Liam Gallagher: As It Was

2019年6月本国イギリスで初公開。
2020年9月25日日本公開。
20年12月25日先行配信。
21年2月17日Blu-ray/DVD発売。

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Blu-rayは特典映像として未公開映像と予告を収録(本編89分/特典映像31分)。DVDは予告のみ。

元OasisのLiam Gallagherのドキュメント映画。若い頃からの態度の悪さからメディアからの激しいバッシングを受けていた中で兄ノエルとの大喧嘩から2009年にOasisが解散、即座に残されたメンバーでBeady Eyeを始めるも結果が伴わず私生活での離婚等も重なってBeady Eyeは終了、失意の中でソロシンガーとして復活を遂げていく姿を追った内容。

元々本国イギリスでの2019年6月公開から日本ですぐに上映する気は無かったようで2020年3月27日という騒動が急速に過激化したタイミングで7月公開を発表、結局9月に延期となった。当初から1年遅れの予定だったのか7月公開も新コロの影響で当初より延期されていたものだったのかは不明。

ロックスターLiam Gallagherの復活

大枠として語られているようにOasis解散後のBeady Eyeは売れずに支持を得られずにアルバム2枚で自然消滅した事になっていて、2017年のソロデビュー作『As You Were』が大ヒットした事で復活したとされている。今作はそこに至る過程を本人、Oasisの初期ギタリストで00年の脱退以降も親友関係にあるボーンヘッド、ノエルより上の兄のポール母ペギー現在のパートナーでマネージャーでもあるデビー、現サポートバンドメンバーやスタッフ等のインタビューを軸に時系列で追っていく内容となっていて分かりやすい。3人の子供(息子2人、娘1人)も登場するが全員母親が違うなどなかなか派手な女性関係だったようだが現在は落ち着いていて3人の子供との関係も良好で幸せを感じている様子も映し出される。

作中では10代の新たなファンが増えている事を強調し、そこをノエルとの違いとして描いているが、ノエルを批判することは無く、複雑な心情を匂わせながらも和解したそうな感じを醸し出している。ここまで来るとノエルの方が何を意地を張っているのかとも思えてくるほど。

そのノエルの扱いだが今作でのOasisの曲の使用を許可しなかったとされ、Oasis時代の映像やライブでソロで「Live Forever」を歌ったとされる部分は全部音声カット。映像までNGという事は無くノエルの姿自体は出てくるどころか、過去にメディアでコメントしていた映像までちゃっかり使用。そこまでは拒否しなかったようだ。

よってソロ名義の新曲しか使用されないが、これもライブ映像で演奏が始まると程なくしてCD音源に差し替えられてしまいライブ音源は何故かほぼ聞く事ができない。

見やすくて好感の持てる作りになっているが、これはリアム自身が年を重ねて落ち着いた事を大前提としてメディアによる悪評を『As You Were』が大ヒットして新たな世代のファンも獲得できたこのタイミングである程度払拭して今のリアムを提示したいという意向も強かったんじゃないかと思う。朝のジョギングをしながら朝日を眺めて爽やかな笑顔を浮かべる姿は全盛期のふてぶてしい姿とは対照的で本当に今幸せに生きているんだなと思えてくる。いいドキュメントだった。出てくる面々がみんな和解を望んでいるように見えるもノエルの頑なな態度に対してどこかあきらめているようでもありどうにかならないのかなぁとは思った。

日本ではBeady Eyeもそんなに悪かったとは…

今作で前提となっているBeady Eyeが全然売れなかったとされる件だが、まずOasisは00年代後半でアルバムが軒並み20万前後売れ続けていた。対してBeady Eye1stは半分以下だったが同時期のNoel Gallagher’s High Flying Birdsの1stとの売上はほぼ同じ。2ndはさらにその半分以下でついに数万枚レベルだったので確かに売れていないがNoel Gallagher’s High Flying Birdsの2ndもやはり同程度。

こんな感じだったので日本でのBeady EyeはNoel Gallagher’s High Flying Birdsと同程度売れていてそんな売れない支持されないと言われまくるほどひどい状況ではなかった。しかし本国イギリスの論調に引っ張られたのか何故かノエルは一定の支持を得ているがBeady Eyeはダメだったという論調に日本でもいつの間にかなっていた。

なお復活したとされるソロ1st『As You Were』はBeady Eye2ndをさらに下回っていた。この辺りはどんどんDL/STに流れていっている時代背景もあるので売上だけで単純に言えるものではないが、日本での本来の注目度や評価は本国イギリスとは違っていた…が、論調に引きずり込まれてないか?となんとなく感じている。確かにBeady Eyeの2ndが内容的にパッとしなかった、ノエルは進化を続けていたという作風の違いはあって納得できてしまう部分もあるがいきなり自然消滅解散するほどとは…。

日本での公開や発売が遅すぎたので多少古くなったのは否めず…

なお今作は本国で2019年6月公開である。これは2ndアルバム『Why Me? Why Not.』発売よりも前。実際今作は次の新作のレコーディングに取り掛かっている様子を映し出して新作アルバムへの期待を高めて終了する。

この手のドキュメントはある程度スピード命なところがあって、日本での公開が1年も遅れ、実際には新コロ延期でさらに延期されてしまうとなると随分と手前で終わってしまった感じになってしまった。しかもBlu-ray発売となると2021年までずれ込んだので既にリアム復活もだいぶ過去になってきてしまっている始末。しかも2020年はまだ『Acoustic Sessions』『MTV Unplugged(Live At Hull City Hall)』等の発売があったが、2020年下半期以降は一切の新作発表が無く2021年もそのまま一切の新曲が無いまま終わり、2022年5月に次のアルバムを出すと発表された程度。完全に谷間の期間となってしまった。2019年後半には日本公開、2020年1月でBlu-rayくらいだったらまだ映画の鮮度を保てたと思うんだけどどうしてこんなに遅くなった…。

★★★★☆

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