2022年冬クールテレビ東京系「ドラマ25」枠。
2019年は「日本ボロ宿紀行」、2020年は「絶メシロード」「捨ててよ、安達さん。」「女子グルメバーガー部」「歴史迷宮からの脱出~リアル脱出ゲーム×テレビ東京~」とこの枠を見てきたが、2020年最後の「猫」以降はなんだかピンと来なくて2021年は1つも見なかったが、今回は旅モノという事で見てみた。
1話
北海道・比羅夫駅が舞台。家具メーカーの営業として働く道子(玉城ティナ)は隠れ鉄道オタクで鉄道の1人旅を趣味としていた。OP映像ではモデルのような雰囲気でキャリアウーマン兼モデルのようなキメまくりの姿で登場していたが、作中ではほんわかした雰囲気とモノローグ中心。ストーリーというより圧倒的景色の素晴らしさが癒される。鉄道に興味が無いのであまりオタク談義みたいになってしまうときついかと思ったが知識語りも少なく、旅の良さを押し出していくスタイルも良かった。現地での旅人との交流も少々あったが、今回出会った仕事を辞めてバイトしながら各地を回っているという甲斐(栗原類)はキャスト2番手で各地で出会うらしい(毎回ではなさそう)。
玉城ティナは『極主夫道』で知ったが、当初合わないんじゃないかと思ったが今回はその時よりもモデル感が無くなり、黒髪でだいぶ落ち着いた雰囲気になっていてドラマの雰囲気にも合っていた。元々ハーフ顔の見た目に反して古風で落ち着いた雰囲気の人らしいのでこっちの方が素に近いのかもしれない。今回いきなり雪景色だったが公式は12月上旬に「先日撮影してきた」、玉城ティナ本人は「1話につき1日撮影」とコメントしているので、11月終盤に撮影されたっぽい。ダメな年だと雪が全然ないみたいなこともあり得たのでだいぶついていた(もしくは思った以上に積もってたので雪景色押しに変えた可能性も無くはない)。
ちょっと残念だったのはEDテーマに起用されたスキマスイッチの「されど愛しき人生」で尺に合わせてBメロとサビの中間部を無理やりぶった切っていたため、歌詞の内容が繋がらなくなっていてかなり奇妙な事に…。特にBメロを“夢を描けって大人は言うけど”→(ぶった切り)”この街に溢れてるの?”まですっ飛ばすのはマジで意味不明になってて笑った。何がこの街に溢れているのか分からなくなってるじゃないか。
2話
栃木県男鹿高原駅が舞台。周囲にほぼ何もなく利用者も少ない秘境駅の1種で序盤は文字通りに山間部の景色と道子しか出てこなかったが、そっけない態度の花蓮(佐々木告)が出現。道子から声をかけて行動を共にしているうちに鉄オタ同士で意気投合していくというほのぼの展開に。塾の合宿の帰りのバスをエスケープしてやってきていたらしく、塾の先生からの電話に母親のフリをさせられる道子がちょっと笑えた。また大人の道子に対して終始タメ口でフランクな態度ながら生意気というほどでもない子役演技感(礼儀正しいいい子感)のない自然体な感じがなんかよかった。
前回の雪景色から一転して秋の景色となったが今回マジで何もないので国道の方まで歩いてようやく商店があっておばちゃんが出てきただけ(終盤は乗り換え駅に移動したので駅員も登場したが男鹿高原駅自体は無人)。鉄オタといっても車両知識語りは皆無であくまで駅や周辺観光好きといった描写になっているので今回も見やすかった。
1話では道子が「旅と鉄道」編集長に写真を送っているだけだったが、今回は編集長本人(六角精児)が登場。今回は出番のなかった栗原類に続く3人目のレギュラーという扱いだが、道子とは電話する仲で旅先での写真提供を行っている設定の様子。何故そんなことになっているのか説明が無い上に、今回は編集長の勧めでやってきている事と写真をお願いされて電話を終えていたのでこれでは道子が雑誌編集の仕事で来ているようにも見えてしまうが緩い設定で大丈夫なのか。
子役の佐々木告は検索すると眼鏡姿の子供の写真ばかり出てくるが、「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」の助っ人子役として2020年度にレギュラー出演していたり、ドラマ『ハイポジ』で妹役で出ていたのでたぶん何度かは見た事があったと思うんだけど印象が一致しなかった。最近になって眼鏡外して髪も切ってかなり別人に成長していっている様子。
六角精児は…なんか頬の膨らみが増していて…さらに太った…?
3話
静岡県奥大井湖上駅→ひらんだ駅が舞台。湖上駅として有名な奥大井湖上駅では絶景に次ぐ絶景連発。外人2名の観光客も下車していて流れで一緒に周辺を回って友達になったりとはあったが、相手は完全に英語で道子はそこまで達者ではないのか会話らしい会話はほぼ無し。その後、来る途中で気になっていた隣のひらんだ駅でも下車して周辺観光。といっても何もないので湖を前にして事前に購入していた地ビールとおにぎりを食べて叫んでいたら地元の釣り老人がやってきて昔の話(ここにあった村はダムが出来て沈んだという話)を聞いてそのまま観光ムービー状態で終了。
今回は「旅と鉄道」の存在も示唆されずに(雑誌絡みの示唆が無いと編集長の部下のぞみが主人公のネット限定スピンオフ『鉄オタのぞみ、50キロ』との接点も皆無になるんだけど…)ほぼ道子のモノローグと絶景だけで静かな癒しの時間が流れ、ドラマらしいドラマは無かったがこれはこれでよかった。
4話
福島県大川ダム公園駅が舞台。会津田島で列車に乗り込んで大川ダム公園駅にたどり着く前には同乗者にマイクで音を録音する音鉄の青年(水石亜飛夢)、永遠と喋り続けるおばちゃん3人。それぞれ一切干渉せずにそれぞれの乗車時間を楽しむ様子がおばちゃんの途切れないトークをバックに流れ続けるという静かなのかうるさいのか良く分からない時間に。
駅到着後、待合室で音鉄の青年と初めて会話した道子。音鉄と撮り鉄であることを確かめ合うがダムまで一緒に行きます?という青年に対しては引き気味に遠慮。単独行動をしていたがクマ出没注意の看板を見ているところで再度青年と合流してクマよけの代わりに先ほど録音していた車内の音というかおばちゃんの途切れないトークを流してクマよけにするという珍妙な展開に。青年によれば昔は人がいない時間を狙ったり、会話を消そうと編集したりしていたが、ノイズ除去をかけると消えるのはむしろ車内の音の方だったりもして全てを自然に受け入れる事にしたと言う。しかしここでもほとんど会話は弾まず道子の方から話題を振る事も無く、結局次の弁当シーンでは再度別行動になっていた。
そしてダムの観光施設に到着すると先に青年が来ていてまたしても再会。どうやら青年はダムマニアでもあるらしく、ダムカードがもらえると道子に教え、アンケートに道子が出身地の沖縄を書いているのを見ると(青年は北海道だった)、沖縄のダムが云々と語りだし、ダムカード図鑑を取り出してダムの説明をマシンガントークし始めた。これは道子も良く喋るなぁ…という感じで途中からナレーションを被せてフェードアウト処理。ただこれでドン引いたわけではなく一応距離は縮まったのか、その後駅に戻るまでは一緒に行動したようで駅で青年はもう1駅歩いて帰ると言ってクマよけのおばちゃんトークを流しながら去っていった。
道子の2話の少女や3話の外国人との距離感を考えると今回の青年には随分引き気味だった。同世代の青年で同じ鉄道オタクでも派閥が違う音鉄相手だと話す事が無くて間に困るのか、異性が苦手な設定なのか…。その一方で青年がダムマニアっぷりで本領を発揮してからはそんなに引いている様子も無く穏やかに受け入れていてその後が駅まで一緒に行動していたのでやはり同世代の男性相手で少し警戒していただけだったのか。そしてしれっと道子が沖縄出身=玉城ティナと同じ設定だった事も判明。
エンディングで安田団長のクレジットがあったのでどこに出ていたのかと思って見返したらド頭の風景カットの中で会津田島の駅に佇む団長の姿が1カットだけ映っていた。しかもご丁寧に「所」マークをつけていており、その姿は同局の『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』のコーナー「あなたはナゼ秘境駅に来たんですか?」のロケで来ているという設定だったようだ。
5話
福島県早戸駅が舞台。この駅の近くにある早戸温泉つるの湯から家具の依頼があり道子が仕事でやってきたという設定で、OP映像で示されている道子が家具メーカー社員という設定が初めて本編でちゃんと登場した。打合せという事で資料を提示するなどしてプレゼンしていたようだが、わざわざこんな辺境の地まで出向いてきて話すような内容でも無く、気まぐれで主人公の仕事を絡めてみたみたいな感じでちょっと無理が…。
駅から温泉までは車で迎えに来てもらっていたが帰りは歩いて駅まで行くことにしたが、撮影日が雨天だったため、雨が降っている中でわざわざ歩いて帰ろうとするという超絶変な人になってしまった。当初の台本が歩いて帰って絶景絶景また絶景という進行予定なので変えられなかったんだろうけど、最初からザバザバ降っているのに道子が持っている傘はサイズ小さめのため終始背負っているカバンがオールはみだし状態。ちょっとはみ出てるとかじゃなくてカバン全部が綺麗に傘からはみ出ているのでこれじゃカバンびしょびしょになるじゃねーか…。
駅まで戻った後はいよいよ本降り状態の中でまだ時間があるとして付近を散策開始する道子。相変わらずカバンがオールずぶ濡れ状態だったが、渡し船のところまで来たところで温泉にも来ていた若いカップルが渡し船から降りてきて本来予約必要だがキャンセルが出たのでいいですよと船頭に言われてそこからは最後まで渡し船の上で絶景を連発しておしまい。
先客のカップルも傘をさして船に乗っており、道子が声をかけられるまでは明らかに本降りだったが、CM明けで道子が船に乗っているシーンになると傘は消え去っていて曇天ながら雨は止んでいた。ここは今回のサブタイトルにもなっているメインの部分なのでなんとかギリギリまで雨が止むのを待って撮影したっぽい。
さらに道子からの電話で編集長(六角精児)が再登場。現実でもドラマとコラボしていて実在する雑誌『旅と鉄道』に道子がYUI名義で旅の連載を持っていた事が作中で初めてちゃんと提示された。ドラマだけ見ていると何故編集長とやり取りをしたり写真を提供していたのか謎だったが、PNで連載してたのか…。
6話
箱根登山鉄道塔ノ沢駅が舞台。これまで時期は明言されていなかったが今回はタイトルが「クリスマス編」と謎に「編」扱いになっていてド頭からクリスマスとナレーションでも明言した。冒頭で宮ノ下駅付近の足湯のあるカフェで大学時代の友人が彼氏と来ているのを発見した道子はわざわざ下に降りて行って声をかける。25歳設定なのでストレートなら卒業以来で3年ぶりのはずだが全く話す事が無いのか話しかけたはいいものの全く会話が弾まず、双方ぎこちない。道子も道子で離脱するタイミングを失って無理に会話をしようとしても出てこない始末で友人や彼氏の鉄オタなの?という問いかけには違うと否定する始末で気まずいことこの上ない微妙な空気になり、結局急いでないと言っていたそばから急いでいると言って無理やり離脱。なんだったんだこのぎこちなさ…。向こうから見つかって声をかけられたなら分かるけど自分から声かけておいてこれって。
宮ノ下駅からしばらくは母と男の子2人の親子と同乗。こちらはかなりの鉄道好き親子らしく向こうから声をかけてきて友人よりはトークが弾む。しかし先ほどの友人とのぎこちなさでテンションが落ちたのか目的地はあったが気分ではなくなったとして目的地は?という問いには「ない」と答えてしまう道子。今回嘘ついてばかりじゃないか…。
大平台駅で親子と別れた道子は周辺を散策。散策しながらナレーションで大学時代の話が語られ、大学時代にクリスマスに急に色々疲れて学校に行きたくなくなり駅で降りられずに知らないところまで乗り続け、たどり着いたどこだか分からない場所で思わず「ここどこだよ」と言葉が出てなんだか癒されて復活したという。これが道子の口癖「ここどこだよ」の原点にして鉄道旅にハマったきっかけだったというが、先ほどの友人は特に関係は無く単に学生時代を思い出すきっかけとなっているだけ。あの友人との表面的な関係に疲れたとかそういうわけではないようだ(そもそもそんな表面的な友人なら自分から声をかけないだろうから当時は普通に仲が良かったはず)。
スイッチバックカフェにたどり着いた道子はスイッチバックの様子を撮影。その電車にはここの店員さんに撮影を頼んでいた先ほどの親子がメッチャカメラ目線でニコニコで手を振って乗車しており道子もこれを撮影。後にYUIの投稿として雑誌『旅と鉄道』に掲載されるという思わぬ展開となり喜んでいたという。
この時店員に鉄道が好きなのか聞かれてちゃんと「はい」と答えた道子は目的地であった塔ノ沢駅へ向かう事に。到着時既に夜になっており、無人駅の構内で学生時代のクリスマスに食べたというあんぱんを1人食べて再度原点を確かめて終了。夜と無人とクリスマスが相まってすごく孤独な感じになっちゃてたけど別に寂しいとかではなく普通に満足なナレーションだったりと制作側が道子をどういうつもりで描いているのか分かりにくいな。
過去の描き方が唐突かつ説明不足で意味深だったのでそこに寂しさがあるのかないのか…今までほぼ描かれなかった道子の内面が描かれたとはいえ分かりにくかった。特に自分から声をかけての友人とのあの微妙な空気とそれによって目的地の塔ノ沢駅に行く気分じゃなくなるほどのあの動揺は何だったのか。久々に会った友人が全く違う人生を進んでいるのを感じて優劣とかではなく距離を感じて複雑な気分になる、もうあの頃とは違うんだなと感じる、という繊細な感じは分からなくもないが…そんな繊細な人物像は描かれてなかったからなぁ…。
7話
北海道・渡島沼尻駅が舞台。駅舎が明日で閉鎖になるという事でやってきた道子だったが、令和3年11月30日で閉鎖、今日は11月29日だと明言。日付が明言されたのはクリスマスだと明言した6話に続いてだがなんと前回6話の1ヶ月近く前で、このドラマ毎週の時系列ではなかった事に…。
ここで編集長から電話があって、さらに1話以来の登場となる甲斐(栗原類)が車でやってきた。これにより一応レギュラー扱いのキャスト3人が初めて3人とも出演する回となり、クレジットされた。しれっと乗り込む道子。ご無沙汰ですとか言い合っているが1話で偶然会っただけで?え?と思ったらナレーションで比羅夫駅(1話)で出会った時に連絡先を交換していてお互いの撮った写真等のやり取りをしていて今回目的地が一致したという事でレンタカーを借りてもらって合流したと説明。急な設定をぶち込んできたが、整合性を考えずに設定をぶち込んでなんかおかしなことになるのは同枠放送の『日本ボロ宿紀行』や『絶メシロード』でもおなじみで、今回を11月29日に指定してしまったのでじゃああの雪景色全開の1話はいつだったんだ?という謎が生じてしまった。
当初は普通に1話が11月末~12月上旬頃かと思っていたが、6話がクリスマス(2021年12月25日土曜)と唐突に日付指定が入った事で、毎週土曜と仮定すればさかのぼっていって1話は11月20日頃だった事になっていた。今回で放送順と時系列はバラバラだったかもしれない事になったので確定的ではなくなったが、これまでが時系列だったかに関係が無く、11月29日に「それぞれの旅先の写真を複数回送り合っていた」「会うのは御無沙汰」になるくらいは1話が前の話という事になったので11月29日から1ヶ月前となると今度は1話が10月下旬から11月上旬以前になってしまい、さすがにあんな雪景色にならないんじゃないかという事になってきてしまう。
なお6話クリスマスから遡っての時系列で1話が11月20日だった場合は今回の話は1話から9日しか経ってない事になり、さすがに初対面から9日で「御無沙汰です」は無い。
まあ渡島沼尻駅の駅舎が2021年11月30日閉鎖という現実があったのでどうしようもなく、7話にして急に時系列じゃなくしたものの、よりによってここで甲斐を出した事で時系列に無理が生じたが2021年11月30日閉鎖という現実を優先したといったところか。
その後車で灯台へ移動。この際に甲斐がYUIの連載のファンであると熱弁。道子は自分がYUIだとは明かしていないため「なんかゴメン」と思いながらYUIへの熱意を語る甲斐を流し気味に対処。ついにはYUIに会うために旅をしている、出会えれば運命だとまで言い出すので余計に私がYUIですとは言いにくい…。
しかしこれも同枠ドラマの後付け無理設定で、写真を送りあっているならYUIの連載で取り上げている旅先と道子が送ってくる旅先が写真は変えていても毎回同じ場所であることからYUI=道子の疑念がすぐに生じてくるはず…。バレないように小細工をして時期をずらして写真を送っているのだろうか。どっちみち紅葉具合とかでバレそうな季節だけど。道子=家具メーカー社員なのを知っているなら雑誌連載と繋がらないのだろうか。
ここで灯台に赤い服の謎の女が出現。この赤い服の女は冒頭の駅舎でふいに出現し、道子より先に駅舎に入っていったのに道子が駅舎に入った時にはもういなくなっていて、甲斐と道子が合流して車で出発する直前にまた同じように駅舎に向かってやってくる様子が意味深に映し出されている(本来甲斐と道子の車内2ショットのはずの場面で甲斐を映さず左に道子だけ映して右半分に赤い女の歩いてくる様子を映し出すほど露骨なカメラワーク)というチョイホラー気味に描写されている謎の女だった。
甲斐はこんなところにいるなら鉄オタだYUIかもしれないと意気揚々と話しかけに向かうが、鉄オタですか?などといきなり問うぶしつけな態度に代わって道子が話しかける事に。一応ある程度の会話は成立するも名を名乗った2人(フルネームで名乗った道子や編集長でさえフルネーム設定あるのに甲斐は何故か「甲斐」としか設定されてないので「甲斐です」だけ)に対して赤い女は名乗らない。地元だとは明かし、駅舎が最後なのは知っていたがいざ来たら何故来たのか分からずここに来たと幽霊のような生気のない白い顔で無感情に語るのみであまり話したくもなさそう。結局さほど会話も弾まず。
車に戻った2人だがここで甲斐が重大な問題に気づく。地元だと言っていたがこの灯台までどうやってきたんだ?自分たちが車で走ってきたのに徒歩では無理だろう、と。乗って帰るか一応聞いてみますかね?と甲斐の提案で車を降りて再度赤い女がいた方へと歩き出す道子と甲斐。しかし女がいたはずの灯台の方向からさらに海まで飛んで行って周辺全体を映し出した上空からの全景に女の姿は影も形も無かった。
エンディング直前のYUIの一言写真でも駅舎に入っていく赤い女の姿がスーッと消えていく心霊演出で…。
なんと謎のホラー展開。赤い服の女は自殺志願者にもこの地をさまよう亡霊にも見えたが、今作が『鉄オタ道子、2万キロ』でありホラードラマではない事を考えれば、終わりゆく駅舎が実体化した or 冒頭で行っていた役目を終える車両が実体化したような存在くらいのつもりで描写したのかなと。ただ駅舎に置いてあったノートにはこの駅舎が好きな人たちの温かい言葉や感謝の思いがつづられているという描写もあっただけにあんなくら~い様子ではそのような思いは全く届いていない事にも…。やはり今回脚本が超設定すぎたかな…。
8話
鹿児島県西大山駅が舞台。北海道から一気にJR最南端の駅まで南下。前回に続いて甲斐が登場したが冒頭は甲斐目線で始まり、YUIの連載は人が少ない場所が取り上げられることが多いのでYUIに遭遇するために来たと甲斐初のナレーションで説明。しばらく甲斐のナレーションで進行したが、駅は割と観光地化していて人もそこそこいたので目論見は外れ、ガッカリして少しでも人がいないJR最南端の踏切の方に向かっていったところ、向こうから道子がやってきて驚きの再会。ここからは道子視点に戻ったが、道子が駅に到着する様子が描かれなかったので今回はキメ台詞の「ここどこだよー」は無し。
こちらも珍しく道子がやってきた理由は災難から逃れるために最南端に来たというダジャレ(こんなギャグ甲斐には言えないとして言わなかった)で、YUIの連載が原稿と写真が違うものになっていたというミスと編集部が忙しいために修正する間もなく今号は連載休止という形で無くなってしまった、部下が仕事でミスったというもので、珍しく本業の方にも触れてみたものの部下とのLINEのやり取りが画面1枚に表示されただけ。本編ではほとんど仕事に触れていないが道中で部下や同僚とやり取りしている様子からそれなりのポジションで有能っぽい事とOP映像ではモデルのようなエース営業社員として業界紙に特集されるほどのスーパーキャリアウーマン扱いされているのが描かれているため、副業とはいえ原稿と写真間違えなんて初歩ミスやらかすかなとも思うが…(部下のミスも確認ミスだし)。
なお現実に存在する『旅と鉄道』は奇数月発売の隔月刊誌になっているので、2ヶ月に1回。これではドラマ内での時間軸において毎週行動で11月あたりから始まったとすれば11月発売号にしか載ってなくて1月はまだと思われるがその1月が飛んだという事になり、その次の3月までは時間軸が進まないと思われるので最終回までもう掲載が無い事になってしまう。この世界の『旅と鉄道』は超人気で週刊か隔週刊なのだろう(月刊で設定ギリか?)…。
今回は珍しく完全に駅周辺を大きく離れての行動となり、自転車を借りて甲斐主導で観光していく事に。甲斐はまずさつまいも発祥の地の石碑まで連れて行ってこれが何…?と不思議がる道子に説明せずに次の目的地まで延々6キロも自転車移動を強いる。着いた温泉地でさつまいもを蒸して食べるというのが甲斐の目的だった。ようやく何がしたかったのか判明したが淡々とでは40分待ちと告げ、何もない40分が流れたためかその間は周辺の観光写真がダイジェストで流れるスライドショータイムに…。そしてキメ台詞の「ここどこだよー」に続いて駅弁タイムもこれに取って代わられた。
サツマイモを食べている間に地元の人とのやり取りもあったが、その後はもう時間が無く、甲斐を見送ったというナレーションで甲斐が強制退場していて、道子は1人で砂風呂で蒸されたサツマイモと同じ気持ちになって終了。何故かエンディング終了後に砂風呂を出て歩いていく道子の無言カットが挟まされた。
ちょっとした変則回。甲斐視点で始まったのは新鮮だったが退場がナレーション処理で結局今回もYUIの謎に全く触れる事すらできなかったのちょっとかわいそう。
9話
新潟県筒石駅が舞台。冒頭で出張帰りというナレーションもあったが普段と変わらないスタイルのため取ってつけで入れた設定ナレーションのような…。降り立った能生駅は目的地ではなく珍しくここからタクシー移動。そこから山の中の地下に存在する隣の筒石駅付近で降りてそこから徒歩で筒石駅を訪れるという展開に。かつて海沿いを走る鉄道だったが地滑り多発により、ルートを山の中をトンネルぶち抜いて大幅変更。これに伴い無くなるかもしれなくなったが地元の反対等もあって、このような山の中を地下に潜っていく特異なトンネル駅になったという。道子としてはこの駅で降りたり乗ったりするよりも、入り口から地下へ潜っていくのをやりたかったらしい(結局来た電車を1本見送ったまま脱出しているのでここから帰るつもりもなかったらしい)。
雰囲気だけで薄暗く不気味であるためか、意味深に蛍光灯や壁を頻繁に映しまくったり、変わった位置からの映像を連発する事で自動的にホラー感が醸し出される中、当初は道子も動じずに動き回っていたが、現れたオッサンがスマホに向かって小声でブツブツ実況録音しているという不気味な野郎だったためさすがにビビりまくる。道子が気づいたセコムに男も気づいて道子に同意を求めてきたので適当に相槌を打った道子だったが男は変わらずブツブツ録音し続けたままホームへと去っていき、恐怖MAXとなった道子は階段を駆け上がって脱出する始末。
後半は付近の漁港を散策。なんか漁港の建物内のベンチを勝手に使って駅弁食べてたけど時間外で誰もいないとはいえ勝手に入って大丈夫なのかあれ…。その後はさらに付近の趣きある街並みを散策して街を抜けて自然にたどり着いていい場所を発見したと写真を撮って終了。
なんとブツブツ録音男に愛想笑いの相槌を打った以外に一切の会話無しどころか、漁港以降は一切人が出てこない。冒頭のタクシーも運転手の姿が一切出てこない演出で駅も2つとも無人駅。ひたすらに風景とモノローグのみ。これでは物語も生まれず観光ムービー極まる展開だった(編集長との電話も無し)。これまでも観光ムービー状態はあったがここまで人が出てこなかったのは初。前2回が甲斐が同行してて会話が多かっただけに今回が余計際立った。
10話
鹿児島県薩摩高城駅が舞台。出張帰りという設定で後輩のひかり(高石あかり)と一緒に登場。同僚の登場は初。新幹線で特急で東京に戻っても働かせられるだけという理由であえて鈍行での移動を道子が提案したとされ、公式あらすじは「肥薩おれんじ鉄道線で東京に戻る事に」とかさらっととんでもねぇ事が書かれているが、さすがにこのまま延々と鈍行乗り継ぎを重ねて東京まで帰るつもりではなく、直で新幹線の止まる駅や空港に向かうのではなく主要駅や空港まで景色を見れる路線でのんびり移動しよう…って事でいいん…だよな…。打ち合わせ段階から様子がおかしく元気が無かったひかりに相談に乗ると声をかけた道子だったがふいにひかりが号泣。少し途中下車して散歩していくかという事になったのかその後は急に薩摩高城駅で途中下車。ついつい去っていく電車を挙動不審に見つめ続けた上にいつもの「ここどこだよ」を口走って変に思われる道子だったが基本的に「鉄」をいきなり出したくないとしてカメラもカバンの奥に封印したまま。電車の写真を撮りまくっていたらそりゃ「鉄」認定されるかもしれないけど、景色撮りまくったところで「鉄」ではないのでは…。むしろちゃんとしたカメラ使ってて写真好き、カメラ好きな人だとは思っても鉄オタとは思わないよな。
気分転換的に散歩を切り出した道子は駅からすぐの絶景スポットな海岸へ移動。事前に買っていた駅弁を食べた後に1人になりたそうだったので、一旦後輩を1人にして駅付近に戻った道子はここぞとばかりにカメラを取り出して写真を撮りまくる。ひかりはラブラブなカップルの眼前で放ちの鐘を連打して追い払うなど腹いせを行ってスッキリしたのか、その後は道子を誘って徒歩で移動して顔に見える岩がある海岸線から沈んでゆく夕日を見つめて終了。この際にひかりの方から先輩って「鉄」ですよね?と道子に聞き、何故か聞けば会社内では既にみんな気づいていたが黙っていた、知らないふりするのもしんどいからもう隠さなくていいですよとのこと。感謝を告げる道子だったがひかりによれば泣いてるんじゃないか?(直接映し出されてはいない)とのこと。
6話では大学時代の旧友に完全に隠して否定していた道子だったが、設定上は当初は隠している(OP映像の道子が最後に内緒とばかりに口元でシーっとやって終わるのはこのためと思われる)という設定だったが聞かれないから言わないだけで別に隠してはない設定に変わっていったとされるが、それでもやはり隠している寄りに話が作られているっぽかったので、バレててホッとしたという部分はあったのかもしれない。ただ周囲にバレバレな程だったというのは、OP映像のように会社のデスクに謎に時刻表やらなんやら鉄道関連書籍が仕込まれていてあからさまだったりするせいなのだろうか。
なお今回の薩摩川内の観光ムービーに玉城ティナが出演して昨年末に映像が公開されていたようだけど、この収録を兼ねて同じ時に撮影されたものなのか、この出演があったから繋がって出演が別途決まったのかどっちなのだろう。
冒頭の肥薩おれんじ鉄道線で東京に戻ろうとしている雑な説明に加えて、途中下車した駅で昼食(駅弁)を食べながらそのまま徒歩移動してついに夕暮れにまでなってしまったが昼前到着としてそんな5時間前後も薩摩高城駅付近に滞在していたのかというのも謎と言えば謎だった。こんなところで夕日が沈んでしまってこの後どうやって戻るのか、今日もう帰れないだろと心配になるレベル。整合性や時間軸よりも夕焼けと岩という絶景が前提にあったのでいきなり夕暮れにしてしまったのだとは思うけど…。
11話
静岡県川根小山駅が舞台。冒頭ナレーションで触れたように以前も来た大井川鐵道井川線の再訪(3話の奥大井湖上駅、ひらんだ駅の事で今回の川根小山駅はそれより手前なので3話の時は行き返りで通過しているはず)。どうせなら3話よりも奥にある駅で道が通じてないので電車でしか行けない&周辺な~んもないとされる伝説の尾盛駅を取り上げて欲しかったが、周辺観光もまともに出来ないので30分すら時間が持たなくて無理か…(『山さ行がねば』の管理人さんなど廃道を辿って徒歩で駅に到達した記録はネット上にもあるが崩壊部分もあってかなり危険な事は伺える)。
冒頭の上空映像がやたら山の風景が緑緑していてこれは秋冬ではないのでは…という感じだったんだけど別撮り資料映像だったのか、この辺は紅葉しないタイプの木々しかないのか…。1度1ヶ月以上巻き戻った事はあったものの、クリスマスまで行ってたからもうとっくに年明けになっていると思いきやなんかそんなに寒そうでもなかったし、撮影がかなり最初期に行われていたのか。いちいち2度も訪れるより3話と同時撮影が手っ取り早そうだし。
道中で編集長から電話がかかってきたが旅の途中だと知ると要件は後でメールで送ると伝えつり橋が揺れて怖いという情報だけ教えてくれた。周辺には村がある程度であまり観光するところも無いので、猿の鳴き声に威嚇対抗する地元おばさんと少し話したり(駅の利用者はいない、車の方が早いからだとされ、駅が「川根小山」→「川猫山」として猫押しの展開をしている事も知らなかった)、駅弁食べようとして猿の鳴き声でビビッて移動、駅弁についていたポストカードを自分宛に送ろうとしてポストの場所を地元おじさんに尋ねたらこれまた今はペーパーレスの時代だから分からん、たぶんあっちにあった気がすると確証を得られず終わるなどしながら移動。最初に渡った揺れない橋を編集長が言っていた橋だと思っていたらかなり移動したところで本当の揺れるつり橋を発見。ビビりながら渡り切って川辺で弁当を食べながらそのままおしまい。
この際に編集長からのメールが届き、これまで不定期連載だったが毎号の連載にしたいという連載の依頼とYuiを高く評価していてゆくゆくは社員採用を前提にして1度話をしたいという内容だったことが判明。しかし何故か道子のこれに対する直接の反応は無く、スルーしたまま、猿に昼食を邪魔されたりポストが無かったりと思い通りにいかなかったけど思いがけないことが起こるのが旅だなどとナレーションするのみ。思いがけない事が起こるというのは毎号連載話の事だとは思うけど、何の反応も示さないのはあくまでPNによる副業のつもりだからか。
あとこの世界の『旅と鉄道』一体どういう雑誌なんだ。現実には隔月刊誌(年に6冊)なので隔月刊誌に不定期掲載となれば年2,3回しかYuiの連載載ってない事になるけど(しかも作中で1回掲載見送りになってる)、この世界だと少なくとも月刊誌や隔週刊でも足りない、やっぱり完全に『週刊 旅と鉄道』な勢いじゃないか。
12話
冒頭で編集長が勝負服の駅長コスプレでYuiからの返事の電話を待っているシーンで編集長のあの格好はなんなんだと社員と話している女性社員としてのぞみ(久保乃々花)が本編唯一の登場。ネット限定スピンオフ10分ドラマ『鉄オタのぞみ、50キロ』主人公だったが本編とほぼ接点が無かったのでようやく接点が。なお『鉄オタのぞみ、50キロ』の方は最初の数話でのぞみのあまりの仕事ボサリっぷりと電車が都会の電車で旅の風情とは違う内容なので見なくなってしまった…。そして車掌コスプレはそれ中の人の六角精児氏がやりたかっただけじゃ…。
電話ではYuiこと道子はメールで依頼されたのでメールではなく旅先から返事のハガキを出すと返事していた。
千葉県竹岡駅が舞台。今回は有休で来ているというナレーションはあったが、経緯は説明しないままにしれっと4度目登場の甲斐と現地合流。この際に編集長宛のハガキを落としてしまい甲斐に拾われてYuiから編集長への内容だとバレてしまい、これは確実に正体バレたと思いきや全く動じない道子。元々落ちてたYuiの落とし物だろうから出しておいてあげようなどと平然と言い放ってごまかしてしまった。鉄のハートすぎる…。あっさり騙される甲斐がアホすぎるがしかしここまで平然とされると仮に疑っても聞けないか…いや甲斐は聞くようなやつだから本当に疑ってないのだろう。そしてハガキの内容は普通に本業に愛着があるのでという連載の話もお断りする内容だった(これまで通り不定期掲載という事で掲載を断ったわけではないと思われる)。
周辺観光する中でトンネルはオジサン2人が写真を撮り合っているのが不自然に映っていてついには道子に写真を撮ってくれとお願いしてきたが、この2人はゲスト出演のスキマスイッチ。その後も駅弁タイムを経て(道子の奢りで2個買ってきていて甲斐もそれを期待して特に持参していなかった)、夕暮れを経て隣の浜金谷駅に到着した時はすっかり夜に。駅前に来ていたワゴンの移動珈琲店の店主が謎に名脇役の矢柴俊博だったりしたが駅前でコーヒーを飲みながら旅について道子と甲斐が会話していてそのまま終了。
エンディング映像はこれまでの振り返り映像でエンディング曲終了後に編集長がYuiからのハガキを受け取り残念がりつつも大井川鐵道のハガキを竹岡駅から送ってくるのがYuiらしいなと言っておしまい。この事から11話で駅弁についていたポストカードを自分宛に送ろうとするのもポストが見つからずに断念したあのハガキを編集長への返事用のハガキとして再利用したと思われる。
最終回も最終回らしくなく、甲斐との会話で旅そのものについての総括っぽくはなっていたもののあっさり終わった。
数話で見なくなっていた『鉄オタのぞみ、50キロ』最終回だけ見たけどYuiが編集部に来ていてもう帰ったという話をのぞみが電話でしていたので、改めて編集長と今後の掲載方針について話をしに道子が出向いていたのかもしれない。
全部終わっての感想
思っていた以上に景色が素晴らしく癒しの時間が流れる静かなドラマだった。というか日常描写と出発までを完全省略して駅に到着するところから毎回始まるし、帰路に着く前までで終わるなど旅のメイン部分のみに放送時間全振りしていてほぼ設定も物語も無かったのが良かったような、何も無さすぎて物語が無さすぎてドラマになってなかったともいえるような…といったところか。ほぼ設定が無かったとはいえ、この枠特有の設定の緩さとしては突如1度11月末に時間が戻るような作中の時系列と現実は隔月の『旅と鉄道』の作中での刊行ペース月刊でも遅すぎて隔週か週間なのかというくらい謎だったくらいか。
道子が車両そのものや駅だけにこだわっている様子は全くなく、旅と風景自体を楽しんでいるため、駅周辺の観光の方が時間が圧倒的に長く(駅を離れてしまえば鉄道は全く関係が無い)、タイトルに反して過度な鉄オタ解説がさほどなかったのは見やすかった。同じノリのまま続編も作れそうだし、期待したい。
玉城ティナはこういうナチュラルな感じや田舎風景、旅姿も似合うんだなというのはイメージになかったので意外だった。元々古風なところもある落ち着いた人らしいので案外こっちの方が素に近かったのかも。
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