1989年7月15日公開。
『ドラゴンボール』通算劇場版第4作。
アニメ版が『ドラゴンボールZ』へと改題リニューアルされて最初の1作。何故か今作のみ映画オリジナルタイトルが無く『ドラゴンボールZ』のみ。しかし『Z』終盤の頃にはいつの間にか作中の悟空の台詞「悟飯をかえせ!」を少し変えてビデオ化の際にキャッチフレーズのように記載されていた『オラの悟飯をかえせッ!!』をタイトルとして扱う資料が登場し始めた。この明らかに他の映画と傾向が異なり浮いたタイトルが一時期公式化しかけていたが、現在は再度修正され公式表記は『ドランボールZ』のままとなっている(東映公式も同様)。
前3作の『ドラゴンボール』は原作/アニメの進行より大幅に遅れつつも原作/アニメの要素を再構築して一応連続性のある物語として3作進行していたため、当初は今作もピッコロ大魔王との戦いを元にした前3作の続編となる予定だったとも言われている。しかし今作公開時には既にピッコロ大魔王との戦いどころか悟空の背が伸びて大人になりマジュニアとの戦いも終えて『Z』に改題され、ラディッツ戦も終了して悟空は死んで蛇の道を走っていて、悟飯はピッコロに連れ去られて荒野で生き残るために奮闘するという原作ではあまり描かれなかった部分を引き延ばしたオリジナルストーリーを展開していた頃合いで、今更悟空が小さい少年時代のピッコロ大魔王戦をやるには遅れすぎたため、映画も『Z』として路線変更したものと思われる。
今作は悟飯が誘拐される、悟空とピッコロが一時的に共闘するというラディッツ戦の要素を踏襲したオリジナルストーリー。時期的にはラディッツ襲来直前頃という事になるが、そこまでの5年間悟空一家は仲間たちと会っておらず、悟飯が生まれていた事も知らせていなかったので仲間達はまだ悟飯の存在を知らないはずだが、今作では悟空がブルマ・クリリン・亀仙人に悟飯が誘拐されたと伝えていて既に悟飯を知っているなど矛盾がある。戦力はラディッツ戦以前(ピッコロの「魔貫光殺砲」は無し)だが、人間関係はラディッツ戦以後といった感じ。以降の映画版は“その時々の戦力をベースにした1作ごとのパラレル”のようになっていて各映画ごとの繋がりも無いという解釈が一般的。
…だが、正史に入らないはずの今作のガーリックJr.はフリーザ戦の後の悟空不在時に復活してアニメオリジナルストーリーで再登場。『ドラゴンボールZ』時系列では過去に起きた出来事として正史に組み込まれた。『Z』を再編集した『ドラゴンボール改』は極度の引き延ばしや消せないオリジナル要素以外のアニメオリジナルストーリーは全カットされたため、『改』ではガーリックJr.は存在しない。
第23回天下一武道会でピッコロに悟空が勝利してから数年後、修行中のピッコロを謎の4人組が襲撃してピッコロがやられてしまう。ピッコロを殺したので(一心同体である)神も死んだ!と浮かれるボスらしき人物だが、当の神は天界で「ピッコロがやられた!」と衝撃を受けていたものの、死にかけて苦しんでいる様子はなく、ピッコロが死んでいない事が確定。後の神の説明によると今の神が先代の後継者になる300年前に争ったのがガーリックで、ガーリックの野望を見抜いてた先代は後継者に今の神を選び、それを恨んだガーリックは神に反抗。先代の神により封印されたが「300年後に復活してやる」と最後に叫んでいたという。本人は死亡したのか何なのか既に不在で、今回出てきたのはガーリックJr.とされ息子らしい。封印状態でどうやって子供が誕生したのか不明だがきっとピッコロみたいに口から卵タイプで封印されていてもそれくらいは出来たのだろうきっとそうだろう…。
ガーリックJr.と部下の魔族ジンジャー・ニッキー・サンショは既にドラゴンボールを4個集めており、悟飯の帽子に飾られていた四星球を奪うために悟空の家にやってきた。悟空は素潜りで今晩の魚を調達していたため不在で、たまたま訪れた牛魔王が一撃でのされ、悟飯を生むまでは現役の武道家だったチチが挑もうとするがやはりやられてしまう。ガーリックJr.らは何故か悟飯ごと拉致していき、悟空が駆け付けた時には既に去った後だった。
ガーリックJr.は悟飯の潜在能力を見抜き、部下にしてやると言い出したのでニッキーが世話させられることになったが、怖がって泣いてばかりだった悟飯はこの辺りから殺されそうな感じは無いのと怖いのにも慣れてきたのか無邪気に走り回りニッキーを翻弄。さらに子供が食べると酔ってしまうという果物を食べて酔っ払うとまさかの本人歌唱曲「天下一ゴハン」をBGMに場にそぐわないポップな恐竜たちが大挙して出現してくる夢の中のメルヘン世界が展開するのだった。
悟空はカメハウスでブルマ・亀仙人・クリリンと作戦会議…というかブルマからレーダーを借りてボールが5つ揃っている場所へと筋斗雲で向かうが、何故かクリリンも亀仙人も協力する気は無いのか見送るのみ(クリリンは気にしている様子で後で駆け付けた)。
この間に残るドラゴンボール2つも見つけて7つ揃えてしまったガーリックJr.は悟空到着前にあっさりと神龍で「永遠の命」の願いを叶えてしまう。そこに駆け付けた悟空、そして無駄に神々しく神も降臨するが、悟空には邪魔するなと言われてしまい、神は300年前の因縁を説明(作中ではここで敵の正体が明らかになる)。天下一武道会でピッコロを倒した孫悟空の事はガーリックJr.も知っていたが、神への復讐が優先なので悟飯を探しにガーリックJr.を素通りして奥へ向かう悟空をガーリックJr.もスルー。代わりにジンジャー・ニッキー・サンショが悟空に挑む。ショウガヤキーッ、ノドアメーッ、ウナジューッとメタ的にそれぞれの名前の元ネタになっているものに繋がる単語を掛け声に巨大化してパワーアップするジンジャー・ニッキー・サンショを相手にやられはしないが倒しきれない悟空。クリリン・ピッコロが別々に駆け付け(タイミングは同時だがこの時期のピッコロはまだ敵なのでクリリンは近くにいるだけで怖がっている)、悟飯回収をクリリンに任せ、悟空はジンジャー・ニッキー、ピッコロはサンショと対決。ピッコロは不意打ちでなければ倒せない、1人ずつでは他愛もないとサンショをあっさり撃破。如意棒アクションで挑んだ悟空はニッキーを如意棒で吹き飛ばした後に、ジンジャーをかめはめ波で撃破し、その延長上にいたニッキーもろともまとめて撃破。
神はガーリックJr.に手も足も出ずやられ放題となっていたが、謎の神々しいオーラで金色に輝くとガーリックJr.を一方的に吹き飛ばす反撃を見せる。しかし次のシーンではまた殺されかけており、永遠の命だと言っているのに自爆で道連れにしようとするのでガーリックJr.が死ぬのはお前だけだ!と言っているのに全然話を聞かない始末。そこに悟空とピッコロが駆け付けて共闘。ガーリックJr.が巨大化すると2人がかりでも全く歯が立たない。
悟空とピッコロが重装備を脱ぎ捨てて本気モードとなると今度はガーリックJr.の動きを上回って圧倒し、一気に吹き飛ばす。直後にピッコロが悟空に挑み神様の前で2人で戦い始めてしまうが、当然吹っ飛ばされた程度では死なないガーリックJr.はブチ切れて周囲のなにもかも吸い込むデッドゾーンを展開。悟空・ピッコロ・神はなすすべなく吸い込まれそうになり建造物にしがみつくしかないが、建造物もボロボロ引きはがされて吸い込まれていく。
ガーリックJr.が巨大化して戦い始めた事で城が崩壊して瓦礫直撃で悟飯を落として気絶していたクリリンは気絶したまま吸収されそうになり目を覚まし、悟飯不在に気づくが、瓦礫の下から泣きながら飛び出してきた悟飯は仁王立ちでデッドゾーンの吸引に耐え抜く。焦るガーリックJr.は自身が悟飯に抱いた只者ではないという予感が正しかった事を悟り、フルパワーでデッドゾーンの吸引力を全開にし、他のメンバーは全員しがみついてもいられなくなり吸い込まれそうになってしまう。悟飯は全力で叫ぶと巨大なエネルギーの塊でガーリックJr.を吹き飛ばし、ガーリックJr.は自らのデッドゾーンに吸い込まれてしまった。術者がいなくなると技が解除されるらしく、技が終わって空間も封印されてしまい、永遠の命を得てしまったガーリックJr.は永遠にデッドゾーンの中で生き地獄となる事が確定した(後のTV版では故郷の魔凶星が地球に接近してパワーアップした事でデッドゾーンから脱出して復活)。
一気に『Z』らしいバトル中心の展開となったが、まだまだ気弾が連発して飛び交ったりオーラ出して飛び回る時期ではないので格闘戦主体。悟空もかめはめ波1発だけだし。しかも随分ゆったり構えて撃っているなぁ…という印象ではあるんだけど亀仙人が放っていた元祖かめはめ波の動作になっており、こだわりが細かい。またピッコロ大魔王との戦いの後で神様の神殿とカリン塔を繋ぐのに如意棒を使用してからは基本的に繋ぎっぱなしになった事と、戦闘スタイルの変化で使用もしなくなったので、大人になってから悟空が如意棒装備で戦うというのはレアな戦闘スタイルだ。
登場人物の行動が地味にぶっ飛んでいるのも特徴で、悟飯を誘拐する事に全く必然性が無い。ドラゴンボールだけ取り外すか、最悪でも帽子だけでいいだろ。ピッコロを倒した実力者悟空をおびき寄せるためというわけでもなく、悟飯がお父さんは孫悟空だと言うまで知らなかった様子だし。また敵が永遠の命を叶えてしまうというのは史上唯一である。ピッコロ大魔王や後のスラッグはかなり老いていたので若返りのために神龍を使った事があるが、永遠の命狙いの成功者はベジータやフリーザも成し遂げられなかった快挙である。実際のところはドラゴンボールを揃えるより前にピッコロ急襲で神殺害を計画していたので、創造主である神を殺すとドラゴンボールも消えてしまう事を知らなかったと見られ、ピッコロ殺害に成功していたら永遠の命は得られなかった。破綻した計画を実行して詰めの甘さでピッコロの死を確認しなかった事が結果的にラッキーだったという…。
ただ本人が永遠の命を得たと散々公言しているので、普通に考えれば封印技(この時点ではまだ記憶に新しいはずの「魔封波」)しかないのに誰1人言及せず、普通に戦って倒そうとしているのは一体どうしたことか…。ピッコロが永遠の苦しみを…とか言っていたので、この願いは不老不変ではなく、不死なだけで肉体の状態は願いに入っていないため、肉体が破壊されて動けない状態から自動回復する事は出来ず、ただ死ねない永遠の苦しみになるはずだという判断なのだろうか。
それにしたって神はなんでお前出てきた…ってくらい役に立たない。本編では人間の力を借りて天下一武道会でヤムチャとピッコロと対戦しただけでこの後は即戦力外になってしまったので神が直接戦っている姿って本編に出てなくて貴重ではあるんだけど…。
★★★☆☆
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