1st 最後の果実
1999年5月19日
1998年夏クールのドラマ『神様、もう少しだけ』での大ブレイクに続いて1999年は年明けから冬クールのドラマ『鬼の棲家』で初主演、夏クールの『to Heart〜恋して死にたい〜』ヒロイン(堂本剛主演で相手役)を担当したがその合間のドラマ出演が無かった春クールのタイミングでの歌手デビュー作。
ジャケット違いの初回盤・通常盤の2種発売で当時は珍しかった収録曲違いになっていた。初回盤は3曲目にbonus trackとしてもう1曲収録、8Pブックレット仕様。通常盤は3曲目が表題曲カラオケ(inst)に差し替えとなっていた。当時のO社では複数商法に対応したルールが無かったので2種別集計となり、初回盤は初登場4位、通常盤は初登場59位となった。2週目には20位まで沈み込むなど話題性に反して伸び悩み、4週目に初回盤が38位となった際に通常盤は48位で最高位を記録している。共に6週ランクインで初回盤12.7万、通常盤2.5万、合わせてかろうじての15万越え、最大のヒット作となった。
2023年7月のDL/ST一斉解禁の際には初回盤・通常盤しっかり別々に配信されており、現在お手軽に両方聞く事ができる。
最後の果実
作詞:黒須チヒロ、作編曲:小森田実
『神様、もう少しだけ』『鬼の棲家』と連続してあまり明るくない役どころだったのもあって当時の深田恭子は物静かな美少女イメージ、そこからどこか不思議ちゃんでミステリアスな雰囲気もあったので、歌手活動前半においてはアイドル色よりもシリアスさ、アーティスト路線を打ち出していた。今作も16歳のデビュー作にしては妙にミステリーちっくな雰囲気の楽曲。難しい言葉は使われていないが歌詞も雰囲気重視で意味が良く分からない。小森田実はシンガーソングライターとしては全く芽が出なかったもののSMAPへの提供曲ヒット(「SHAKE」「ダイナマイト」等)で既に名前が知れていて(この後も「らいおんハート」でミリオンヒットも生み出した)、ピコピコした明るいダンスナンバーのイメージも強いが今作はJニーズ系への提供とは一線を画すようなシリアス路線だ。
同じ小森田実の作編曲だった前年のaikoのデビュー作「あした」との類似性も指摘されているが、今作は「あした」のリメイクとも言われている。歌詞はaiko本人が書いた「あした」と黒須チヒロが書いた今作で全くの別物、メロディーもサビの雰囲気は似ているが全く同じではないし、AメロBメロはほぼ別物であるが、アレンジはかなり似ている。「あした」をベースにして再利用した兄弟曲というのが1番近い形容だろうか。シングル盤では演奏クレジットが無かったが、1stアルバム『moon』で初公開となった今作の演奏クレジットでは思いっきり“background chorus:小森田実&aiko、secret voice:aiko”とクレジットされていてaiko本人が参加している事が正式に判明しているので小森田実が作者権限で勝手にやったのではなく、aiko公認・参加で作られた曲である事は確かだろう。”secret voice”というのはBメロでの“許されるのなら”の後の歌詞記載のないエフェクトのかかったパートの事だと思われる(ボイスというよりは歌メロだが…)。エフェクトはかかっているが確かにaikoっぽい声だ。
通常盤のみ収録のカラオケ「最後の果実(inst)」ではコーラスパートありなので、Bメロの”secret voice”もそのまま聞けるが、サビでのaikoのコーラスを単独で聞けるのが最大の聴きどころ。ただBメロの”secret voice”も加工気味ながらaikoの歌声と認識できるのに対してサビのコーラスはさらに加工感が強く、aikoだと言われればaikoに聞こえるかもしれない…というレベル。クレジット上コーラスには小森田実も参加しているはずだがサビのコーラスはaiko単独っぽいので、ウォオオ重ねている声の方なのかも。
★★★★☆
1stアルバム『moon』
リミックスアルバム『Flow Kyoko Fukada Remixes』(Brent Mini’s Haunted Mix)
C/W 海の彼方 空の果て
作詞:黒須チヒロ・羽野アキラ、作曲:黒須チヒロ、編曲:鈴木俊介、弦編曲:村山達哉
全面打ち込み電子ナンバーだった表題曲とは一転してギターとピアノ主体の素朴なバンドサウンドによるミディアムナンバー。16歳のデビュー作っぽくはなく、20年後くらいにメインで歌っててもおかしくないような落ち着いた雰囲気。サウンドには暖かみがあるのだが、ボーカルがクールというか感情があまり乗っていないせいなのか、かなり淡々として聞こえる。
★★★☆☆
アルバム未収録
初回盤のみC/W
あなたが知っている私が本当の私とは限らない(bonus track)
作詞:黒須チヒロ、作曲:市川ハルユキ、編曲:鈴木俊介
通常盤には代わりにカラオケ「最後の果実(inst)」が収録されている。初回盤には「最後の果実(inst)」は未収録。
ざっくりした生のバンドサウンドによる比較的アップテンポ寄りのナンバー。これももう少し明るく歌えばもっと普通に明るいナンバーになっていたと思うんだけど、特有のブレない歌唱スタイルによりあまり明るく聞こえない。高音の伸びる綺麗な声をしていて素材はかなり良かったと思うので(本人は華原朋美に憧れていたという)、当時のアイドル女優系シンガーの中でもうまい方だったとは思うんだけど、それよりも棒読み歌唱、棒歌唱と言われがちだったのはどんな曲を歌っても全部同じ一定のトーンで歌って感情が乗っていない感じがするからだった。
『moon』では2000 Mixとしてミックス変更されているが、オリジナルよりもギターベースドラム、特にAメロでのベースラインの音が大きくなり、ロックバンド感を強調したミックスになっている。『moon』にてドラムが島村英二、ベースが小松秀行、ギターが鈴木俊介、パーカッションが浜口茂外也、 ハモンドB-3が河合大介、さらにトランペット、トロンボーン奏者も参加していた事が判明している。
★★★☆☆
シングルバージョンアルバム未収録
1stアルバム『moon』(2000 Mix)
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