Mr.Children 道標の歌

2020年11月19日発売。

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著者は小貫信昭。デビューから現在までの”軌跡を代表曲とともに紐解く“読む”ベストアルバム”とされている。

小貫信昭というライターはミスチルのCDを手に取っていれば必ず彼の文章を読んだことがあるというくらい古くから懇意にしていたライターで、ベストアルバム4作と『REFLECTION』といった楽曲解説が掲載されているCDは全部彼によるライナー。他にも映像だけでは何なのかさっぱり分からない『Sprit the Difference』というドキュメント映画のブックレットで解説していたのもこの人だし、同じく映画『REFLECTION』パンフレットの文章なんかも全部この人だった。

要するにミスチル公式ライターみたいな人であり、メンバーとの信頼関係も深い。そんなライターによるミスチル史…という事だが、率直にはベスト盤ライナーの拡大版。公式のヒストリーを辿りながら適宜メンバーや小林武史の証言を織り交ぜていくスタイルで非常に綺麗にまとまっている。

…が、それ以上の深い踏み込みはなく、メンバーの作品に対するコメントもそこまで踏み込んでいない。桜井はロキノンの2009年1月号の単独インタビューで前妻の事や小林武史との当時の信頼関係(当時はほぼメンバー状態(コバチル)になっていた)、『DISCOVERY』『Q』の時はやや距離を置いていた事など、そこまでの作品ごとに赤裸々に語っていたが(この2009年1月号は今でもかなり必見の内容だと思う)、今作ではそれに比べるとかなりライトに流されていく印象。ロキノン2009年1月号ほどではないとはいえ、もっと踏み込んだインタビューは過去にいくつもあったと思われ、それらも都度読んできたリスナーにとっては当たり障りのない事と、綺麗な部分、さらっとしか触れてない感じで正直物足りない1冊だと思う。ある程度初出しの情報も織り交ぜされれてはいるようだけど、ファンにとっては知っている話とあの話には触れないのかと思う部分の方がたぶん多くなるんじゃないかと。

そこまで過去のインタビューを熟読してきたわけではないが、個人的にもあっさりしすぎていてもう少し各時期について踏み込んでほしかったところはある。やはり『深海』以降の話とか、小林武史との距離感だとか、『Q』までで一度低迷してからのポップ路線回帰での00年代の再ブレイクに至る話だとか、セルフプロデュース独立の経緯だとか本当に表面的にしか触れていないので興味深い部分では知っている以上の話はほぼ無かったかも。

特にセルフプロデュースに関してはメンバーの決意よりも小林武史と不仲になったわけではないなどという事を念押しししまくり。分社化しただけで暖簾分けのようなものであり本当に小林武史が嫌なら完全独立するはずだの、ライブ制作には関わっているだの、Bank Bandでは引き続き関わっているだのとやたらと不仲じゃない理由を並べ立てているが、そんなに強調しなきゃならないほど不仲説を言われまくったのだろうか。そのわりには明らかに『REFLECTION』の制作途中で分社化して小林武史が離れたっぽいのに(アルバムでは小林武史がアレンジにまで関わっている曲、キーボードだけ担当している曲、全く関わってない曲があった)、その点には一切触れないし、当然この時期の小林武史本人の証言は一切出てこないし、当時けっこう力強くまだやれることがあると語っていた田原さんらメンバーの思いこそ掘り下げてほしかったのにそれもさほど掘り下げられない。そこからの終盤はなんだかライブレポート風になってきてしまうが、セルフ以降の変化なんて素人でも明らかだったものなんだからプロの評論家視点でもう少し評論してほしかった。

このように気になるところほど全部あっさり流されていってしまう。また章ごとにその時期の1曲の歌詞が全文掲載されているんだけどそういうのは詩集でやればいいわけで、歌詞だけで毎章数ページが消費されてしまうのもあって思ったよりさらっと終わってしまった。

安心安全の実績ある小貫さんの全体に優しい文章はとても読みやすくて綺麗にまとまってはいるんだけど、ちょっと綺麗にまとめすぎている感じはした。

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