1993年3月6日公開。
『ドラゴンボール』通算劇場版第11作。
別の意味でダントツで最も有名な1作。黎明期よりニコニコ動画を中心にMAD動画文化の中で異常な流行を見せ、全シーンが切り刻まれ、時には他作の台詞と融合させられ、様々なMADが制作された。この文化に浸かった者の中には映画本編を見たことが無いのに全シーンを見たことがあるという者もいるという…。ベジータがブロリーにやられた際にたたきつけられた岩盤にクレーターが出来る描写がインパクトだったため、「岩盤」自体がネタになったほかニコニコ大百科やpixivでは「デデーン」や「1人用のポッド」などに項目が作られるほど徹底的にオモチャにされた作品となった。
この時点でのアニメはセルとの最終決戦となるセルゲームが開幕してミスター・サタンがギャグをかました後に悟空が激闘を繰り広げて敗北宣言し、悟飯に託していた頃だった。今作では悟飯が超サイヤ人に変身可能となっており、セルゲームまでの猶予期間とも思われるが、呑気に花見をしている状況では無かった事や修行後セルゲームまで悟空と悟飯は常時超サイヤ人をキープしていたのに今作では黒髪に戻っている事から同時期のパラレルと思われる。『とびっきりの最強対最強』から1作ごとに超サイヤ人が1人ずつ増えていき今作で4人となり、前作ではついに観戦要員になってしまっていた悟飯が主戦力に浮上したが、超サイヤ人2には覚醒していないのと相手が強すぎたので目立った活躍はない。またサイヤ人4人が修行後となったため、神と融合したピッコロでも修行後の4人には一気に抜かれてしまっており、結局映画版のピッコロが神と融合した直後の仲間内最強の強さで活躍する事は無かった。
南の銀河が伝説の超サイヤ人に滅ぼされたというシリアスなOPから一転して悟飯の予備校受験の保護者面接のためにスーツ姿でチチに連れ出された悟空といういきなりのぶっ飛んだギャグシーンがスタート。趣味は読書とスポーツだと言えとか、好きな言葉は努力友情勝利というそれはジャンプのやつだろという回答を要求するチチに悟空が真顔で「面接とかっちゅうもんは噓つき大会なのか?」と真理を突くのが深すぎる。当時笑って見ていた子供達も後にこの言葉の真理を痛感する事になったという…。
一方で悟飯含めたいつもの面々(相変わらずヤムチャ・天津飯・餃子はリストラされっ放しだが、ウーロンの皆勤出演は継続、何故かベジータも同行)は花見に興じていたところで、パラガスが宇宙船に乗って眼前に着陸。新惑星ベジータの王として迎えたいという話と伝説の超サイヤ人討伐の話を持ち出し、すっかりその気になったベジータはパラガスについていってしまった。酔った亀仙人とそれを止めようとしたクリリン・ウーロン・悟飯も巻き添えで宇宙船に乗ってしまい、未来トランクスもベジータを心配して同乗。一応この場面でのベジータは王の話を聞いた際には無視しようとし、伝説の超サイヤ人討伐の話に反応して応じたようになっていたが、息子のブロリーを部下につけてもらうとブロリー引き連れて伝説探しに飛び立っていってしまうなどすっかりベジータ王扱いに気を良くしてその気になってしまった様子。
ベジータ1人がその気になっている間に、パラガスを怪しむトランクス・悟飯・クリリンは新惑星ベジータの宮殿付近だけが整備されていて彼方に見えたビル群は崩壊した廃墟である事やシャモ星人が奴隷のように働かされているのを目の当たりにして疑惑を深めていた。嘘つき大会面接の途中で界王様に呼び出された悟空は伝説の超サイヤ人の調査を依頼され気を辿って新惑星ベジータに瞬間移動で合流。しかし悟空と会ったブロリーは突如プルプル怒りで震え出し始めた。慌てたパラガスが制御装置でおとなしくさせたが、今まで完璧だった制御が突如暴走しかけた事に焦るパラガス。
実はカカロット(悟空)とブロリーは生まれた時に隣のベッドに寝かされており、既に戦闘力1万もあったブロリーはおとなしく、戦闘力2のカカロットは元気よく泣きわめいていた。悟空の泣き喚きにブロリーが泣かされる形となっていてどうもそれでカカロットを恨んでいるらしい。ブロリーお前…もうOVER 30’s WORLDだろ…パラガスが恨んでいるのはブロリーの戦闘力を恐れてブロリーと自身を抹殺追放したベジータ王であり、パラガスの計画では彗星衝突で消滅寸前の星を突貫ハリボテ工事で新惑星ベジータとして用意して、ベジータ王の息子であるベジータと地球の戦力をまとめて葬り去って地球を征服して拠点として全宇宙をブロリーの力で支配する事だった。この機を逃すわけにもいかないのでなんとかベジータを期日まで留まらせるため今更中止するわけにはいかなかった。
しかし暴走したブロリーは超サイヤ人状態(夜のシーンでは紫、翌朝のシーンでは青)で就寝していた悟空を襲撃。悟空は伝説の超サイヤ人がブロリーと確信。翌朝まだブロリーを部下だと思っているベジータに真実を突きつけ、さらにトランクスや悟飯らも畳みかけたことでようやくベジータも騙されていた事に気づき、パラガスもその気になっているお前はお笑いだったぜと思いっきり恥をかかせながら本性を見せた。しかしここでブロリーがまたも超サイヤ人になって暴走し始め、この段階で全力攻撃を仕掛けたベジータだったが全く効かずに驚愕。さらに制御装置で一旦制御しかけたが抑えきれずに制御装置は消し飛び、ついにブロリーは伝説の超サイヤ人形態へと変身。
この時点で戦意喪失したベジータは「もうダメだ終わりだ」「殺される」「勝てるわけない」「奴は伝説の超サイヤ人なんだぞ」などとネガティブネタワードを連呼するヘタレ王子と化す。悟空・悟飯・トランクスはひとまず攻撃してくるブロリーを回避しながら離れていったのでこの場にはベジータとパラガスのみが残った。パラガスは「純粋なサイヤ人であるお前だけがブロリーの恐ろしさに気づいたか」と(悟空は頭打ってるので純粋ではない扱いで他2人は地球人とのハーフという意味と思われる)ヘタレベジータがヘタレている理由を補足フォローしつつ、父の代の恨みつらみと目的を語り、暴走してしまったブロリーを止めるすべはなく計画は打ち砕かれたがヘタレな姿を見られた事には満足しているような挑発めいた言動でベジータを煽りまくるがヘタレすぎたベジータは無反応。
亀仙人・クリリン・ウーロンの乱入でギャグを挟んだ直後にシャモ星人の前でシャモ星を破壊(いわゆる「デデーン」とは破壊直後の絶妙なタイミングでかかり始めたBGM「悪魔のブロリー」のイントロである。あまりに絶妙なタイミングでかかった上にギャグ的な登場SEのようなここだけで変なインパクトがあったためネタにされまくる事に…)。悪魔の所業を目の当たりにした悟空・悟飯・トランクスは本気の戦闘を開始し超サイヤ人へ変身。しかしブロリーは予想以上の怪物で攻撃を全く受け付けないタフさと圧倒的なパワーで3人ともボッコボコに打ちのめされて全員気絶へ追い込まれてしまった。悟飯へのトドメを宇宙船でやってきたピッコロが助け、仙豆で全員を回復させるも戦況は変わらず。至近距離でのかめはめ波も「なんだ今のは」で済まされてしまう(本編ではこれでセルの上半身吹き飛ばしてるんだけど…)。圧倒的戦力差で悟空もいつもと様子が異なり「少しは手加減しろ」と言うほど(返答は「手加減ってなんだ?」)。たまたま近くに飛ばされたピッコロがヘタレベジータを無理やり掴んで連れ出すも、ネガティブワードを連呼し続けるので見限ったピッコロがベジータを放り捨て、ベジータは「なぜだ!なぜなんだ!」とか言いながら無抵抗で墜落して廃墟にめり込み煙を上げながらも「なぜだ!なぜなんだ!」と問い続ける場面も変なシュールさ…。
その後もう悟飯やピッコロは動けなくなっていてトランクスもギリギリの頃になってようやくベジータがヘタレを脱して、逆に自信満々に戦闘復帰するが案の定瞬殺され、有名な「岩盤」クレーターで沈没。
全員やられてブロリーが暇になってしまったため、脱出を試みていたパラガスがブロリーに見つかってしまい、咄嗟にお前と脱出する準備だと言い訳するパラガスに1人用のポッドでか?と返したブロリーはポッドごとパラガスを圧死させ、さらにその残骸を迫りくる彗星に放り投げてパラガスを完全抹消。なお続編の回想シーンではブロリーが1人乗りポッドで脱出していた設定になったため、カメラの前には1人用ポッド1台しか映っていなかったが見えないところにブロリーが使う1人用ポッドもちゃんと用意されていたと思われる。嗚呼。
最早根性で立ち上がった悟空はパワーをくれ!と言いながらブロリーへ再度挑んでいき、ピッコロの発案で悟飯・トランクス・ピッコロは悟空にパワーを供給。ベジータだけギリギリまで王子は俺だの誰がお前なんかにだの下級戦士が云々だの延々ごねていたが誰がお前なんかにィィと拒否の言葉を吐きながら供給を開始。1番最後に供給開始して1番最初にダウンしてしまったのは何とも情けないがベジータのパワーが加わると一気に悟空の攻撃がブロリーに通るようになり、渾身の一撃は腹部にめり込んで胸にかけてを貫くように突き抜けブロリーは何故か爆散したかのように爆発。直後に彗星衝突で星が消滅してしまったが、悟空は全員を瞬間移動で先行して離脱していたクリリンたちの元へ移動して全員無事だった。
この際に宇宙船が人数過多でボッコボコに膨らんでしまうギャグ描写が入るのでシャモ星人の生き残りも全員悟空が回収したようだ。時間的物理的に無理そうなのは置いておいても、クリリン・亀仙人・ウーロンは帰る手段が無くなったのを嘆いていた後、ピッコロが来た直後に「ピッコロの宇宙船があってよかったな」とピッコロの宇宙船でとっとと脱出していた。さっきまでシャモ星人の集団と一緒に行動していたのに全員置き去りにしていたのか…。彗星衝突の話は彼らは聞いてなかったんだっけ…?
というわけでリアルタイムで映画館で見た際は普通にブロリー強ェェェ!!という映画でインターネット開通後もニコニコ文化には触れていなかったのでいつの間にか凄い事になっていたのはあまり把握していなかった。確かにネタにしやすい変な描写も多いけどここまでになるとはなぁ…。
パワー集めただけで急に雑に倒せてしまうラストは正直かなり強引な印象で、当時も何でこれで急に逆転できてしまうのかイマイチ良く分からなかった。正直決着の付け方を考えずにべらぼうに強敵にしすぎた感じ。それでも前作で急に悪化していたなかなか超サイヤ人に変身せずに苦戦するという展開の都合からくる不自然さは今作には無く、然るべきタイミングで超サイヤ人に変身する流れになっていてスムーズだった。
超サイヤ人に変身可能となりようやく主戦力メンバーとなった悟飯は本来はこの時点で悟空より強い。原作/アニメ共に超サイヤ人2覚醒前、修行を終えた時点で、強くなった悟空にそんなにお父さんは強くなったのかと疑問に思う描写もあって悟空を越えているのではないかという雰囲気はビシバシ出していたので制作側も分かっていたはずだが、今作では意図的にそこは無視したように思える。戦始めた途端にブロリーのあまりの危険さを察知した悟空に逃げろと言われて律儀に逃走、すぐに追われて全く活躍できずにやられちゃうし…。
★★★★☆
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