LOGAN/ローガン

2017年公開。『X-MEN』シリーズのウルヴァリンを主人公としたスピンオフシリーズ第3弾にして最終作。00年のX-MENシリーズ1作目から演じてきたヒュー・ジャックマンの最後のウルヴァリンとして制作された。

『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』『ウルヴァリン:SAMURAI』共に過去作品との繋がりが希薄だったが、今作はこれまで以上に過去作品との繋がりが希薄となっている。

あれから6年でこの終末的世界観…

2029年ミュータントのほとんどが死滅した世界で、プロフェッサーXは認知症に、ウルヴァリンは再生能力が弱って老化が進行していて死期が近いことを悟っている…という設定。ウルヴァリンは本名のジェームズとして何故か『アポカリプス』で闇商人みたいなことをやっていたキャリバン(役者別)の協力を得てプロフェッサーXを介護しながら生活しているが、プロフェッサーXは認知症が進行していて会話が噛み合わない事も多く、さらに制御する薬を切らせると能力が暴走してしまい、周囲に大変な影響を及ぼすという状態。

そんな中、ウルヴァリンの遺伝子を使って作られた同じ能力を持つ少女ローラを「エデン」まで送り届けて欲しいという依頼を受ける事に。ローラは回収班に追われており、エデンを目指しながらの逃亡生活が始まった…。

というロードムービー的な内容で、これまでのようなCGバリバリの能力は大量に出てこないが、これまでほとんど出てこなかった爪でやられた後の被害者たちの死体の残酷なシーンがけっこう出てくるエグさなのでR指定なのは納得。

なお何故ミュータントが死滅したのか、認知症のプロフェッサーXがこの少し前に何をやらかしたのか、何故ウルヴァリンが能力を失いつつあるのか、一応明かされはするんだけどあまりちゃんと説明してくれない。ミュータントの死滅に関しては終盤で黒幕がペラペラ説明してくれるんだけど、説明の最中に黒幕殺しちゃう。そこで殺すなよ!

再生能力の弱体化に関してはちゃんと検査してないのでアダマンチウムが毒となって変調をきたしているというのは合っているにしても本人の推測でしかなく詳細は不明のまま。

プロフェッサーXが少し前に能力を暴走させたときに何があったのかは具体的には明示されない。というかかなり遠回し。ホテルで一般人にも被害が及んだ能力の暴走を伝えるラジオニュースで「ウェストチェスター」でも同じような事件が以前発生し、ミュータント7名と数百人の負傷者が出たと報じているんだけど、このウェストチェスターというのは学園があった場所の地名。プロフェッサーXがその後忘れていたそのことを思い出して激しく動揺している様子から認知症による能力の暴発で学園を滅ぼしたのはプロフェッサーX本人という示唆…と思われるが「ウェストチェスター」なんて地名はシリーズ通して見ていてもあまり馴染みが無く、分かりにくい。

と、こんな過去シリーズと全く異なる世界観で始まったのに何故こんな事になっているのか、もう少し掘り下げて説明してほしかったところがあまり説明されないのは残念だった。

シリーズファンはIF世界のストーリーとした方が幸せ

これがもう少し先の未来であれば、本編の続きとしてこういう世界になってしまったというのもわかるんだけど、『X-MEN:フューチャー&パスト』で改変に成功して過去死んだメンバーも全員学園で生存して幸せに暮らしているというのが2023年だったはずなので2029年設定ではそこから6年しか経過してない事になる。

あれからわずか6年であのハッピーエンドが全部ひっくり返されてしまうほどの悲劇が起こり、大半が死んでしまったとかどんな悪夢だよっていう…。

それ以前にそもそも25年もの間ミュータントが生まれていない、という時点で既に学園にかつての仲間も子供たちも溢れていた『X-MEN:フューチャー&パスト』のラストと矛盾が生じてしまう。

とにかくこういうミュータントが絶滅寸前になったとある未来の話というのが重要で何故こうなったのかは重要でないのかもしれない。

やっぱり老け込みすぎな2人の姿はこれまでを知っているとショックだし、幸せな結末を迎えてほしかった。一応過去を描いている『アポカリプス』の先の話もまだ作るみたいなのに、プロフェッサーXの最終的な人生の終着点がこの映画の世界観だというのは…。

ウルヴァリンの最期という意味ではちゃんと話が決着する納得と感傷の結末ではあるしラストシーンは泣ける。それでもやはり今作は哀しい。非常に心にぽっかり穴が開くような感じを受ける映画。作品としての出来は素晴らしいと思うけど、老いと介護と死…こんな現実的すぎる最期をこのシリーズで見たくはなかった…。『X-MEN:フューチャー&パスト』のその先で学園でみんな穏やかに年を取っていってほしかった。ヒュー・ジャックマンも完全に老けメイクしている状態だし、リアルにこのくらいの年齢になってから今作を作っても良かったんじゃないかという。これが最期…う~ん…救いはあれど哀しいなぁ…。

ローラの目力

ローラ役のダフネ・キーンは撮影時そのままローラと同じくらいの年齢の11歳の子役だが、この子の目力がまた凄い。時に恐ろしく、時に年相応のお子様で、最後はなんだか頼もしい女性に成長していく。中盤すぎまで延々喋らないのが演出として引っ張る以外にあまり明瞭じゃないのはもったいなかった。喋り始めたらなんだか一気に精神的にも著しく成長しているし…。父ローガンからウルヴァリンを受け継いだローラのこの先の物語というのは面白そうではある。過去を描いている現シリーズじゃ別人じゃないと起用できないし…。

コミック『X-MEN』が存在する世界観

あと今作独特の世界観として『X-MEN』のコミックがこの世界に存在し、作中でローラら子供たちは漫画を通してヒーローであるX-MENに憧れを抱いていたという設定が斬新だった。ウルヴァリン本人曰くこの世界のコミック『X-MEN』は事実を基にしているがほとんどフィクションとのことだが、これまで一応世界規模の騒動にはなってもX-MEN自体は人知れず戦いを繰り広げて(ほとんど身内のミュータント間の内戦だからとかいうな)いたはずで、ヒーロー扱いされてきたことは無かった(学園の子供たちにとってはX-MENメンバーはヒーローだったのかもしれないが)ので、ウルヴァリンやプロフェッサーXがこの世界の中でもかつてのヒーローみたいな描き方には少し違和感があった。

★★★★☆

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