22年4月公開。
劇場版25作目。
前作が1年延期になってしまったため制作自体は2年ぶりとなった。22作目『ゼロの執行人』以来となる安室透がメインキャラクター。加えて今回は単行本36巻~37巻にかけて収録されている爆破事件と繋がりがある設定。近年追加要素として設定が加えられた安室透の警察学校時代の友人たち(4人全員が故人)が当時関わっていたという形で松田陣平、伊達航、萩原研二、諸伏景光が回想の形で登場する。
作中ではこないだ起きた事件だけど20年前の事件…
単行本36巻~37巻にかけての爆破事件の犯人は3年前に爆死した松田陣平刑事の事件の犯人と同一と思われ、佐藤と高木の恋物語を大きく進展させるエピソードというメタ的な位置づけで描かれていた事件でもあった。1週間ほどしか行動を共にしなかったとはいえ松田に好意を抱いていた佐藤は松田の死を引きずっており、同一犯が起こした事件を追う中で高木(とコナン)が爆死の危機にさらされるも乗り越えて犯人も逮捕した事で高木と佐藤の仲はより深まって過去を乗り越える事が出来た、みたいな。
…いやいかんせん36~37巻って2002年発売なんだよ…。当サイトが始まった年に発売されてんのよ。20年前なんだよ…。うろ覚えだよ…。
事件自体がいつもよりスケールが大きく、印象的なエピソードではあったので20年経っても忘れてはいない重要なエピソードの1つではあったが、長らく松田刑事自体はあくまでこの時の過去エピソードで登場しただけの人であった。
しかし、勘違い大王的な役回りに過ぎなかったはずだった安室透の人気に火がついた事で安室主役のスピンオフまで制作されるようになり、あからさまに安室透周りのエピソードが後付け設定でどんどん追加されるようになっていった中、20作目『純黒の悪夢』で安室が登場した際には安室と松田が警察学校時代の友人で松田から教わった爆弾の知識を役立てて安室が活躍するという展開になった。
その後も「この刑事も安室の警察学校時代の友人でした」ネタがどんどん追加されていった。
萩原研二
→3年前に松田が爆死するより前の7年前に発生した爆弾事件で爆弾解体に失敗して爆死した刑事。36~37巻当時は松田が爆弾犯を執拗に追いかけている理由付として「昔同僚が爆死した」というくらいの扱いだったため萩原という苗字が登場しただけで顔も出てこなかった人。前述のようにこの話は20年前の単行本掲載の話であり、目暮警部の台詞で名前だけ出てきた人なんて覚えているわけない。
安室透のスピンオフ『ゼロの日常』にて安室の同期だった事が明かされるなど急に肉付けされた。
伊達航
→高木刑事の教育係だった先輩刑事として76~77巻にかけて回想で登場。1年前に交通事故で死亡している。この人に関しては登場時点で安室も登場していたため最初から組み込むつもりだったと思われるが、これでも10年前である(76~77巻は2012年発売)。
諸伏景光
→何度か回想が登場しているうちに名前が明かされていたがこの名前よりも黒の組織のコードネーム「スコッチ」としての方が有名。安室と共に潜入していたが組織に正体が露見、同じく潜入していたFBIの赤井は自らの正体を明かして逃がしてやろうとするが、安室が駆け上がってくる音を組織の人間と勘違いして自害。赤井は咄嗟に自分が裏切り者のスコッチを始末したと告げ、安室は友人でもあったスコッチを殺した赤井を恨むという安室勘違い大王化のきっかけとなった。その後何度か設定が修正されたのか、赤井が殺したのではなくスコッチが自殺した事に聡明な安室は気づいていたという事になったと思ったら今度は「赤井はそこまで見抜いていたのにスコッチを見捨てて自殺を止められなかった」という前より酷い逆恨みっぷりになってしまった。
安室の友人だったという事でこれまた同期だったという設定になり=松田・萩原・伊達とも同期だったという事に。それに加えてこの人の場合はたまにしか登場しない長野県警の諸伏高明の弟だったというますます覚えてられない設定が追加されている。諸伏高明は96巻に登場した際のエピソードで景光が恐らく殉職している事を確信した。
松田刑事が2002年に登場してからの20年間の間に後付けで同期でしたファミリーが形成され、2019~2020年には『名探偵コナン 警察学校編 Wild Police Story』なんていう彼らを主人公にした過去編スピンオフまで展開。今作の前にはアニメ化もされた。前作が1年延期になってしまい予定が狂ってしまったためか、アニメ化は丸1年後となったが当初は即アニメ化して2021年に今作が作られていたはず。これでだいぶファンの間に関係性が浸透したという事で今回彼らを映画に登場させたという事だろう。
冒頭から殺されてしまう36~37巻の爆破犯
20年前の原作なので正直もう犯人どんな顔だったかも覚えてないんだけど、冒頭で36~37巻の爆破事件の犯人が今回の真犯人プラーミャの手引きで脱獄。彼を追っていた安室と部下の風見だったが、36~37巻の爆破事件の犯人は既に首に爆弾を取り付けられており、2人の前で爆死してしまう。爆風で吹っ飛んだ風見を助けていた安室はその隙を突かれてプラーミャに爆弾を取り付けられてしまう。
安室はコナンを呼び出して事件解決を依頼。その過程で殉職寸前の松田・伊達・諸伏・安室が4人で毎年恒例の萩原の墓参りに行った帰りにプラーミャに遭遇して大立ち回りとなり、プラーミャを負傷はさせたものの取り逃がしていた事が明かされる。
独自にプラーミャを追う復讐集団ナーダ・ウニチトージティ(民間のロシア人集団)も登場して事件を引っ掻き回す中、ついにプラーミャの正体が…(超省略)。
小五郎は犠牲に…
プラーミャを追っていたというのが当時は分からなかった謎の外国人が爆死した際に灰原が爆風で吹っ飛んで道路に放り出され、かばった小五郎が序盤で交通事故に遭って意識不明の重体に。そのまま最後まで眠り続けてリアル眠りの小五郎状態で出番終了。いや最近の扱い悪い時の小五郎ってマジで扱い悪すぎない…?けっこう重傷っぽいのにほとんど誰も心配してないし、一応つきっきりの蘭もそんなに心配はしてないし…。これで蘭も蚊帳の外だし。
蘭は一応最後にプラーミャの正体判明のきっかけをコナンに与える活躍はあるんだけど、何故かこの際にコナンはプラーミャは村中だったと発言。実際は違う違う・そうじゃ・そうじゃ・なぁいのは既に視聴者も分かりきっている段階なのに何故蘭の前で別の人が犯人だったと言って蘭にショックまで与える必要があったのだろうか。その後のコナンは明らかに村中は何も知らない騙されているだけの人でクリスティーヌ=プラーミャを前提とした下準備を進めており、この村中犯人発言は実際に対峙するまではプラーミャが誰なのかを明かさない演出の都合だったようにしか見えなかった。しかし蘭が1人勘違いしたままになったぞ…。
渋谷のど真ん中で風船ドーン
クライマックスは少年探偵団を活躍させ、説得に応じて改心したナーダ・ウニチトージティも加わって博士が新発明した普段よりも超巨大サッカーボールを射出できる謎アイテムで流れくる爆弾の液体(2つが混ざると爆発する)をせき止めるという珍作戦が展開。
みんな活躍するのは熱い展開ではあったが、いかんせん巨大風船で液体止めるというのはあまりに厳しいんじゃないかという無茶苦茶っぷりで若干失笑気味ではあった。
危機なのに取り乱さずずっとカッコいい安室
安室をカッコよく見せるのは今回も徹底。爆弾をつけられていていつ爆死するのか分からないのに終始冷静クールを保っており、今回当時の関係者5人のうち自身以外が亡くなっている状況ながらも赤井相手のような強い恨みはないのでプラーミャ相手にも終始冷静にスマートに動き回る。『ゼロの執行人』の時もそうだけどちょっと完璧人間に描きすぎじゃない?
意外と話はスムーズに展開
今回はプラーミャを追いかけていく内容で正体自体はまあナーダ・ウニチトージティが犯人集団ではなく、プラーミャを追っている集団だと判明した時点でもう今回登場した中でプラーミャに当てはまりそうな人が残っていないのでやっぱりお前か感はあるんだけど、付随しての関係ない殺人事件等は起きず、比較的動機も目的もハッキリしているので違和感もなくて良かった。ていうかそのためだけに何故こんな大掛かりな事を…っていうスケールと目的が噛み合わない事が多い中で、「爆弾作るのも爆発させるのも楽しい」「私の顔見た奴は消す」「邪魔する奴等もまとめて消す」とか動機そのくらいなんだけど、ゴチャゴチャ理由付けするよりもそのくらいシンプルな極悪人の方が結局おかしなことにはならなくていいのかもしれない。
ナーダ・ウニチトージティのボスのエレニカという重要な役どころで元乃木坂46の白石麻衣が声優挑戦。歴代そこそこキャリアのある俳優でも声優やらせると残念な棒読みという事も多かったが、ロシア語も展開するこの難役を意外とそつなくこなしていて驚いた。別に格段にうまいわけではないが、普段のようにああこの人本業じゃねーな的な違和感は無かったのでクレジットで白石麻衣と出てきてちょっと驚いたくらい。
★★★★☆
コメント