ブギウギ

NHK「連続テレビ小説」2023年度後期(2023年10月2日から2024年3月29日)。

笠置シヅ子(1914-1985)をモデルにしたフィクションとされ、笠置シヅ子は福来スズ子(趣里)、服部良一は羽鳥善一(草彅剛)、淡谷のり子は茨田りつ子(菊地凛子)とモデルとなった人物をもじったような別名で登場、概ね史実をなぞりつつもオリジナル展開に置き換えていき、笠置シヅ子と確執があったとされる若き日の美空ひばりをモデルにしたような人物は登場せず、水城アユミ(吉柳咲良)という似ても似つかない色々な当時の若手歌手を複合させたようなオリジナルキャラクターが出てくるに留まり、いずれにせよ若手の台頭と加齢による衰えで以前のようなパフォーマンスが出来なくなったことを悟ったスズ子が唐突に引退を宣言して引退して今後は女優業をメインにしたい意向を示したところまでで物語は終結。よって朝ドラ定番の老けメイクによる老人形態が登場せず、娘役の子役も子役のままだった。

音楽は服部良一の孫にあたる服部隆之が担当。さらに主題歌も初の作詞まで手掛けての作詞作曲編曲:服部隆之となり、中納良恵・さかいゆう・趣里の3人連名での歌唱となった。

ストーリー進行に伴う往年の笠置シヅ子による有名曲はスズ子(趣里)によるカバーで作中でパフォーマンスされ、毎回圧巻の仕上がりだった(茨田りつ子(菊地凛子)も「夜明けのブルース」をパフォーマンス)。作中カバーした曲を集めたアルバムも2回発売された。古すぎて録音状態が良くないオリジナル曲の要素を丁寧に現代に蘇らせた手腕は見事だったが…ドラマ外で趣里が稼働する事は一切NG項目となっていたのか、紅白出演は無く、関連ライブイベントは開催されたが、中納良恵・さかいゆうが参加しても趣里は1度も参加せず、徹底して作中以外で趣里が歌を披露する事は無かった。主題歌を3人で歌唱した映像もついに一切出る事は無いままという徹底ぶりだったので、視聴者以外に広がる機会も無かった。

パフォーマンスが良かったので残念ではあったけど、そこは譲れないこだわりだったのかもしれない。ストーリーは概ね史実をなぞっていて、途中までは傑作の予感が漂っていたが、どうしても最大の有名曲「東京ブギウギ」誕生が最大の盛り上がりどころ、絶頂期になってしまうのは構成上避けようがなく、終盤は停滞・失速感があった。美空ひばりらしき新人を出さず、確執もほぼ無く、驚異の新人を前にスズ子が衰えを自覚しながらも貫禄のパフォーマンスを見せつけてまだまだ燃える事ができる、やれるところを見せつけつつも、これでやりきったときっぱり引退宣言してしまい、みんなに反対されながらも意志が固く、せめてものオリジナルでラストコンサートで締め…と引退がゴールである以上は綺麗にはまとめたが、直前までは心から歌を楽しんでいる様子だったので急に捨て去る決断に行ってしまうのはどうしても唐突感は残った。あまりに燃え尽きて引退という枯れた感を出したくもなかっただろうし、実際最終週1つ前のサブタイトルは「ズキズキするわ」でまだまだチャレンジしていく姿勢を見せていただけに難しいところではあったか。

面白かったんだけど終わってみるとけっこうあっさり忘れて行ってしまうようなそんな1作でもあった。

なお前作『らんまん』主人公の万太郎がモデルの牧野富太郎は長命で1957年に亡くなっており、笠置シヅ子の歌手引退と同時期である…と考えるとなかなか凄い。さらに次回作『虎に翼』主人公モデルの三淵嘉子と笠置シヅ子は生まれた年が同じ、死んだ年も1年違いとほぼ完全に同時代を生きており、『虎に翼』では今作の世界と同一世界である事が示唆されて繋がりを描いていたのは面白かった(1話冒頭から「梅丸少女歌劇団」が会話に出てくる、歌手として全盛期を迎えた頃には福来スズ子、茨田りつ子の名前が出てくる、「東京ブギウギ」を口ずさんでいる、ついには茨田りつ子(菊地凛子)本人が登場して歌唱)。








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