名探偵コナン 100万ドルの五稜星

2024年4月12日公開。劇場版27作目。

B0DFX92H19

怪盗キッド、服部平次がメインで登場し、北海道函館市(最終決戦地は五稜郭)を舞台にした物語が展開する。キッドは23作『紺青の拳』以来、平次は21作『から紅の恋歌』以来の登場でこの2人が一緒に登場する映画は14作『天空の難破船』以来(3作『世紀末の魔術師』、10作『探偵たちの鎮魂歌』も含めて4作目)

事前知識としてはキッドと平次は原作ではこれまで関わりが無く、映画で共演している際も絡みはなかったが、原作96巻の事件でキッドが和葉に化けた事がありそれに気づかずに平次がキスしかけるという出来事があった。平次はこの事でキッドを恨んでおり、冒頭で許さへんで!とか言ってキッドに妙に突っかかって勝負を挑んでいっているのはこのためとなる。

また“原作に先駆けてキッドに関する真実が明かされる”と明言して試写会も控えるという事態になっていたが、この真実を正確に把握するには『まじっく快斗』必読(アニメなら『まじっく快斗1412』必見)となっていて知らないとどういうことなのか最後のアイツ誰なんだと全く理解が追いつかない可能性が高い。

いきなりキッドが北海道函館市で刀を狙っているという案件に取り掛かるいつメン(担当の中森警部は出張して来ていて、コナン、平次、和葉、蘭、小五郎は平次が剣道の大会で来ていてその応援という理由で函館まで来た)とだいぶ端折ったところからスタート。見事にキッドに逃げられるが、刀を狙う武器商人・カドクラ一派や依頼者である斧江も暗躍して先祖が残したお宝のありかを巡っての攻防となる。キッドは早々に襲撃を受けてコナン・平次に助けられた事から協力体制で事件を追う(その都度色々な人物に変装)。

宝の正体は幕末当時の戦況を一変させるほどの兵器らしい事が見えてきてカドクラ一派が狙っているのはこのためと思われた。しかし斧江父の遺志を継いだ福城親子はどうやら兵器を破壊しようと目論んでいるらしく…。最後はカドクラ一派相手にコナンと平次が推理を披露するも当然カドクラ一派は宝(兵器)狙いで襲撃一択。さらに福城親子は爆弾でお宝ごと函館山を吹っ飛ばそうと物騒な事をしようとしているのでそれもWで阻止しなければならず激しい攻防が繰り広げられるのだった。

あまりにド派手な犯人側の爆破が続いていたためか、ヘリで爆弾ぶっぱ程度では最早驚かないレベル。むしろ今回は函館山ロープウェイのロープをスケボーで駆け上がるコナンとか、自動操縦のヘリの上で福城(息子)と真剣対決する平次とか味方側の空中アクションがトンデモに全振りされているのが印象的。ロープウェイの乗客は子供(コナン)がスケボーでロープを駆け上がっているのに気づいてざわついたり、カッコいい~とか感嘆の声をあげているとかいちいち一般人リアクションまで映し出されるのがシュールすぎる

殺人事件の方は1㎜もマジで起こす必要が無かった上、お宝は戦時中の暗号解読機(今となっては何の役にも立たないガラクタ)というあんまりなオチとなり、福城(父)は文字通りにこんなもののために…と崩れ落ちたまま終わってしまったが映画の犯人史上の中でもなかなか心に残る哀れっぷり。親子揃って刀アクションがカッコいい渋い人物像だっただけに余計に哀れなり。

平次が出ているので視聴者が最も期待する和葉への告白は今回こそ決まったと思ったら(aikoの主題歌がかかるタイミングも完璧)、エンディング後にハズシ。他のカップル候補は全部片づけたのに何故この2人だけ引っ張り続けるのか…いい加減にしろや…と思っていたら、原作できちんと決着させたかったのか、この後9月に発表された原作でついに成功し、直後10月に106巻に収録された。

ただ元より今作の原作先行ポイントは”キッドに関する真実”の方であり、こっちは意味深に描写された。最後の最後で今回のゲスト刑事である川添(本物)が出てきて登場からさっきまで出ていた川添は偽者だったと判明。そして唐突に工藤優作が有希子に実は生き別れになった双子の兄がいると言い出して有希子が驚くというシーンが挟まれ、メールのやりとりをしている様子が映し出されると、川添(偽)が黒いキッドのような姿になって登場し、キッド(快斗)の父であり初代キッドでもあり、死んだはずの黒羽盗一が生きていると正式に示されて終了。

最後の情報量が多すぎて理解が追いつかないが、これにより工藤優作と黒羽盗一が双子なので、新一(コナン)と快斗(キッド)は従兄弟という事になる。随分前から作者は2人が似ている理由はちゃんと考えている、(死んでいるはずの黒羽盗一に対して死んでねーし(『名探偵コナン80+』の質問コーナー)と回答するなど設定は少なくとも10年くらい前から練ってはいたようだ。まあ明らかに『まじっく快斗』初期から考えていたとは思えない後付けっぽいし、『まじっく快斗』の方で正式に黒羽盗一が生きているかも?と思わせるエピソードをやったのって両親の過去を改めて描いた2011年(怪盗淑女)、結局コルボーの正体がハッキリ明示されず意味深なまま終わった2014年(真夜中の烏)で共に5巻収録。特に2014年(真夜中の烏)は黒羽盗一が実は生きている?というほのめかしを入れるもわざと曖昧な描写で終わらせていたくらいなので設定を固めていって10年熟成させての今作なんだとは思う。ただ快斗は父の死の真相を知るためにキッドを続けているわけで、付き人の寺井もまったく知らされておらず、母だけ知っているってちょっとヒドイ事になってしまうような…。安室周りもただの勘違い大王っぽかったのを人気沸騰から有能後付けムーブに走って破綻しかけてしまってちょっと気になっていたがこれもちゃんと決着させてくれよ…。

そしてこの真実、当事者の知らないところで勝手に判明しているのでコナンはどこまで気づいているのか(平次に似ていると言われた時は偶然だとスルーしていたが知っててごまかしたのかは微妙な描写)、快斗なんか何も分かってなさそうだけど…。

あと特に意味もなく沖田と一緒に救援に来た鬼丸猛は一応原作にも少し登場していたが元ネタは『YAIBA』。1年後には彼が鬼になってしまう『YAIBA』にリメイクアニメが放送開始されたのでむしろ余計に混乱しそう。まあ『YAIBA』前のサービス出演か。

★★★★☆

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