リットーミュージックより2024年2月20日発売。
本のみは3300円。
スペシャルボックス仕様版は5000円。オリジナルカレンダー(2024年4月~2025年3月)、メッセージカード付で紙箱ケースに収納された仕様。カレンダーもメッセージカードも本と同じサイズなので紙箱も同様のサイズ(全体のサイズも13cm×19㎝×3cmくらいでドデカいサイズではない)。
カレンダーは各ページ見開きで1ヶ月(半分が歴代の日本武道館ライブ写真、もう半分がカレンダー)となっていて、カレンダーにはメンバー2名の誕生日と各シングル/アルバム/アルバムBOXの発売日に作品名が記載されている。ただしカレンダーに引っかけ穴は無いので縦にして引っかけがついているようなクリップで挟まないと壁掛けカレンダーとしては使用できない。1700円もの差額の価値は正直感じないが出してくれてありがとうのお布施としてスペシャルボックス仕様版を購入した。
本体は冒頭に最新&歴代アーティスト写真が数ページ。カレンダーもそうだが脱退した田川伸治が写っている写真に関しては単独写真は当然無しとして“積極的にチョイスはしないが3人で写り込んでいればいちいち消さずに使用する”といった感じで使用されている。一方で4人時代…というか1番古いのでも2004年の『ROAD CRUISIN’』の時の写真(だと思う)でB社時代の写真は使用していない。
とはいっても2023年12月9日に長戸大幸がやっているラジオ番組『OLDIES GOODIES』に池森がゲスト出演した際の長戸×池森対談の模様が収録されているのと各楽曲解説ページに白黒ながら各CDジャケ写を掲載している関係からか、「協力」には事務所グッデイ、ソニー/EPIC、B ZONE(旧ビーイング)の3社、「写真提供」はソニーとB ZONEの2社になっていて基本的には事務所グッデイと現レーベルソニー、B ZONEの3社協力体制。
冒頭の対談と巻末のメンバーインタビュー&関係者メッセージ以外はひたすら全332曲をメンバーが語る構成。基本的に2人が記者に話しているような言葉で語られているが、巻末インタビュー以外では記者の言葉は出てこない。また基本的には池森・山根が1回ずつ語る形だが、曲によっては相手の話を受けてもう1回語ったり、逆に池森単独だったりもする。
知っている話から想像通りの話もあったが、初出しもしくはラジオやMCなんかでちょろっと語った事はあるのかもしれないけど広く知られてはいないようなこの曲が実はあの時の…というストック曲の手直しだった的な話など初めて聞く情報はやはり圧倒的に多く、当然ながら曲を知っているリスナーにはマストアイテム的な解説集だと思う。田川伸治が参加していないため、田川がリードして制作した曲になると推測や分かる範囲での解説に留まる場面が多く、それこそ現存する『DEEN NEXT STAGE』や『CIRCLE』のセルフライナートーク映像で田川さんが語っていた話のほうが詳しかったりする部分もある。25周年の脱退前にこの企画が実現しなかったのは少々悔やまれるところ。田川さん、グッデイも辞めて個人で仕事受けているだろうから本人が拒否しなければ直接連絡とって話を聞く事も出来なくはなかっただろうけど本が出せるだけでも奇跡なのに出版社側もそこまでしないだろうしな…。
池森作曲撤退については一切言及がないが、池森作曲楽曲でデビュー前に書き溜めていたソロプロジェクト用の曲の転用である場合は適宜言及されている。初期のC/Wは予想通りだが思ったより後年もその頃のストックや断片を手直しして出した曲がある事や、その頃の池森作曲楽曲の管理を時乗浩一郎が行っていた事が明かされた。後年は池森&時乗の共作が多かった事や時乗浩一郎離脱と池森作曲撤退はほぼ同時期だったのはそれが原因っぽいし、「永遠の明日」みたいに書き下ろしで急に名曲出してきたりするから分からなかったが、作曲ペースは実はもっと早い時期に落ちていて、ストックもほぼ出し尽くしたのと管理していた時乗さんがいなくなったことで完全に作曲を辞めてしまったのかもしれない。
アルバム単位での取り上げが無く、とにかく単曲で語り続けるため、アルバム単位で語る場面は無い。ただし気を遣ってなのか、適宜その曲が収録されていたアルバムがどんなアルバムなのか補足説明を加えたり、クラシックスシングルのところでクラシックスシングルの説明を簡単にしたりとかはしている。それでも曲単独ではなく当時の全体の制作の状況をどこかのタイミングで唐突にぶち込んでくるため、その話もう少し詳しく掘り下げてほしいんだけど!?というところでもあっさり流されていってしまう場面もチラホラ…。話の脱線はあまりないけど、「Break it!」は一切曲について語らずに2人揃って髭について語っているだけで、よりによってこの曲はデビュー10年を意識したと思われる歌詞なのに言及すらしていないのはオイオイ…って感じだった。
4人時代のドラム打ち込みについて
気になるところでは宇津本直紀のドラムレコーディング状況。まあ加入がぬるっとしていたのと打ち込みっぽいサウンド感からして例えば1stアルバム『DEEN』で初めてクレジットされた宇津本さんが『DEEN』全曲で実際にドラムを叩いているとか加入前の曲まで録り直しているんだと信じている純粋無垢すぎる人は熱心なファンでもほとんどいないとは思うけど、ではどこからレコーディングでドラムを叩いているのかとなると判断に困るところで曖昧であった。その次の「Teenage dream」以降はメンバー固定したし、基本は全部叩いているんじゃないかなぁ…と思いつつもC/Wの「Run Around」「月に照らされて」「Dancin’alone」辺りは打ち込みっぽいので曲によって使い分けくらいな。
なお初期メンバーに関しては普通に数合わせ全開で(長戸大幸も数合わせだったと認めている)、彼らがギターとドラムを演奏しているとは到底思えない感じではあったが、実際「翼を広げて」のところで当時はベースもドラムも打ち込みだったと明言されている(ギターは誰が弾いていたか明言されていないが、普通にアレンジャーかスタジオミュージシャンだろう…)。
宇津本のドラムについては1996年2ndアルバムの「Sha・la・la・la ~I wish~」の解説内で山根さんからこの辺りから宇津本が責任もって叩いたり打ち込みなら叩いているように打ち込んだりするようになりメンバー主体でレコーディングするようになったという記述が登場する。これだけなら概ね想像通りであったが、しかし同じく山根さんが1998年「君さえいれば」C/W「TAKE OFF~まだ 始まったばかり~」解説でこの当時はライブでは生ドラムだけどレコーディングではまだ打ち込みだったと解説。そして脱退直前の1999年「JUST ONE」では池森さんが開口一番にリズム隊は打ち込みじゃなくて宇津本の生のドラムで録った、とわざわざドラム生を強調して解説。『’need love』の「Soul inspiration」でもここからバンドにこだわったアプローチをしているだの打ち込みから生への転換期だといった言及が飛び交う。
…と飛び飛びでドラム打ち込み事情について唐突に明かされているんだけど、いやこうなるとちょっと思ったより打ち込み多そうだなコレ…。2ndアルバム辺りからという予想は当たっていたんだけど、その後よ…。「TAKE OFF~まだ 始まったばかり~」が”その当時はまだ打ち込み”扱いされ、最早当たり前と思われた「JUST ONE」で開口一番にこの曲は宇津本が叩いているなんて言い方をするって事は…ねぇ…?
確かにアレンジャーが同じだったZARDは1999年の「MIND GAMES」辺りまでは本物みたいなドラム打ち込みサウンドだったし(その次の「世界はきっと未来の中」からは明らかに打ち込みっぽい軽い音メインに変わる)、同じようないわゆるビーイングサウンドだったビーイングアレンジャー陣担当の「遠い遠い未来へ」まではよほど機械っぽい音色に処理されてない限りは叩いているように打ち込んでてもマジで分からない。編曲がDEEN名義になってからも「Burning my soul」とか「The Room」みたいな打ち込みっぽい音色のはあえて打ち込みを選択しているんだろうなというのは分かるが、打ち込みなら叩いているように打ち込んでいるとも言っているのだから、思ったより宇津本さんが生ドラムでレコーディングした曲は多くないのかもしれない。また山根さんもコーラスのみでキーボードのレコーディングはあまりしていなかったのかも(3人以降も実際にサポートがクレジットされている曲があるし、今回の解説の中でも難しいので弾いてもらった、自分は技巧派ではないという言及もあり)。
思い返せば3人になった『’need love』、そして『pray』当時のインタビューって今回は生音にこだわって…とかけっこうやたらめったら生音生音言ってたんだよな…。単にメンバーにベースがいなかったのをサポートベースをしっかり入れるようになって、ドラムも脱退したけどドラムも固定サポートをしっかり入れてレコーディングするようになったとか、生のブラスやストリングスを多用したからそう言っているのかと思ったけど、AOR期でもベースはチョイチョイ打ち込みだったりしたので(「Birthday eve」とかモロ打ち込み機械ベース音) 、言うほど生音じゃないじゃんとも思っていた。ドラムをほぼ全曲生でやるようになったというところでそういう発言が出ていたのか…?
関係者の名前の出し方に統一性なし
長年、昔話の際には長戸大幸の名前を出さずに「プロデューサー」として語っていたが近年は長戸大幸の名前を出しても良くなかったのか出す機会も増えている。よって今回も長戸大幸の名前を出している部分もある…が長年「プロデューサー」呼びするようにしてきた習性なのか、初期の明らかに長戸Pである部分でも「プロデューサー」と呼んでいる部分が多かったりもする。
これだけに留まらず多用される「ディレクター」始め、名前を出さない関係者の方々が誰を指すのかが非常に曖昧なのはちょっと混乱する。というのも箇所によっては「山口さん」だとか「時乗さん」とか名前が出てきているが、名前呼びと匿名呼びが統一されていないのだ。特に謎なのが「ディレクター」。歴代のアルバムクレジットからすれば時乗浩一郎が在籍していた2011年『Graduation』までは時乗浩一郎を指すと思われるが、時乗浩一郎がグッデイを辞めた後はDEENのクレジットにディレクターの記載が無く不在扱いのである。2012年以降に出てくる「ディレクター」って誰なんだよ…。また「プロデューサー」も長戸大幸とは1stアルバム頃までの2年間と最初の対談から明言。B社離脱後は時乗浩一郎はプロデューサーも兼ねるようになっていたが、Produced by BMFと会社名義だった頃からの「プロデューサー」は誰なのかも良く分からない。長戸大幸なのか時乗浩一郎なのか。「ディレクター」「プロデューサー」周りの発言はもう少し名称を統一して整理してほしかった…。
バージョン違いスルー
またDEENはセルフカバーは大変多く、1曲に対してアレンジ違いが何バージョンもあり、アプローチがまるで異なるので語りがいもありそうなものだったが、今回は別バージョンはは全面カット。唯一改題になった「二人だけのダンスフロア」→「dance floor」だけは編集サイドが別曲扱いしたのか謎に別々に取り上げられていて、シンセとミックスを変更したと解説されている。そういう何を変えたのか的な解説は興味深かったので、別バージョンは取り上げてほしかったなぁ…。1番惜しいのはこの点かも。
それでもまあこんな正直売れるのかどうかファンでも心配になるような解説本が一般流通本として出版されること自体がマジ奇跡。惜しい点は多いが、出たこと自体が嬉しいし、これでも十分に満足だ。先日の『上杉 昇 全歌詞集 1991-2023』もリットーミュージック。最初の対談で長戸氏が物事を決定する立場にある40代後半辺りが少し前までは一世代上だったので80年代再評価の流れがあったけど、30年経ってきて今は90年代になってきていると指摘していたが、実際リットーミュージック社内で90年代ビーイングを聞いていた世代が決定権のある立場になってきているのかもしれない。
あわよくば50周年辺りで超再評価されて、補強版が実現するような流れが来てくれたりは…しないだろうか。
★★★★☆
ホラ森?発言
1曲目「このまま~」の最後での池森証言にデビューシングルとアルバムが両方ミリオンになった男性アーティストは未だにDEENだけとしている箇所。KinKi KidsとCHEMISTRYが達成しているのは有名なので明らかな間違いである(シングルがSixTONESとの共同名義ではあるが、Snow Manも達成した)。女性には宇多田ヒカルがいると触れているものの、他にKiroroもいる。Kiroroは女性2人のボーカル&ピアノなのでデビュー直後&現在のDEENと同じ編成。よって男性アーティストではなく、デュオでもなく、男性バンドでは唯一というならかろうじてDEENだけというのが成り立つ。
「Bridge~愛の言葉 愛の力~<Boogie woogie Style>」のところで“韓国で日本人が日本語で歌うオフィシャルなライブは僕らが最初”と発言。一般的には2000年のCHAGE&ASKAが韓国で日本人アーティストとしては初の日本語歌唱として割と派手に発表されていて知られている。その少し前のPENICILLINが1号ともされる。PENICILLINやC&Aの時にニュースになったのは第3次文化開放の時で、ライブはこの時点で制限なく出来るようになっていたのではないのか?DEENがやった2004年は第4次文化開放でこの時は日本人の日本語のCD販売の解禁だったはず。第4次文化開放は2004年1月1日からでDEENが韓国ライブをやったのは1月18日なので第4次文化開放後では初だったのかもしれないけど…。
「レールのない空へ」のMV撮影を行った韓国の仁川国際空港については当時からオープン前の空港だと連呼していたが、空港のオープンは2001年とされているので3年も前でずっと謎だった。今回は“まだオープン前のサブターミナル“としているが、追加で新しい建物が2004年頃にオープンしたという情報は空港の歴史に載っていない。とりあえず誰もいなくてガランとしていた事から使ってなさそうな新しい建物で撮影したという認識ではあるようなんだけど、“開業前”とまで言ってしまっていて”開業前”は明確に誤りだよなぁ…。
「ANOTHER LIFE」を『PERFECT SINGLES+』のところで”初CD化だと思います”とコメント。国内ではそうだが韓国版のサントラでCD化されており、輸入盤としては流通していた。使われたのかいないのか情報が錯綜していたが今回はクライマックスのシーンでイントロだけ使われたとしている。
「Peace & Smile! feat. paris match」で共作した作詞の古澤辰勲を”当時3人だったparis matchで歌詞を担当していた古澤さん”と紹介しているが、曲当時はとっくに脱退していてparis matchは既に2人。脱退後も作詞を担当していたという事で池森さんも当然分かっていたと思われるが、これだと2013年当時も3人だったみたいな感じになってしまい、”3人だった当時のparis matchメンバーで歌詞を担当していた古澤さん”なら分かるが…。
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