピアは見えてるのに 2003年10月1日 前作から2ヶ月でのリリース。1ヶ月後のアルバム『UTOPIA』先行シングル。初回特典の中に"アルバム連動特典"があった事からアルバム発売が示唆されており、発売日当日に公式サイトで...
Al Schmitt MIXだがTwilight styleというアルバムバージョンにもなっていて、具体的にはシングルには無かったGary Scottによるソプラノサックスが新たに追加され、より味わい深いサウンドになっている。

2.Someday

作詞:池森秀一、作曲:鈴木寛之、編曲:DEEN&大平勉
管弦が多用されているアルバムの中で今作はドラム(沼澤尚)とベース(酒井勇也)、ko-saku,入日茜のコーラスのみのサポート編成。細かいプログラミング等を除けば当時のライブではコーラスのko-sakuと入日茜は帯同していたので、ベースドラムが宮野和也とHIDEに代わるだけでライブで生演奏できた数少ない曲という事になる。よく考えたらこんだけ管弦使いまくっておいてBreak8は管弦のサポートを入れずに全部同期だったってのもなんだかな…

着実に進んでいこうとする前向きなポップス。“失くしたものを嘆くよりもこれから手にするもの夢見ワクワクしてみよう”というフレーズが優しく染み渡る。シンプルで落ち着いた演奏も心地よい。爽やかな雰囲気もあるので次の「Driving my car」よりもDriving my carしたくなるような曲だったりする。特に風が涼しくなってきた秋の風景を見ながらのドライブで聞くとなんかいい感じになるんだよな…。当時教習所に通っていた影響もあるのかもしれない。
★★★★☆

3.Driving my car

作詞:池森秀一、作曲:土田則行、編曲:DEEN&大平勉
休日に君とドライブする(超訳)というドライブナンバー。海に向かう曲だが、曲中で”夏は短かった”とか”誰もいない海”とあるように季節はであるのが示唆されている。「Someday」もそうだったがコロッコロコロッコロ裏声を使いまくるので早くも裏声使い過ぎじゃね?と当時強く感じた。この時期は本当に抜き気味の歌唱で、2000年以前の曲のキーを下げた当初は頑張れば原キーも出せたのかもしれないけど、ここまで来るとなんかもう絶対無理そうなくらいに声が変わったんだなと改めて感じた。

ドラム(沼澤尚)とベース(酒井勇也)のバンド演奏に勝田一樹のアルトサックスを加えた編成。ホーン系の音が入るとオシャレ度とAORっぽさが増す。
★★★☆☆

4.翼を風に乗せて~fly away~(Al Schmitt MIX)

25thSg 翼を風に乗せて~fly away~
25thSg 翼を風に乗せて~fly away~ 2003年4月2日 3月10日のデビュー10周年を迎えてから最初の作品。初のクリップ集VHS/DVD『THE GREATEST CLIPS 1993-1998』(ビーイングから発売)、『TH...
Al Schmittによるミックス。Al Schmitt MIX3曲の中で違いが1番分かりにくい。何故か『Ballads in BlueⅡ~The greatest hits of DEEN~』ではこのバージョンが採用されている。

5.Rock my heart

作詞:池森秀一、作曲:山根公路、編曲:DEEN&時乗浩一郎
Horn Arrangement:山根公路

ピアノのイントロが印象的なアップテンポの盛り上げ系ナンバー。ドラム(沼澤尚)とベース(酒井勇也)にトランペット(佐々木史郎)、トロンボーン(河合わかば)を加えたバンド編成。「果てない世界へ」「眠ったままの情熱」「起き上がれよBOY」の系譜のAORバージョンといった趣き。歌詞の内容も「眠ったままの情熱」「起き上がれよBOY」辺りの自分を鼓舞しようとしているところが共通している。ただワクワクするようなアレンジに対して当時の声の状況を考慮したのかサビのメロディーが低めなままでイマイチ盛り上がりきれない。歌の抜けもあまり良くないし、当時の歌い方ではこれ以上は無理だったのだろうか。

2006年のBreak10(キセキ)ツアーでは山根ソロコーナーにて山根ボーカルバージョンで今作を演奏するという珍しい映像が残されている。
★★★☆☆

6.Lost time

作詞:池森秀一、作曲:山根公路、編曲:DEEN&時乗浩一郎
Horn Arrangement:山根公路
Strings Arrangement:山根公路

ベースは宮野和也、ドラムとホーン2名は前曲と同じで、さらに伊藤由貴、大井実夏のヴァイオリン、中川名津子のヴィオラを足した編成で。哀愁の漂うミディアムナンバー。ブラスとストリングスを交えたゴージャスなアレンジだがAメロでは低音&エフェクト、サビでも憂いの色が強いまま。それどころか最後まで歌詞に救いが無く、主人公が自問自答を続けて答えを出せないままに沈んだ心情のまま曲が終わってしまう。失恋で沈んだままみたいな曲はあったものの、恋愛抜きで人生に迷ったまま終わってしまう曲は珍しく異彩を放っている。
★★★☆☆
39thシングル『心から君が好き~マリアージュ』初回特典CD『“DEEN AOR NIGHT CRUISIN’~1st Groove~”』(at Billboard Live OSAKA 2012/3/17)

7.I could change

作詞:池森秀一、作曲:鈴木寛之、編曲:DEEN&大平勉
宮野・沼澤のリズム隊に、佐々木史郎のフリューゲルホーン、宮澤貴子のフルートによるバンド編成。前曲に続いて地味目なミディアムナンバーだが今作は穏やかなサウンドになっていて君と出会った事で変われるという希望が歌われている。悩みっぱなしで闇のまま終わってしまう「Lost time」からの流れを意識してか、今作で君と出会って救われた、変われる…という繋がりも意識されているのかもしれない。
★★★☆☆

8.星の雫

作詞:池森秀一、作曲:山根公路、編曲:DEEN
Strings Arrangement:山根公路

映画『君のままで』主題歌。DEEN3人も出演、特に池森がメインキャストの1人として参加したショートムービーで主演は坂井真紀。全国ツアーBreak8の開演前にライブと別料金で上映されたが、一般の映画館での一般公開はほぼされていないファンムービーであった。ドラマや映画の脇役ポジションの出演者が多く、最序盤で主人公に別れを切り出す不倫相手は佐野史郎だったり、しれっとまだそこまで有名じゃなかった頃の佐藤二朗が坂井真紀や池森の同級生役で出演していた。映画本編で出てきた学校を舞台にしたMV、映画シーンを使用したMVも制作された今作のリード曲のような扱いでもあった。しかしこのMVは現在もYouTube公開されずに忘れ去られている。

池森さんは早くから演技は難しいと公言。「君のままで2」というネタ話になってももうやらないと公言していた。山根さんは主演の坂井真紀の先輩の本屋の店長役で坂井真紀との会話もある1シーン出演、田川さんに至っては坂井真紀の友人の夫役で駅に迎えに来るという坂井真紀と友人が再開している背後に出てくる役回りなので台詞無しで画面の片隅に映り込むだけのエキストラ同然の役回りだったため、2人は池森さんほどもうやりたくない感じはなさげであった。

宮野・沼澤のリズム隊に伊藤由貴、大井実夏のヴァイオリン、中川名津子のヴィオラとソプラノサックス、Gary Scottによるソプラノサックスを加えたバンド編成による王道バラード。AORというよりかは今作はDEEN王道のバラードの系譜に入るようなこの時期のシングル曲よりも遥かにDEENっぽいと感じられるようなバラードだと思う。かつてに比べれば声の強さは無いものの、今作の中では比較的張り上げている感じはあり、2番Bメロからサビに行かずに泣きのギターソロが展開するロックな部分も熱い。ありのままの君でいいよと優しく歌いかける歌詞は「哀しみの向こう側」にも通じているが、映画主人公にも通じている。“ありのままの君を肯定してくれる曲”であり、ファン人気は高かった…と思うんだけど…。

リード曲でアルバム曲で唯一MV制作もされている曲だったにも関わらず何故かライブでの演奏は当時だけ、『ALL TIME LIVE BEST』落選、スタッフによる『Ballads in BlueⅡ~The greatest hits of DEEN~』に選曲されないとスルーされ続ける扱いでついには2014年のレア曲披露ライブ「マニアックナイトW(‘0’)W」送りになる始末であった。アルバムリード曲、映画出演で主題歌という思い出深くなる扱いで王道バラードだったのにどうしてこうなった

しかしファン人気はちゃんとあったようで2人になってからの『Ballads in Love The greatest love songs of DEEN』ではファンからのリクエストが殺到して選曲されリメイクされ、発売当時と「マニアックナイトW(‘0’)W」以来の陽の目を浴びる事態となった。続けて2021年には『DEEN WINTER SONG PLAYLIST』にも選曲されるなど2人になってから復権した。
★★★★★
8th(ラブソングセルフカバー)ベスト『Ballads in Love The greatest love songs of DEEN』(Ballads in Love Ver.)
8th(ラブソングセルフカバー)ベスト初回盤DISC-2『Premium Instrumental Album』(featuring 勝田一樹)(Instrumental)
20thアルバム初回生産限定盤のみDISC-2『DEEN WINTER SONG PLAYLIST mixed by ☆Taku Takahashi (m-flo)

9.太陽と花びら(Al Schmitt MIX)

26thSg 太陽と花びら
26thSg 太陽と花びら 2003年8月13日 前作から4ヶ月ぶりのシングル。今作より(2006年頃まで)池森さんが1996~1998年以来の髪を下ろしたヘアースタイルへ再チェンジ。ジャケットはソロショットとなっていてPVもソロであった。...
Al Schmitt MIXにより、乾いたサウンドに変わっている。ドラムがかなり奥に引っ込んでいるのが分かりやすい。

10.Shaking the ground

作詞:池森秀一、作曲:田川伸治、編曲:DEEN
Horn Arrangement:田川伸治

ベースは打ち込みで、ドラム(沼澤尚)とトランペット(佐々木史郎)、トロンボーン(河合わかば)、アルト&テナーサックス(勝田一樹)というブラス隊を取り揃えた編成。ラテン風味のアップテンポナンバー。何故か歌詞がヒーローモノっぽくて、”眠ってるヒーロー達を呼び起こすのさ”、”天まで届く祈り”、”世界”、”大地の歌”、”星のリズム”、”宇宙も踊り出す”と地球規模を越えて宇宙まで出てくるような壮大アニソン系頻出ワードが散見される。後年のテイルズタイアップであからさまに世界観を寄せまくるようになったりはしているが、何のタイアップも無いのにこういう宇宙規模の言葉が飛び交うのは珍しかったように思う。

作曲した田川伸治がDEEN脱退後2020年に自身のソロアルバムで「SHAKIN’ THE GROUND」と改題、自身による英語詞コーラス、新たな編曲でリメイクしてギターインスト主体でセルフカバーしている。
★★★☆☆
田川伸治4thアルバム『TWENTY TO LOVE』(SHAKIN’ THE GROUND)

11.いくつものありがとう

作詞:池森秀一、作曲:tanatonote、編曲:DEEN
アコースティックギターのジャカジャカした演奏が前面に出たアコースティックナンバーだが、宮野・沼澤によるシンプルなリズム隊+ラストのナナナ大合唱で事務所関係者総出(Gang Chorus&Hand ClapsのクレジットがGOOD-DAYS名義)で登場。タイトル通り”あなた”への感謝がひたすら綴られた感謝の歌。10周年だった事を踏まえると、僕を変えた、かけがえのない、いつも勇気くれる、尊敬している”あなた”はラブソング的にも受け取れるがファンへの感謝ソングとも受け取る事ができる。全面的に低~中音域くらいで歌われているのでかなり低めであまり盛り上がる感じではないが、ナナナ合唱も含めてこの時期なりの暖かい一体感は得られる曲だったと思う。
★★★★☆

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