虎に翼 

2024年前期(4月1日~9月27日)NHK「連続テレビ小説」枠。

伊藤沙莉主演。女性として日本で初めて弁護士、判事、裁判所長を務めた三淵嘉子をモデルにした基本的にはフィクション。

前作『ブギウギ』のモデルであった笠置シヅ子(1914年~1985年)と三淵嘉子(1914~1984)は同じ年に生まれ、1年差で亡くなるというほぼ同時代を生きており、この同時代設定を生かして初回から主人公寅子(伊藤沙莉)が「梅丸少女歌劇団」に入る!と言い出し、現実世界ではなく『ブギウギ』世界と同一世界である事を示唆すると中盤頃には笠置シヅ子ではなく“福来スズ子”の名前も登場し「東京ブギウギ」がヒットしている人気歌手として言及され、ついには『ブギウギ』の茨田りつ子(菊地凛子)本人が登場して作品の壁を越える演出も見られた。

一方で同じ時代ながらも今作は子供時代(子役起用)なしで17歳から物語が始まったため最初から伊藤沙莉が登場、また歌手引退の1950年代後半で最終回となった『ブギウギ』に対して1970年代の晩年付近まで進行して寅子死去後の1999年の様子が最終回で描かれた。

内容が内容だけに女性の社会進出の主張が強くなるのは予想され、実際その辺りを丁寧に描いていた前半は良かったんだけど、昨今不自然なまでに描写が増えている同性LOVE話が唐突に持ち込まれて当事者の俳優をゲストでドカドカ1発出演させて長々と主張を始めたかと思えば、三淵嘉子の史実には無い再婚の際に相手の苗字に変わる事にまで異議を唱えだして事実婚の形に変えてしまう…などなんだか妙に主張の激しい展開が増えてきておかしな方向に転がり出した感は否めなかった。モデルにしたフィクションとはいえ、基本の史実はなぞっておきながら主張したいところだけ史実を捻じ曲げるのはちょっとやりすぎに思えてしまった。三淵嘉子は実際には武藤→和田(結婚)→三淵(和田氏と死別後の再婚)であり、これに従うなら今作の寅子は猪爪→佐田→星となり、星寅子で生涯を終えるはずだったが、何故か佐田のまま(史実だと和田のまま)である事にこだわってダラダラと無駄に時間をかけて描写。

子供の設定が変わるのもよくあることで今作の場合は息子(この史実の息子である和田芳武は母の再婚の際に三淵に変えずに和田を維持、2020年まで生きていたらしい)を娘に変えていた。娘の俳優は年齢ごとに変わっていったが、時代が進んでいき“大学院で寄生虫の研究”をしているというところは和田芳武氏が寄生虫研究者だったという史実をわざわざトレース。しかしそこから女性で研究職は先が無いとしてなんと大学院中退を宣言すると家事手伝いフリーターになってしまい、そのままやりたい事がたくさんあるとか齢30にしてハートの強い発言を繰り出すとフリーター生活を謳歌、1999年50代になっても自由人として生きているという超設定を炸裂させてしまった。ここまで来ると中途半端に史実を拝借しておいて、ちょっと敬意が足りてない気がしてきてしまった。

そんなこんなで話自体は普通程度に面白かったんだけど、制作側の主張が強すぎて後半ほどドラマではなく特定の主張を聞かされている感じが否めず違和感が拭えなかった

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