すべて忘れてしまうから 全10話

2023年10~12月テレビ東京系「ドラマ25」枠。

元々は1年前の2022年9~11月にDisney+で配信されていた配信限定ドラマだったが、1年越しで地上波放送となった模様。

原作は燃え殻によるエッセイ。

阿部寛主演。ハロウィンの夜に突如失踪した恋人をめぐるミステリアスでビタースイートなラブストーリーと紹介されていたが…。実際にはあまり内容が無い話を終始ひく~いトーンで淡々と見せる日常系で大人になると忘れて行ってしまう感覚や疎遠になってしまう友人関係などビターな味わいをさらっと描いていく雰囲気モノ

変わっているのは阿部寛演じる主人公の作家と 尾野真千子演じる失踪した恋人の2人(とFの親族)に名前が設定されていない事で、便宜上文字媒体ではM(阿部寛)とF(尾野真千子)と表記。恐らく男(Male)と女(Female)の英語から頭文字を取ってMとFにしただけの記号でしかなく、他の登場人物は名前があって普通に呼ばれているんだけど、2人とも当然作中ではMやFと呼ばれるわけではなく、作家であるためMは基本的にはみんなに「先生」と呼ばれ、Fに関しては名前で呼ばれない。やはり名前のないFの姉は「あの子」としか言わないし、MがFを呼ぶことは無いし、Mの飲み仲間たちとFはやや疎遠だったので「先生の彼女」としか呼ばないし…という感じで、さすがに主人公で色々な人と会話する機会が多かったMが旧友との間でも一切名前を呼ばれないのはやや不自然ではあったものの、主人公が匿名のまま進行するのはなかなか前代未聞だった。

また毎回Mの視点でのナレーションが入るんだけど、阿部寛に落ち着いたトーンで低くボソボソ喋らせると聞き取れなくなるという問題を懸念したのか何故かバーの店長役のCharaがあの特有のまったりスウィートボイスでボソボソとMの心情をナレーション。「ビタースイート」なスイートって作中にスイートな要素は無かったのでまさかCharaのナレ声の事だったのだろうか…。

Fは回想でしか出てこず、Mも別に本格的に探すでもないので「突如失踪した恋人をめぐるミステリアスでビタースイートなラブストーリー」のうち実際に合っていたのは大人向けの「ビター」な物語だったというところだけ。雰囲気モノとして、また細かい部分で年齢と共に感じていくある種の生きていく中での喪失感を追体験するという点でビターな味わいがしっくりくるところもあったけど全体には雰囲気モノだけで終わってしまった感じではある。

阿部寛と尾野真千子だと恋人同士にしては年が離れすぎ。2022年なので阿部58歳、尾野41歳(撮影時40歳?)だし、阿部寛の描き方はあまり還暦寸前の男性よりはまだもう少し若く描かれていたような感じではある。Fは終盤でメイン回が出てきて失踪した理由は姉(酒井美紀)を出し抜いて縁のなかった祖母からの大量の遺産を独り占めして海外で豪遊していたが虚しくなって戻ってきたというものだが、内面は詳しく描かれず、次の回でMとあっさり別れてしまい、最終回はM1人だけ。特にオチも無く書き溜めてきたエッセイを「すべて忘れてしまうから」のタイトルで発刊するという作中劇スタイルで幕引き。

ビターな部分は良かったんだけど、エッセイにはエッセイの雰囲気があるわけでドラマ化するのは無理があった気はする。

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