1986年12月20日公開。
『ドラゴンボール』劇場版第1作。2月にアニメ放送が始まったその年末に公開された。この時点でアニメ版はレッドリボン軍とのドラゴンボール争奪戦の真っ只中まで話が進んでいたが、今作は原作1,2巻、アニメ版では1~13話までに該当する最初のドラゴンボール集めのエピソードを基にしたパラレル設定でのオリジナルストーリー。『ドラゴンボール』では合計3作制作されたが、原作/アニメとは違うオリジナルストーリーながらも時系列に矛盾が無く映画だけで3作物語が進行するように制作されている。
悟空、ブルマ、ウーロン、ヤムチャ、プーアル、亀仙人との出会いは元の展開をほぼ踏襲しつつ、敵キャラクターは一新され兎人参化やピラフ一味は登場せず、今作映画オリジナルキャラのグルメス王一味がドラゴンボールを集めていて敵役となり、一気に最終対決、神龍召喚まで50分の中で詰め込むという超濃縮展開。
リッチストンという宝石の産地であるグルメス王国ではグルメス大王が軍隊を使って村の住人の住居や畑を破壊してまでリッチストンを乱獲しまくって村人たちは苦しめられていた。そしてグルメを追い求め続けたグルメス大王はよりうまい料理を追い求めて妖怪化してしまい、食欲を抑えきれなくなり、ドラゴンボールを集めてうまい料理で空腹を満たそうとしていた。神龍そんな事に使…。村娘のパンジは武天老師に助けてもらうために1人旅立つ。
悟空とブルマが出会う展開は原作/アニメと同じだが、2人が出会っている間にグルメス大王の部下が悟空の家から四星球を奪っていってしまい、悟空とブルマが出会いも早々に部下を追いかけて空中戦を繰り広げるも逃げられてしまう。墜落した直後に、ウーロンがパンジを襲っている場面に遭遇して、原作/アニメと同じ悟空とウーロンの出会い、さらに続けてヤムチャ/プーアルも襲撃してきて原作/アニメとほぼ同じ悟空VSヤムチャ(狼牙風風拳、ジャン拳、腹減って力出ねぇ、ジャン拳で歯が欠けたヤムチャ逃走、ブルマヤムチャに惚れる、ヤムチャ女性に赤面まで一通り全部)という高速展開で、なんと1日目だけで悟空とブルマ、ウーロン、ヤムチャ、プーアルとの出会いまで一挙消化。
武天老師(亀仙人)との出会いは原作のように道中で亀を助けて案内してもらう形ではなく、パンジと合流してこっちからカメハウスを訪ねる流れに変更され(パンジがカメハウスの場所を知っていたと思われる…さすがに場所も知らずに1人旅立って差彷徨ってたなんてことは…)、ヤムチャはカメハウスの場所を知っていたのか先回りして武天老師に悟空一行が敵だと吹聴する破壊工作を行うが、原作/アニメと同じ筋斗雲に悟空が乗れる下りによりどちらの言い分が正しいか分かったためヤムチャは即逃走。武天老師の持っていたドラゴンボールをもらうため、ウーロンをブルマに変身させてパフパフさせるくだりも原作/アニメと同じだったが、ここで再度グルメス大王の部下がドラゴンボールを奪いに登場。カメハウスはミサイル爆撃で木っ端みじんに吹っ飛んでしまい、そこからはフライパン山でのエピソードの転用。武天老師は「かめはめ波」で敵一味を吹っ飛ばし(メインの部下2名は逃走)、悟空が見よう見まねで「かめはめ波」を習得。パンジが改めて武天老師に助力を乞うが、既に世間から離れた身であるし、仲間がいるから大丈夫だとか良く分からないがなんかもっともらしい事を言って同行せず。原作と違って敵組織にガッツリ被害受けててカメハウス吹っ飛ばされちゃってるのにその理屈でいいんすか…。
一気にグルメス王国での最終決戦となり、ここからはほぼオリジナル展開。ヤムチャとプーアルも駆けつけるが、部下2名のうちパスタが女性であったためヤムチャは力が出せず銃撃&爆弾をドカスカぶっ放してくるパスタを倒せず、逃げ回る。もう1人の部下である屈強な大男のボンゴは悟空が相手したが、一進一退の攻防でやはり倒しきれない。高所からの落下なんかは初期特有のギャグ補正でノーダメージになるとはいえ(ブルマやパンジも飛行機撃墜爆発からの海ジャボンで無事だし)、連続蹴りからの決め手として放った伸びろ如意棒の直撃でようやくボンゴを倒せたが完全に気絶させられず腕をついて立ち上がろうとするくらいの力は残っていて耐久力高すぎ…。
そのまま全員がグルメス大王のところに到達し、空腹が限界に達したグルメス大王はさらにモンスター化が進行して巨大化。悟空が渾身のかめはめ波を撃つが全く通じない。試し撃ちした時の小岩を吹っ飛ばした小さいやつと違って、これは巨大化したグルメスの全身を覆うほどの広範囲のかめはめ波なのに効かないって…拡散しすぎて密度威力スカスカだったのだろうか。勝ち目が無くなったが、ブルマの手元に残っていた最後のドラゴンボールがグルメス大王が腹の中に隠していた6個のドラゴンボールと共鳴。ブルマがイチかバチかドラゴンボールをグルメス大王の口の中にぶち込んでそのまま神龍を召喚。グルメス大王ォォォ…(神龍去るまでグルメス大王の姿は描かれず)ていうかこれボスキャラをブルマが倒したことになり非戦闘キャラがボスを倒すのってドラゴンボール史上唯一なのでは…。
グルメス一行は願いを言える状態に無く(グルメスは腹から神龍召喚の後は描かれず、ボンゴはグルメスモンスター化の際に踏まれてギャグ補正ペラペラ状態になってしまいパスタに救出されて元の姿には戻ったがそれどころではない)、味方一行も神龍の迫力にみんな呆けていたので、パンジがリッチストンなんていらないからこの国を元に戻してくれと願い、国が元に戻ってハッピーエンド。神龍の願いに含まれていたのか、グルメス王は元の人間に戻っ…いや人間かこれ?どう見てもドラクエのきめんどうし(ダイの大冒険のブラスじいちゃん)に近い系統のモンスターなんだけど…(まあドラゴンボール世界、国王が犬だしアニマル型とかモンスター型珍しくないので人語が喋れて二足歩行できる生物全般を「人間」としているのだろう)。
ブルマとヤムチャがラブラブになり、悟空が飛び立って終わるのは原作/アニメと同じだが、どういうわけかこの後どうする?と話し合ってから悟空がブルマたちと別れるシーンが無いので、悟空がブルマたちに何も言わずに世界は広いんだなとか言いながらとっとと飛んでいってしまうという何とも言えないエンディングに…。
『ドラゴンボール』はリアルタイムでは見ておらず(開始時と今作公開時は1歳だし…)、『Z』のフリーザ戦終盤からじわじわ見始めた(原作は33巻が最新だった頃から)。『ドラゴンボール』は90年代半ばの夕方の再放送で見ていて、映画版は確か夏休みのTV放送とレンタルビデオを駆使して完結まで(小学生の間)に一応全部見た記憶がある。最後の『最強への道』が1996年春だから小6までの間で個人的には完結してたのかな。9月に1ヶ月限定で復帰したHuluと続けて加入したAmazon PrimeのPrime Videoでも公開されていたのでこの機会に一挙見直してみた。
さすがに今作は記憶がほとんどなかったが、グルメス大王という響きと最後の願いのシーンは覚えていた。見返してみると仲間側の出会いを踏襲しつつパラレルのオリジナルストーリーをぶち込んで50分にまとめる手腕がなかなか凄い。冒頭のグルメス大王に苦しめられている村人たちの様子を見てパンジが旅立ったのは数日前くらいなのかもしれないが、悟空とブルマが出会ってからはたった2日間で全て片付いている。1日目、2日目共に内容が濃すぎるぜ…。
悟空の強さが初期レベルだった頃とはいえ、かめはめ波撃ってもノーダメージ…という悟空がボスキャラ相手に一切のダメージを与えられないのは改めて見ると凄い展開。ボンゴ相手にも苦戦しすぎでもう少し楽勝で完全気絶まで持っていけるくらいの強さであってほしかったっていうか。前述のブルマたちに何も言わずに旅立ってしまう悟空という結末もそうだが、駆け足なので大猿展開を挟んで盛り上がる時間も到底なかったと思われ、TV版より映画の方が派手さに欠けてしまった気もしなくもないが、ギャルのパンティーオチではなく、苦しめられたグルメス王国を元に戻すのに神龍が使われたのは原作/アニメよりいい事に使われて映画らしい良い話になったともいえる。
★★★☆☆
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