2017年公開。劇場版21作目。平次・和葉がメインの映画は7作目『迷宮の十字路』以来2度目となる。2人の登場は17作目『絶海の探偵』以来で京都を舞台にしたのもこれ以来となる。しかし『絶海の探偵』は舞台のほとんどが船の上で平次・和葉も登場はしたがコナン達と電話でやり取りするのみだった。14作目『天空の難破船』、13作目『漆黒の追跡者』でも同様で、平次とコナンが直接会って行動を共にするのは10作目『探偵たちの鎮魂歌』以来とかなり久々となった。
大岡紅葉初登場
平次の婚約者を名乗り、和葉と百人一首対決に挑むライバル大岡紅葉は今作が初登場。原作では映画に先駆けて謎の自称婚約者として登場。平次とは出会っていないが平次が事件を解決したニュースを見て未来の旦那が活躍している事に関心していたり、推理のヒントを出して頭脳明晰なところを見せたりはしていたものの平次とは対面はしていなかった。また映画公開時にはアニメ版には登場しておらず、この映画で初登場だった。
合気道の和葉だったはずが…
和葉の特技は合気道という設定だったが今作ではかるた部に所属していた事になり、部長の未来子の練習相手になっていたと後付け設定された。かるたの大会には1度も出たことが無く、数日前の緊急参戦決定だったため、合気道の道着で大会に挑んでいる。
有名人起用の活躍は控えめ
未来子を女優の吉岡里帆が演じている。いつもの女優起用と異なり、未来子はきっかけを作る役割を果たすも出番はあまりない。また宮川大輔が容疑者の1人として登場する。今年の声優以外の有名人キャスティングはこの2名。
2人ともやっぱりちょっと不自然なので(吉岡は単純に声優不慣れ、宮川は悪くは無いんだけど宮川大輔にしか聞こえない)、今回目立つ役じゃなかったのは良かった。
主題歌
主題歌は倉木麻衣「渡月橋~君 想ふ~」。『漆黒の追跡者』以来の映画主題歌起用となった。また京都を舞台にした『迷宮の十字路』と同様のテイストの楽曲となり、倉木麻衣にとっては久々の目立ったヒットを記録。各局のTV出演に加えて年末の紅白へ03~05年以来の出演を果たした。
ストーリー
小五郎が百人一首の団体皐月会の会長である阿知波と対談することになり、コナン、蘭、探偵団一行は大阪の日売テレビに来ていた。和葉や平次も来ていて和葉の同級生の未来子と大岡紅葉が大会のリハーサルを行っている中、局に爆破予告が出ていることが判明。避難勧告により非難が行われている中、爆破なんて嘘なんじゃないのかと言われているのを聞いた群衆に紛れていた黒タイツ(犯人)はムッときて爆破を決行。
結果、決勝戦用の百人一首の札を取ろうと戻っていた平次・和葉・未来子が爆破に巻き込まれ、未来子は警備員と脱出するが骨折で大会に出られなくなってしまう。平次と和葉は取り残され、屋上に退避し、コナンのスケボーアクションと伸縮サスペンダーで大炎上する局から脱出を果たす(しかも和葉はコナンが来た事も把握していないという早業)。2人を脱出するも逃げ遅れたコナンは序盤なのにいつもクライマックスでやるような起死回生の大脱出アクションを繰り広げ、平次のサポートも受けて脱出に成功。
その後、皐月会関係者の殺人事件が判明し、百人一首に絡んで狙われているのではないかとにらんだ2人は捜査を開始する。ターゲットには紅葉も含まれていたが、その頃骨折した未来子にかるた部の存続をかけて代わりに大会に出ることを託され、さらに紅葉に平次の婚約者をかけた挑発をされた和葉は大会出場へ向けて猛特訓を開始していた。
レギュラー削減
毎回毎回レギュラー全員出すと収拾がつかない上に処理できないためか、今回は博士と灰原は留守番。灰原はコナンから送られてきた事件現場の解析で(解析ソフトが博士の開発らしいので間接的に博士も)活躍するが、こっちの警察はなにやってんだという勢い。
そもそも平次の父親なんかは息子が事件に首を突っ込むのを良しとしないタイプだったはずだが、今作では『迷宮の十字路』で容疑者として登場して以降、逆輸入の形でサブキャラへ昇格した綾小路刑事が平次とコナンに全面協力的な姿勢でガンガン現場に通したり関係者に会わせたりしてくれるので問題なく平次&コナンの捜査は進んでいく。かねてから平次に協力的で警察情報を流してくれたりもする大滝はんだけでは心許ないので協力的な綾小路刑事を出すことでスムーズに進ませたのかも。
園子は宿泊先の手配など旅行の御膳立てをしているものの、風邪で寝込んだたため来れなかったという設定。滞在先確保のためだけに園子の財力を利用してキャラクターとしては現地同行を回避させるなんて都合のいい使われた方…。まあ確かに来ても今回は蘭の友人ポジも和葉だし、出番作れなかったと思うけど。
平次と和葉の映画…だが…
映画にはちょくちょく出ている気がしたが、実はメインを張るのがわずか2回目というだけあって、今回はこの2人がメイン。コナンがほぼ1人で担うアクションや派手な活躍だが、今回はコナンと平次がほぼずっと一緒に行動しているため、平次がとにかく猪突猛進で特攻×コナンがそこから突破口を見出して後処理といった感じで役割を分担しているのでいつもに比べるとコナンはサポート的な印象になっている。
クライマックスの平次は確かにカッコいい。ただ平次と和葉の関係性に関してはこれまでやった事というかパターンの繰り返しであり、紅葉の登場も今更感があったというのも正直なところ。
・普段は和葉が好きオーラを出す&平次への思いで悩んでいるが平次は鈍感。
・危機的な事件下において平次がカッコよく和葉を守ろうとする。この際にほぼ告白めいたセリフを吐く。
・解決後、このセリフの真意を和葉が問いただすも平次ごまかす。
こんな鉄板パターンが原作で既に何度も繰り返されている。少し前のエピソードで当初は子分だと思っているなどと珍発言をしていた平次も和葉への思いを自覚するようになってきていて、そこからの自称婚約者の登場でこの膠着状態についに1歩進展がみられるかと期待したのにまさかこんな何の変化もない終わり方をするなんて…。平次が先に単独登場して後から和葉が登場してからもう20年経つのにこの2人だけほとんど進展もないままループし続けるのはさすがに飽きた。
しかも紅葉さんこの1発限りであきらめて終わるキャラならまだしもまさかサブレギュラー化するのか…?これ以上することないだろこの人。毎回出てきて勘違い芸を披露されても今度はけっこう本気でウザいだけの人に…。
何故か平次と和葉はあまり好きではなかったんだけど、改めてその理由がこの2人20年近くずっと同じようなパターン繰り返しているからだ…と改めて気づいた。単独の物語としては平次カッコいいし、とてもいい終わり方だとは思う。でも20年も毎回同じようなオチってさぁ(しつこい)
平次の女性の呼び方
今作では平次が初対面(と平次は思っている)紅葉を最初は「このねーちゃん乳デカッ!」とか言っていたのにすぐに「紅葉」と名前で呼ぶようになる。これに違和感があったんだけど、そういえば平次はある程度何度も会っている蘭の事も蘭ちゃんと呼ばずに「ねーちゃん」と呼ぶし、灰原の事も「ちっさいねーちゃん」と呼んでいて(共に本人相手ではなくコナンとの会話の中で)、名前を出さない。今作でも来れなかった園子のことを「金持ちのねーちゃん」と呼んで名前を呼ばない方針は続いていて、和葉だけ「和葉」と名前で呼んで特別な意味合いが(本人無意識で)あるのかと思っていたんだけどそうでもなかったのか。未来子の事も名前で呼んでいた気がするし、同じ関西弁を喋る者同士だと同族意識があってすぐに名前で呼ぶようになるとかそんな程度だったのかもしれない。
ついにダシにされた眠りの小五郎
今作での小五郎は事件には関与しているがなんの役にも立ってない。役に立たないのはいつも通りといえばそうだが、コミカルな珍推理を披露する迷活躍すらない。
中盤で「眠りの小五郎」をやるものの、証拠が揃ってない段階で疑わしい人物に揺さぶりをかけるという目的で決定的証拠なしで容疑者に迫ったため、言い逃れられて取り逃がしてしまうという。「これでどう動くか…だな」とか平次とコナンがさほど悔しがってもいないので、自白してくれればラッキーくらいの考えだったと思われ、事件解決の最終段階であったはずの「眠りの小五郎」が単なる揺さぶりの道具になってしまったという歴史的瞬間である。
ここ最近は原作でも「眠りの小五郎」の出番が減っていて、映画でも全く出番がないか、蚊帳の外であることが続いていたとはいえ、まさか久々に映画で登場した「眠りの小五郎」がこんな扱いになるとは…。ていうかこれなら平次withコナンで追いつめれば良くてわざわざ「眠りの小五郎」使った意味が分からない。出番作りたかっただけなんじゃ。
そろそろ小五郎メイン映画をもう1度…。声優代わってから全然目立ってないじゃん…。
そしてついに逝った日売テレビ社屋
日売テレビといえば日本テレビと読売テレビのパロディであり、コナンがアニメ化されてから登場。その最初の事件である原作11巻ではタレントの松尾貴史が番組プロデューサーの諏訪道彦を殺すという事件だったが、この2人はそのまま実名登場であり、アニメ化したばかりの段階でリアルの番組プロデューサーを殺すというけっこうトンデモな事件だった。
以降も番組収録の際に局内で何度か事件が発生。さらには事件が起きた場所にTV中継が入っているとやっぱり日売テレビが中継担当だったりして、事件発生率と遭遇率の高さはとんでもなく高い。コナン世界ではよく殺人事件の発生率がヤバいことになってて治安最悪とネタにされる米花町と並ぶか下手したら密度的には凌ぐ呪いの局である。
今回は日売テレビは日売テレビでもいつも出てくる本社ではなく、大阪の支局ではあるが…特に局自体に恨みを持たれていたわけでもなく、たまたま目的がそこにあるからという理由だけでターゲットになり、爆破され大炎上。その後の顛末は出てこなかったが完全に爆破による火災で全焼してしまったと思われ、建物丸ごと焼失してしまった。しかもクライマックスではない序盤の「掴み」の場面で…。
★★★★☆
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