1991年3月9日公開。
『ドラゴンボール』通算劇場版第7作。
この時点でのアニメは引き延ばしの最盛期に突入しており、悟空は回復中、ベジータ・悟飯・クリリンがフリーザと戦闘中でピッコロがポルンガで生き返ってネイルと融合してパワーアップし、フリーザが変身を繰り返して最終形態になるくらいの時期だった。よって前作で先行披露した界王拳10倍をまだ本編で披露していなかった(10倍くらいまでなら耐えられるぞと発言してからまさかこんなにいつまでも披露しないなんて思いもよらない)。一方で作中で主にベジータが“超サイヤ人”という単語を連発し、フリーザも”超サイヤ人”を警戒しており(原作で最初にフリーザが「超サイヤ人にでもなられたら厄介」と発言した部分をアニメ化した際にはまだ読み方が分かっていなかったのか「ちょうサイヤ人」と間違えて言っており『改』で修正された)、伝説の存在とされていたが、実際に悟空が金髪の超サイヤ人に変身したのは原作でも今作の公開後だった(週刊少年ジャンプ1991年15号なので3月末頃?)。よって今作では悟空こそが超サイヤ人なのではないか?程度の扱いで、超サイヤ人には変身しないが、黄金のオーラをまとった疑似超サイヤ人的な形態には至っており、これは髪が逆立つという鳥山明のアイデアを基にして独自に描写したものであったようだ。
前述のように生存戦士はみんなナメック星にいた時期だが、今回も全員地球にいて、概ね当時のステータスと思われるが上げ幅が激しい時期だったため、各自の強さがどの程度なのかは曖昧で、戦闘力を示すような場面も無い。悟空・悟飯・クリリン・ピッコロとヤジロベーといった当時生きていた面々のみとなり、当時まだ死んで界王星にたいたヤムチャ・天津飯・餃子は不在。まあ前作みたいに数がいても全員1人にも勝てないんじゃ足手まとまた冒頭の悟飯は初登場時のドラゴンボールをくっつけた帽子+黄色の服装に何故か戻っている。平和に暮らしている時の普段着がこれなのだろうか。
珍しくいきなりOP曲で始まる。瞑想修行中のピッコロの前に悟飯がハイヤードラゴンに乗って現れ、ハイヤードラゴンが口笛に合わせて踊るようになったと言うと一方的に口笛を開始。ハイヤードラゴンも確かに踊っているが、悟飯の方がノリノリでハイヤードラゴン以上に踊っているぞこれ。しかも途中でどこからともなく伴奏まで付き始める始末。無言だったピッコロは滝汗全開で苦しんでおり、ついに辞めろと怒鳴り散らす。ナメック星人は口笛の音が苦手だという新設定を説明する前に巨大な星が地球に衝突しそうな事が判明。
星に生命反応がある事から破壊すればいいというわけにもいかず、悟空とクリリンはかめはめ波で軌道をそらそうと試みるが失敗して吹き飛ばされてしまった。余波だけでも相当な被害を出した衝突星だったが衝突寸前に軌道が勝手にそれて爆散。そしてスラッグの要塞が着陸していた(地球を破壊せずにこうしたのは技術力らしい)。悟空・クリリンは行方不明、ピッコロもいないので、悟飯・チチ・ブルマ・ウーロン・ハイヤードラゴンしかいない状況で部下たちが出てきて攻撃を始めたので悟飯が奮戦。しかしその姿を見たスラッグは悟飯の帽子にくっついたドラゴンボールを見て遠い記憶を蘇らせた。これはドラゴンボールだな?と尋ねるスラッグにブルマがドラゴンボールを知っているような素振りで7つ集める必要がある事をあっさり喋ってしまったため記憶を探られ、レーダーも奪われ、わずか1時間でドラゴンボール集めが完了してスラッグは若返りの願いを叶えてしまった。しれっと「永遠の若さ」と言っていたので最盛期に若返った上で不老まで叶ってるのかなこれ。「永遠の命」だと老人形態のまま固定しちゃうし。
悟飯・チチ・ブルマ・ウーロン・ハイヤードラゴンはなんとか全員無事で一旦帰還していたが、スラッグ軍は暗雲装置で地球全体を厚い雲で覆って一面氷河地帯にしてしまったので、悟飯が単身出撃(何故かハイヤードラゴンとウーロン連れてきたが当然役に立たないので隠れているだけ)。雑魚をそこそこ蹴散らすも数が多すぎてさばききれなくなりついには雑魚兵士相手にもやられてしまい、幹部と戦う前から満身創痍な悟飯。駆け付けたピッコロがドロダボを一方的にボコボコにして撃破している間に、悟飯はメダマッチャにやられてしまった。慌てて駆け付けたピッコロはメダマッチャ、アンギラとまともに戦う暇もなく悟飯をかばってエネルギー波を受けて戦闘不能に…。
序盤で行方不明になっていた悟空とクリリンは仙豆救援隊ヤジロベーに救助されていてようやく到着。悟空1人でメダマッチャ、アンギラを余裕で連続撃破し、ついにスラッグが参戦。クリリンが一撃で「なんで俺だけ」発動で戦闘不能になり、悟空とスラッグの一騎打ちとなったが最序盤からやられっぱなしで一方的に追い詰められてしまった。何故か界王拳未使用のまま完全に追い込まれてしまった悟空だったが、謎の力が発動。白目を剥いて意識が無い状態で黒髪のまま髪が逆立って黄金のオーラをまとった状態(疑似超サイヤ人)となり、超パワーを発揮してスラッグを今度は一方的にボコボコにしてしまう。
スラッグが本気を出すと言って折られた腕を自らもぎ取って再生した事でナメック星人だと気付いた悟空は驚愕と同時に正気に戻り黄金オーラが解けて元に戻ってしまい、装備を脱いでナメック星人の姿を完全に晒したスラッグは巨大化。再度一方的に悟空を痛めつける。ついには握りつぶされて気絶してしまった悟空だったが、かろうじて復帰したピッコロが耳をひきちぎると悟飯にあの口笛を吹けと指示。悟飯の口笛でスラッグは冒頭のピッコロ以上に悶絶して苦しがり、解説係界王様がナメック星人は口笛の音が苦手なのだろうと解説。この隙にピッコロは残ったパワーを悟空へ譲渡。復活した悟空はようやく界王拳を発動。倍率は不明だがピッコロの気と混ざり合って異様なデカさの赤いオーラを放つとスラッグの腹部を貫いて一撃勝利。悶絶している時のスラッグの苦し紛れのエネルギー波で半壊していた宇宙船は吹き飛ばされたスラッグが激突した事で全壊。続けて悟空は暗雲発生装置の破壊のために雲の上に向かうが、生きていたスラッグが追撃。振り切った悟空は太陽から元気玉を作り出すとスラッグもろとも暗雲発生装置も破壊。地球は元に戻って解決となった。
ピッコロ大魔王編を映画ではやっていなかったのもあってか、今作はピッコロ大魔王編を少し下敷きにした感がある。老いたスラッグがドラゴンボールを集めて全盛期の若さを取り戻す願いを叶えるというのはピッコロ大魔王と同じ展開だし、貫いて勝利、貫いても死なないスラッグ…などの展開もピッコロ大魔王のオマージュっぽい。ただナメック星人と魔族の設定が混在しているような感じもあり(実際には”ナメック星人”の設定が後付けでピッコロ大魔王は”魔族”名乗ってて神様もピッコロも自分がナメック星人な事はベジータとナッパ来襲時に指摘されるまで知らなかった)、部下はみんなナメック星人ではなく魔族っぽいデザイン。設定上はスラッグ星の原住民らしいけど。部下は名前付だけで6人、その他かなり多くの一般兵を従えた大軍だがボスのスラッグがヒドイ上司っぷり。ゼエウンという巨漢は「スラッグ様ももうお歳だ」と口走った事でスラッグに即処刑されてしまい、ギョーシュという科学者は地球を改造するのにどれくらいかかるか聞かれて10日と言っただけで無言で消され、同じ顔のカクージャが3日と言ったら無言で満足する…といった具合に気に障ると即部下を抹殺してしまう始末。幹部勢がやられて一般兵士軍が逃げ帰ってきた際にもスラッグが一掃しており、宇宙船に残っていた生き残りは全てスラッグが放った流れ弾や吹き飛ばされたスラッグの激突により全滅している。ピッコロが幹部1名、悟空が倒したのは幹部2名とスラッグ本人、悟飯1人で一般兵士をそこそこな人数倒してはいたが、今作で圧倒的な数の敵兵を殲滅したのは宇宙船を破壊したスラッグ本人である。
最後の最後まで界王拳を使わなかったのは謎だが、終始息が白く寒がっている様子があったので力を出し切れていなかったのだろうか。前述のように前作で先行して10倍界王拳を使用したものの1発も当てられずに全く通用しないという描き方をしてしまったので、前作の敵に通じなかった上に本編でもまだ未使用なのに2作連続で10倍界王拳を使うのもちょっと不安だし、ピッコロからの気の譲渡で一時的に謎倍率のトンデモパワーを発揮したという事にしたのかも。とにかく原作/アニメが進んでいない時期だったので、超サイヤ人も噂だけの段階でギリギリを突いた感じ。
結果的に界王が推測だけでけっこう適当な解説をしていた印象で、スラッグが100%悪のナメック星人だという解説くらいにしておけばよかったものを「あのフリーザをも越えるかもしれん」とかフリーザがどれくらいの強さなのかも判明していないのに適当な事を言い出して「超ナメック星人」と過大評価してしまい、悟空の疑似超サイヤ人の姿にはこれは超サイヤ人の力かと言ってみたり、スラッグを倒した後には「超ナメック星人を倒したから孫悟空は超サイヤ人かもしれない」(タイトルの由来)など推測を基に推測を重ねる始末でちょっと余計な事を喋りすぎだ。
今作で登場したナメック星人は口笛の音が苦手という設定とこの頃にドランゴンボールのネタ的なキャラクターソング集アルバムが制作されていた事が重なり、今作では悟飯が吹いている口笛としてだけ登場する「口笛の気持ち」は悟飯の歌を加えたバージョンも制作された。これだけなら「ピッコロさんだ~いすき」の電波的破壊力には及ばないインパクトだったが、もう1つ「口笛の気持ち・ピッコロ編」という口笛を聞いたピッコロがひたすら苦しみまくり、映画冒頭と異なり、怒って止める事もせずに止めるよう懇願し続けて限界突破し、最後には人格崩壊を起こしてパッパラパーになってしまうという衝撃の別バージョンが制作され(曲というより悶絶崩壊台詞がメインで口笛がBGMなので果たしてこれは曲なのか…)、「ベジータ様のお料理地獄」と双璧のネタ曲として一部では伝説と化している。
★★★☆☆
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