2024年9月発行。TOMC著。
disk unionのDU BOOKSからの発売。
大元は日刊サイゾーに2021~2023年まで連載されていた「あのアーティストの知られざる魅力を探る TOMCの<ALT View>」の書籍化となる。
DEENが取り上げられるというので発売時に買っていたんだけど感想を残していなかったので今更一応。
元となっている連載記事が「あのアーティストの知られざる魅力を探る」となっているように音楽誌であまり特集されない有名アーティストのパブリックイメージとは異なる作品群にスポットを当てて分析、紹介していくという内容。正直全く興味がないミュージシャンの話は読んだところでさあ聞いてみようとはならないものの、文章自体は専門的な話が分からない人向けにかなり丁寧に分かりやすく解説している印象。それを踏まえても興味ない人に興味が沸いてこないのは読み手側個人の資質によるところが大きく、文章のせいではないだろう。
この中では最後に収録されているMr.Childrenだけはそんなに変わった視点という事もなく、2000年代に60冊以上発行された「音楽誌が書かないJポップ批評」(ミスチルは2度+ピックアップで文庫化)が今もあったらそこに寄稿されてそうなコラムだなとは思った。それ以外は各自あまりイメージにない音楽性に焦点を当てており、1番最初のB’zで「FRIENDS」シリーズを取り上げているのが導入部として“そういう本”だと分かりやすい。
知っているアーティストに関しては確かになるほどと思えるし、あまり取り上げられてこなかった面々が特集されているだけでもなんだか嬉しいところもある。しかも著者の人が大ベテラン系ではなく、比較的若手、キャリアや収録されている1990年生まれのtofubeatsとの対談で「同世代」と発言している事から、1990年前後(昭和末期~平成初期)の生まれと思われ、たぶん年下。上の世代の音楽を後追いの視点で語るというのは意外と無いのでそういう意味でも新鮮さはあった。こういう若手音楽ライターもっとどんどん出てきてほしいと思うんだけど、時代の流れ的にも2010年代になると先の「音楽誌が書かないJポップ批評」が出なくなってしまったり、当サイトのアクセス数も10周年(2012年)頃がピークだったように音楽レビュー自体が廃れた文化になっていってしまい、売れ線J-POPど真ん中の個人のレビューサイト/ブログもほとんど見かけなくなってしまったからなぁ…(マニアックなのや特化型は今も多いんだけど)。本書もAmazonレビューゼロのままだし…。
肝心のDEENの部分だが、シティポップ路線でアルバムを出した頃に書かれているのでそこを取っ掛かりににしてAOR期に焦点を当てていてその前フリとして初期のC/W曲やSHUのソロ活動を取り上げているのに何故か主題として取り扱っているのは『UTOPIA』『ROAD CRUISIN’』の2作。DEEN’S AORとしてメンバーが掲げていたのは『pray』『UTOPIA』『ROAD CRUISIN’』の3作で、この3作を取り上げてビルボードライブの「AOR NIGHT CRUISIN’ 」シリーズも数年おきに開催しているだけに、『pray』だけ一切触れないのはかなり不自然だ。本書は著者推薦の楽曲のプレイリストをQRコードで紹介してストリーミングサイトで聞けるようになっているので、サブスクスルーの『pray』は選曲する事が出来ない。このため一切触れなかったのかなとは思うが、SHUもサブスクスルーなのに触れてて(選曲はしていない)、『pray』全無視はやはり不自然な印象は否めなかった。
★★★☆☆
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