ドラゴンボール 最強への道

1996年3月2日公開。
『ドラゴンボール』通算劇場版第17作、毎年公開の最終作。

B06Y19PGN4

1月で『ドラゴンボールZ』が終了。今作公開当時はアニメオリジナルで原作最後(ブウ編から10年後)のさらに5年後を描いた『ドラゴンボールGT』が2月より放送開始されていた。

今作は『GT』の映画ではなく、最初期『ドラゴンボール』のリメイク作となっており、原作1~8巻頃までの内容を再構築した内容。これまでほとんどが50分前後、時々60分、『燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』の70分が最長だったが、今作は80分に及ぶ過去最長時間となった。ただし『神と神』以降は同時上映の無い一般映画と同じ枠になったので80~100分程度まで拡大していて今作を全て上回る。

今作の悟空は『GT』と同じような衣装のやや日焼けしたテカリのある容姿である事や、主題歌が『GT』と同じ「DAN DAN 心魅かれてく」であった事もあって、ちょっとややこしかった。当時見に行った後に友人に「小さくなった悟空は元の姿に戻れたの?」と頓珍漢な質問をされたくらいなので、ネット普及前の当時は放送中の『GT』とは全く別の最初期のリメイクというのは分かりにくい展開だったものと思われる。

再構築リメイクでの新シリーズとして続編の構想もあったものと思われるが、最新技術のCGに多額の予算をかけたのにあまりヒットしなかったようでこれっきりとなり、それどころか『GT』は1997年秋まで放送されたため、これまでの3月・7月の年2回コースならあと3作『GT』で映画が作れていたところだが、『GT』の映画は作られることなく、アニメ現役当時の映画は今作が最後になってしまった。

悟空とブルマの出会いは上映時間に余裕がある事もあってか『神龍の伝説』よりも原作のやり取りを残して丁寧な仕上がり。その後は第3者を介さずに即ウーロンに遭遇→即ヤムチャ&プーアル襲撃と高速展開。ヤムチャの狼牙風風拳は狼が重なったり特殊効果で演出が派手になり、悟空がかなり遠くまで木をなぎ倒しながら吹っ飛んでいくなど迫力が増している。しかしここで悟空の反撃は無く、反撃する前にブルマが目覚めて女を見たヤムチャが硬直してしまいプーアルが引きずって逃走してしまったので悟空が一方的に吹っ飛ばされて戻って来るだけ終わり、じゃん拳の披露はおあずけ。悟空・ブルマ・ウーロンである程度日数をかけてドラゴンボールを集めながら旅が進んだと思われ、次のシーンでは雪景色のマッスルタワーに到着し、レッドリボン軍と遭遇…と一気に展開。メタリック相手にじゃん拳(グーのみ)を初披露して撃破。ていうかお前メタリックか?ターミネーターのパロディみたいなデザインだったのが真っ黒なスキンヘッドと1人だけ容姿が別人になっているじゃないか。

一気に最上階までぶち抜きホワイト将軍は人造人間8号を起動。白目の自我の無い状態で悟空を一方的に追い込んだ8号だったが、黒目が戻り自我を取り戻すと人殺しは出来ないと言い出し、自爆させようとしたホワイトは悟空が倒し、悟空は8号を「ハッチャン」と名付けて意気投合。旅へ誘う悟空だったがハッチャンはホワイト将軍と部下たちを警察に引き渡してマッスルタワーの後処理をするためここで別れる事に。

続けて山中でウミガメに遭遇。海へ連れて行ってあげてお礼を取ってくるので明日の朝まで海岸に滞在する事に。この際に“タマがねぇチンも”というくだりもしっかり再現1996年時点ではまだこの部分もコンプラなしで再現できたのか…。翌朝亀仙人が登場し、筋斗雲をもらい、亀仙人のドラゴンボールをもらうためにブルマがパンツを見せる…が悟空に脱がされていてノーパンだった、車に戻って気づいて誰がこんなことを!とブチ切れるまではオリジナルを踏襲したが、直後ブルー率いるレッドリボン軍が海から大量に攻めてきて爆撃してきたので悟空がやったとブルマが知る前にそれどころではなくなった

亀仙人といるところでいきなり襲撃されるのは映画1作目『神龍の伝説』の方を踏襲しているが、こっちはもっと海軍の演出が派手で亀仙人の「かめはめ波」である程度吹っ飛ばしたものの海中の潜水艦は残っていて再度攻撃を開始。亀仙人は1発で力を使い果たしてしまい以降活躍なしの役立たずの老人同行者と化す。ヤムチャの活躍も無いので逃げ回るだけのお荷物要員が無駄に増えた…(ブルマ・ウーロン・プーアル・ヤムチャに亀仙人とウミガメもって)。

悟空が見様見真似で放ったかめはめ波はオリジナルや『神龍の伝説』とは異なり、いきなり亀仙人と変わらないド派手で高威力のかめはめ波で浮上してきた潜水艦をさらに吹き飛ばすが、ボロボロになりながらもブルーも生きていてミサイルもまだまだ残っていた。…いや2人のかめはめ波でだいぶ吹っ飛んだのにいくらなんでも数多すぎないかコレ。かめはめ波の範囲的には正面にしか直撃しないけど2人とも海面を割るように撃っているのでこれで生じた波で周囲の戦艦を巻き込むという形で相当数潰せてたのにそれでも殲滅しきれないって…。この辺りは曖昧に1発で全て吹っ飛んだことにした『神龍の伝説』に比べると無駄にリアル志向…。

悟空は小型ミサイルのおでこ直撃と爆発の衝撃で気絶し、ブルマ・ウーロン・亀仙人・ウミガメ、そしてずっと追跡していて助けに入ろうとしたヤムチャはブルーに背後から襲い掛かる直前にブルマのアピールに硬直してしまいブルーの一撃で沈没。プーアルも含めて悟空以外は全員捕縛されてしまった。誰もいなくなった海岸で目を覚ました悟空は最初の爆撃の際に吹っ飛んで落ちていたドラゴンレーダーを頼りに筋斗雲で救出へと向かう。

一方でドラゴンボールを持ち帰ったブルーだったが四星球だけ悟空が単独で持っていたのを見落としていたのをミスとしてなんと処刑されてしまいまさかの出番終了。戦闘はヤムチャに一撃喰らわせただけとは…。悟空は空中戦で大量の兵士をさばきながら進撃。敷地内でかめはめ波を1発撃ったのが誘爆して基地内は半壊し、さらに基地内でも暴れ回って雑魚兵はほぼ殲滅した。

ブルマ・ウーロン・亀仙人・ウミガメ・ヤムチャ・プーアルはウーロンを鍵に変身させて脱出を試みようとしていたがなかなか鍵に変身できずに苦戦して何度も繰り返した結果ようやく鍵に変身して脱出に成功して悟空と合流。なんだか妙な下りでウーロンの変身能力低すぎるし、南部変身幼稚園を追い出されたウーロンに時間制限があるのに対してプーアルの方が制限時間なしで変身能力も上なのにプーアル何してるんだと思ったが、どうも今作ではプーアルに変身能力は無いっぽい。ウーロンとプーアルは“南部変身幼稚園時代の同級生”でウーロンが“女の先生のパンツを盗んで追い出された”というオリジナル踏襲だと思っていたシーンをよく見返してみたら”南部変身幼稚園”だったのが今作では“南部妖怪幼稚園”にわざわざ変えられていた。…いや…改めて君たちアニマル型人間みたいな扱いだと思ってたら妖怪…だったのかよ…

レッド総帥とブラックはシェルターに逃げるがレッドが神龍に願おうとしていたのが背を伸ばす事だと言い出したので、そんな事のために…と失望したブラックはレッドを殺害。シェルターから奥にあるまだ無傷のタワーへと一気に移動すると巨大ロボを起動。オリジナルより遥かにデカく攻撃力もすさまじく、レーザー光線は遥か遠方までなぎ払うすさまじい威力で装甲も頑丈で悟空のかめはめ波でノーダメージ。悟空は気絶まで追い込まれ先ほどのレーザービームで完全消滅させられそうになるがそこになんとハッチャンが悟空をイジメるなと高速飛行して突撃してきた。ハッチャンは巨大ロボにも負けないパワーで押し返すが、巨大ロボによる強力な締め付けには耐えきれずパーツがボロボロ剥がれ落ち、粘りに粘るもついに破壊されてしまう。悟空が目覚めると無事である事を喜んで直後に機能停止してしまい、悟空は涙を流しながら天空まで届く青いオーラを迸らせて怒りを見せる。一旦これが止まったためかブラックが調子に乗ってハッチャンを出来損ないだと馬鹿にしたため、悟空はわずかなスパークを発生させると白いオーラを吹き出して高威力の怒りのかめはめ波で巨大ロボを貫き、巨大ロボは爆破。

ドラゴンボールが揃い神龍を呼び出したが、仲間達はそれぞれの願いを遠慮。悟空はハッチャンを元通りにしてくれ!!ただし、腹の中の爆弾は取って!と願いハッチャン復活を前にそのまま終了。

今作は確か当時新聞配達が忘れられがちで、お詫びとして映画のタダ券をくれたので見に行った記憶がある。初期のリメイクだとは把握してから行ったと思うんだけど前述のように悟空のデザインが『GT』とほとんど同じような印象だったのでややこしいなと当時も思った。

初期の再構築は1作目『神龍の伝説』でもやっていたが、今作は80分の長さもあって『神龍の伝説』のような作中でも2日で旅が終わるほどの高速っぷりではなく、そこそこの日数をかけて旅をしている様子が描かれ、さらにかめはめ波会得前にマッスルタワーでハッチャンと仲良くなったり順序も入れ替えて工夫されている印象。最後にハッチャンが駆け付けるオリジナル展開も面白かった。オリジナルでは悟飯じいちゃんと再会した時など嬉しさで泣く事はあったものの、ハッチャンの死という悲しみで悟空が割と号泣気味に涙する場面はなかなか攻めている。感動物語風ではあるけど良くも悪くもこの時期だったから出来た大胆さもあるように思う。後年だとブルマのセクシーシーンは自粛カットされるだろうし、キャラクターの解釈をここまで変える変更はできないだろう。

とはいえ前回までどんどんパワーアップして自由に空を飛び回り、気弾を撃ちまくり、変身したり合体したりしていた『ドラゴンボール』の世界に慣れていたのでいかんせん初期レベルの戦闘しかできない今作は物足りない。かめはめ波が唯一の気弾攻撃というのは落差が大きすぎてどうにも物足りなかった。さすがにその辺は分かっていたのか、明らかに悟空は本来の初期レベルよりは強くなっている。今作ではかめはめ波を真似で会得しただけで修行もしていない初期レベルのままだが、正史でレッドリボン軍を倒した時には既にクリリンと亀仙人修行を受けて大幅パワーアップ、1度目の天下一武道会を経てカリン様の手ほどきを受けて桃白白を撃破するまでに強くなっていたわけで、今作では初期レベルをその辺りに設定してさらにハッチャンの死でさらに底上げさせCG技術を駆使してこの時代には本来到底出せなかったような派手なオーラを出す場面もあってなんとか盛り上げようとした感じも。かめはめ波もそこそこ撃つし。

総じてリメイクモノとしてはこれはこれで良い内容だったがいかんせんリメイクをやるのが早すぎ。あまり受け入れられず続編も頓挫して結果的に後世にまでそれが響いてしまったようにも思う。当時の最新技術で絵は確かに綺麗になっているんだけどそれでもまだ1996年。今作でのCG技術なんかもこの後さらに劇的に進化したので割とすぐに新しさが消えてしまい、なんかCG導入したばかりでウキウキで使ってんなーという浮かれた印象も…。『GT』終了後に1度止まったゲーム作品が2000年代以降継続的に発売されるようになってからも『Z』以降が基本、『改』も『Z』からで、初期作はゲーム化もほとんどされず、リメイクもされないまま現在に至っている。こんなにすぐに今作を作らずに、後の再ブームに乗ってリメイクすれば『改』ではなく、今作のシリーズで新規のリメイクシリーズ化もあり得たかもしれない。

あとどうしても気になったのが亀仙人の声が違和感過ぎる…。何故20年近く声優業から離れていて俳優タレント司会者として活躍していた愛川欽也をいきなり起用したのか(しかも声優業やってた若い頃にメインでやってたのは洋画の吹き替え)。メチャメチャ軽い声になっていて「かめはめ波」にも全く貫禄が無い。以降の逃げ回るただの老人と化してしまう流れではこんな声でもありなのかもしれないがそれでもこれはちょっと…。元々初代声優の宮内幸平が1995年に急逝してしまい、声優交代を余儀なくされたんだけど既に『Z』末期で亀仙人の出番はほぼ無くなっていたのもあってか、代役を試していたのか『Z』でその後1回だけ台詞があった際と『GT』ではマスオさんやジャムおじさんで知られる増岡弘前作の映画『龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる』では佐藤正治、今作では愛川欽也…と固定せずに3人の声優を次々に起用していた。佐藤正治が最も宮内幸平の亀仙人から違和感が無かったように思うが、元々複数の出番少ないキャラを演じていてその中の1人にブラックがいたので佐藤正治は今作ではブラックを続投している。結局愛川欽也は今作ポッキリで、『GT』は増岡弘でアニメは終結。後年の『改』では佐藤正治が再起用され、終盤の力の大会編で出場メンバーとして出番が大幅に増えた『超』でも佐藤正治の亀仙人で定着した(2015年に愛川欽也、2020年に増岡弘も亡くなっており、存命なのが佐藤正治だけになった)。

『GT』での「10倍かめはめ波」が「じゅうべぇかめはめは」になってしまったのに代表されるように『Z』の頃は普通に「ばい」と言っていたようなところまで変わってしまうほど悟空の訛りが悪化したが、今作も『GT』同様に訛りがヒドイ。「名前」→「なめえ」、「正体」→「しょうてえ」ともうなんかほとんど全部変換されてしまって、悟空語状態。『GT』では「太陽」→「てえよう」とか言い出したこともあったような…。これって制作の指示だったのか、野沢雅子の解釈の変化だったのかどうなんだろう。『GT』でベジータ戦が新規で回想された時も3倍4倍界王拳が全部「べぇ」化しててえええ…!?ってなったので凄く印象に残ってるんだよな。

★★★☆☆

コメント

タイトルとURLをコピーしました