ドラゴンボール超 スーパーヒーロー

2022年6月公開。

4月22日公開予定だったが、3月6日に東映アニメーションの社内ネットワークへ第三者による不正アクセス事件が発生した事で公開延期を発表、4月になって6月公開が正式決定となった。

前作『ドラゴンボール超 ブロリー』から3年半ぶりの新作。通算21作目、『神と神』で劇場版シリーズが再開してからは4作目となるが『神と神』『復活の「F」』は『ドラゴンボールZ』名義で、その後TVアニメ『ドラゴンボール超』で2作を再構成、前作はその続きだったが、今作はさらにその続きとなり『超』では2作目となる。

時系列では漫画版『ドラゴンボール超』でアニメ化されていないエピソードとどちらが先に来るかは不明だが、悟飯とビーデルの娘パンの成長から原作『ドラゴンボール』最終回及び『Z』最終回のほぼ1年前という事になる。

当初からレッドリボン軍や新たな人造人間が登場する事は示唆されており、1番最初に公開されたイラストでは普通に悟空が描かれていたが、2回目以降は悟飯が中央に描かれ、やがて今作は悟飯とピッコロをメインにした内容だと明かされた。悟飯がメインで活躍する映画は1993年の12作目『銀河ギリギリ!!ぶっちぎりの凄い奴』(少年期)、1994年の13作目『危険なふたり!超戦士はねむれない』(青年期)以来となる。

少年時代の悟空に滅ぼされたレッドリボン軍。生き残ったDr.ゲロが人造人間を開発し、16号、17号、18号、セルも悟飯たちに敗れ去ったが(実際には作中に登場したセルは20年後の未来からやってきた個体で現代のセルは開発途中、これを知って現代のセルを今のうちに破壊しておくべきだとしてピッコロクリリン天津飯が研究所を突き止めて破壊したがややこしくなるためか触れず、レッドリボン軍がゲロに資金協力していて全部送り込んだ事にしていた)、レッドリボン軍は表向きレッド製薬としてレッド総帥の息子であるマゼンタが引き継いで着々と世界征服の準備を進めていた。ゲロの孫であるDr.ヘドに注目したマゼンタは、ブルマらカプセルコーポレーションの一味は宇宙人で地球制服のための悪の組織を嘘を教え込んで、組織のメンバーである悟空、ベジータらを倒せる最強の人造人間制作を依頼するのだった。

悟空、ベジータがブロリーと共に破壊神ビルスとウィスの元で修行している中、地球では悟飯は論文に夢中、ピッコロは幼稚園に通うパンの面倒を見ながら修行もつけていた。ピッコロの元に新たに開発されたガンマ2号が出現。自身より遥かに強いガンマ2号に危機を感じたピッコロはやられたと見せかけてガンマ2号を退却させると尾行してレッドリボン軍に潜入。ガンマ1号の存在や、セルマックスなるかつてのセルを越える存在の開発が進んでいる事も知る。悟空とベジータを呼びもどすようにブルマにウィスに連絡を取ってくれるよう頼むもウィスは悟空とベジータのノーマル状態肉弾戦のみでの一騎打ちの最中で気づかない。

仕方なく、ドラゴンボールを使って潜在能力を引き出してもらったピッコロ。レッドリボン軍が所在がつかめている悟飯をターゲットにするためにパンとビーデルを誘拐しようとしている事を利用し、悟飯を覚醒させようとパンを守りながら誘拐されたフリをしてくれるようにお願い。

まんまと引っかかった悟飯は現地に連れてこられてガンマ1号と対決を開始するが超サイヤ人に変身しても分が悪い。ピッコロとパンが人質狂言を行った事でキレた悟飯はフルパワーの潜在能力開放状態(アルティメット)に再覚醒。ガンマ1号と互角以上の戦いを繰り広げる。ピッコロは潜在能力開放でもガンマ2号相手に及ばなかったが神龍の「オマケ」でオレンジピッコロへ覚醒するとガンマ2号の攻撃を全く受け付けずに一撃でぶちのめす。

劣勢になって本性を見せたマゼンタらの態度にガンマ2号はどちらが悪だったのかを自身で判断、1号も戦いを止めて双方は和解した。しかしマゼンタはヘドの制止も聞かずにセルマックスを起動。駆け付けたクリリン、18号、悟天、トランクスと共に全員共闘でセルマックスに挑むことになるが…。

という事で『神と神』以降兎にも角にも悟空最強、悟空と並ぶベジータという悟空とベジータばかりの活躍が目立っていた中でここでピッコロがメイン戦力として復活、ブウ編で単独最強だったにも関わらず主役の座を悟空に返上して以降いいところほとんどなしだった悟飯が大活躍という衝撃の展開になった意欲作。特に『復活の「F」』以降は超サイヤ人になるのもやっと…というほど異様に弱体化してしまった悟飯の扱いはあまりにもあんまりで、『超』の力の大会前にようやく力を取り戻して一定の活躍をしたもののまさか再度映画のメインを張らせてもらえるとは…。

作者のコメントからするにピッコロメインで考えていただけで、悟飯はスタッフの助言もあって活躍する事になったようではあるけど、その名残なのか今作ではピッコロの奮闘が目立つ。最初から最後まで今回の事態を把握して解決のために奔走し続けており、最終対決でも1番ボッコボコにされながらも奮戦したのはピッコロである。

悟飯は闘い始めてからも状況を理解していないので割と巻き込まれたままの状態だったり、覚醒シーンはカッコいいものの、セルマックスとの戦いの際は仙豆を落としたのでアルティメット化に至れない超サイヤ人状態のままの戦闘を余儀なくされ、終盤で仙豆で回復して再度アルティメット化するものの、この間は気を溜めているばかり。ビーストに覚醒した際は楽勝過ぎてほとんど闘っていないので意外と全力で戦っているシーンが少ない。それだけMAXまで行けば最強という事ではあるんだけど、ピッコロの奮戦が目立つなと。

それでも悟飯復権はもうないと思っていたので今作は良かった。やはりセルを倒した時が人気だという事が分かっていたのか、青年期以降で最も長かったヤムチャみたいな短髪逆立てや「超」以降で見せていた髪を下ろしたいかにも弱そうなスタイルから今作での悟飯の髪形は少年期に近いものに変更になっていたのもグッド。

随所でギャグやコミカルな場面も多く、設定のぶっ飛ばしっぷりも原作者だから許されるという部分も相変わらずではあるけど、悟空ベジータ絶対主義を一旦止めて今作が制作された事は非常に大きいと思う。今までの映画の中でも今作が展開としては1番好きだ。

少々気になったのはまだ3歳のパンが物分かりと知能が高すぎる(悟飯を覚醒させるために狂言誘拐をするというピッコロのたくらみと説明をあっさり理解してノリノリで協力)ところで、年齢的にも10歳前後くらいの賢さと立ち振る舞いしているぞこの子…。

またヘドは騙されていたという設定の割にはけっこう悪人。死体を人造人間にして働かせていたという人造人間実験が原因で逮捕され収監されていた…というだけでもけっこうマッドなのに、刑務所でもヘドをイジメていた受刑者たちはみな残らず「原因不明で死んでいった」と自ら暗殺した事をほのめかしていたり、刑務所から出てくる際にも刑務所を爆破して大量虐殺を行っているという、マゼンタに会う前の段階でけっこうな人数を殺害しており、途中から騙されていただけで根は善良だったみたいな扱いされても…というのはあった。ギャグ的なノリで軽く済ませていたけど、最終的にお咎めなしで味方側に引き入れるならマゼンタにスカウトされる以前のヘドをこんなマッドな設定にする必要はあったのだろうか。この時代の人造人間17号18号だって殺人してなかったのに。

セルマックスはなかなかの迫力だったが、理性が無いので叫ぶだけ。全く人語を喋れないが、セル役の若本規夫氏をそのまま起用。なんと大ベテラン声優である御年76歳であった若本規夫氏にただひたすら叫び続けるだけという過酷な役をお願いするという…。さすがに叫ぶだけだったらオリジナルのセルとは違う声だったとしても声優交代だとか言われなかったと思うし、なんで変えたんだとも誰も文句言わなかったと思うんだけど…。

青年ゴテンクスはおあずけ…という事なのか今回は失敗したデブ青年トランクスがギャグ活躍するのみ。この2人の『神と神』以降の冷遇っぷりもなかなかで、ブウ戦のもっと幼い時は他に戦士がいないからという理由で最前線での死闘に駆り出されていたものの、悟空もベジータも生き返ってからは危険だからという理由で教えてもらえず参戦すらさせてもらえない状態だった。原作『超』では今作の前日譚として2人が主役の物語も制作されており、悟空ベジータ以外の戦士たちにスポットが当たっていくなら面白いかも。

ただいずれにせよ孫一家が出てくると全部野沢雅子で85歳(今作時点)。ピッコロ役の古川登志夫でも75歳で普通におじいちゃんなのにさらに10個も上を行くおばあちゃんなわけで…。ピッコロはまだ衰えは感じられないが、さすがに悟空悟飯悟天は叫ぶところはまだしも普通に喋っている場面での声のトーンが出しにくくなってきているのは顕著になってきた。

★★★★☆

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