20世紀少年-第1章-終わりの始まり

2008年8月30日公開。3部作の1作目。

浦沢直樹原作の漫画『20世紀少年』(1999~2006)、『21世紀少年』(2007)の実写版。

50年近くに及ぶ壮大なストーリー展開のため、実写化は不可能とも言われていたが三部作の超大作として破格の総製作費60億円、総勢300名以上の豪華キャストで制作され大ヒットを記録した。原作をそのままやると収まらないため丸々カットしたエピソードや展開を再構成して濃縮している。半年強間隔を開けての公開となり、2作目が年明け、3作目はちょうど今作から1年後の公開だった。

この1作目では主に1997年(38歳)に始まり2000年12月31日まで(41歳)が描かれる。2015年インターネットで公表した漫画の内容が問題視され新青少年保護育成条例違反で逮捕されて海ほたる刑務所に入れられた漫画家の角田(森山未來)が向かいの部屋に収監されている囚人(オッチョ)から当時の話を聞かされる形となっている。

また3作に渡って1969~1970年(大阪万博の頃)の少年時代の回想シーンも挟まれており、そこに「ともだち」の正体のヒントが隠されている…のだが、「ともだち」が当時からお面を被っていて顔を明かしてない上、身内の仲間以外の記憶はほとんどおぼろげで揃いも揃ってメンバーみんなが肝心な部分を忘れているので謎が解けるのに相当な時間がかかる。

1997年。ミュージシャンの夢をあきらめたケンヂ(唐沢寿明)は姉キリコ(黒木瞳)が置いて行った赤ん坊のカンナを育てながら、コンビニを経営して母親とカンナを養っていた。小学校の同窓会に出席したケンヂはそこで最近大きくなっている「ともだち」と言われる人物が教祖をしている宗教集団の話を聞く。その教団が使っているマークはケンヂ達が少年時代に原っぱに秘密基地を作って遊んでいた時に作ったものと全く同じだという。さらに同級生のドンキー(生瀬勝久)が死の直前にケンヂに送っていた手紙に同じマークが描かれていた。さっぱり思い出せないケンヂだったが仲間たちと当時埋めたタイムカプセルを引っ張り出したところそこにはケンヂが書いた「よげんのしょ」やマークが出てくる。やがてお得意先の失踪事件、世界各地で起こる謎の失血死による細菌テロが予言通りであることが発覚。さらに予言どおりに羽田空港爆破という大事件が起こる。同級生の誰かが「ともだち」であり、「よげんのしょ」を実現しているのか?「ともだち」がカンナを狙っている事が発覚して何とか助け出したものの、コンビニが全焼してケンヂはテロの容疑者にまで仕立て上げられてしまい地下に潜る事になった。

2000年大晦日。「よげんのしょ」によれば新宿に巨大ロボットが出現するという。この大規模テロを阻止するため、地下に潜伏していたケンヂはかつての仲間に収集をかける。集まったオッチョ(豊川悦司)、ユキジ(常盤貴子)、ヨシツネ(香川照之)、マルオ(石塚英彦)、フクベエ(佐々木蔵之介)、モンちゃん(宇梶剛士)と共にテロを阻止するために立ち上がる。

比較的日常的な部分から徐々に教団の影が迫り、非現実へ進んでいく。1作目は時期的な区切りもいいし、エピソードも散らからずにほぼ一直線に事態が進行していくのでテンポがいい。漫画の絵を見ると登場人物はどれもそっくりなキャスティングをしており原作に忠実だったようだ。またメインのメンバーは2作目以降は15年後、2015年以降の話になる都合上、全員老けメイク仮装状態となり、そのままの姿で出ているのはこの1作目のみである。

どんどん浸食されていく日常、子供のころ書いた遊びの予言を本気で実現させていく「ともだち」と当事者として巻き込まれて阻止しようにも正体すら分からず地下に潜り、戦う決意を固めていくケンジ。追い込まれっ放しで1度も優位に立てないこの1作目だが、それゆえにとにかく話に引き込まれる。ストーリーや映像スケールがでかいが、あちこちにチョイ役で有名人が出演しているのも見どころ。

話の都合上仕方ないが、仲間のリーダー格だった割にケンヂがほとんど何も覚えてない。近所に住んでいて交流が続いていたマルオ、そしてヨシツネ辺りとは交流があったようだが、基本的にアイツ誰だっけ?のオンパレードだし、自身がリーダーだった秘密基地のマークが「ともだち」のシンボルとして登場してもどこかで見た事あるっけ?ようやく思い出しても誰が書いたんだっけ?(オッチョでした)、自分たちが考えた「よげんのしょ」の話を聞いてもそんなんあったっけ?それゆえに国外で非合法な活動家になっていたオッチョが「ともだち」の正体なのかと当時の親友を疑う始末でちょっと物忘れがひど過ぎる。仲間達もまあ揃いも揃って忘れているんだけど、ヨシツネやマルオの方がまだ断片的な記憶を語ったり覚えていてそれを聞かされてもそうだっけかなぁと浮かない顔のケンヂ…みたいな場面も多い。しっかり「よげんのしょ」を大人になるまで忘れずにいて実現させていた「ともだち」との差、これが根に持たれていた根本的な部分なのかもしれない…。

まあ昭和の子供のヒーローごっこの延長で、そのヒーローが倒すべき悪の設定を考えた…というのが「よげんのしょ」であって、当時のケンヂたちはテロリストごっこをしていたわけではない。倒すべき敵の設定なので相応に練った話にしたものの当時のケンヂ達の目的は悪を倒す正義のヒーローが俺達だ!なのでそこが「よげんのしょ」の方に注目して書いてあることを実際に実行しようとした「ともだち」との大きな違いだろう。

あとクライマックスの爆破の描写は正直盛りすぎなのでは…?とはちょっと思ってしまった。ダイナマイトでロボットだけ吹き飛ばそうとしたはずなのにすさまじい大爆発で周囲のビル群が粉々に砕け散っていくという周辺一帯滅亡級の描写になってしまっており、中心にいたケンジどころかどう考えても周辺数キロ圏内にいた仲間全員形も残らず消し飛ぶレベル。どうしてそうなった…?あくまで後世にこう伝えられているという意味合いで実際にはここまでではなかった話を盛った状態の描写が”周辺ビル消し飛ぶ大爆発”なのだろうか。一応ダイナマイトでロボットだけ吹っ飛ばすはずが何故こんなありえない大爆発になったのかとケンヂが生き残った理由、外に姿を見せていたはずの「ともだち」が無事だった理由は3章で明かされているんだけど、周辺にいた仲間が無事だった理由にはなってないんだよな…。

今作では「ともだち」がお馴染みのあのマークの袋(髪型も分からなくなるほど頭全体を覆う)ではなく、あえて少年時代のお面姿で登場し、ケンヂと何度か対峙。後頭部は丸見えになっている上、もみあげ付近も丸写しになっているので髪型から割と対象が絞れてしまう。しかも正体が分かってから見るともうあの役者そのものにしか見えない(実際本人がお面付けて演じている)。第2章の方が覆面になって誰だか分からなくなっているだけに最初からこんなに分かりやすくて良かったのか。

当時はまだDVDメインで発売されており、初回盤はDVDでLPサイズの巨大ジャケット。しかしメイキングを入れてしまうと前述のように「ともだち」本人がお面付けて演じている部分が使えなくなってしまうためか、メイキング系の特典映像無しで「僕らの旗」のレプリカが封入されている程度であった。通常盤DVDでも映像は同じ。また単独Blu-ray、Blu-ray BOXでも発売されている。何故か3作の中で今作のみ2.0ch音声が収録されず、5.1ch2種のみとなっている。2章公開前にTVで放送された少年時代の未公開シーンを増量しつつ本編のシーンを削って再編集した「もう一つの第1章」は商品化されていない

★★★★☆

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