X-MEN: ダーク・フェニックス

2019年公開。シリーズ通算7作目。2016年の『X-MEN:アポカリプス』の続編。『アポカリプス』の際に最終作と銘打たれていたが、今作がシリーズの最終作と銘打たれた。制作元である20世紀FOXがディズニーに買収され組織が大きく再編されるのも理由と言われている。

アポカリプスとの戦いから10年が経過した1992年が舞台となり、主要キャストはほぼ全員続投しているが、プロフェッサーと恋仲だったモイラ、アポカリプス側の敵として前作で戦い、逃げ延びたサイロックは出ていない。

また時系列ではウルヴァリンはまだX-MENに合流しておらず、それでも『ファーストジェネレーション』『アポカリプス』では1シーンのみの形で出演していたがヒュー・ジャックマンがウルヴァリン役を引退したため、シリーズ7作目、最終作にして初めてウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)が一切出演していない

今回どうも評判も悪く、公開2週目なのに既に朝イチと夜ラス1日2回上映になっている始末。字幕・吹き替え・ドルビーの3種あって各1日2本ずつなので、一応6本になるし、メンインブラックと同じ状況とはいえ、それにしても公開翌週でこれは予想外の上映時間選択肢の少なさ。ドルビーシネマなんてもう「LAST」がついていて1週間で打ち切りらしい(ドルビーのゴジラが今週までやってるのに)。ムビチケを買ってしまっていたため、本来7月になってから見に行く予定だったが、これはマジで見るタイミングが無くなるかもしれないと急遽休みを前倒して慌てて行ってきた。その翌週(7月1週目)で吹き替え版も打ち切りとなり、7月2週目にはもう字幕版朝イチ上映1本ポッキリになってしまったので急いで見ておいて正解だったようだ。

あらすじ

1975年、自身の能力の暴走で両親が運転していた車が交通事故を起こし、ジーンだけが助かった。プロフェッサーはジーンを救うためジーンを学園へと連れてきた。

そして1992年、アポカリプスとの戦いから10年が経過し、プロフェッサーが望んでいた人類とミュータントの共存が実現。X-MENはヒーローとして世間で扱われ、プロフェッサーと大統領はホットラインで繋がり、対処できない危機に瀕した際はX-MENが出陣して事態を解決していた。今回も宇宙船の事故で乗組員を宇宙から救出する依頼を受けたX-MEN一行は宇宙での作戦を成功させるが、救助の際に事故の原因となった宇宙のエネルギーがジーンに全て降り注ぐという事故が発生。ジーンは無事だったが、やがて力を制御できなくなり…。

『ファイナル ディシジョン』の実質やり直しだが…

ジーンが制御できない力に飲まれてダークフェニックスになってしまうのは前キャスト時代の06年の『ファイナル ディシジョン』でも出てきたエピソードだが、今回はそれをメインにしてジーンやジーンが敵となってしまったX-MENの苦悩や葛藤などを前面に押し出している。さらにまた別の敵も出てきたりと盛り上がるには盛り上がるが…。

なんだろうか。ホントにこれ最後?っていう…。

シリーズ間の繋がりが微妙に矛盾だらけなのはシリーズ伝統芸ではあるし、『フューチャー&パスト』の過去改編で旧シリーズと現シリーズがパラレル化したのは分かるが、基本的に運命が変わりつつもそれに近い歴史は辿っていくみたいな事はシリーズの脚本やプロデューサーを手掛けてきて、今回はついに監督デビューまでしてしまったサイモン・キンバーグ氏が語っていたはず。ただ今作はここからおおよそ10年後くらいとなるはずの『X-MEN』1作目や、『フューチャー&パスト』での主要キャストハッピーエンドの結末に繋がっていく気がほとんどしない。

というかシリーズ最終作を銘打っているのにシリーズで積み重ねてきた歴史やキャラの成長などが反映されてないので、今回はこのキャラのこういった側面を描きたかった…などと説明されても、最後の最後になんで唐突にこうなっちゃうんだ…と思ってしまうような行動も多くて違和感が…。

『ファイナル ディシジョン』は酷評されまくった作品ではあったが、ダークフェニックスの末路としては『ファイナル ディシジョン』の方が印象深いものになっていたと思うし、個人的にはシリーズ7作目にして初めてあまり面白さを感じないままに終わってしまった。これだったら『フューチャー&パスト』で過去と現在を繋いで完結で良かったなぁ…。

★★★☆☆

以下ネタバレ含む、登場人物のまとめ

ジーン・グレイ

実質今回の主役。前作に続いてソフィー・ターナーが演じる。宇宙で膨大なエネルギーを浴びた事で力が暴走。封じられていたダークフェニックスの人格が解き放たれて制御不能となってしまう…。

という触れ込みだったが、微妙に様子が異なり、星を滅ぼすほどの膨大なエネルギーを吸収してしまったので力が増大、封印されていた両親の事故がらみの記憶が復活してしまって情緒不安定になったのに加えて、そのエネルギーが強力すぎるのが重なって、制御できずに暴走、という感じで、別人格が目覚めた様子ではない。制御不能になってミスティークを殺してしまったり、警官隊に危害を加えたりはしているが、『ファイナル ディシジョン』時のように完全に元の意識が喪失して別人格になってしまっているという様子ではなく、単にアンコントロールで情緒不安定なだけである。

実際終盤でプロフェッサーの再説得で情緒不安定が解消されて平穏な精神状態を取り戻してからはフェニックス状態のままに自分の意志で仲間を全員守り、次々襲い掛かる宇宙人勢力を1人で破壊しつくし、宇宙エネルギーの一部を譲渡していた宇宙人勢力のボス相手にも制御不能を指摘されるが一緒に宇宙へ飛び立って自身とボスをエネルギーごと爆散させるなど1人無双しまくった。

プロフェッサーX

アポカリプス戦でアポカリプスの意識移動の儀式を途中まで受けてしまった影響で頭髪が消失。演じるジェームズ・マカヴォイは前作終盤以降に続いてスキンヘッドで演じている(旧シリーズのパトリック・スチュワートと同じ姿)。X-MENのヒーロー化に伴い、今回は大統領とも仲が良く、マスコミ対応も含めて若干いい気になっている様子で、その事をミスティークに咎められ、ハンクからも「変わってしまった」と評されるなど、シリーズ中最も仲間(特に付き合いの長い面々)から反感を買っている。さらにジーンの過去を封じていた事に関してはジーン本人ならず、ミスティーク、ハンクからも糾弾され、ミスティークが死んでしまうとハンクからも見限られて、過ちを認めないなどと徹底的にこき下ろされてしまう。

ジーンを救うために記憶の一部を封じたのはそこまで悪い判断ではなかったと思うんだけど、何故か叩かれまくったので最終的には謝罪。最後は学園をハンクに任せて引退してしまう。最終作なのに何だかダメなところばかり指摘されるのはなんだかな。このままでは『フューチャー&パスト』のラストで学園の校長として精神が帰還したローガンを迎えるシーンには繋がらないためシリーズ最終作としてはしっくりこないがそこまではまだ30年近くあるのでまあその間に色々あって復帰した事にすればまあなんとか…。

ミスがあったとしたらジーンも20歳を過ぎて大人になっているので、いつまでも子供・生徒扱いしてないで封印した両親絡みの過去について落ち着いた状況の時にきちんと話をして向き合わせておくべきだったとかそういった点に尽きるのでは。序盤では自分は座って指示しているだけでX-MENを危険に晒してヒーロー気取りなんてのをミスティークに批判されていたので、そこから繋げれば不自然にはならなかったと思う。

マグニートー

今回は仲間を集めて政府公認で独立区(マグニー島)で自給自足で生活していた。やってきたジーンの様子がおかしく、さらにジーンを追ってきた軍相手にも不必要に攻撃せずむしろジーンが暴れだしたので軍を守って逃がすなどだいぶ穏やかになっている。しかしハンクが訪ねてきてジーンがミスティークを殺したと知ると、以前の自分に戻ってジーン殺害を決意。止めに来たX-MENと揉めながらもジーンの元へたどり着くが、圧倒的な能力差にやられてしまう。以降全員で捕まっている間に本当の敵が別にいるらしい(宇宙人)事と、ジーンが外部からの力の影響で制御不能にある事を理解し、共闘の形で最終決戦まで参加。最後は引退したプロフェッサーとチェスに興じる。

最初の段階でかなりの能力差を見せつけられていて、本気で殺しにかかっても明らかに無理めなのに正面突破でジーンを殺せると思っているところがなんだかマグニートー。

ミスティーク

本名はレイヴン。変身能力を持つ。ジェニファー・ローレンスが続投。マスコミウケ、世間ウケを狙いすぎているプロフェッサーに反感を抱きつつあり、現状に危機感を抱いていたがX-MENのリーダーとしての活躍は続けていた。しかしジーンの説得に失敗し、暴走したジーンに突き飛ばされると運悪く尖った瓦礫に串刺しになって絶命してしまう。

今回ジーンが強すぎるため、ほぼ全員がジーンの攻撃や波動で吹き飛ばされるような描写があるんだけど、何故かミスティークだけがザクッと串刺しで死んじゃった…というのは。串刺しで死ぬのも『LOGAN』のオマージュみたいになってるし、ミスティークの特殊メイクも明らかに手抜きになってるしで色々おざなりになっていた感じ。

歴史改変により最も旧シリーズと運命と立ち位置が変わっていたミスティークだが…確かに『フューチャー&パスト』ラストでローガンが未来へ帰還時に学園にミスティークはいなかったので繋がらなくは無いが殺して退場はなぁ…。

ビースト

本名はハンク・マッコイ。ミスティークほどはプロフェッサーに不信感を抱いていなかったが、「変わってしまった」とは考えていた。ミスティークの死によってジーンを殺すべきと判断し、マグニートー側へ。

相当怒っていたとはいえ、街中で一般人を犠牲にしてまでジーンの元へ飛び込んでいこうとするのはわりかしキャラ崩壊気味…。最後は何故か学園の長になっちゃうのもしっくりこなかった。

スコット・サマーズ(サイクロップス)

前作に続いてタイ・シェリダンが演じている。前作時はまだ能力に慣れておらず不安定だったが今作ではだいぶ頼もしくなっている。キャラブレも無く、安定していた印象。一貫してジーンを信じぬく姿勢も恋人らしく頼もしかった。

ストーム

前作に続いてアレクサンドラ・シップが演じている。前作ラストでX-MENに加入。今回はすっかり仲間になっていて見た目も雰囲気も旧シリーズのストームとほとんど同じような存在感になっていてすっかり馴染んでいた印象。

カート・ワグナー(ナイトクローラー)

テレポート能力で今回も活躍が目立つ。前作で救出されるまで見世物にされて無理やり戦わされていた過去からあまり戦闘を好まないキャラだったが、捉えられている際に「息子がファンだった」と言っていた警官の1人が宇宙人に殺されてしまうと怒りを見せて能力乱発で敵に挑んでいくシーンは見せ場だったと思う。

クイックシルバー

序盤の宇宙では得意の高速移動能力で活躍するが、ミスティークが死んでしまった際のジーンとの戦闘序盤で吹き飛ばされて重傷。帰還時にタンカで運ばれているカットを最後にそのまま出番なし。誰も何の説明もしないままだったがラストカットで元気になっている様子が一瞬出てくるだけ…というまさかの扱い。どうしてこうなった…。

セレーネ

マグニートーの仲間の1人で初登場。精神操作系の能力を持つらしいがもう1つ活躍しないままにマグニートーとアイコンタクトしている間に彼の目の前で宇宙人勢力に捕まれて車外へ放り出されて殺されてしまった(精神系の能力なので高速移動中の電車から外に放り投げられて生還できるほどの身体能力は無いものと思われる)。

ヴーク

今回の暗躍者。多数の仲間と共に宇宙から来襲したシリーズ初の宇宙人で、人型ではないため、人間に化けている。真の姿は銃撃された際に一瞬見えるがどこかのETのようであっ数十名はいるような大集団のようだったが、全員誰かしらを殺害してその人物に成り代わってている様子でヴークの姿をしている女性も元は一般人で、彼女が消されて化ける様子が描かれている。

化ける以外にほぼ無限の再生能力を持ち、激しい銃撃を受けてもウルヴァリン以上の再生速度で再生するためほぼ無敵。終盤でのX-MENとの激しいバトルで半分以上は倒した描写が出ていたが、あの程度で倒せていたのかも含めて描写不足で謎が多い

ヴークがリーダー格で、ジーンが浴びたエネルギーは自分たちの星を滅ぼし破壊したエネルギーだと告げ、ジーンは強いためそのエネルギーを全て吸収しても無事(ただし制御しきれない)と告げ、ジーン(の中に眠るそのエネルギー)を使って地球を滅ぼして自分たちの星にしてしおうと画策。ジーンにはこの力を正しく使えば理想の新たな世界を作ることができるといいように言って利用しようとしていた。ジーンが御しきれないのであれば、ジーンを殺してエネルギーだけ頂く算段でもあった。

ジーンがマグニートーを倒した後、駆けつけたプロフェッサーがジーンを決死の説得で抑えかけたため、ジーンを使うという方針を変更してジーンからエネルギーを吸収しようとする。スコットの攻撃で途中で終わったものの、ヴークはその後別行動をとり、宇宙人一派がほぼX-MENに倒されてから再登場。X-MENほぼ全員を倒すが、フェニックス状態で正気を保ったジーンが復活するとほとんど歯が立たずにやられてしまった。

かなりジーンから力を奪っていたはずで実際他の宇宙人より遥かにパワーアップしていてX-MENの攻撃は全て無効化されてほとんど善戦すらできなかった。しかし結局ジーンに残っていたパワーとジーンの自力の方がさらに圧倒的な格上でジーンには歯が立たなかった。

そもそもこの宇宙人一派明らかに能力も設定も描写不足でハチャメチャだった。ジーンだから全部取り込めても無事だったほどのエネルギー…という設定で、本人が正気を保つのが困難なほど膨大なエネルギーなのに、ヴーク1人で奪って制御できるのか、そもそも最初から制御できるなら君たちの星滅亡してないだろとか謎ばかり。実際最終決戦で無理やりジーンから残った力を奪おうとするもほとんど半壊状態で無理やり奪っている状態で放っておいてもヴークの方が自爆しそうであった。

今作はそもそも終盤が全く別の展開で1度完成していたものが、先に公開されている映画とストーリーが酷似してしまったために急遽大幅に書き直して再撮影、宇宙人の設定も変更されたとされているのでその影響が出てしまったのかもしれない。

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ソフィー・ターナー, ジェームズ・マカヴォイ, マイケル・ファスベンダー, ジェニファー・ローレンス, ニコラス・ホルト, ジェシカ・チャステイン, サイモン・キンバーグ
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