BLEACH

2018年7月公開。

2001~2016年まで少年ジャンプで連載された全74巻の漫画の実写化。アニメ化はされており、アニメ映画化もされているが、原作最終エピソードを残してアニメは2004~2012年までで終了。原作連載中だったこの頃にハリウッドで実写映画化の報が流れたが続報が無く、原作も2016年に完結してしまってから2年、日本で映画化される事となり、ハリウッドの映画化は頓挫していたことが正式に明かされた。

タイトルは『BLEACH』となっているが、エンドロールでは『BLEACH 死神代行篇』と表示される。原作1~7,8巻の死神代行篇と題された時期を基にしているが1巻1話、3巻のグランドフィッシャーとの戦い、7巻の恋次、白哉襲来のエピソードを組み合わせて構成。

霊が見える体質の黒崎一護(福士蒼汰)はある日、虚(ホロウ)と呼ばれる怪物に家族ごと襲撃され、ホロウ退治に現世へやってきていた死神ルキア(杉咲花)と出会う。ルキアがホロウの攻撃で負傷し、このままでは全員殺されると判断。霊力の高い一護に一時的に死神の力を譲渡するという打開策を決行するが、一護の力は予想以上に大きく半分のつもりがルキアの死神の力は全て奪われてしまった。一護は死神代行として戦うことになるが、死神を憎むクインシーの力を持つ石田雨竜(吉沢亮)に因縁をつけられたり、死神の力の譲渡は重罪だとして恋次(早乙女太一)とルキアの兄で隊長の白哉(MIYAVI)が現れたり、母の敵であるホロウのグランドフィッシャーとの戦いへと身を投じていく…。

ということでまあ短い時間の間に取捨選択しててんこ盛りに詰め込んだな…という1作。

そもそもにこの死神代行篇では一護は白哉に全く敵わずルキアは一護を守るために処刑される道を選んでソウルソサエティに帰還。残された一護は浦原の下で修業をして力をつけ、同時期に特殊能力に目覚めた同級生たちや、石田とともにルキア処刑阻止・奪還のためソウルソサエティに乗り込んで死神たちと派手な戦いを繰り広げる…という本格展開へ繋いでく物語の序章部分に当たるんだけど、映画ではこれで完結しなきゃいけない。このため結末を大幅改変して何となく綺麗にこれだけで完結したようにはなっていて、原作を知らなければまあ全員倒してスッキリとは行かずともまあまあなところに着地して終わった感じではあるのかなとは思う。

実際この映画コケてしまったようなので、続編は作れそうにないし、変に続きを残さずに終わらせるにはこれしかなかったとは思うけど…う~ん…(汗)戦闘シーンは迫力があったんだけど、後半の3連戦はしんどいし、白哉相手のまだまだ芸は長すぎる…。

原作ではホロウの狙いが自分だと聞かされた一護はそのために関係ない家族まで襲撃されたのかよと激昂してホロウに突っ込んでいこうとしてそれをかばったルキアが負傷して戦闘不能になってしまうんだけど、映画では何故かこの点を改変してしまい多少一護を気にかけていたとはいえルキアが普通に戦って普通にやられて戦闘不能になってしまうという。恋次がこの程度のホロウにルキアがやられるはずがないとか言ってるんだけどいや普通にやられてるよ…

そしてもう1つが原作では能力の譲渡後、一護の魂そのものが死神化してしまっているのでルキアから奪った死神の力を再度戻すというのは不可能ルキアの力が回復するまで死神代行をしてもらうという単純明快な設定だったのに、何故か手順を逆にすれば死神の力をルキアに戻すことは可能だと改変

しかし今の一護の霊力では弱すぎて死神の力を戻したら朽ち果てて死んでしまう、よってホロウを倒して死神としてのレベルを上げろ、とルキアがいきなり命令する謎展開に。一護の霊力が異常に強いという設定がバリバリ生きてて、みんな普通のサイズの斬魄刀なのに一護のは霊力のデカさゆえに斬魄刀もデカいというのもそのままなのに弱いという。霊力強いと言ってるそばから霊力弱いと言うというワケの分からん設定になってしまった。

さらにすぐに恋次一行が表れてしまったので、普通のホロウとは1度も戦うことなく、生身の肉体で剣術・筋力修業するというスポ根みたいな修業展開で、次がもうグランドフィッシャー戦。ホロウと戦う事で死神としてのレベルを上げていくはずが、尺の都合上初戦以外全く戦わないままにラスボス級のホロウ、及び恋次、白哉との3連戦はキツすぎる…。

グランドフィッシャーが母(長澤まさみ)の幻影を使って惑わす展開もなぞった程度。原作だとグランドフィッシャーは相手が斬れない人物の記憶を引き出してそれに化けるという能力を切り札として出してきて精神的にも徹底的に追い込んでくるのに、なんか早急に出した挙句に何故か市街地戦になってしまう始末。

能力譲渡に関する設定変更は“逆に言えば一護のレベルが上がれば死神の力をルキアに戻しても死なない”という事と、“ルキアが死神の力を回収した上で帰る”という結末への辻褄合わせになっているので、まあこの結末ありきで適宜改変しながら話が出来上がったのかなとは思った。

これだったら織姫の兄のエピソードとグランドフィッシャーまでの1~3巻だけ実写化して、力の譲渡が重罪云々はスルーして、死神代行になった一護が母の敵と対峙するのをクライマックスにしておけばそのまま終わっても続きを作ってもどっちでもいい感じになったと思うんだけどどうなんだろう。
★★★☆☆

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