1995年7月15日公開。
『ドラゴンボール』通算劇場版第16作、『Z』本放送時最終作。
この時期のアニメは潜在能力を開放した悟飯が作中単独最強の存在になりブウを圧倒するもピッコロ・ゴテンクスを吸収したブウにあっさり形勢逆転されてしまい、老界王神の命をもらった悟空が救援に駆け付けるが悟飯も吸収されてしまい、困った悟空の元に占いババの力でベジータが1日だけ復活、悟空とベジータがポタラ合体でベジットとなり悟飯吸収ブウをボッコボコにしていた頃だった。ブウとの決着はついていなかったものの原作が6月で最終回を迎えており、アニメの最終回は翌年1月となったため、『Z』放送時これが最後の映画となった。
原作終了に合わせた今作はアニメに先行してブウを倒して平和が戻った後の時系列(原作最後の10年後ではなく、ブウ編決着のすぐ後の時期)となっていて、矛盾が無い。
悟飯とビーデルはグレートサイヤマン1号2号に扮して街の治安を守っていた(日常に戻り、悟飯の正体はクラスメイト達にもバレていたがビーデルへの出動依頼が来ると悟飯はまだトイレのフリして授業を抜け出していた)。2人が自殺騒動を起こした謎のじいさんホイを助けるとホイはオルゴールに封印された勇者タピオンを復活させたいと告げ、ドラゴンボールの力を使いたいと訴えてきた。自力で開けられないため神龍の力で封印を解いた悟空たちだったが、復活した勇者タピオンは貴方たちはとんでもないことをしてしまったんですよ!と怒るとどこかへ行ってしまった。トランクスだけが懐いて積極的にタピオンとの交流を図る中、街に下半身だけの巨大怪物が出現。グレートサイヤマン1号2号出動するも状況を見て力を開放したアルティメット悟飯が撃退するが…。
原作ではアルティメット悟飯は変身ではなく、老界王神の儀式終了後に気合を入れて変化。目つきが超サイヤ人同様に変化して最後まで平時でもその目つきのままだったが、この映画では通常時は元の目つきに戻っていて、変身する要領で目つきの鋭いアルティメット悟飯へと変化する描写になっており、以後基本的には変身扱いとして描写するようになったっぽい。
トランクスに心を開いたタピオンはブルマにも事情を説明。1000年前、コナッツ星の悪の気を吸い取っていた魔人像がホイ達魔導師に邪悪なエネルギーを注ぎ込まれて幻魔人化。ヒルデガーンと化した幻魔人を封印の笛を扱えたタピオンと弟のミノシアが笛の力で抑え、その隙に神官が剣で上半身と下半身に分断し、タピオンとミノシアがそれぞれ自身に封印した。しかし魔導師が2人を狙うようになったため、2人はオルゴールに封印され、近くにいると共鳴して復活するのでそれぞれを遠く離れた銀河へと放逐したという。ホイはミノシアの封印を先に破り(どうやったかは不明)、ミノシアは下半身に殺されてしまっていた(冒頭で描写)。
ブルマがオルゴール代わりの寝室を制作した事でひとまずの不安は去ったと思われたが、既に共鳴が強くなっており、封印しきれずに上半身と下半身が合体してヒルデガーンは完全復活。巨大怪獣と都市部でバトルという史上初の展開となり、ビル群をぶっ壊しながらの激闘が始まる。下半身だけの時はアルティメット悟飯が対応できたが完全体にはなすすべなく、攻撃の瞬間に実体化する特性を分かっていながら動きについて行けず悟空・悟飯はあっさりやられ、救援に来たベジータはビルに残るサラリーマン勢をヒルデガーンの火炎攻撃から守るためのバリアで全力を使い果たして倒れてしまう。
悟天とトランクスが超サイヤ人3ゴテンクスとなり、1度は倒したかに思われたがまさかの脱皮。一撃で悟天とトランクスに戻ってしまい、復帰した悟空と悟飯もあっさりやられて全滅。タピオンが再封印してなんとか復帰してきたトランクスに剣で自分もろともぶった切るように要請し、トランクスが嫌々承諾したところで再度封印が解けてしまった。この際にヒルデガーンに近づきすぎていたホイは出現したヒルデガーンの次の1歩の下敷きとなってしまいあっさり死亡。なんかワシがヒルデガーン操ってます感出しまくってやれー!やれー!と随所で喚いていたけど、どう考えてもヒルデガーンは無差別に暴れるタイプで言う事聞くように見えないし、ホイに操れる魔術があるようにも見えなかったけど、この後ホイはどうするつもりだったんだろう…。
悟空は超サイヤ人3になって、わざと攻撃を受けながら実体化する最大の隙を伺う。トランクスは剣で尻尾を切断し更に追撃を試みるが振りかぶってる最中に悟空に邪魔するな俺が倒すと言われてしまい沈黙。ひでぇ。悟空は「俺がやらなきゃ!俺がやらなきゃ!」と連呼しながら「俺ががやらなきゃ誰がやる!」と叫ぶと謎の新必殺龍拳を繰り出し、黄金の龍がヒルデガーンをぶち抜いてからめとると黄金の龍もろともヒルデガーンは消失。
ブルマがいつの間にかタイムマシンを開発しており、タピオンは1000年前の時代に戻っていき、トランクスに剣を渡して終了。一応未来トランクスが持っていた剣と繋げるような演出だったが、歴史が違うので意味不明な事に…。
という事で映画最終作はまさかのゴジラみたいなサイズの化物と戦う超展開に。ホイの企みとタピオンの真意が見えてくるまでのちょっと謎めいた展開は今までにない物語性があってよかったけど、悟空主役で終わるためにかなり無理やりにしたなという…。
というのも、ブウ編も悟空で最後を決めたとはいえ、超サイヤ人3の悟空よりも超サイヤ人3ゴテンクスの方が強く、アルティメット悟飯はさらにその上を行く。悟空はこの時点で実力3番手であり(単体2番手)、超サイヤ人3ゴテンクスやアルティメット悟飯がやられるような相手に超サイヤ人3の悟空が敵うはずがなく、しかも足りないパワーを圧倒的経験による技術でカバーするのではなく倒し方がわざと攻撃を受けて実体化の隙を狙うというものなのでますます無理でしょこれ…。
一応アルティメット悟飯、超サイヤ人3ゴテンクス共に戦闘経験は悟空に劣っていたので受け身も下手で急所へのダメージを簡単に受けてしまって倒されてしまったというのを前提にしつつ、タピオンが最後に封印した際にヒルデガーンがかなり弱体化した+トランクスによる尻尾切断によるダメージでさらに激しく弱体化して超サイヤ人3悟空の力で倒せるくらいになった+超サイヤ人3悟空の新必殺技の龍拳の性能がとてつもない…と考えればまあ…。
いずれにしても「龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる」というタイトル、龍拳放つ前にしつこく「俺がやらなきゃ!」を繰り返しながらの「俺ががやらなきゃ誰がやる!」、そして黄金の神龍みたいな龍拳で悟空が主人公というのを最後に今一度強調しての『ドラゴンボールZ』最終作という意識ではあったのかな…。今作ついにOP無しになってしまったが、悟飯主役のあのOP映像、前2作でも虚しかったのにこの結末に向けては最早流すべきじゃないレベルになってるし…。なおこの龍拳アニメスタッフがよほど気に入ったのが続く『ドラゴンボールGT』でも何度か使用しており、チビ悟空の状態でぶっ放して超17号を貫いたり、上から下にぶっ放したり、ゲームでは元気玉吸収した後に放つ究極技扱いになったり、少年時代の悟空がピッコロ大魔王を貫いた時の技まで龍拳扱いになったりと多用されたが、鳥山明が考えたものではないため『ドラゴンボール超』では一切使用されていない。
あと最後の唐突なタイムマシンオチはなんだこれ。この時代のブルマはタイムマシン開発できてないのに急に出てくるし、そもそも1000年前に行ってもその時代のタピオンと2人になってしまうだけでそれでどうするんだ。この場合やるべきなのはミノシアをドラゴンボールで生き返らせて(地球のは使ったばかりなのでナメック星でお願い)、兄弟を再会させ1000年の自己犠牲から開放して自由を与える事だったのでは…。その時代にタイムマシンで行くと本人が2人になってしまうという問題を強行突破して選択してしまうのは20年後の『ドラゴンボール超』でも全く同じ事をやっているんだよなぁ…。
★★★★☆
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