2016年11月2日に発売された『宇宙図書館』を引っ提げ、11月18日からスタートし、今年9月まで全国をくまなく回っていくここにきて自身最長のロングツアー(2月にはツアーとは別枠の恒例の苗場ライブも挟んでいる)の2017年4月25日東京国際フォーラムA公演へ行ってきた。
ツアーは神奈川からスタートし、埼玉→山梨と流れていったので東京公演は今回が最初となる。2daysで26日も同じ場所で公演があり、5月にも2days、7月にも2days、9月の最終公演2daysとこの東京国際フォーラムAではこれ以降も定期的に戻ってくるスケジュールになっている。
昨年まで続いたユーミンのアルバム1stから順番に全部聞こうプロジェクトを完走したタイミングでちょうど『宇宙図書館』が発売され、購入したらライブ予約チラシが入っていたのでこれを使用してチケットを狙った。残念がら埼玉公演は日数が早かったのでアルバム発売時点で既に発売終了になっていて対象外だったので2つまで選べるうち東京公演25、26日を狙ったのだが…。
さすがに公演数が多すぎるので倍率が低くなったのかあっさり2つとも当選。1つを流して(受付せずに放置)、25日公演の方を選択した。
国際フォーラムは、確かホールCを熊木杏里の2011年12月に行って以来。ホールAは09年に槇原敬之のクリスマスコンサートで行って以来だったと思う。ホールAはホールとしては最大級のデカさで、キャパはおよそ5000。その辺のホールが小箱に思えてくるくらい広い。
一応1階席、2階席という区別なんだけど、外の階数が異なっていて2階席の1番上の方だとたどり着くまでには延々とエスカレーターを上って最大で7階の高さまで達しないといけない。ホールなのに迷子になるような複雑な構造になっている。
武道半といわれてしまうような人たち、武道館にこだわらずにここにすればいいじゃないかとも思うんだけど、武道館やアリーナであれば客席数をある程度調整できるのでごまかしが効く。ぶっちゃけ5000人割っても武道館を成立させることはできる(さすがに見た目スッカスカになると思うが)。
対してここはホールなので席を潰しようが無く、逃げ場がない。ここでやるには本当に5000人集客できないと問答無用に上の方から順番に空席祭りだし、ダメそうならお隣のホールB,C…とランクを落とすことができるのでアーティスト側も目標にしやすいんじゃないかと思う。しかし、どうも昔ながらのライブハウス→渋谷公会堂→武道館という栄光ロード信仰が根強いのか、フォーラムC→B→Aという目標を掲げるアーティストっていないような。
まあそんなこんなでやってきたフォーラムA。今回入場方法が変わっており、転売対策なのか、チケットが引換券になっており、謎の記号しか書かれていない。入場時にピッとやると座席券が発行され、ここで初めて座席が分かるという寸法。
このシステムにより、金さえ積めば全公演最前列確保みたいな真似ができないばかりか、席の位置で価格差が生じる転売競争を封じる役目があると思われ、変になんか執拗に身分確認されたりするよりもスッキリしていてよい。もっと時間がかかると思ったら非常に流れもスムーズだった。
一応アルバムの先行予約だったが座席はほぼ最上部に近い位置だった。このため延々と最上階まで登っていくハメになり、駅に到着したのが開場15分だったのに、座席につくまで30分弱かかっていた。
以下公演中なのでネタバレ注意
演奏陣は武部聡志(キーボード)、遠山哲朗(ギター)、須長和広(ベース)、加藤久幸(ドラム)、伊勢賢治(サックス)
ダンサーにTAKAYUKI、隼海惺、コーラスに松岡奈穂美、須藤美恵子、今井マサキ
武部聡志以外は名前を聞いてもよく分からなかったが、サックスとして紹介された伊勢賢治の横にはキーボードやパーカッションのようなものも置いてあり、正直サックス吹いているより他楽器を兼任しているときの方が多かった。夫でアレンジャーの正隆氏は演奏には参加していない。
セットはアルバムのアートワークの宇宙図書館をそのまま再現したもの。曲によってステージ最前のギリギリまで薄い幕を下ろし、ユーミン1人だけが幕の前に出て、幕に映像というか視覚効果を投影するなどの演出も行われた。ダンサー2人は一部ワイヤーアクションを駆使したり、ユーミン本人が踊ったり、何度も衣装が変わったり、宇宙図書館のセットが真っ二つにパッカーン割れて変形したりと、多彩で”観る”部分でも存分に楽しめる演出。
さすがに60代になり、ベスト盤初回DVD付属のライブ映像で見ることができる若い頃ほど機敏に動き回る事は無かったけどそれでも年齢を感じさせない派手なふるまいは圧巻だった。
セットリスト
1.宇宙図書館
MC
2.あなたに会う旅
3.影になって
4.AVALON
5.BABYLON
6.夢の中で ~We are not alone, forever
7.ひこうき雲
8.Midnight Scarecrow
MC
9.リフレインが叫んでる
10.月までひとっ飛び
11.ルージュの伝言
12.何もきかないで
MC
13.Smile for me
14.残火
15.満月のフォーチュン
16.破れた恋の繕し方教えます
17.真夏の夜の夢
18.ダンスのように抱き寄せたい
メンバー紹介(ダンサーがいなかったのでダンサー除く)
19.気づかず過ぎた初恋
20.GREY
アンコール
21.星になったふたり
22.メドレー
(DANG DANG~14番目の月~守ってあげたい~埠頭を渡る風~真珠のピアス~オールマイティー~春よ、来い~カンナ8号線~DESTINY)
メンバー全員紹介
Wアンコール(サポートは武部聡志のみ)
23.やさしさに包まれたなら
『宇宙図書館』中心で本編最初と最後はアルバムと同じだったが、全曲は披露せず過去の曲も織り交ぜた内容。それも超有名曲もしっかり織り交ぜていて新旧のファン、というかぶっちゃけ近年あまり聞いてないような全盛期(年配)世代でも十分に楽しめそうな選曲。
「ひこうき雲」は近年取り上げられる機会も多く、まああるんじゃないかとは思ってたけど、「リフレインが叫んでる」や「ルージュの伝言」まで聞けるとは思ってなかったので嬉しかった。
最新作からはやはり「残火」は相当強い1曲だと思う。他のアルバム曲は正直聞き覚えがあるような…レベルになっていたけど(一応事前に聞き直してはいたが)「残火」、続けて「気づかず過ぎた初恋」「Smile for me」は格が違う。
神秘的な「宇宙図書館」もあの初回盤DVDのアートすぎる謎映像よりも、このライブでのシンプルな見せ方の方がグッとくるものがあった。
全体にバラード多めだったのでほぼオール着席。「真夏の夜の夢」前後に民族的で情熱的なノリの曲が続いたので1階の前の方は少し盛り上がっている様子だったが総立ちになるほどではないままに本編は終了。
アンコールは1発前にユーミン流EDMともいえる「星になったふたり」であっためた後に怒涛の有名曲メドレー。やはり客層的にもこれはめっちゃ熱かったようでオール着席だった2階席までどんどん立ち上がっていき、ついには前の席に座っていたユーミンより年上っぽい感じの人たちまで立ち上がっていく総立ち状態にまでヒートアップ。有名曲の力はやはり凄い。
さらなるWアンコールでは武部聡志のピアノ演奏のみで「やさしさに包まれたなら」。このWアンコール部分だけ会場によって選曲が異なっているらしく(一部無かった公演もあるとかないとか)、時期によって概ね固まっている(クリスマス付近は「恋人がサンタクロース」、3~4月半ば頃は「卒業写真」…など)、先週の千葉公演から「やさしさに包まれたなら」に変わっていたようだ。この日で本当によかった。この会場に来たものなら歌えない者などいないだろうというくらいに誰もが知る有名曲での大合唱大会となり、最高潮の盛り上がりのまま幕を閉じた。
というわけで総じて良かった。ウェイウェイするのではない、静かに聞き入る、しかし決して歌って演奏しているだけではない視覚的な演出もあって聞かせる曲ばかりでも飽きさせない。生ならではの迫力と聞きやすさ、こういうコンサートの方がやはり好きだし、もう1度見たくなる。ユーミンのライブは1回見れればいいや~程度だったけど、是非いつかまたもう1度見たい。
声に関しては近年のアルバムの時点でだいぶ声が低くなっていたし、昔の曲でも特に高音部分は出し切れてないところや、「真夏の夜の夢」にしてもCDとは違うところでブツブツ切って歌ってたりもしていて、あの頃のままというわけにはさすがにいかない。
またどうしても世間一般的にもう70歳になろうとしているのにキーを変えずに歌い続ける小田和正というあまりにオンリーワンな存在がトップクラスで輝き続けているのでそっちを基準にしてしまいがちで、ユーミンは随分前から声が出なくなったとか言われがちだけど、でもやはり多少低くなろうと出なくなろうと十分に貫禄はあるし、年を取ったなりの見せ方とまだまだやれる部分でのバランスの取り方含めてやはり凄いと思う。
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