上杉 昇 全歌詞集 1991-2023

リットーミュージックより2023年12月20日全国発売。先駆けて8~12月にかけて開催されていたSPOILS #3ツアー&トーク会場にて先行販売されていた。

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WANDS、他者への歌詞提供、al.ni.co、猫騙含めて自身が歌詞を手掛けた全楽曲の歌詞を掲載した歌詞集。

正直なところそれだけでは特に関心は無かったが、1曲ごとに本人の楽曲コメントも掲載されており、いわゆる全楽曲セルフライナー本となっているのが最大の見どころ。すっかり忘れていたが当サイト掲示板で購入報告があったので少し遅れて購入してみた。

楽曲によって差はあるが、全曲のセルフライナーは読みごたえがあり、自伝本でも語られていなかったWANDS時代、いわゆるアイドル時代のもう今は歌わないと宣言しているような曲についての裏話や現在の考えを知れるのは良かった。というかアイドル時代などと一時期は自虐していて絶対歌いたくないだろうと思っていたあの時期の曲の中でかなり好きだという曲があったり、一部表現に納得がいっていないところはあるものの概ね各楽曲に対する否定的な言及はしていない。近年にかけての作風の変化やさすがに高音がきつくなってきているところも率直に触れているなど、年齢を重ねてだいぶ丸くなったというか考えが変わって受け入れるようになった部分が増えてきている印象。最初のきっかけになったのはアニサマだったと思うし、自伝の方ではその事にも触れていたがさらに10数年の時を経てますます丸くなってきたような…。そうでなければそもそも「世界が終るまでは…」のセルフカバーをシングルCD化して発売したりもしないだろう。アイドル時代などと否定的な物言いをしていた頃とはだいぶ心境に変化が生じているのは確かなのではないか。

上杉昇の作詞した曲の中で唯一当時のまま存続しているのがDEEN「このまま君だけを奪い去りたい」で恐らく最もステージで歌われ続けている楽曲(DEENが休止なしで30年以上継続している事とライブ定番曲である事からステージでの歌唱回数はたぶん上杉昇作詞のどの曲よりも多いはず)だと思うんだけど、DEENが歌う事はあまり分かってなかった、歌い回しの解釈が違う部分があり自分が歌っている方が好きだったのでDEEN版が完成した時にちょっと違和感があったという思い出を振り返っているのみでちょっと残念…。ZYYGの方は経緯が違ったようで高山の声を意識して歌詞を書いた事や高山と交流した思い出を語っていたのでちょっと差が…。まあ確かにキャラ違いそうだし交流無さそうだったけどさ…。

驚いたのはB社が勝手にリリースした未発表曲もちゃんと振り返っていた事。なんと「太陽のため息」どころか「ささやかな愛情」まである(しかも発売の時系列なのでal.ni.coとソロの間に出てくる)。「ささやかな愛情」はブックレットには歌詞が掲載されていなかったのでこれが正式な歌詞初記載である。「太陽のため息」はやっぱりみんなが思っている通りの事をそのまま書いた曲だったと20年以上経過して正式に判明

終盤にはベスト盤2作で歌詞を一部書き直した「FLOWER」や「Blind to my heart」ももう1回取り上げてオリジナルとは別に語っているところはかなり細かい。しかしどういうわけか最後の1曲「PIECE OF MY SOUL」(2022年12月シングル『世界が終るまでは…』C/W)だけ無い。「世界が終るまでは…」のセルフカバーは歌詞を変えていないので対象外。しかし「PIECE OF MY SOUL」は「FLOWER」「Blind to my heart」と同様に一部だけ歌詞を変更しているので対象になるはずだが…そこだけ気になった。

お値段が正直2倍界王拳くらい想定より高い感じではあるものの、歌詞集というよりセルフライナー本としての価値は十分にあった先の自伝2冊と合わせて1期2期WANDS時代の裏話はこれでほぼ出尽くしたのではないだろうか。

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