16thAl バタフライ
2016年6月1日
10ヶ月ぶりのオリジナルアルバム。2010年の『クロール』に続くSummer Special Albumとして発売され、今回もカバーやセルフカバーが含まれている。前年の「ずっと伝えたかった I love you」は路線が違い過ぎて未収録となり、今回は先行シングルなしとなった。
今作ではいつものサポートメンバーではなく、結成15周年を迎えていたSKAFF-LINKSが全面サポート参加している。基本的に新曲はいつも通り作曲者である山根・田川による単独編曲、カバーとセルフカバーのアレンジはSKAFF-LINKSメンバーに託すという制作スタイル。
Drums:曽根裕、Bass:坂本登、Trumpet:浅田晶子、Trombone:竹村公孝,松田れいあ、Alto Saxphone&Tenor Saxphone:高橋早紀、Soprano Saxphone,Baritone Saxphone,Alto Saxphone,Agitate:浅田慶輔と総勢7名が参加しているが、SKAFF-LINKSリーダーだったカノウは不参加となっているなど全メンバーではなかった。「DEEN Summer Resort Live~5th wave~」にも帯同して池森がSKAFF-LINKSをプロデュースするなんて宣言も飛び出したそうで、15周年でSKAFF-LINKSも盛り上がっているかに思われたが…。今作に不参加だったリーダーのカノウは6~7月にかけて行われた「DEEN Summer Resort Live~5th wave~」が終わると同時に(ツアー終了翌日とかじゃなかったかな)自身のブログで苦労してまで続ける価値が無くなった等の辛辣な言葉と共にSKAFF-LINKS脱退を宣言(現在は見つからないので削除されている模様)。その感じだと恐らくDEENとの仕事を受ける前から脱退が決まっていたか少なくとも本人は決めていたっぽいが、正式なリーダー脱退発表を受けてSKAFF-LINKSは無期限休止を発表。ラストライブを行い事実上の解散となってしまった。今作への参加はグループの末期中の末期、前述のように既にリーダーが不参加になっているとはいえSKAFF-LINKSとしての最後の記録にもなった。
このようなコラボ相手のゴタゴタが影響していたのかは不明だが「DEEN Summer Resort Live~5th wave~」は映像・音源一切が商品化されずにお蔵入りした。
その後DEENが2人になってからの作品にも時々サックスでクレジットされていたKeisukeという人物はメンバーからYouTube動画やSNSでも“浅田”と呼ばれており、”フレンズさん”の間でも浅田マネージャーとしていつの間にか浸透していた。
近年の作品ではArtist Chief Manager:浅田慶輔(GOOD-DAY)という表記でチーフに出世しているが、今作ではSKAFF-LINKSのメンバー浅田慶輔と初登場のArtist Manager:浅田慶輔が別々に表記されている。この事務所GOOD-DAYの新人マネージャー浅田慶輔とSKAFF-LINKSのメンバー浅田慶輔は偶然の同姓同名よりも同一人物と見るのが自然だが、事務所が採用した新人マネージャーがスカバンドをやっていたので今作で全面起用することになったのか、順序が逆なのか(SKAFF-LINKSとして知り合ってから事務所マネージャーとしての就職を斡旋)は不明である。ただ今作のインタビューで池森さんが“最近スタッフを通じてスカバンドと知り合った”と経緯を説明する場面があるのでこのスタッフが浅田氏を指しているならそういうことだろう。
池森プロデュースの話もそうだが、スタッフ周りもいちいち加入の報告や説明はされず、気がついたら馴染みの存在みたいにMCやSNSで出てくるので良く分からない(ただマネージャーの名前が連呼されるほど存在が表に出てきたのは浅田氏が初だと思う)。
初回盤Aは『DEEN LIVE JOY-Break19 ~全開恋心!!~ 2015.8.29 Zepp Tokyo』フル収録Blu-ray付。『クロール』初回盤を踏襲した紙ジャケット仕様。
初回盤Bは『DEEN AOR NIGHT CRUISIN’~3rd Groove~2016.3.4 Billboard Live TOKYO』7曲抜粋収録ライブCD付。通常の2枚組プラケース仕様。
ついにアルバムでも完全な複数商法となった。
1.ひとりじゃない~SKA Style~
作詞:池森秀一、作曲:織田哲郎、編曲:曽根裕
9thシングルのセルフカバー。SKAFF-LINKSのドラマー曽根裕によるスカアレンジで生まれ変わったが、陽気なスカのリズムやホーン隊の彩りが驚くほどハマっていて違和感のないセルフカバー。こういう方向性もありだったのかこの曲。
★★★★☆
21stアルバム初回生産限定盤のみDISC-2『DEEN DANCE MUSIC PLAYLIST mixed by Yosuke Sugiyama』
2.サマー・ラバーズ 2016
作詞:池森秀一、作編曲:山根公路
山根さんがスカをイメージで作ったのは初めてと言っていたらしいが、らしさと陽気な雰囲気がうまく融合したような1曲。夏らしく開放的な雰囲気だが”夏のために鍛えた体見せちゃおう”っていうマッチョイズムが相変わらずアンチエイジングな…。1番は男性、2番は女性と男女お互いの目線が切り替わる若いカップルの夏休みといった装い。間奏ではベース!→ソロ→サックス!→ソロ→ホーンズ→ソロ→Fu-とライブみたいな掛け合いもあり、SKAFF-LINKSとのコラボがバッチリ決まっている。
しかしリメイクでもないのに何故最初から2016なんて年号を入れたのだろうか。「サマー・ラバーズ」だとなんかありきたりな感じがするから?
★★★☆☆
3.エピソードをつくりだせ!
作詞:池森秀一、作編曲:田川伸治
レゲエっぽいまったりした雰囲気の平メロからサビでは比較的ロック調になる変化球っぽい楽曲。ひねりを利かせる田川曲っぽい1曲でサビメロの強さやアレンジ面で聞き応えがある。歌詞は相変わらず陽気でノー天気な感じ。歌い出しから”お気楽でいたいノー天気でいたい”だし、“ここはジャマイカ”とか急に言いだすし…。夏だからいっか。
★★★★☆
4.真夏の夜の夢
作詞作曲:松任谷由実、編曲:浅田晶子
松任谷由実(1993)最大のヒットシングルのカバー。密かにシングルミックスは8センチシングルでしか聞けない音源となっており、現在シングル枠で配信されているのはアルバムバージョン(のリマスター)である。真のシングルバージョンはBメロのエコーの部分が1回少ない。
2010年の「Hello,my friend」に続くユーミンカバー。SKAFF-LINKSのトランペット担当の浅田晶子が今作で唯一アレンジを担当。かなり濃厚なスカアレンジになっているが、これまたピタリとハマっていて違和感がない。DEENの「真夏の夜の夢」として名カバーになったと思う。
★★★★☆
5.アマルフィ
作詞:池森秀一、作編曲:田川伸治
スカというよりAOR色が強く今作の中でもクールダウン、落ち着いた大人っぽい雰囲気の楽曲。陽気な曲ばかりでも飽きてくるのでこういう曲があるとグッと締まる。リゾートライブよりAOR NIGHTの方が似合いそう。
★★★★☆
6.Smile Blue~SKA Style~
作詞:池森秀一、作曲:山根公路、編曲:曽根裕
4thクラシックスシングルのセルフカバー。アコースティックで爽やかポップな楽曲が、陽気なスカリズムに変わったが…。まあこうなるよねぇ…というアレンジではあるんだけど今作でのセルフカバー・カバーの中ではこれだけちょっと印象が薄い。これはこれでいいんだけど、やはり元の爽やかさがこの曲には似合うというか…。
★★★☆☆
7.Climb High
作編曲:田川伸治
田川ソロ。序盤はギターよりもブラスとベースドラムのタイトな演奏が目立ち、中盤以降からはギターが歌うようなメロディーを奏で始める。ギターの出番を少し抑えたりとこれまでにないアプローチをしているのが新鮮。いつものサポートとは違うSKAFF-LINKSのリズム隊の演奏が実際にいいのかどうか良し悪しは分からないがなんかこの曲でのリズム隊はいいな。
★★★★☆
8.Walking on Sunshine
作詞作曲編曲:山根公路
山根ソロ。スカの要素はほとんどなく、どちらかというと懐かしいフォーク風味の爽やかなアコースティックナンバー。今作で唯一ドラムを使用せず自らコンガも演奏。今作の中では箸休め的な優しい雰囲気。
★★★☆☆
9.風になりたい
作詞作曲:宮沢和史、編曲:曽根裕
THE BOOM(1994、シングルカットは1995)のカバー。THE BOOMとしては2003年(Samba, Novo)、解散した2014年に2度セルフカバーしておりスタジオ音源が3つ存在する。
オリジナルよりテンポを落としてゆったりしつつもレゲエ調に変貌。ブラスはがっつり入っているのでけっこう濃厚だがテンポのゆったりさがどうにももっさりした感じでもどかしくなってしまう。今作のインタビューで池森さんが「スカパラも直球のスカアレンジでカバーしてるし」とコメントしているのは2009年のTHE BOOMのトリビュート盤『BOOMANIA~THE BOOM SPECIAL BEST COVERS~』に収録された東京スカパラダイスオーケストラによるカバーバージョンの事だが、これはインストナンバーであった。
実はもっと直近に御本人(THE BOOMは2014年に解散したので宮沢和史ソロ名義で)が『MUSICK』で「風になりたい~with Ska Lovers~」というスカアレンジでのセルフカバーを発表していた。
スカでカバーしたらこうなるだろうなというスカのイメージそのままを御本人が2015年12月に発表したばかりだった…となればカバーをスカでやるのは難しく、その結果がまったりアレンジになったところはありそうだ。この御本人バージョンのような陽気なスカアレンジでのDEEN版「風になりたい」は聞きたかった。
★★★☆☆
10.coconuts feat.butterfly
作詞:池森秀一、作曲:山根公路、編曲:曽根裕
37thシングルのセルフカバー。今回は「kokomo」引用部分を削除、”自由形(クロール)でゆこう”を”バタフライでゆこう”に歌詞変更したリメイク。”feat.butterfly”は人でも曲でも無く単に元のfeat.kokomoに合わせてバタフライバージョンという意味合いでつけたものと思われる。
リゾートライブが先に決まってそこに向けての次の作品を考える中で今作のセルフカバーをしようという話になり、スタッフを通じて知り合ったスカバンド(SKAFF-LINKS)に依頼してみたところ、池森さんのイメージに見事にハマるアレンジを曽根裕が仕上げてきてくれたため今作の方向性及び他のカバーとセルフカバーはSKAFF-LINKSに任せるという事になった模様。なおこの時は今後また夏歌のアルバムを作る際にはきっとまた別のアレンジでセルフカバーするだろうなどと断言しており、その部分の歌詞はタイトルに合わせて毎回変えるとも発言(平泳ぎとか)。確かにこの時期までは季節に関係なく、「coconuts.feat.kokomo」をライブでやりまくっていて個人的にはせめて季節は考えてくれ…と若干ウンザリしていたんだけど、そこまでノリノリだったのか…と思った。ただこれで満足したのかなんなのか、次の夏のアルバムが1年後と早くに来たこともあり、『PARADE』ではさすがに連続で取り上げるわけにもいかず、その後はもう田川脱退、2人になってからはこの路線には行っていないのでこのバージョンで打ち止めになっている。
「kokomo」が必要な曲だ…と思っていたんだけど無くても普通に聞けるどころか、言われみればそういえばアールバ♪のパート無いね…というくらい何の問題もなかった。元々ノリノリだったのでスカの陽気な雰囲気でも余裕で適応できているし、気になるのは“バタフライでゆこう”くらいか。いやバタフライでゆくのはかなりテンション高いし、消耗も激しくね?
「coconuts.feat.kokomo」がライブから徐々に外れつつあった時期にこのバージョンが爆誕したので再度連投されると思いきや、SKAFF-LINKSありきというかブラスありきのアレンジであったためか定着せずにすぐに忘れられた…。
…はずだったが、2022年よりライブのサポートにサックス(主にヒロムーチョ氏)を常駐させるようになり、これに伴い復権。Break24,30周年武道館では共にこのバージョンで演奏されるようになり逆にオリジナルが演奏されなくなり奇跡の大逆転を果たした。実際にはサックス1人で再現できるわけではないので同期も混ぜているのかもしれない。
“バタフライでゆこう”に変更された事によりこの部分のクロールのような手振りのみバラフライ仕様に変わったが、クロールが比較的クロールの動きをしていたのに対して池森さんのバタフライらしき腕をグイングインしている動きは絶妙なまでにバタフライには見えない…池森バタフライよく分かってない説というところも含めて見どころ。
★★★☆☆
21stアルバム初回生産限定盤のみDISC-2『DEEN DANCE MUSIC PLAYLIST mixed by Yosuke Sugiyama』
11.ひまわり
作詞:池森秀一、作編曲:山根公路
『クロール』ではラストはカバーだったが、今作では普段のオリジナルアルバム恒例の締めのアコースティック系のバラード。ベースドラム以外のSKAFF-LINKSのホーン隊は入る余地がなくこの曲には不参加。さすがにそろそろどこかで聞いた事あるようないつものバラードという感じもしてきてしまうがじっくり歌い上げる良メロバラードである事には違いはない。通常ストリングスが入るところだが今作はストリングスを入れていないのでストリングスっぽいラインはシンセ?
★★★☆☆
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