1990年7月7日公開。
『ドラゴンボール』通算劇場版第6作。
春の前作に続いて夏に公開された1990年2作目。春夏の年2作になって前作から4ヶ月しか経っていないのに加えてアニメの引き延ばしが本格化し始めた事もあり、この時点でのアニメは悟飯・クリリン・ブルマはナメック星に到着してフリーザ軍と一時接触、最長老様の潜在能力開放でクリリンが先行してパワーアップ、続けて悟飯をパワーアップさせようとしているくらいの時期で悟空はまだナメック星に向かいながら重力修行中だった。アニメではまだ言っていなかったが、原作ではナメック星到着前に修行を終えた悟空が今なら10倍の界王拳にも耐えられるだろうと発言していたためか、今作ではアニメに先駆けて界王拳10倍を使用するシーンが登場する。実際に本編で界王拳10倍を使用したのはずっと後でフリーザとの最終決戦時(実は使ってて負けていた事が明らかになる場面)である。
悟飯は戦闘力10000まで上昇しているので最長老の潜在能力開放を反映しているっぽいが、先に開放していたはずのクリリンはそこまでの強さで描かれていない。悟空は前述のように宇宙船での修行を反映して界王拳10倍を使用可能になっているが、具体的な戦闘シーンがあったわけではないので戦闘力数値はかなりアバウトに描写されていて10倍界王拳発動前で30000、直後にどんどん上がっている…と計測されている。
前作と異なり、今作ではピッコロだけでなく死んでいたはずの天津飯・餃子・ヤムチャも地球の戦士全員が生存して地球にいるパラレル設定。原作/アニメでは死後界王星に到着して修行を開始したという言及があっただけだったためか、ヤムチャの道着のマークが亀仙人の亀から界王様の界に変わっているが、クリリン同様に目立ったパワーアップは見られない。ピッコロは何故か異様に戦闘力が高く描写されていてスカウターは18000を計測しており、これは地球襲来時のベジータと同じだが、サイヤ人戦では3500くらいしか無かったはずなので上昇率がおかしな事になっている。今作では悟空を3万、悟飯を1万にしたため、地球No.2のピッコロが数千とか悟飯以下ではお話にならず、帳尻合わせで18000くらいを妥当と判断したっぽい。
当時鳥山明がサイヤ人は顔の種類が少ないという裏設定を用意していた事から、悟空と同じ顔のサイヤ人の敵ターレスとなり、顔が同じなので野沢雅子がそのまま演じた。今作では1人3役となったが、ターレスは悟空と血縁があるわけではない。
冒頭ターレス軍団による観測機器だけが地球に撃ち落とされ、この墜落の際の衝撃で森に火災が発生。何故かクリリン・ウーロン・ブルマ・悟飯という4人だけの謎のメンツでこの森の近くでキャンプをしていた。集まり悪いが、他の面々は集合待ちで先行して4人でキャンプしていたのだろうか。同じ場所でエンディングでもう1度キャンプを行った際にはピッコロ以外のみんな集合していたし…。
夜中に火災に気づいた4人はクリリンと悟飯が気で火を消し飛ばすとして消火活動を実施。一般的な動物たちが逃げ惑う中で、1体だけ小型のドラゴンが混ざっていて倒木で動けなくなったところを悟飯に助けられた事で以降アニメ/映画オリジナルの悟飯の友達ハイヤードラゴンとなり一時準レギュラー化。火は消えたが森は焼け野原で消失してしまい、行き場を失った動物たちを見たクリリンはドラゴンボールで森を元に戻す事を提案。早速OP曲の間にドラゴンボール集めとなり、「CHA-LA HEAD-CHA-LA」がいつものアニメOP映像ではなく、ドラゴンボール集めのダイジェストに。主に悟飯とクリリンが2人別行動で集めて途中でクリリンの元に天津飯と餃子が合流して4人で集めたっぽい。クリリンが既に自力で飛び回っているのに何故か悟飯は飛行機で移動して空を飛べないかのような描写(なんか崖から落ちて川ポチャしたり、飛んで逃げればいいのに溶岩流から走って逃げていたりする)なのは何故なのか。前作までは長距離で移動するにはまだ悟空も筋斗雲使ってたけど、この時期は全キャラ自力飛行になる過渡期だったせいかヤムチャもスカイカーの新車購入して破壊されてるし。
神龍に森を元に戻してもらうが、その後ターレス軍団により今回のメイン騒動である「神精樹」により地球全体の生命が吸い上げられて地球規模の危機となってしまう。既に何人かの戦士が強い気を感じたり、ヤムチャが神精樹の種を植える際の爆撃の余波でローン15年のスカイカーを破壊されてしまったり、各地で神精樹が生えてきての被害が相次いで異変が着実に迫っていたものの、悟空たちにまだ危機感は無く、呑気なまま。悟空の家にピッコロ以外の仲間達が集まっていた際に界王から悟空への通信でようやく危機が伝えられるが界王曰くもう手遅れだと言う。「神精樹」は1度根付いてしまったらもう手遅れだと言う。
…え?界王様?
なんと手遅れだと伝えるだけの界王様。そして何この神龍の容赦ない超無駄打ち。しかも少し前に使ってしまったから1年神龍使えない。つまり敵を掃討しても「神精樹」で受けた被害を神龍で救ってもらう事後処理が不可能になっていきなり詰んでしまったじゃないかコレ。
当然いきなりもう手遅れとか言われても悟空はそんな事は信じねぇ(信じたくねぇ)!と仲間たちと情報を共有し、とりあえずみんなの気で神精樹を吹っ飛ばそうと提案。悟空・クリリン・ヤムチャ・天津飯・餃子が神精樹の根元を吹っ飛ばすために現地へ向かい、エネルギー波を撃ち込むが効果ゼロ。策が無いままどうしようかと考えていると、上に居座っていたアモンド・ダイーズ・カカオ・レズン&ラカセイの気配を感じ、とりあえず神精樹対策は後回しで戦闘に突入。
クリリンは気円斬をアモンドにはじき返され、ヤムチャは繰気弾がカカオに通じず、天津飯・餃子もレズン&ラカセイに攻撃が通じずあっさり敗北。一応天津飯の太陽拳はレズン&ラカセイに効いたっぽいがその後の描写は無く、レズン&ラカセイ共に元気で餃子はラカセイに追撃されて完全に気絶。駆け付けた悟飯がラカセイを圧倒するも倒しきれず、途中でターレスが出てきてしまった。ピッコロが駆け付けるもあっさりやられてしまい、ターレスはこのタイミングで突如しっぽが再生した悟飯をパワーボールで大猿化させて暴れさせる。原作ではしっぽ1度切られてからは2度と生えなかったのに。
悟空は界王拳を駆使して逃げ回るが、悟飯は悟空に容赦なく襲い掛かる。しかしどこからか駆け付けたハイヤードラゴンには懐いておとなしくなってしまった大猿悟飯。知り合ったばかりのペット(友達)には懐いて父の呼びかけには一切応じず殺しにかかって来るって、大猿の本能どうなってんだよ。
呆れたターレスは大猿悟飯に必殺技を放って殺そうとするが、悟空が咄嗟に気円斬のような技で尻尾を切断して元に戻したためターレスの攻撃は当たらず悟飯は無事だった。
いよいよターレスとの直接対決となるはずが、アモンド・ダイーズ・カカオ・レズン&ラカセイが全員揃って悟空を襲撃。悟飯にやられたはずのラカセイ、大猿化した悟飯の元に駆け付ける際に邪魔してきたダイーズとカカオを悟空が吹き飛ばしていたはずだが、誰1人倒せてなかったらしい。ピッコロも復帰してきてターレスに挑んで瞬殺される中、悟空は界王拳を発動すると一瞬で部下全員を沈め、さらにターレスにも猛攻。戦闘力3万にこれまで余裕だったターレスも焦り始めるが、神精樹の実を食べてパワーアップすると再度余裕の態度になり悟空を圧倒。悟空は渾身の界王拳10倍を発動するがなんと3万が10倍で30万以上になっているはずだったが全くついて行けずに1発も攻撃を当てられないまま一方的に敗北してしまった。
仲間達の声で悟空は元気玉を準備し、この間に悟飯以外のピッコロ・クリリン・ヤムチャ・天津飯・餃子がなんとかボロボロで復活してきてターレスに再度挑むが全員瞬殺されてしまった。悟飯だけ復帰してこないのは大猿化のせいで全裸のままなのでさすがに当時のコンプラでも全裸で戦闘復帰させるわけにはいかなこの隙に元気玉を完成させた悟空だったが、決め技元気玉はターレスのエネルギー波にあっさり消されてしまい、悟空も気絶。
完 全 敗 北 。
絶望的な状況の中、微かな意識の中で「あったけぇ」何かを感じた悟空は半ば無意識でそこから元気を集め始めた。倒れたままの解説員クリリンによれば、先の元気玉が通じなかったのは地球から元気を集めても既に荒廃しかけている地球の元気が足りなかった、そして今度は神精樹の実から直接パワーを集めているという事らしい。
再度ターレスの前に立ちふさがる悟空。しばしのにらみ合いの末の元気玉とエネルギー波の応酬は一瞬で片付き、ターレスを飲み込んで神精樹に炸裂した元気玉はターレスもろとも神精樹も消滅させた。そして神精樹とその実が吸い込んだエネルギーが地球に降り注いで地球環境は復活するのだった。力尽きた動物が復活する場面や、森や水が回復する様子は描かれたものの、人工物である建物が神精樹によって倒壊・崩壊したのが復活する描写は無かったがどうなったんだ。当然人工物が復活できるとは思えないので壊された町並みは瓦礫のままなのでは…。
地球規模での荒廃の危機で全体に暗いトーンでのシリアスバトル続き、これまでと違って全く勝てない相手に1度完全敗北全滅してから奇跡の大逆転勝利という展開は熱い。全体に妙に間が多い印象で、戦闘の最中にもチョイチョイ地球がどんどん荒廃していく自然風景のカットが挟まれたり、悟空とターレスの終盤もにらみ合いや自然風景を挟んでの間の長さが独特の空気感を生み出していて異色の演出だったように思う。
そのように雰囲気を醸し出す間を重視した一方で仲間たちの戦闘描写が省略気味で、イマイチどうなったのか分からないまま仲間全員敗北してるし、倒したはずの部下は全員倒せてなくて、再度悟空に襲い掛かってきて全員悟空が界王拳で仕留める展開はなんだかもったいない。ちょうどいい人数の部下が出てきて今回は初めて地球側の戦力がフル登場しているのだから仲間達が善戦するいい機会だったのにまさか1人も勝てない展開は残念。結局敵全員を悟空が1人で界王拳で瞬殺して雑に処理してしまうくらいだったら、アモンド・ダイーズ・カカオ・レズン&ラカセイは悟空以外で何とか撃破するもターレスには束になっても敵わない…という王道展開で良かったじゃないか。今作が地球人が活躍できる最後の機会だったのになぁ…。地球戦士の戦力外退場を結果的に強く印象付ける展開になってしまった。
★★★★☆
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