RANMARU 神の舌を持つ男 鬼灯デスロード編

2016年12月公開。
2016年夏クールにTBSで放送されたドラマ『神の舌を持つ男』の続編。ドラマ版は最高視聴率が6.4%、最低が3.8%、平均5.6%大失敗に終わったが最初から映画化が決定しており、同年12月に本当に公開された。…が、かつての堤幸彦監督作品のようなコアな視聴者がついていたわけでもない本当の不人気作だったため、上映は数週間でほぼ打ち切り状態となり、映画も大コケした。

映画の正式タイトルは『RANMARU 神の舌を持つ男 酒蔵若旦那怪死事件の影に潜むテキサス男とボヘミアン女将、そして美人村医者を追い詰める謎のかごめかごめ老婆軍団と三賢者の村の呪いに2サスマニアwithミヤケンとゴッドタン、ベロンチョアドベンチャー! 略して…蘭丸は二度死ぬ。鬼灯デスロード編』とされている。

連ドラが失敗したためか、制作陣は続投しているものの今作には連ドラを放送したTBSは不参加松竹映画として制作されている。堤監督とと共に多数の作品を手掛けてきたTBSのプロデューサー植田博樹はTBSとしてではなく個人として制作に参加している扱い。

何故映画化が実現したのかは謎だが、堤監督始めスタッフ陣が最初から乗り気であった事と、撮影自体がかなり早期に行われていて、ドラマの結果が出る前に既に映画の制作に突入してしまっていたためと思われる。実際夏ドラマだったにも関わらずドラマ第1話では謎解きのロケシーンで雪に見舞われるシーンがあり、中盤頃には桜が満開だったりしていた。今作の自然風景からしても連ドラ放送開始時点でもう今作の撮影に突入していたか終了しているくらいの時期だったと思われる。

連ドラ大体こんな感じ

温泉場で利用者の背中を流す三助として伝説的存在であった祖父(火野正平)の弟子として技術を受け継いだ蘭丸(向井理)はあらゆるものを舌で味わうことで瞬時にその成分を分析できるという能力を持っていた。キスの際に相手女性の口内細菌まで読めてしまうためキスが出来ず恋愛が出来ない体質だった蘭丸だが、唯一キスで何も感じなかった芸者ミヤビ(広末涼子)を追って各地の温泉場をめぐる旅に出た。知り合った宮沢(佐藤二朗)、光(木村文乃)と3人で毎回旅に出て概ね

①車が故障して目的地の村直前で立ち往生して第一村人に助けられて村に着くと何らかの問題・事件・殺人が起きる

②いかにもな村の老婆たち「祟りじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

③お前らよそ者がのせいじゃぁぁぁぁぁ!!!

④事件を解決、お礼として車が修理されており、三助の技術から留まることを懇願されるが次なる温泉地へと旅立つ

というパターンで起こった殺人事件を舌で解決しつつミヤビを追ってきた蘭丸はついにミヤビにたどり着いた…が、ミヤビはキスした際にたまたま細菌を消す薬を飲んでいただけであった。初恋を終えた蘭丸は実家へ戻ると宣言して去っていき、宮沢と光は取り残され…。

その続き

実家へヒッチハイクで帰ろうとした蘭丸だが、様々な不運から真逆の東北方面へ向かってしまい行き倒れているところを鬼灯村の住人たちに救われてここが今作の舞台となった。また光は別れ際に蘭丸に発信機を仕込んでいたためそれを辿って…宮沢は光のスマホにGPSアプリを仕込んでおいたためそれを辿って光の運転していた車に侵入しており、再び3人が揃った。お約束の車故障で村に滞在することになった3人だったが、村のあちこちで起きる地盤沈下、プラズマ現象、そして祟りだという老婆集団、そして起こる殺人事件…と連ドラの焼き直しにして過去の堤作品『金田一少年の事件簿』(1期2期)、『ケイゾク』『TRICK』『QUIZ』等々…で見たことがあるような世界観で物語は終始ふざけながら展開していく…。

事件自体はしっかり

軸となっている事件自体は今回もきっちりしていて、ちゃんと解決するし、ちゃんと理由もある。連ドラ同様に『ケイゾク』『SPEC』の世界観のような超現象が起きて…という方向にはならないし、展開もそこそこ面白かった。

炸裂しまくるギャグ

連ドラ以上に炸裂しまくるのが数々の滑りっぱなしのギャグ。冒頭から連ドラがコケたのをネタにする自虐ナレーションから始まり、光は終始ボケ倒し、宮沢は終始突っ込み続ける。さらにシリアスなシーンでもふいにふざけたり、変なカットが入ったり、過去作品のネタで笑いを取りに来たりするので、過去の堤作品を知らないと実は何をやっているのか分からないなんてギャグも多い。『TRICK』とか『QUIZ』は見た事が無かったので、『QUIZ』に出ていた財前直見が急に『QUIZ』の決め台詞らしきセリフをキメ顔でやったところでたぶんそうなんだろうな…程度にしかならないという…。

またここまで来ると木村文乃はちょっとかわいそうになってくるくらいの滑り倒しっぷり。佐藤二朗に関しては福田雄一監督作品のファミリー化してからはほとんど物語進行を止める勢いの度を越したアドリブばかりやるようになってしまって正直かなり印象が悪くなっていたんだけど、今作では冷静なツッコミ・説明役なので、なんか久々に物語を冷静に進める佐藤二朗を見た気がする。今だと逆に新鮮だ。

謎の顔面アップ

今作で最も謎なのはなんでもない普通のシーンやギャグでも何でもないどころかむしろ謎解きでシリアスなシーンにも関わらずランダムで画面に出ている人物の誰か1人、もしくは全員の顔だけが拡大されて異様な姿になる…というカットが連発される事。特に村人の1人として出ていた渡辺哲の顔ばかりやたらこれをやっていたが、こんな演出は連ドラには無かった。渡辺哲自体は物語上で特に重要な人物ではないんだけど、とりあえずちょっと遊びでやってみたところ面白くなってしまってついつい連発してしまったという完全な制作サイドの自己満だったのだろうか…。

絶妙なつまらなさ

そんなわけで数々のギャグが炸裂し、物語自体はそれなりにしっかりしていて変な破綻も無い。そこそこ無難ではあるんだけど総合的にはこれが…絶妙につまらない…。なんとな~くとりあえず連ドラも最後まで見たけど連ドラ当時とやはりそこは同じだった。堤ワールドの集大成のようでもあり、確かにこういうテイストにコアなファンがついていた時代も一昔以上前にあったとはいえ、そろそろ同じことやり続けても完全に時代遅れになりつつあるのか、完全に衰えが来てしまっているのか…。

★★★☆☆

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