LINDBERG 35周年シングル回顧5+~2009,2014-2020~

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2002年の解散以降、渡瀬マキは半引退状態となり家庭に集中していたが夫の平川達也とのユニットなど徐々にマイペースな活動を再開しつつあった。2009年がデビュー20周年である事に気づき、ある程度子供たちが大きくなった今なら1年限定なら活動できるとして2009年に期間限定での復活を発表。徳間時代のディレクターの紹介でエイベックスのスタッフとの接点が生まれ、現役女子高生シンガーとしてデビューするJURIAN BEAT CRISIS(川上ジュリアの1人バンドスタイル)の全作詞を依頼(平川達也も作編曲で参加)されたのをきっかけにLINDBERGとしてもエイベックスと新規契約し、エイベックスから大々的な復活プロモーションでリテイクアルバム『LINDBERGⅩⅩ』をリリースし、解散前末期には不可能だったトップ10入りを達成(1998年のベスト盤以来)するなど、見事な復活を果たした。

さらに復活特需に往年のファンが集結して、1997年以来となる日本武道館公演も実現し、解散時よりも遥かに注目を集めて大盛況な1年となった。この2009年に公式にリリースしたのは新曲3曲を含むリテイクベストアルバム1作とシングル1作で新曲は合計4曲だった。

その後、元事務所社長から強く歌手活動継続を勧められていた渡瀬マキは元事務所社長のどこか事務所に所属しておいた方がいいという助言と紹介に従ってアップフロントと単独で契約。これを機に残りの人生をもう1度音楽と共に生きたいと決意した渡瀬マキはLINDBERGの永続的な活動再開をメンバーに打診し、2014年に永続的な再結成が発表された。

2014年以降はレコード会社には所属せずライブ中心の活動となり、新作はほとんど発表されていない。2014年の復活ライブで新曲を出すと宣言したものの、制作が難航した上に、ようやく新曲が発表され始めたと思ったら、その頃には渡瀬マキの体調不良が悪化しつつあり、やがて機能性発声障害での先の見えない活動休止となってしまった。30周年での復帰を目指していたが、今度は世界変異に伴いライブを行う事が出来なくなってしまった。ようやくまともに活動できるようになった時には既に2024年の35周年が迫っており、2024年には男性メンバー3人が還暦越えのアラ還バンドとなっていた。

過去曲回顧初期に大元執筆、2009年再結成後に改訂していたものをほぼ破棄
2024.3~6 2014年以降を新規追加で執筆

Re-FLIGHT~あの日描いていた大人になってるかい?~

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From 20周年リテイクベスト『LINDBERGⅩⅩ
作詞:渡瀬マキ、作曲:平川達也、編曲:LINDBERG&MOTO
20周年記念作には男性メンバー3人がそれぞれ作曲した新曲が3曲収録された。この曲は特に初期LINDBERGの勢いを再現し、あの頃のリスナーへのメッセージソングとなっている。解散時にも初期リスナーへの呼びかけのような曲はやっていたが、むしろ少し枯れ気味だったあの頃より1周回って格段に元気になっているところが熱い。サブタイトルとなった描いていた大人にはなれていない大人が実際のところは大半というのが現実なんだろうけど、もう少し頑張ってみようかなとかそういう気持ちにさせてくれるような、そういう解散時には無かった明るさがある。ここまでパワーあふれる曲が出せると思ってなかったので、本当に驚いた。
★★★★☆

それでも地球はまわるんです

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From 20周年リテイクベスト『LINDBERGⅩⅩ
作詞:渡瀬マキ、作曲:川添智久、編曲:LINDBERG&MOTO
かなりパンクでテンポも速くて勢い溢れる楽曲。意外と新境地?曲調はふざけてはいないんだけど歌詞は9th10thアルバム頃の陽気なノリを再現当時40歳を迎えた人が書いたとは思えない程若々しい。ただ物凄い勢いはあるんだけど勢いだけであっという間に突き抜けてしまい、他の2曲に比べると印象がちょっと薄い。
★★★☆☆

行こう!!!!

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From 20周年リテイクベスト『LINDBERGⅩⅩ
作詞:渡瀬マキ、作曲:小柳昌法、編曲:LINDBERG&MOTO
アルバムのラストを飾ったほんわかしたアコースティックナンバー。あまり往年のイメージには無いホッとする落ち着いた佇まいの楽曲。『EXTRA FLIGHTⅡ』の方向性をもう少し生かして伸ばしていたらこんな感じだったのかもしれない。タイトルの“!”がメンバーの人数分である4つになっている小ネタが粋な演出。

アルバムリード曲として「今すぐKiss Me」と共にMVが制作されたが若者たちの友情ドラマ仕立てで構成された。ただイマイチ話の設定が良く分からない。言い争いしているところなど断片的に台詞音声ONで見せられても、情報が無さすぎてこいつらが何で揉めているのかストーリーがさっぱり分からないし…。
★★★☆☆

36th LIVE your LIFE

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2009年12月9日
1年限定の再結成の最終月となり、ラストシングルと銘打ってリリースした2009年再結成時唯一のシングル。1曲+カラオケの2トラックCD+MVを収録したDVDのCD+DVD1種でのリリース。『LINDBERGⅩⅩ』がトップ10入りし、解散時にもやれなかった1997年以来となる日本武道館公演を行うなど再結成は大成功していたはずだったが、今作のプロモーションをほとんどしなかった事もあってか、初登場44位に沈んでしまった。解散年は全作100位圏外なので十分にも思えるが…再結成に沸いたファンはどこへ…。

LIVE your LIFE

作詞:渡瀬マキ、作曲:平川達也、編曲:LINDBERG&MOTO
「Re-FLIGHT~あの日描いていた大人になってるかい?~」以上にひたむきで前向きでロックな初期LINDBERGの王道を改めて再確認して最後にそのままそっくり再現したような楽曲。“大人青春”というフレーズまで飛び出し、荷物は重くなったけど旅は終わらないぜ!といった前向きで明るい素敵な中年の輝きを放っている。個人的には解散時の30越えてちょっと枯れ気味なもう若き日は過ぎ去った…みたいな味わいもそれはそれで好きなんだけど、40代を迎えて逆に開き直ったかのようなこういう明るさも好きだ。2009年再結成はこうあってほしいというファンの期待に期待以上に応えたこれぞLINDBERGといえる再結成だった。
★★★★☆
スタジオ音源アルバム未収録
3rdライブアルバム(ライブ会場/公式通販限定)『LINDBERG 25th Anniversary 感謝祭~これからもよろちくね~』(LIVE/2014/4/25 Zepp DiverCity Tokyo)

37th EXTRA FLIGHT SINGLE

2016年7月10日(ライブ会場/公式通販限定)
2014年に期間限定ではなく永続的な再結成を発表。しかしレコード会社には所属しない状態でライブ中心の活動となったため、出すと最初に宣言したのになかなか新作はリリースされず、2年経ってようやくリリースされたCDはライブ会場と公式通販限定だった。男性メンバー3人がそれぞれ作曲した3曲を収録。このうち「キミハキミ」のみ前年にDL配信されていた。

制作が難航し、バンド以外の人間が必要だという事で、1998年を最後に離れていたプロデューサー月光恵亮に連絡を取って久々に共同作業を行ってようやく完成したとされる。

月光恵亮は今作の1年後に覚せい剤で逮捕されてしまったが、今作を担当した頃には難聴がどんどん悪化していた事を後年明かしている。復帰後の2019年に音楽プロデュース業の引退を発表。LINDBERGのプロデュースは今作が本当に最後となった。

パスポート

作詞:渡瀬マキ、作曲:川添智久、編曲:LINDBERG,月光恵亮
あまりストレートに描写はされていないが、生と死を扱ったシリアスなロックナンバー。ただ愛だけが最後の旅に抱いていける最後のパスポート(超略)と今までとは違う視点が描かれており、終わりを意識しているところは残りの時間をLINDBERGとして生きたいという永続再結成の動機と残された時間がそう長くない事を強く意識している事が伺える。この点において同窓会的な2009年とは全く異なるし、渡瀬マキは40代後半、男性メンバー3人は50代半ばとなっていよいよ還暦が見え隠れし始め、老いを意識せざるを得ないところまで時が進んでいる事も感じさせる。

月光恵亮との久々のアレンジとなったが、往年よりもむしろ彼がいなかった解散前のクール寄りのサウンドの延長にあるように思う。
★★★☆☆
アルバム未収録

キミハキミ

2015年9月11日(iTunes Store限定DL配信)
作詞:渡瀬マキ、作曲:平川達也、編曲:LINDBERG,月光恵亮
この曲のみ再結成後最初の新曲として1年前にiTunes限定でDL配信されていた楽曲。現在もDL配信はされているが、ST配信はされていない。母としてのパーソナルな側面を子育て中の当時の視点で描いた割と大きな愛情について歌われた楽曲。

幼い子供への愛情というよりも自立して巣立っていく時を思ったような視点で描かれており、“壊してしまわないようにつないでいた手を離した”というフレーズもある程度子供たちが大きくなってきてからじゃないと至れないような心情だと思う。シリアスな曲調もあって往年のらしさは皆無。平メロでのラップっぽい歌い回しは過去のアルバム曲にもあったが、クール寄りでだいぶ毛色が異なる。
★★★☆☆
アルバム未収録

アタシは今すぐアナタを抱きしめる

作詞:渡瀬マキ、作曲:小柳昌法、編曲:LINDBERG,角田宗徳
こちらはもっとストレートにこんな混沌とした時代だけど子の未来だけでも守りたいとする親の思いを綴ったようなナンバー。これまたキャッチーさよりも一定のクール感がある。この曲のみ角田宗徳だがあまり違いも感じない。この時の渡瀬マキは老い&母としての等身大の視点で歌詞を紡ぎたい心情であり、メンバー3人も往年の再現ではなく、クールな大人のLINDBERGの新曲をそれぞれ用意したがっていたのかなと。

ちょっと一気にインパクトが落ちてしまったのは否めず、新曲出す出す詐欺状態が2年近く続いてしまった事からも、再結成はしたものの方向性に迷ったのは確かなのかも。
★★★☆☆
アルバム未収録

Fresh

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2017年7月19日(配信限定)
作詞:渡瀬マキ、作曲:平川達也、編曲:LINDBERG,角田崇徳
2009年の再結成時以降、乱発していたベスト盤リリースを停止したテイチクから全MV集DVD『ALL TIME MUSIC VIDEO HISTORYがリリースされた。MV集になるとCDのような制限はなくなるようでJAPAN RECORDS時代の初期音源、ポリドール→インディーズ、再結成時のエイベックスでのMVも文字通りに完全収録された、その最後に新曲として収録された楽曲。当初公式サイトではDVDに新曲が入るとしかアナウンスされていなかったが、テイチク側は同時発売で単独配信を発表。CD化はされていないが、DVD化はされている。また『ALL TIME MUSIC VIDEO HISTORY』に封入されているブックレットはDVDではなく表紙も「Fresh」のもので今作の歌詞カードとなっていて、今作のクレジットと歌詞のみが掲載されている(DVDのクレジットはジャケット内部に記載)。12thアルバム以来のテイチクからの新曲という事になるが、MV集やトリビュート盤、過去のライブ映像のDVD-BOXリリースのために一時的に関与しただけだったのか結局テイチクでの新作はこれ1作ポッキリ。

暗闇からもう1度立ち上がって歩いていくようなクールながら情熱は感じられる抑えたロックナンバー。“二十代の頃のような情熱とはまた違う 込み上げる思いは確かにある”という2番Bメロの歌詞に等身大のLINDBERGらしさが出ていて、前作の3曲よりはLINDBERGっぽさも意識したのかなという気も。ただもう少しガツンと来てほしいところではあり、終始抑えた雰囲気のまま終わっていくのでやはりインパクトの強い曲ではない。この時点ではまだ機能性発声障害は判明していなかったが、調子が悪い時期は続いていたようなのでそういったところが歌詞には反映されているのかもしれない。
★★★☆☆

38th ~種~/パレード

2020年5月2日(公式通販限定CD+DVD)
2018年に渡瀬マキが機能性発声障害を公表して活動停止となった。復帰に際して制作されたのが「~種~」で3月9日に配信リリースされており、その後2017年にオンラインゲームのタイアップで制作されていた未発売「パレード」との両A面で公式通販限定のCD発売が発表された。2曲+「~種~」の短いレコーディング風景とMVを収録したDVDのCD+DVD1種のみ。

当初は復帰ライブとなる30周年ライブで販売する予定だったようだが世界変異により自粛を余儀なくされライブ中止となったためひっそり公式通販での販売のみとなった。

配信においては3月の「~種~」の単独配信のみとなっていて、『~種~/パレード』としての配信は無く、そもそも「パレード」は未配信のまま。

~種~

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2020年3月9日(配信)
作詞:渡瀬マキ、作曲:平川達也、編曲:LINDBERG,角田宗徳
機能性発声障害により歌えないどころかほとんど動けない状態になっていて自身と向き合う日々を過ごした心情がそのままドキュメントされた楽曲。冒頭の歌詞”悪い魔法にかけられて”に呼応して締めのフレーズが“魔法は解けたんだ”と復活を宣言し、どっしり支えるバンドサウンドと着実に進んでいくように歌い上げる渡瀬マキのボーカルが胸を打つ。

復帰ライブでファンと合唱するのも想定したと思われるが、緊急事態宣言乱発によりしばらく叶わない事となり、結果的に今作が配信リリースされた頃から世界は深刻化、CD化された時にはリスナー全員の落ち込んだ心情に寄りそうな役割も果たした。

ただ病気に加えて加齢も重なってさすがにかつてのように往年の歌声を再現する事はさすがにもう不可能となり、復帰以降は以前より声を張らず、これまで使わなかったところで裏声を駆使するなど、歌い方はだいぶ変わった。
★★★☆☆

パレード

作詞:渡瀬マキ、作曲:小柳昌法、編曲:LINDBERG,角田宗徳
「Fresh」と同じ2017年にオンラインゲーム『アルケミアストーリー』テーマ曲として起用されていた未発売曲。2016年に3曲発表して、続けて2017年にも新曲を2曲用意していたという事は渡瀬マキが不調に陥っていなければ新曲を継続的にリリースしていくつもりだったと思われる。

序盤はEDMが流行っているとされた時代を反映してか、シンセ音がフォッフォッフォッフォッ鳴り続けているがさすがに全面導入は回避してダンサブルでクールなバンドサウンドが展開する。パレードという割にはかなりクールだし、最後の最後に“素晴らしい物語にはいつでも悲劇が背中合わせになっている”というのはその後の自身や逮捕や難聴になった月光恵亮のその後を予期していたかのようでもある。
★★★☆☆

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