金田一少年の事件簿(堂本剛版)

金田一少年の事件簿(堂本剛版)

初代。アニメ化より早い最初の映像化で1995~1997年にかけて、SP、連ドラ(1期)、SP、連ドラ(2期)、映画と展開して明確に完結した。ドラマ版で完結を銘打って完結した唯一のシリーズ。

学園七不思議殺人事件

1995年4月8日単発2時間ドラマとして放送。原作File 4(4,5巻)。歌のある主題歌はさすがに用意されず、おなじみのOPテーマがエンディングでもそのまま流れる。

今作が最初という事で金田一(堂本剛)は転校してきたという独自設定。子供の頃住んでいた街に戻ってきたという設定らしく美雪(ともさかりえ)とは12年ぶりの再会で幼馴染だった事には変わりはない。…が12年ぶりでは4歳の時である。そんな幼少期の幼馴染なんてほぼ他人で16歳で再会して思いだせるほど面影が残っているかも怪しいぞ。金田一はのほほんとしている性格のせいか普通に美雪呼びだが、美雪は「はじめちゃん」呼びではなくこの回のみ「金田一君」呼びなのも当然の判断だろう。剣持警部(古尾谷雅人)とも事件を通して知り合い、そこまで邪険にしないがそこまで信頼もないというどっちつかずな状態。

真壁(佐野瑞樹)、佐木(原知宏)が当時ジャニーズJr.だったが、後年の山田版、道枝版のようなあからさまなジャニーズ案件対応にはなっておらず、以降準レギュラー化するものの毎回登場するわけでもなく、原作から削減された登場人物の代役が割り振られたり、登場しない回も多い。佐木なんかビデオ担当ではあっても必要なのは佐木ではなく検証映像なだけというような割り切りっぷりで正直ほとんど目立った活躍が無くて山田版、道枝版を見てから後追いで見ると佐木ってこんな脇役だったのかと驚くレベル

加えて真壁のゴーストライター鷹島友代(三浦理恵子)も準レギュラー化するが、この話の最期で真壁との立場が逆転して地味な風貌からあか抜けた風貌(というか当時の三浦理恵子そのまま)となり、高飛車な態度へと変貌している姿も描かれる。連ドラ以降も時々登場するが、真壁との関係も無くなっており、見た目は変貌後の三浦理恵子そのままだが代役での出番が多く様々な属性が加えられた結果、最早存在自体が登場ごとに名前と顔が同じだけど別の人みたいなパラレル的な扱いに…(後述)

この事件が1発目というのがインパクトになったのか、原作ではFile 4なのに何故かアニメ版でも最初のエピソードとして採用、28年ぶりリメイクも含むとした道枝版でも初回2時間SPで再度1話として放送されるなど、謎に1話属性がついた。

ドラマはリアルタイムではなく2期が始まるまでの間にレンタルビデオで視聴して追いついた。同時に原作も一気に集めていたが、このドラマ版最初にしていきなりオリジナル要素を決め込みまくりで、なんか知らない女の先生が関係者に混ざっていると思ったら、原作犯人が途中で犯行を自供して自殺。原作犯人を愛していた元生徒の女性教師が真犯人だったという犯人改変が行われていてビックリ。

なんか変な改変しちゃった印象ではあるけど、当時まだそんなに有名じゃなかった堤幸彦のホラー感とインパクトを追求したような演出にスリリングさがあって今見ても良く出来ていると思った。当時の少年マガジンで多用されていた「!?」に該当するような場面でいちいちダン!と効果音を出し、しかもやたらとダン!ダン!ダン!ダン!ダン!とカットを変えながら連呼しまくるのは子供心に怖かったけど引きずり込まれた。

木造の旧校舎設定もこの1995年当時ならまだありかなという時代だった。

連続ドラマ1期

1995年7月15日~9月16日放送、土曜21時枠。全8話7事件。最後のFile 7だけ前後編で、6エピソードは1話完結。SPから引き続きのインストのメインテーマがOPに引き続き使用され、エンディングは堂本剛ソロ「ひとりじゃない」。歌唱映像と共に流れていたがCDデビュー未定で音源化されたのは2年後。CD化された際に再録音したようでボーカルがやや異なっている(ドラマの方が声が若い)。確かフルバージョンの歌唱映像が本編ではまだ無かった『学園七不思議』のビデオに入っていた記憶が。

当時すぐにビデオ化、00年代序盤にDVD化もされた。

1話 ファイル1 異人館村殺人事件

原作のファイル2。連ドラ1話にしていきなり封印作。ドラマの内容ではなく原作の島田荘司『占星術殺人事件』からのトリックの流用が問題となり、原作はトリック流用の注意書きを入れる事で販売は継続したが極力触れない扱い(『犯人たちの事件簿』でも取り上げず)。島田荘司がこのトリックの映像化を断ってきた経緯からこの話のみ削除された。

1度VHSでリリースされた後という後手後手な対応だったため、削除してVHS再発売となったが、当時のレンタルビデオ屋ではいちいち再入荷しなかったため最初に入荷した時のままレンタルが続いており、VHSが撤去されるまではレンタルビデオで見る事ができた。初期VHSのみ『VOL.1』は今作と「悲恋湖殺人事件」の2話収録。

…が、ビデオで見たのも1996年頃の話でどんな映像だったかは最早全く覚えていない。原作の方がよりハードだったな…というのと風祭の館の主人役が岡田眞澄だったのだけ何故か覚えている。原作のイメージとけっこう見た目がハマっていたせいだろうか。

2話 ファイル2 悲恋湖殺人事件

原作のファイル6。『学園七不思議殺人事件』での頭ぶん殴られての重傷入院から1話挟んでまた足に重傷…と美雪がハード…。

原作のいつき陽介が五木洋介(利重剛)として登場するが名脇役の1人の利重剛が演じてたのか、若い!と久々に見て思った。当時全然役者知らなかったから分からなかったけど見返すとけっこうこの人こんなところに!っていうのが以後も多い。

原作では美雪の従兄だったのに殺されても全く悲しまれなかった橘川茂は同級生のクラスメイトに…。しかしクラスメイトが死んだのにやはり忘れ去られてしまってやっぱり不憫。発見当初は遠野の死体だと思われていたせいとはいえ…。

美雪がケガした罠がボーガンが足に刺さるのから斧でぶった切られる(切れてはいない)のに変更されたがそっちの方がきつくない?

3話 ファイル3 オペラ座館殺人事件

原作のファイル1。オペラ座館はその後ノベルス1巻『オペラ座館・新たなる殺人』、新シリーズ『オペラ座館・第三の殺人』、37歳『歌島リゾート殺人事件』でも舞台になっているが、連ドラで続けて描かれた事は無く、道枝版で『オペラ座館・第三の殺人』がドラマ化された際も以前との繋がりは無くなっていた。今作放送当時はノベルス1巻『オペラ座館・新たなる殺人』は刊行済みで、これは96年12月のアニメ映画版(TV版と違ってまだ金田一の声優がコナンの工藤新一と同じで”工藤新一ボイスの金田一少年”が見れる)でアニメ化の1発目に採用された。

堂本版ドラマの独自性、話を1時間にまとめる都合から登場人物の削減、また役者自体を節約して原作準拠だと全く出番が無くなる準レギュラーメンバーを原作の誰かの代役にするという改変が炸裂。原作では美雪が演劇部で(その後の『学園七不思議』でミステリー研究会やってて生徒会という属性もついた)金田一も手伝いでやってきたので基本的に演劇部メンバーで合宿に来ていたが、今回は演劇部が部員不足なのでミステリー研究会が手伝うというナンダソレ名目で金田一、美雪に続いて『学園七不思議』のメンバーだった真壁、佐木、鷹島友代(三浦理恵子)も同行。

そこまではいいのだが他の面々があくまで手伝い、裏方として参加している中で、鷹島友代は原作の早乙女涼子の代役をあてがわれているので、役者としてしれぇっと参加。しかも性格も早乙女準拠になっていてなんかエラそうになっている…。真壁のゴーストライターだったはずだがその設定はパラレル化したのだろうかという変貌ぶり。

さらにこれに伴い、死んだ月島に度の過ぎた悪戯を仕掛けていた3人のうちの1人が鷹島友代になってしまい、鷹島友代は殺されずに生き残る犯人のターゲットになってしまった。ゴーストライターやってて地味な風貌してた設定破棄されてるだろコレェ…。

有森役に小橋賢児。CDデビュー前後のKinKi Kids(特に剛)との共演が多かった。

原作での最大のツッコミどころ、犯人が仕掛けたボーガンの罠を何故か解除しておかずに時計をずらすだけだったので、時間になって犯人に自殺されてしまう…という穴はさすがに罠は解除していた事に変更。それでも犯人自殺の結末は変わらないので、一目散に窓に飛び込んで崖の下の海にダイブ自殺というかなりダイナミックなラストに…。

4話 ファイル4 秘宝島殺人事件

原作のファイル5。

犯人が「女装した13歳の美少年」という実写化の難しい設定だったが、普通に20歳越えた大人の女性が演じていて一応ヅラを取ると短髪…ではあったんだけどやっぱり普通に女性。

バラバラ死体が胴体真っ二つに変更になっているがどっちみちスプラッター。改めて見るとかなり作り物感は強いんだけど、90年代のドラマらしい過激さはやはりあるな…。

天才少年クリス・アインシュタインを演じているのは金子信昭。現在のRIZE金子ノブアキだった。マジか。『いちばん大切なひと』とか『妖怪新聞』にも出てて子役からキャリア長かったのは見ていたけど意識してなかった。

5話 ファイル5 首吊り学園殺人事件

原作のファイル8。

予備校設定ではなく、不動高校の特別クラスという設定に変更。これにより不動高校生徒、教員の殺され率、犯人率がまた上がってしまった。この時点で既に『秘宝島』以外の事件で不動高校関係者が殺されているというのに…。このせいか、高校自体が事件の舞台になるのは『学園七不思議』以来ではあるが現場に到着した剣持警部が到着するなり「またここか…。」とコナン世界のメタギャグみたいなシーンがちょっと笑える。

千家の代役に真壁。これにより作家として名声を浴びていたと思われる時期の真壁は深町イジメの現場を目撃して、殴るのを強要されて1発殴ってしまったという過去が追加された。お前ら天才推理作家(当時)捕まえて何やらせてるんだ…。

作中で既に故人の深町役はヨースケ。しかし今改めて見るとまだちょっとあどけない窪塚洋介だった。ヨースケなんて芸名でキャリアをスタートしていたのか。

6話 ファイル6 首無し村殺人事件

原作のファイル9『飛騨からくり屋敷殺人事件』改題。飛騨ではなく宮城県が舞台になっている。

道枝版でもリメイクされたがホラー度が桁違い。生首のシーンの見せ方が明らかにスプラッターな上に、悪乗りして金田一や美雪まで晒し首にされている映像を得意のドン!ドン!ドン!の効果音を連発しまくりながら映し出す堤監督全開なサイコ映像。さすがに金田一や美雪の生首は明らかな人形っぽさがあるものの、効果音も相まって怖すぎる。

龍之介を演じていたのは山本太郎。見た目があまり変わっていない。恐らくもう2度と見れないと思われるが役者山本太郎はいい存在感だったなぁ…。

結末はあまり変わらないが、紫乃(真行寺君枝)と龍之介が親子として心を通わせるラスト。今だったらこの展開にするなら原作通りに死ぬのではなく死なないところまで書き換えそう。

7~8話 ファイル7 蝋人形城殺人事件

最終エピソードは前後編。原作のファイル12。

これ確か当時の原作の最新エピソードで単行本化どころか放送と原作での連載完結がほぼ同じだったはず。明智が登場していないので明智の代役を剣持警部が担当。これにより剣持の聡明さが際立った。

初の2話構成だけに『学園七不思議』以来に駆け足感が無く展開。銭形ケンタロウ(内野聖陽)はかなり滑っているが…。マリア・フリードリヒは原作ほど自身の役割を認識しておらず、最後は御先祖様に念じるような無意識で能力を発動、犯人の最後のターゲットだったが殺し損ね、生き残って高笑いしていた坂東(片桐竜次)を串刺し一撃キル。相変わらず怖い。

ラストでは金田一がまた引っ越すという展開になり、美雪がラブレターを渡すが、真壁と佐木から数百メートル先に引っ越すだけだと知らされて猛ダッシュ。手紙を破いて告白未遂で終了。この2人の関係性は2期、映画のラストでも同様の告白展開があってちゃんと完結していくのが良かった。

雪夜叉伝説殺人事件

95年12月30日2時間SPとして放送。4月にSP、夏に連ドラ、年末にまたSP…と凄い勢いだった。原作のファイル3。

速水玲香に中山エミリ、明智警視に池内万作。池内万作は真壁役の佐野瑞樹(あと鷹島役の三浦理恵子とも)2学年(早生まれなので1歳)しか離れていなかったりした上にほとんどこれがデビュー作という新人だった。原作当時の嫌味さにブーストかけたような嫌味っぷりで、インテリ嫌味っぷりは間違いなくハマっていたんだけど…。

美雪は同行せず、電話の場面で自室にいるのと最後に迎えに来るだけで出番少な目。真壁が同行して明智の家来になる。

リアルタイムで見て当時ビデオ録画していたのもあって今作が1番覚えていた。氷橋の実写化は改めて見るとかなり無理がある気がするが、飛行機事故をバス事故に変えたり、金田一と玲香が崖下に落ちてしまい、自力で上がれなくなってしまうがロープたらしてもらえば自力で這い上がれる(しかも助けてくれたの犯人雪夜叉)など原作通りの立地というわけにはいかない柔軟な改変も見られる。

しかし年末放送で既に雪景色。北海道で11月下旬~12月上旬頃に一気に撮影してきたのだろうか。

ラストではこの後1月から放送される『銀狼怪奇ファイル』から不破耕助(堂本光一)が登場。金田一と友人だった事が判明。直後に銀狼(堂本光一)ともぶつかり「俺に不可能は無い」のキメ台詞が炸裂する。『銀狼怪奇ファイル』のラストでは耕助(堂本光一)が長谷川半蔵(香取慎吾)とぶつかる場面があり、振り返ると彼は消えていた(透明人間になっていた)というシーンでその次の『透明人間』へ繋ぐという最終回で次の主人公が登場する演出が好きだった。

連続ドラマ2期

1996年7月13日~9月14日、土曜21時枠。前後編が増加し、全9話6ファイル。主題歌は KinKi Kids「Kissからはじまるミステリー」。山下達郎提供曲だったがやっぱりCDデビュー未定のままでCD化は1年後。後にデビュー曲候補として山下達郎に依頼されて制作していた曲の1つと明かされている。

最終回翌週に2時間SP『金田一少年の事件簿 永久保存版』が放送された。基本的には最初のSPからの全総集編だが、新規制作ドラマパートは金田一が殺されたとして盛大な葬儀を行うというもので、葬儀の進行を日テレアナウンサーが勤め、死んだ堂本剛以外のキャスト勢が集結、神妙な面持ちで参列しているというブラックジョークが効きまくった葬式映像をお茶の間に提供。金田一の生い立ちから再現ドラマにしたり、シリアスになりすぎないようにか、参列者には歴代犯人や関係者も登場し、濃い存在感を見せた。中には冥界から映像出演する故人も…。最後は金田一が自分を襲撃した犯人をあぶりだすための罠だった事を明かして、歴代キャラの1人が犯人にされて退場していく。当時見ただけでこの話のみ全く商品化されていないが記憶に残る回だった。葬式煽りのインパクトが凄すぎたせいか、2期の本編9話どころか、全シリーズ(といっても『学園七不思議』以外は上位全部堂本版だが)歴代2位の高視聴率を記録してしまった(1位は『蝋人形城殺人事件 完結編』)。

1期はVOL.1~4の4分割2回ずつ収録(1巻は1話削除の影響で2話のみ)だったが、タイトルに事件名が出てこなくて分かりにくいせいか、2期は1回完結だろうと前後編だろうと関係なく事件タイトルで1事件1VHS/DVDで発売する形式に変更された。

1話 ファイル10 悪魔組曲殺人事件

いやファイルナンバー変わってますけど?1期最終回が『ファイル7 蝋人形城殺人事件』だったのに8と9がすっ飛ばされていきなり10になってしまった。どうやらナンバリングされていなかったSPの『学園七不思議』と『雪夜叉』の2つをしれっとカウントし直したらしい(欠番『異人館村殺人事件』も含めたまま)。

唯一原作漫画が存在しないCDブック(ドラマCD)の映像化。2期と前後して原作を一気に集めて読んでいたので知らない事件がドラマになっていて新鮮だった。おどろおどろしい雰囲気といい、これぞ金田一!な2期1話にふさわしい始まりだったと思う。

松本恵の謎の存在感。終始サイコな事言っているだけで事件本筋に全然関係ないのに犯人よりインパクトってズルくないか…。

2~3話 ファイル11 タロット山荘殺人事件

原作のファイル11。前後編。SP『雪夜叉伝説殺人事件』で登場した速水玲香(中山エミリ)が再登場。元ウルトラマン80長谷川初範が速水雄一郎役。

原作は雪山が舞台だが撮影が夏だったので竜王、高井富士、馬曲温泉など長野県のスキー場周辺でロケしてきた模様。天候が良くなかったのか狙ったのか霧が凄いが雪山の閉鎖感が霧のおかげでうまく出ているような…。自力で下山できないのか?という問題に対して速水オーナーが「ロープウェイ以外に下山手段はない。昔は登山道があったが10年以上使われていない」と説明する場面もあるようにスキー場という設定では作っていない様子(スキー場なら登山道も何もなく、開かれたコースを歩いて下ればいい)。

金田一が遭難させられる場面も改変されたが、正直やりすぎたと思う。なんと殴って気絶した金田一をダムまで運んでかなりの高さからポイ捨てドボン。高さがありすぎて着水した時点でもう死んでそうなのに、なんと金田一が目を覚ました時は少し下流の川で引っかかった状態。かなりの高さからそれなりの深さと流れもあんまりないため池みたいな部分にドボンして静かに下流に流されるまで気絶した状態で生還していた事に…。

玲香を雪崩から救うというのもやれないので、犯人なんとロープウェイ山頂からみんなの前で飛び降り自殺。助けようとした金田一と玲香が掴んだ手も振りほどいてしまうなどえげつない。これで立ち直れるの凄いメンタルだな…。

4話 ファイル12 金田一少年の殺人

原作のファイル10。なんとまさかの1話詰め込み。これに伴い被害者を減らしたが、暗号解読で被害者の名前の順番が必須だったため暗号も改変するという決死かつ奇跡の詰め込みでなんか割と普通にまとまった。

五木(利重剛)、明智(池内万作)が再登場したが、明智の嫌味っぷりが変わっておらず、この時点で既に原作明智ルートは破棄。今作での明智は原作の長島刑事の代役に近く、金田一を殺人犯として普通に追い詰めていくので最早優秀なエリート刑事の面影皆無。原作明智の空砲のくだりも剣持が受け持っていて、原作通りの動きをしたのは最後の最後で死んだ犯人の移植のために警察力を駆使して速やかな搬送を指示する場面のみ。最早金田一に謝る時間すら与えられずお役御免になった。これっきり2度と登場しなかったが、なんと2代目以降でも1度も登場しないという一種の明智トラウマ状態になってしまった。ドラマではよほど使いにくいという事なのだろうか。

橘五柳を演じたのは麿赤児。つるっぱけの強面爺のイメージが強い麿赤児だが96年当時はまだ髪がフッサフサ…なわけはなくあからさまにヅラで金田一に足を引っかけられプールに転落してヅラが外れてしまい、見覚えのある麿赤児になる。

ビデオ係として同行しているが佐木が空気。道枝版リメイクのジャニーズ案件佐木と比較すると扱いの差が凄い。

都築瑞穂(鈴木杏)、まさかの2代目美雪

5~6話 ファイル13 怪盗紳士の殺人

原作のファイル13。

この事件から金田一と美雪がほとんど行動を共にしなくなり、よく見ると事件現場にはどっちかしか行かない話が続くようになり作中ほとんど一緒にいない。突然共演NGになったわけではなく、多忙すぎてスケジュールの都合がつかなくなったとされている。今作での美雪は沖縄旅行に行っている設定で、代わりに真壁と真壁そっくりな弟の実(遠藤司)が同行。これまたジャニーズ案件だったが実はただ単に真壁のそっくりさん扮装しているだけでこれといった出番も無く出オチ感が凄い。

さくら役に遠藤久美子。ロングヘアー姿が不自然だが当時からショートカットで途中から本来の姿になる。設定上髪を切られたというものだったが、原作よりも切られ過ぎだし、整い過ぎ。当時のエンクミはかわいいのだが当時まだデビュー間もない素人同然だったためか台詞の棒読み感が終始気になる。

さくらが金田一に恋心を抱く展開ではなく、真壁がさくらを好きという設定になり、さくら側からは友情を強調した関係性に。ラストでは自殺を図ったさくらがもう助からないと判断、剣持に頼んでラベンダー畑まで車で運んでもらって金田一と真壁が腹にナイフがぶっ刺さったままのさくらを両脇で抱えて歩いていくという感動シーンなのにやりすぎた感のある映像が展開。いや最後にラベンダー畑見せてあげたいのは原作よりも感動的な終わり方なんだけどもう少しなんとかならなかったのか。腹にナイフ刺さったままって。

あと海津(日野美歌)殺害の際に原作にはない何度もめった刺しにするシーンをオリジナルで追加したり、原作に無い蒲生と海津の協力者鷲尾を追加してやはり凄惨な殺し方をしたりと映像のインパクトを重視したとはいえ、殺し方の恨みのこもりっぷりが凄い

出番の無かった美雪だがエピローグでは日焼けに失敗してサングラス焼けしてしまった珍妙なパンダメイク状態を披露し、壮絶な笑いをかっさらっていく。こういうインパクトが強かったから美雪が出てないとか存在感が薄くなった印象が全くなかった。

7話 ファイル14 異人館ホテル殺人事件

原作のファイル7。

『銀狼怪奇ファイル』の3人(三宅健、秋山純、松山幸次)がゲスト出演し、主人公本人(=堂本光一)は登場しないが友人である金田一の話を聞いて事件の調査依頼をしてくるところから話が始まる。美雪が先に手紙を受け取り同封されていた謝礼を自身の洋服代に使い込んでしまい(そそのかしたのは次の事件でとんでもないことになる鷹島)、なんとかごまかそうとしていると金田一が盲腸で入院。仕方なく美雪が1人で現地へ向かい、3人や現地の人たちに金田一さんと勘違いされて巻き込まれるという超改変展開に。佐木は死なないどころか出番なし。

ていうか薬師寺力(三宅健)って死んだよね?最終回で全ての黒幕である金狼であり、薬師寺力としての振る舞いは全て擬態、散々暴れ回って銀狼と激しくバトルして死んだよね?なんで薬師寺力に戻ってしれっとしてんの…?パラレル設定にしてもよりによって黒幕だった登場人物使い回すか…?一緒に出ていた井ノ原快彦ではダメだったのか。カミセンとトニセンの当時の格差なのか。

不破警視は『銀狼怪奇ファイル』の主人公不破耕助(堂本光一)と苗字が被るためか、兵頭に変更。演じた篠倉伸子は存在感あるのにこれ以外で全く見かけなかったので引退しちゃった系かと思ったら3年後に37歳で急死していたのか…。

電話で助言をもらいつつなんとか解決した美雪だが最後のトリックは解けず、そこに金田一が退院して駆け付けて解決。全シリーズ通して最も異色な回だった。最後は金田一が持っていくとはいえ、美雪が主人公になるとは…。全体に事件そのものの展開はほとんど記憶に残ってなかったな。美雪が探偵役という異色の印象が強く記憶されていた。しかし美雪が主人公になったせいなのか、連ドラ1期2期で唯一視聴率20%割れとなってしまっていたと露骨な結果だ。

8~9話 ファイル15 墓場島殺人事件

原作のファイル14。1期同様に2期の最終回も当時のほぼ最新エピソード(今回は既に次の『魔術列車殺人事件』の連載が始まっていたが、コミック版は8月に発売されたばかり(20巻)だった。

原作では金田一と美雪と初登場の同級生男女2人ずつ4人の計6人での旅行だったが、役者節約に節約を重ねた結果、旅行メンバーは金田一、真壁、佐木、鷹島と準レギュラーメンバーで固め、森下麗美(建みさと)だけゲストで追加。しかもこの森下麗美は原作の森下麗美ではなく平嶋千絵に近い役割での代役原作の森下麗美は鷹島が代役となっている…という最新原作読者を引っかける仕掛けが施されていた。

なんと美雪またも同行せず。オープニングで些細な事から金田一とケンカし、ケンカしたまま同行しなかった。これにより、この第2シリーズでは後半から金田一と美雪がほとんど行動を共にしなかったという事に。それでもある程度は出番を作っていて、金田一たちが行方不明と知るとすぐに剣持に捜索を依頼、剣持と共にヘリで付近を捜索した後にモールス信号を送り、最終的には船で駆けつけ、剣持と共に真相推理の場面には同行した。

今回も殺し方がエグイ。一挙爆死させてバッラバラ死体のシーンはトラウマ級だし、萩元が寝袋で殺されるシーンもまたしても執拗にめった刺しで目を見開きながら吐血して死んでいくなどトラウマ級。

一応佐木のビデオがヒントになったり、金田一の現場検証にも同行しているのに相変わらず佐木の存在感は薄めだが、それでも美雪の代役として金田一の告白を勘違いする場面があり、金田一が自分に告白したと思って動揺した後に断るというどうでもいい見せ場はあった。

真壁はこれまでもいくつかの事件に同行していたが、今回は無人島に行く話になったあたりからは乗り気ではなく、綺麗好きでキャンプ自体も嫌だったのに本格サバイバルになってしまったので完全に病んでしまい、無人島行きをノリでOKした金田一にも激しく突っかかる。さらには軍隊生活を強いるサバゲーチームメンバーに拷問されかけるなどのストレスも重なってモデル銃を奪って全員脅して逃走。しかし罠にはまり足に大けがを負って危機に陥るという足の大けがは『悲恋湖』での美雪と丸被りではあるが、原作に無いオリジナルのサバイバル感の演出に一役買っている。憑き物が落ちたようにしおらしくなるのと金田一が壊れていく真壁にあくまでずっと友情の手を差し伸べているのも印象的。最後は推理前に一足先に運ばれて行ったっきり出番なしなのが惜しい。

森下麗美(建みさと)は真壁が好きという設定だったが、前述のように真壁が病んでいってしまったので途中で冷めてしまう。原作を読んでいればこの人が共犯者なんだけど、どうも原作の森下麗美の行動を取っているのが鷹島の方であれ?あれ?となっているうちにモブ化。

檜山(金子賢)と同じ村の出身で別々の生活を送りながら復讐の機会を待っていた共犯者は『学園七不思議』で真壁のゴーストライターとしてキャラ変、『オペラ座館』では代役設定により演劇部の月島の自殺の遠因を作り犯人のターゲット3人のうちの1人になり、『異人館ホテル』冒頭では美雪に謝礼使い込みを思いっきりそそのかしていた鷹島だった。

ラストを大幅に変更。檜山は自殺しなかったが、最後のターゲットである岩野(ケイン・コスギ)も1人生き残ったとはいえ、村全焼の罪が暴かれて剣持に逮捕される見込みとなったために暴走。鷹島を人質に取り、追いかけてきた金田一と剣持を突き飛ばし、鷹島を刺し殺そうとしたので檜山がかばって刺されて死亡。せっかく自殺しなかったのに復讐相手に殺されてしまう&謎に殺人犯が1人増える超展開となり、金田一が怒りのあまりに殴りつけて終了。ケイン・コスギのカタコトっぷりがインパクトだったが次クール『聖龍伝説』ではレギュラーキャラに…。その前はカクレンジャーだったし、カタコト全開だった頃に役者業が集中しているがその後は筋肉番付とファイト1発など筋肉イメージだけになってしまったな。

そしていくらなんでも設定を盛りすぎでとんでもないキャラクターになってしまった鷹島。代役に代役を重ねたのが原因だが、村を全焼させられ、復讐の機を伺いながら、真壁のゴーストライターをして真壁に支配される地味風貌に擬態、バレた後は派手な風貌で表舞台に立つようになり、演劇部の月島に演劇部員と一緒にちょっかいを出して自殺の原因を作ってしまいいつの間にか演劇部の役者も兼任するほどの地位になっていて犯人のターゲットにされるもターゲットで1人生き残り、美雪が金田一への依頼料を使いこんでしまおうかという時に悪魔のささやきをして背中を押す…その裏では復讐の準備を整えると同時に妊娠発覚を隠したまま殺人計画に挑み、最後のターゲット1人を残して計画を暴かれ、よりによって最後のターゲットにお腹の子供の父である恋人であり共犯者を殺されてしまい、1人で逮捕されていき、獄中で子供を産む意向…とかどんなカメレオン人間だよ…。

ラストでは金田一が美雪に告白…するも目の前をマッスル部員みたいな集団が変な掛け声を上げながらマラソンしていったので美雪には全く聞こえず(帰っていなかった剣持には聞こえた)、2人の恋の行方はおあずけのままドラマは終了。

金田一少年の事件簿 上海魚人伝説

1997年12月公開。実写版では唯一の映画で、堂本剛主演版の最終作。連ドラ最終回から1年以上経過していたが結果的に堂本剛、ともさかりえは共に高校1年生~3年生(16~18歳)の現役高校生の間に3年間演じた事になった。なお真壁役の佐野瑞樹は映画パンフのインタビューでそろそろ制服姿はきつくなってきた旨を語っていた(当時24歳)。主題歌は歴代の「ひとりじゃない」「Kissからはじまるミステリー」の2曲が使用され、エンディングでもメドレーで流れる。2曲とも同年7月のKinKi KidsのCDデビューでようやくCD化されていた。

原作はノベルス5巻「上海魚人伝説殺人事件」。11月に発売されたばかりで、映画に合わせて書き下ろされた状態に近い。ドラマ版が「異人館村」が封印された以外はDVD化まで実現していたのに対して何故か今作だけDVD化されず、VHSのみのまま長年放置されていた。2022年の道枝版放送時の全シリーズ配信、再放送の流れの中で映像化されていなかったシリーズのDVD化と全Blu-ray化が決定し、ようやくDVD/Blu-rayで発売された。1期2期はBlu-ray BOXでもリリースされたが今作のみBOXに含まれずに単独発売のみである。

山田版、道枝版であったらジャニーズ案件で間違いなく原作で同行してなくても同行してきたと思われるが真壁、佐木は最初と最後の学校のシーンのみの登場。美雪の文通相手である上海の楊蕾麗(水川あさみ)の依頼で金田一を連れて上海に行くという設定なので、現地には金田一と美雪のみ、別件を追っていた剣持が途中合流するのみ。また連ドラ最後で犯人になってしまったので鷹島は出演していない。

水川あさみは今作以降で色々なドラマで見るようになったが、当時14歳でこれがデビュー作。大抜擢すぎる大抜擢で、かなり重い境遇の難役をド新人の14歳にやらせえていたとは…多少の棒読みは仕方ない。

連ドラまでのDVD化が完了した後も何故か今作のみビデオのままでDVD化されていなかったが、2022年にDVD/Blu-ray化が決定した。

今作は当時映画館に見に行ってそこそこ面白かった記憶はあるが、原作小説を読んだらそっちの方が制約が無い分だけストーリーにも深みがあって面白かった。映画の方はすっかり原作小説に記憶を塗り替えられる形でほとんど忘れてしまっていた。実際見返してもどこか中だるみしまくっている印象で、連ドラできっちり詰め込んで展開していったのが嘘のように割とどうでもいい演劇シーンを延々見せられたり、テンポの悪さが目立つ。金田一と小龍(陳子強)の逃亡劇や友情も小説に比べるとどうも弱い印象。ローラーブレードで夜の街を疾走する金田一というのも見せ場というほど見せ場になってないし、映画らしいダイナミックさが無いなぁと…。

良かったのは金田一と美雪の物語には明確な決着をつけた事で、連ドラ1期、2期で未遂に終わっていた思いを伝えあう場面を今度はしっかりと完遂。ただ今度は美雪が引っ越すことになって転校するというきっかけなのでこの後2人は離れ離れなんだよなぁ…。

堂本剛版はやはり原作よりも最初に見たファースト金田一少年だった事もあり、思い出深い。最初のイメージが堂本剛だったので原作の長髪チョンマゲ姿も最初は戸惑ったくらいだった。

改めて見返しても金田一少年としてはけっこう完璧で理想的だったと思う。普段のおとぼけと事件時の精悍さ鋭さ、そして犯行を暴く際には強気な態度になるが動機が明らかになると同情の様子を見せたりと金田一のキャラ設定がしっかりしている。犯人を追い込んで得意げになったり楽しんだりしているドSな要素はやはり感じられず、当時から関わっていたプロデューサー櫨山裕子は何故に道枝版で謎のドSな金田一像を提示したのだろうか。記憶が歪んでしまっていたとしか思えない。

美雪もけっこうはっちゃけてて金田一とのコンビのノリが非常に良い。2期後半から実はほとんど共演してなかったのも当時はあまり気にしていなかったが、実際本編でほとんど行動を共にしていなくてもオープニングやエピローグ等で印象的な2人のシーンが必ずあったので出ていない印象が無かったんだと思う。

堤幸彦の演出もさすが出世作。斬新かつインパクトがあってホラーな演出は強烈な印象を残した。『ケイゾク』を経てすっかり作風と名前が認知されるようになると独特のギャグを連発したり過度な演出ばかりが目立つようになって徐々に世間離れしていってしまったんだなとも思ったが…。今作でのデン!デン!デン!デン!デン!の畳みかけやシャキーン!シャキーン!ダダン!ダダン!等の派手な効果音とカメラワークなどの演出はインパクトが強すぎて2代目以降の演出のインパクトが薄れ、結局初代がNo.1となりがちなシリーズモノ宿命の評判をさらに神格化させてしまったところもある。演出面でこのインパクトは2代目以降には全くないもので、これに挑まなければならなかった2代目3代目は酷だったな…。4代目以降は初代リスペクトの流れが出てきて音楽面では初代の再起用もあって少しは気楽になった感じもある。

あと原作漫画の闇として作画のさとうふみやは固定だが、連載開始当初は原作者が金成陽三郎だったのがいつの間にか原案:天樹征丸とかくっつくようになって、いつの間にか原作:天樹征丸、金成陽三郎の連名になったと思ったら金成陽三郎が押し出されて消えてしまったというのがある。金成陽三郎が完全に降板してしまって以降(Caseシリーズ初期~短編集を挟んでいる間に名前が消えた)、映像化の際に原作者が金成陽三郎だけだった時も全て天樹征丸との連名に書き換えられている。天樹征丸とは当時多数のマガジン連載の原作に介入していた編集者樹林伸であり、『サイコメトラーEIJI』等を手掛けた安童夕馬も樹林伸とされる。

介入しているうちに完全に原作者になってしまい居場所を失った金成陽三郎が降板したという事だとは思うが真相は不明。なお金成陽三郎は『銀狼怪奇ファイル』の原作『超頭脳シルバーウルフ』の原作も単独で担当していたが、ドラマ化の際はほとんど別物に変えられてしまっていたので『銀狼怪奇ファイル』においては原作自体が原案レベルであった。

堂本版放映時はまだ原作:金成陽三郎という単独表記だった時期なのでずっと「金成陽三郎・さとうふみや」という原作者クレジットになっているのが確認できる(編集者ではあったので別枠のスタッフで樹林伸の名前はあったりはする)。ただノベルス版は最初から金成陽三郎が関わってなくて天樹征丸の単独作品だったので『上海魚人伝説』のクレジットのみ「原作:天樹征丸、漫画:さとうふみや」表記、しかし映画ではマガジンで連載中の漫画版のクレジットも「原案:天樹征丸、原作:金成陽三郎、漫画:さとうふみや」となっていて初めて「原案:天樹征丸」表記が加わっているのが確認できる。これは同年に始まっていたアニメ版も同様でまだ天樹征丸の名前など出ていなかった『学園七不思議』の時点でもう「原案:天樹征丸、原作:金成陽三郎、漫画:さとうふみや」表記。

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