2009年8月29日公開。3部作完結編。
1章から丸1年、2章から7ヶ月で1年かけての完結となった。
本編はライブシーンと同時に終わってしまっていたが、2010年2月24日発売のDVD/Blu-ray版では全種(通常盤も)に「もうひとつのエンディングバージョン」として10分の追加シーンが収録され、その後の主要メンバーの様子やカンナとキリコの再会シーンなど未公開映像が収録されている。またエンドロールと曲のバックで少しだけ映し出されていたバックステージに降りてその場にいたメンバーとケンヂが再会の挨拶を交わすシーンの完全音声入りバージョンも特典映像として収録されている。
一方で2章と3章公開前に1章と2章をTV用に一部カット編集をしつつも本編完全未公開シーンを加えてTV放送した「もう一つの第1章」「もう一つの第2章」は放送のみで商品化されずじまいとなった。DVD BOX、Blu-ray BOXにおいてもこの「もう一つの第1章」「もう一つの第2章」限定の完全未公開シーンは未収録のままで放置され、2度と見る事ができなくなってしまっている。
2015年暗殺から”ともだち”が復活して2年後の2017年。”ともだち”は世界大統領となり、西暦も改められ「ともだち暦3年」となっていた。2015年以降のウイルス散布により世界人口は激減。主要メンバーは生き残っていたが、カンナの仲間が次々と死亡した事でカンナは「氷の女王」を名乗り、ヨシツネのゲンジ一派と決別して独自の反政府活動を地下で行っていた。ウイルス対策の名目で東京を中心とした関東一帯は壁で覆われて封鎖されてしまい、壁の中には少年時代(1970年頃)を再現した街並みであの頃の昭和のような生活をしている者たちもいた(全員ではなく都心部は現代と変わらない)。
オッチョと角田は2015年の暗殺事件からの逃亡で関東から離れていたため封鎖された関東に戻るのに2年かかり、壁を物理的によじ登るという強硬手段でようやく関東へ帰還。道中救われたサナエ(福田麻由子)、カツオ(広田亮平)の姉弟から現在の東京の様子を聞かされる。角田とはここで別れる(以降本編では出番がないが生き残っていて「もうひとつのエンディングバージョン」では漫画家に戻っている)。一方で北海道からラジオ放送していたコンチ(山寺宏一)は郵便箱に届いた「ボブ・レノン」を流していてこの曲が密かにブームになっていた。聞かされたオッチョはこれが生前のケンヂの曲だとすぐに気づいたが当時ラララで歌われていたメロディーがグータラーラスーダララーに変わっている事からケンヂが生きている事に気づく。この事をカンナに伝えて玉砕覚悟で特攻しようとしていたカンナは攻撃を中止。”ともだち”との会話から万博会場を攻撃しない事を察したカンナは万博会場で音楽フェスを開催してなるべく多くの人を守ろうとする。
マルオはケロヨン(宮迫博之)と再会。2000年の誘いを無視したケロヨンだったが、蕎麦修行で行っていたアメリカでワクチン開発を続けていたキリコが襲撃された際に救助に向かい、以降キリコを匿い、キリコは最後のウイルスのワクチン開発を進めていた。マルオとケロヨンが見守る中、キリコはワクチン開発に成功(本編ではこれで出番が終わってしまうが、「もうひとつのエンディングバージョン」ではその後海外でワクチン投与を続けていて訪ねてきたカンナと再会する)。
“ともだち”はもう「しんよげんのしょ」の内容も概ねやり尽くしていて今度こそ本当に世界を滅ぼすしかやる事が残っておらず、信者ですら疑念を抱くほどやり方も過激化。右腕だった万丈目も左遷されて関東の関所の管理者になっていた。ついには2000年、2015年の事件を全て自作自演だと暴露して世界を滅ぼすと宣言。それでも目の覚めない者もいたが、万丈目も田村マサオ/13番(ARATA)もロボ開発を担当していたヤン坊マー坊(佐野史郎2役)も敷島(北村総一朗)も、みんな協力者となって最後の計画阻止のために奮闘。ついに戻ってきたケンヂとの対面で”ともだち”の正体も判明し、物語はクライマックスへ…。
1章→2章もそうだったが、前作からの空白の帰還で変異した世界をほぼ説明だけで処理してしまうのでなんでこうなった…?と考え出すとキリがなく、そこはもうそうなったと割り切って世界観を受け止めるしかない。特に今回は2年でだいぶ世界観も敵のポジションも変わってるからなぁ…。2015年までは完全に”ともだち”側だった万丈目はその中でも説明役として描き切れない部分をかなり補足説明してくれた。自身が協力者となった”ともだち”に少年時代に始まり、作中で描かれていなかった80年代に”ともだち”として信者を増やしていた時期、1章2章での出来事の裏側、2015年を最後に知りすぎていた事から疎まれて遠ざけられたと語っており、特に1章結末のやりすぎな大爆破の経緯については…
・そもそもケンヂたちが用意したダイナマイトは爆破しないように事前にリード線を切ってあった(=爆発したのは”ともだち”側が仕掛けていたもので操縦室の外からの爆発だった)
・ケンヂがいた操縦席はシェルターの役割を果たすほど頑丈に作られていてケンヂはこのおかげで死なずに済んだ(重要事項)
・とはいえ大爆発により遥か彼方まで操縦席ごと吹き飛んだために無傷ではなくズタボロ+記憶喪失となりかろうじての生還
・爆発直前に外にいて操縦席のケンヂに向かって正体を見せた”ともだち”は映写された映像だった
・偽フクベエが転落死を装った際に一緒に落ちた人物は同窓会でケンヂに話しかけてきて”ともだち”組織に家族や友人が…と話題を振ってきた2人組の1人
→同窓会時にケンヂも近くにいたヨシツネもこの2人が誰だか最後まで分かっていなかったが、忘れていたのではなく要するにあの2人は”ともだち”組織の者で偽同級生だったという事がここで判明。ケンヂがどこまで覚えているかを確認するのと”フクベエ”を使えるかどうかをチェックするために”ともだち”が仕掛けた会話だった。
と、足早に説明。しかし周囲ビル群が粉々に吹き飛ぶほどの大規模爆発でどう見てもその圏内にいた他の仲間が無事だった理由は不明のままである。そして他の面々はそれぞれそれなりの理由があるんだけど、田村マサオ/13番が何故前作でのホクロの警官とヤマネ暗殺の後で”ともだち”に疑念を抱いて離反したのかはイマヒトツ分からず。囚人13番としてわざと捕まって必要な時だけ出所して秘密裏に暗殺活動をしていたようなのであまり外部の情報に触れる機会も無かったはずだが…。
さらにケンヂもこれまでを説明したが、こちらは大爆発で助かったものの記憶を失い浮浪者として2015年まで記憶喪失のまま生きていた。2015年の暗殺事件を伝えるニュースを偶然浮浪者仲間がTVで見ていて記憶を取り戻すも受け止めきれず発狂。北の果てまで逃げ続けて雪の山中で3日3晩泣き叫び続けて死ぬ寸前で漁師の男(遠藤賢司ケンヂの名前の元ネタのシンガーを御本人起用)に救われ逃げないと決意。北海道で廃墟から使えるギターと使えるラジカセと使えるバイクを探し出し、「ボブ・レノン」のグータラーラスーダララーバージョンをカセットに新録してコンチのポストに託した後に東京を目指して戻ってきた…という事で15年記憶喪失、記憶を取り戻して自身を取り戻すまでに2年かかっており、このせいか以前よりも達観した人物像になっている。なおコンチは「血のおおみそか」の時に誘いがあったが無視したと言っているので、ほとんど当時の事を覚えていなかったケンヂでも2000年当時存在は思い出して連絡は入れていたようだが、一方通行で直接やりとりはしていない。今回はケンヂが見つけた使えるラジオで生き残りのDJの番組でリクエストを募集しているというのが聞こえた事からテープをポストに届けに向かっており、そのDJの声=コンチだと把握していたのかは特に描かれていない。
“ともだち”の正体は原作よりも簡略化されていて分かりやすくなっているものの、それでも土壇場どころか”ともだち”が死んだ後でもヨシツネもケンヂも名前は思い出しておらず、2人ともそれぞれの”ともだち”と話した際の事を思い出して“あの時のあいつか”とは分かっているものの、誰か?と聞かれると回答できない。ヨシツネは”ともだち”の当時の思いを理解できたような事を言い出し(このせいでオッチョには”ともだち”本人かと疑われた)、まるで知っているかの口ぶりだったが、ケンヂに結局「誰だったんだ?」と聞いており名前は分かってなかった。そのケンヂも「分からん」である。
また少年時代の回想シーンで後の”ともだち”となる少年を当然当時は普通にあだ名か名前で呼んでいたはずなんだけど、話の都合そこで名前を出してしまうとネタバレになってしまうため、どうしても名前を呼んで話しかけないといけないシーンでは「ねぇ”ともだち”」と名前の部分を”ともだち”に置き換えて台詞を構成。“ともだち”に向かって「ねぇ”ともだち”、僕と友達になってくれない?」とか何言ってるのか分からんおかしなことに…。字幕出して見た方が”ともだち”と「友達」が区別されているのでいいかもしれない
この時点で判明したのは正体は2000年当時フクベエを名乗っていた人物だったという事だけだが、フクベエは急死していた事も同時に思い出しているためちょっとややこしい。みんなアラ還間近で老けメイクしているのに何故か1人だけ2000年当時のフクベエと同じ黒髪ツヤツヤ(ノーメイク)なのも相まって替え玉か二代目なのかとも深読みできてしまうほど。この点は結局「精神年齢が止まっている」というのを見た目で表現したのかな。
“ともだち”化した根源となっていたケンヂだけが彼の本当の名前と真相を思い出して最後に解説されていてようやくしっくり来た。そして2017年のケンヂ以外に分かっていたのは最速で1997年時点で当時のクラス写真から”ともだち”の本名にたどり着いていたかつて伝説の刑事と呼ばれた当時定年直前のチョーさん(竜雷太)だけと思われ、20年も先行していたとは改めて伝説の刑事すぎる…。
ラストシーンとなった和解はあくまでバーチャル世界のものではあるが、救いのIF世界としていい締め方だったと思う。実際の現実は失われたものが多すぎてそれ以上大団円にできないしな…。何せライブで盛り上がっている歌の最中に会場以外では円盤からのウイルス散布でドンドン死にまくっているというシュールすぎて最早意図不明なシーンもあるようにウイルスで無関係の人が死にまくっても気にしないくらいには終末世界化しているんだし。
「もうひとつのエンディングバージョン」込みで確かに完全完結。面白い映画だった。
★★★★★
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