シン・ウルトラマン

2022年5月13日公開。

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庵野秀明脚本・総監督、樋口真嗣監督による2016年の『シン・ゴジラ』に続いて、庵野秀明企画・脚本、樋口真嗣監督で制作された。さらに翌年『シン・仮面ライダー』も制作されたが、そちらは庵野秀明が脚本と監督を単独で担当していて樋口真嗣が関わっていない。今回も過去シリーズのリブート・再解釈的な作品となっていて過去との繋がりのない単発作品となっている。

冒頭3分未満で『シン・ゴジラ』同様に高速字幕で世界観をとんでもないスピードで説明。なんとこの3分未満の間に「禍威獣」と呼ばれる巨大生物が日本にだけ出現するようになり、甚大な被害を出しつつも人類の既存兵器で駆除に成功されたという説明が禍威獣6体分も繰り出される。直後に7体目が出現しての出動した少人数編成の禍特対専従班4名、班長の田村(西島秀俊)、神永(斎藤工)、滝明(有岡大貴)、船縁(早見あかり)が現場で大作会話劇を繰り広げ、有効な方法が無くて困っている状況で逃げ遅れた子供を助けるために神永が出て行く。直後、謎の巨人(ウルトラマン)が出現して禍威獣を撃破する。しかし巨人が舞い降りた際の衝撃波で神永が頭部に致命的な打撃を受けている1カットが描かれていた。

この際に神永が死亡してウルトラマンが融合した事は随分後になって明かされ、序盤ではこの一件の後に浅見(長澤まさみ)がやってきて神永と組むことになるが、神永はかなりの変人で会話が噛み合わない。この時点で神永の人格が失われており、視聴者にはウルトラマンが地球の事を猛スピードで学習しようとしているが理解が追いついてないためおかしな言動や気を遣う行動が出来ない事が察せられるようになっている…など描写で見せていき、正体も割と早くに発覚。さらに暗躍する星人などやはりかなり大人向け。ウルトラマンの扱いも外国との駆け引きや戦力兵器として取り合いになるなどリアル路線で話が展開していく。

開始3分でのこれまた『シン・ゴジラ』みたいに読ませる気のない高速字幕と高速会話劇の連発で理屈っぽく進む展開かと嫌な予感がしたが、高速会話劇は本編ではあまり登場しない。リアル路線ではあるが『シン・ゴジラ』とは違って政治ドラマはある程度緩めというか情報過多にならない適度な範囲内なので見ていて疲れないし、普通に面白かった。『シン・ゴジラ』はあのような細かい部分がウケていたようなのであれほどの熱狂的支持は集められそうにないが、個人的にはこのくらいの方が一般向け特撮映画として楽しめたし、新解釈として正しく『シン・ウルトラマン』な感じがした。

やや消化不良というか謎のまま終わるのが肝心のウルトラマンになる神永の状況の事で、序盤での行動のおかしさ(神永が人類を学ぼうとしているところ)から、神永の人格は失われており、子供を助けに行った後の作中大半はウルトラマンの人格のみ(神永マン)と思われる。一方で神永マンが過去の神永の職場の仲間とコンタクトを取って敵星人の情報を集めている事から、神永の記憶や知識は引き継いでいる事も明らか。よって神永マンは神永の記憶や知識は引き継いでいるが概念が理解が出来ないので学習していた、という設定と思われる。ただ序盤での奇妙な行動を仲間がほとんど気にも留めていなかった辺り、元の神永も相当変人と思われていたのは確かなようだ。

最後は急に綺麗にまとめたなぁ…という感じもしたが、一気に終わってしまうのでちょっと気になるところ。原典の『ウルトラマン』のハヤタは融合後もハヤタの人格で活動していたがマンと分離した際にマンと融合した後の全ての記憶を失っているという設定だったが、今作は記憶以前に意識が無かったので最後目覚めても…。今作では浅見がウルトラマン出現後に赴任してきているので神永としては浅見に出会っていない。目覚めても浅見の事だけは誰?っていう事になるのは必定。また世間に正体が露見している以上、今後の人生も心配だ。しかしそれでは後味が悪くなるのであえてぶった切って終わらせたのだろうか。

★★★★☆

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