2018年3月10日、25周年ピタリ記念日に1年4ヵ月ぶりの武道館ライブ。08年15周年で始まり、その場で毎年やろう!と言いだしてから、2012、2017は47都道府県ツアーのため休止した以外は本当に毎年無理やり武道館ライブを継続。20周年はまさかの2daysも行ったが、年々黒幕は増えていき、前回2016年11月ではついに東西がほぼ全滅、南東・南・南西も後ろの方が5列近く空白という武道半どころか武道半以下なんじゃないかという厳しい状況となり、当然黒幕も足りなくなった。
「空席が目立ちますが…25周年は埋められるように精進します」という正直なMCも飛び出す(Blu-ray/DVDではこの発言カット)ほどだったが、迎えた25周年は初めてピタリデビュー日に行われる事が発表された(15周年は6月、以降5月の第2土曜付近、20周年からは10月第2土曜付近へ移動して2016年のみ11月末)。
今年は早いなぁ…と思っていたらほどなくして衝撃のギター田川伸治脱退。そのラスト公演となる武道館公演の売れ行きは激しさを増し、いつもはいつまでも売っているファミリー席が早々に購入不可になった。
そしていざ行ってみると…前回とか本当に人がいなかったんだけど人の多さに驚いた。グッズは長蛇だし、いつも入場している正面がグッズの長蛇に巻き込まれているため、2階席入場が裏側の入場口に回されていたり。
それ以上に近年はもうダフ屋さんも匙を投げる始末の究極セリフ「アリーナ半額だよ~アリーナ半額だよ~」(死んだ目と棒読みの連呼)が飛び交っている始末だったが、今日のダフ屋さんは余ったチケット買い取るよ!というしばし聞いていなかったセリフを連呼しており、さらにはチケット譲ってくだ隊の人までいた。…これがDEENのライブか?
いざ入場してみると…黒幕はあった。やっぱり黒幕はあった。しかし黒幕がしっかり足りている。具体的には東西のちょうどピタリ半分が黒幕(東西の入口部分のちょうど真ん中からステージ方向が黒幕)。外の人の多さは15周年級だったので東西も全部埋まったかと思ったがこの辺は現実は現実だった。とはいえ東西全滅からの半分復活だ。さらに南東・南・南西は後ろまでギッシリ。結局右隣が空席のままだったが、黒幕以外の部分は軒並み埋まっていた。15周年ほどではないけど、最初の2,3年に続く実動員数なのは確かだろう。
なおBD特典、ベスト特典は小さいステッカーと縦長ステッカー。47ツアー特典はDVDだったようだが行けなかったので詳細不明。入場特典はクリアファイル2つ。
ステージのスクリーンは左右に2つだった。1曲目だけ何故か歌詞表示が出なかったが、2曲目以降は常時歌詞を表示。しかも「ひとりじゃない」の最後のEverything!Be Alright!などを始めとする本来の歌詞表記にはないコーラスパートやラララパートなども()扱いで全部表記していた。有名人出演MVや「永遠の明日」のNYロケなどトピックのあるMVがある曲の場合はMV映像も織り交ぜて表示されていた。
セットリスト
1.翼を広げて
2.君さえいれば3.Memories
4.Teenage dream
5.JUST ONE
6.哀しみの向こう側
7.思いきり 笑って
8.言葉で伝えたくて
9.素顔で笑っていたい
10.MY LOVE11.Power of Love
12.太陽と花びら
13.レールのない空へ
14.永遠の明日
15.千回恋心
16.歌になろう47都道府県ツアーHISTORY(2007、2012、2016のダイジェスト映像)
17.Smile Blue
18.心から君が好き~マリアージュ~(サポート無し、3人+同期)
19.君へのパレード♪(サポート無し、3人+同期)20.遠い空で
21.Negai
22.Celebrate
23.もう泣かないで
24.永遠をあずけてくれ
25.夢の蕾
26.君がいない夏
27.夢であるように28.LOVE FOREVER
29.ダイヤモンド
30.手ごたえのない愛
31.SUNSHINE ON SUMMER TIME
32.Brand New Wing
33.STRONG SOUL
34.瞳そらさないで35.Journey
アンコール
36.キズナ(バンドバージョン)
37.未来のために
38.ひとりじゃない
39.君が僕を忘れないように 僕が君をおぼえている
40.このまま君だけを奪い去りたい
ラストMC+撮影可能タイム
SINGLES+5
選曲はシングル曲+「思いきり 笑って」「言葉で伝えたくて」「歌になろう」「Journey」「キズナ」という構成。さすがに全シングルとは行かなかったがメドレーで詰め込んでたぶん過去最高曲数。「思いきり 笑って」「言葉で伝えたくて」「歌になろう」の3曲という時点ではなんだか5年前の『DEENAGE MEMORY』を引っ提げてのライブみたいになってたけど。
で、いつもはフルだったかメドレーどのくらいだったかなんとか記憶しているんだけど今回無理。曲数多すぎるし、サビだけとか1コーラスとか2コーラスとか最後のサビだけカットとか唐突にフルサイズとかいつもの定型パターンを大幅に外したバラバラ具合だったのでとてもじゃないが把握しきれなかった。
原曲に忠実、そして奇跡の18年ぶり原曲キー
アレンジが原曲に忠実…なのはいいとして1曲目の「翼を広げて」から何か音が高い。あれ?これライブじゃなくてCDの高さじゃね?と思っていたら出てくる00年以前の曲がどれもこれもあれ?高くね?これCDのやつじゃね?という…。厳密にどうだったかは分からないが、恐らく18年ぶりフル原曲キー歌唱だったと思う。
90年代の曲は一部を除いて軒並み-2、一時期は-3まで下げていたと思うんだけど(ライブベストにも入っている04年の「瞳そらさないで」とか異様なまでに低い)、今回のは明らかにオリジナルっぽかった。もしかしたら-1くらいにとどめた曲があったかもわからないが少なくともキーを下げた時のあの低い感じとか違和感がどの曲にも感じられなかった。
20周年の頃から高音が伸びるのに低音がカスカスで出し切れないことが目立つようになり、徐々に改善しつつも先日の「うたコン」のように調子が悪いと全面的に声が出し切れない事態に陥るようになっていたのがこの5年間だったと思う。
一方でキー下げせずに歌っていた「夢であるように」で顕著なように08年からサビで裏声を駆使するようになっていたのをここ数年は全面張り上げに戻すようにもなっていた。
よって今の状態だとキー下げすると特に平メロが低くなりすぎて低音が出なくてしんどいのではないか?とは思っていたんだけど、まさかここで全部元に戻してしまうとは思わなかった。実際Aメロ辺りで声が出しにくそうなところが多かったんだけどサビになると安定する事が多くて、たぶん下げた当時は本当に出せなくなっていたと思われる高音もさすがに当時ほどではないにしてもバッチリ出し切っていた。
「MY LOVE」の最後のMY LOVE部分はさすがに裏声だったものの、基本全部張り上げていて裏声にしてしまったところはほぼ無い。しかも「瞳そらさないで」なんかフル披露なので最後半音上がっても乗り切ってしまった。声変わり前でも半音上げのラストサビはキツそうだったのに…。
いつも不安定な「このまま君だけを奪い去りたい」も高らかに奪い去った。ズレも溜めも無い。いつもやれ賢者タイムだとか今日の声の調子はどうなのかの見守りタイムだとか正直飽きたとか言われる「このまま君だけを奪い去りたい」だが、今回ばかりは本当に何も気にせずにただただ感動した。
史上初!サポートメンバーがベースドラムだけで同期まみれ
今回のサポートメンバーはいつものベース宮野和也、ドラムHIDEの2人だけ。通常のツアーはいつもこれだけだが、武道館ではストリングス隊やホーン隊、ダンサー、コーラス隊が登場するのが恒例で、ベースドラム以外にサポートメンバーが登場しないのは初だった。
このため演奏はかなり同期まみれ。ストリングスやブラス、足りないキーボード、ギターはもちろんだがここまでは通常のツアーであればいつも通りだ。今回はなんとCDのコーラスまで同期していた。「翼を広げて」の終盤で何だかこの大人数コーラス、CDのやつが混ざってないか!?と思ってたら最後のところで思いっきり坂井泉水のラハハハァ~♪が聞こえるし、「Memories」ではCD通りの英語ラップや大黒摩季のコーラスが思いっきり鳴ってるし。原曲キーに戻したからこそそのまま原曲キーのコーラスを使用できたという事だろうか。いつもの-2とかでコーラスも機械的に2下げするとさすがに変な感じになるだろうし。
ていうか「Memories」は声変わり前の90年代の時点で独自アレンジしたり、池森さんが譜面残ってないので耳コピして英語詞を歌っていたはずだが、ここまで原曲通りのオケ+生演奏を足すみたいな感じで披露した方が逆に初めてなのでは?最初期のライブ音源が残ってないのでBreak1でどうしていたのかは分からないが、Break2、横浜アリーナ、Break5で既にだいぶバンド用にアレンジ変えてたからなぁ…。
いつもの構成は何一つ無し、MCも無し
DEENライブと言えば
2,3曲歌う→挨拶する→バラード系歌う(武道館ではバラードメドレー)→アコースティックコーナー&トーク→田川ソロ→1,2曲歌ってそのままロックとかダンス系メドレー→最後の曲です→アンコールで上海ロックスター→盛り上げ系→武道館では「歌になろう」→大ラス
というのがお決まりで2回以上ライブに来ればもう大体次にどんな展開が来るのか読める。しかもどんどんガチガチにお決まり事が増えていっていてドマンネリ極まるようになっていた。率直にここ5年で著しく武道館動員が落ちたのは先が見えすぎて新鮮味の無いライブ構成と年齢を重ねているファン層に逆行するアンチエイジング路線をやりすぎたという2点に限ると思っている。
これはさすがにこの5年間でメンバー側もお決まりを破ろうという意識が芽生えていたのか、カウントダウンライブをマニアックナイトに変えたり、武道館でバラードナイトをやったりとしていたが、それでも大枠の構成まで変えていく事にはなかなかなってこなかった。
それが今回、実は3連続で武道館ラストを飾っていた「翼を広げて」を初の1曲目に配置。この時点で大胆不敵だった。絶対来ないと思っていたイントロが1番最初に鳴り響く驚きはここ10年以上のDEENライブで感じた事の無いものだった。
まあこの時点で同時にラストが「このまま~」なのだけは確定したなとは思ったんだけどそこから先がまた読めない。何せMCをしない上に、明確にメドレーを宣言せずにメドレーやフル披露を織り交ぜながらひたすら曲をたくさん演奏していく。次に何が来るのかは全く読めない。ラスト付近定番の1つであった「歌になろう」を中盤で放出した時も驚いた。ここからは本当にもう次にどんな展開があるのか、あとどれくらい演奏されるのかも分からなくなった。こんな感覚はDEENでは初めてに近い。
少ないMCで伝えた事
最初に池森さんがあいさつしたのを除くと「Journey」披露前までにMCは無かったと思う。あとは「このまま~」の前にこの曲にまつわるいつもの話をしたのが唯一の長いMCだったが、ソロデビュー予定という話が「池森秀一プロジェクト」という名称に変わっていたのと、終始池森さんが謎に揺れ動きながらしゃべっていて挙動不審気味だった事が今までと違っていたところか。
全曲終了後には15周年、20周年では宮野・HIDE両名にも一言喋る場があったが(普段は喋らない)今回はメンバー紹介を経てそのまま退場。演奏メンバー全員(5人)での一礼をしなかったのも何気に初か?
田川さんは改めての感謝と今後の活動について。決まっている4月のソロライブは毎年やっているやつで、それとは違うプロジェクトをもう少ししたら発表できると告知。特に脱退に関しての突っ込んだ話は一切しなかったが、あくまで25周年ライブであり、自分が中心にはしたくないと言っていたのと、それに絡めて整理がつかないまま今日を迎えたファンを気遣いながらも自分自身もまだ整理がつかずに当日を迎えてしまったと語ったのは唯一公式発表よりもう1つ踏み込んだコメントだったかなと。あともう1つ気になったのが「残りの音楽人生、そんなに長くないとは思います」などとコメントしていた事。一応3人の中では1番若くて47歳(4月で48歳)。還暦を1つの区切りとしてもまだ10年以上あるし、還暦突入のミュージシャンは増加の一途で、最上位ベテラン勢は70代に突入していっている時代に「そんなに長くは無い」っていう達観っぷりは一体。まるで余命宣告でもされているみたいな言い方で何だか気になった。
池森さん山根さんは一応今後も活動する意向は示していたものの、いつもはある次の作品やライブの告知は一切なし。実際にはクリアファイルと一緒に封入された宣伝チラシには6月にFCツアーが行われる事が明記されていた。またこのライブの映像化も告知されており、ソニーの公式サイトでは発売が6月20日、本編BD+ライブCD2枚の仕様(DVDは本編2枚だけ)であることも明かされている。田川さんが告知したのに対してDEENが決まっている次の話を告知しないって…という若干複雑なところはあったが、まあここに来て非常にクールな大人の対応のミュージシャン3人になっていたのかなと。ここまでを思うと寂しさを感じないわけではないけど、近年けっこう和気あいあいとグダグダが紙一重だったところもあるし、それこそ3人のトークなら47ツアーでかなりたっぷりやったんだろうからこれでいいんじゃないかと。
最高にして集大成
正直先日のベスト盤はさすがに聞き飽きた曲ばかりでテンション低かったし、振付連発路線からの近年のアンチエイジング路線はどうにも厳しい感じだし、特にこの5年間で過去を越えたと思うアルバムも正直無かったのであまり期待していなかった。
また20周年前まではこのサイトの影響でDEEN聞き始めましたみたいな声を読者さんからもらう事も多かったんだけど、そういった聞き始めた人たちもこの5年でみんな聞かなくなっちゃったのが目に見えて分かっていた。年末投票でけっこう上位に食い込む事もあったのにここのところはめっきり票そのものが入らなくなっているのも聞かれなくなっちゃってるのでそりゃそうだろうなと正直思っていた。
それがどうだろうか。マンネリの全てをぶち壊したMC無し、定番構成全破りの怒涛のセットリスト、そして18年ぶり全原曲キー歌唱。もう感動しかない。15周年の初武道館は感動したけど今回越えた。ミュージシャンとしてのストイックなボーカル池森秀一、真面目なギタリスト田川伸治の本気と限界突破をこれでもかと見せつけられたライブだった。リーダーは今回立ち位置的にも影が薄かったのは仕方ない。何せ唯一の挨拶の機会に渾身の「いやぁこの年でこれだけの曲数覚えるの大変でしたわ」などといつものジョークを言っただけでいつになくストイック池森に「そういうのは楽屋でいいじゃないですか」とたしなめられてしまう始末。そういう意味で今までの3人の和気あいあいした感じは微塵も無かったが、個人的には逆に今回はそれでよかった。久々にDEENかっこいいなと思えたし、トーク無しで本業の音楽だけでここまで見せつけてくれたというのは本当に感動した。ありがとう。
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