広末涼子 25周年シングル回顧 1997-2000,2020

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広末涼子 25周年シングル回顧 1997-2000,2020

1994年の第1回クレアラシル「ぴかぴかフェイスコンテスト」でグランプリを受賞して翌95年中学3年生でクレアラシルのCMで芸能界デビュー、同年にドラマ初出演も果たした。96年は冬クールに『木曜の怪談』内の「魔法のキモチ」でドラマ初主演、春クールの月9ドラマ『ロングバケーション』にも出演、春のDocomoのポケベルCM出演をきっかけに大ブレイクし、以降CM・ドラマに引っ張りだこの人気若手アイドル女優となる。

高校2年生だった1997年は文字通りに人気絶頂の1年となり、4月に歌手デビュー。同時期に『木曜の怪談’97』内の「悪霊学園」に主演、夏には主演映画『20世紀ノスタルジア』公開、月9ドラマ『ビーチボーイズ』ヒロイン、紅白出演と女優・歌手両方での大成功の1年となった。

翌98年も勢いは続き歌手活動は引き続き好調、ドラマ『聖者の行進』『世界で一番パパが好き』、『世紀末の詩』(1話ゲスト)に出演。秋には早稲田大学に自己推薦入試で合格するなど話題になったが1999年にはこの入学を巡る報道の過熱により明確な失速傾向となっていった。

99年序盤の初ライブは日本武道館、名古屋レインボーホール、大阪城ホールという破格のデビューツアーとなるが、何故か持ち歌が少ない状態で2ndアルバム発売直前にツアーが終わってしまい結果的に唯一のライブ経験となった。そのまま新曲発売が途絶えて年末には早くもベスト盤…と歌手活動は急速にシュリンク。00年にシングル1枚を発売したのを最後に、01年はリミックスアルバム、02年は新曲1曲を含む全曲集アルバムをリリースして歌手活動は完全に終了した。結果的にシングル7作、オリジナルアルバム2作だった。シングル7作の売上は1st~7thそのまま綺麗に売上順の右肩下がりとなる。

歌手活動が急速に撤退傾向となった1999年の2ndアルバムは高校卒業直前の時期で、その後前年に合格が発表された早稲田大学への進学が注目されていたが、3ヶ月登校しなかった事で批判的な論調に変わっていき(そもそもこの時期は月9ドラマ『リップスティック』に主演していて多忙だったし、大学に通っていないことがバッシングされるなんて話は広末以外であまり聞いた事が無い)、いざ初登校となった際には報道が過熱してマスコミが大挙して大学にやってくる広末を撮ろうと集結する異常事態となり、当然こんな迷惑行為に対してまで普段の明るいキャラで愛想をふりまけるはずもなく、加熱する報道に勝手に本人の好感度がダダ下がりになっていく状態となりブーム的な人気は完全に終息した。

ドラマ・映画の出演作は続いていたが、2001年に竹野内豊と主演した月9ドラマ『できちゃった結婚』では異様なガラガラ声になっており、週刊誌に奇行が報じられるなどしたため、プッツン女優の異名をつけられるに至りさらにイメージダウンを余儀なくされ、2003年には正式に大学退学を発表、さらに本当に「できちゃった結婚」も発表。05年にはまたしても月9「スローダンス」で復帰するもさすがに連ドラヒロインからは遠ざかるようになった。

その後は離婚と2度目のできちゃった結婚などもあったが、随所で話題作に出演して存在感を発揮(07年映画『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』、08年映画『おくりびと』)した事でプッツン女優イメージも徐々に払拭、気がつけばアラフォーでも変わらぬ透明感みたいな感じで世間の好感度も回復していた(ていうか散々汚れ(プッツン女優)扱いしておいて変わらぬ透明感!って掌返しすぎだろメディアァェ)

歌手活動については早くから一貫して当時の曲は恥ずかしくて歌えないと公言している。カラオケで歌ってと言われても絶対拒否するとこの手の話題が出るたびに話のネタにしており、歌手活動は黒歴史で否定的かと思われたが再度の歌手活動への密かな意欲はあったようで2019年のインタビューでアイドル歌手になってしまったことに対しては否定的ながらもう1度歌いたいとも公言していた。

同年には恥ずかしくて歌えないと言い放った対象曲を提供してくれた竹内まりやの寛大な心での(?)再度の提供により1曲だけながら新曲を発表。その後継続しての歌手活動は行われていないものの、続きはまたいつかあるのかもしれない。

2022.4執筆、2013年バージョンを全面破棄、アップデート

1st MajiでKoiする5秒前/とまどい

B00005HJ3S
97年4月15日
大きな話題の中での歌手デビュー作。竹内まりやの提供も話題となった。1stアルバムにも竹内まりやの提供した「恋のカウンセル」、リアレンジした「とまどい(back to the summer version)」が収録されているがこの2曲は藤井丈司プロデュースで2ndアルバムまでは基本的に誰が提供しても自身が編曲に関与していなくてもプロデュースは藤井丈司となっていて全体を総括していた。「Majiで恋する5秒前」も藤井丈司の編曲なので「恋のカウンセル」とは作詞作曲編曲は同じだが、このシングル2曲だけは竹内まりやプロデュース扱いとなっているのが他と異なる。

PUFFYには及ばなかったがシャ乱Qとイエモンは抑えての初登場2位。最終的に60万枚に迫る自身最大ヒット作となった。

Majiで恋する5秒前

作詞作曲プロデュース:竹内まりや、編曲:藤井丈司
自身出演DocomoポケベルCMソング、『木曜の怪談’97』での主演ドラマ『悪霊学園』主題歌としても使用された。
竹内まりやというと若い頃から一定の落ち着きと貫禄があり、一般に知られる提供曲もイメージから大きく外れたものはなく、自分で歌えばすっかり自分の曲になってしまうほどで基本的にミディアム系が中心。当時すでに40歳を越えていた竹内まりやが今時の女子高生っぽい曲を提供したのが印象的だった。当時はそこまで知らなかったので40過ぎのおばちゃんが随分若い子をリサーチして頑張ったんだな(※竹内まりやを良く知らない中学1年当時の印象です)と思った程度だったが竹内まりやを聞くようになって改めてこの曲何だったのだろうかと思うほど異色な楽曲だと思う。2013年には提供曲を集めた『Mariya’s Songbook』をリリースしているがやはりこの曲のウキウキなノリは浮いていて異色だった。

徹底して高校生の広末涼子のキャラクターをイメージして書いたと思われる今作だが若者言葉のMK5をそのまま流用するのではなく、主にマジでキレる5秒前の意味だった流行り言葉を「Majiで恋する5秒前」に改変してアイドルソングらしく仕上げるという手腕がお見事。藤井丈司によるアレンジも見事なポップ具合で絶妙。藤井丈司はサザンオールスターズがコンピューターサウンドに傾倒して作り上げた大作『KAMAKURA』でマニピュレーターとして貢献した後に桑田佳祐ソロ『Keisuke Kuwata』にも全面参加。小林武史との3者共同名義で”小林武史 with 桑田佳祐、藤井丈司”というアレンジ表記だったのとその後の小林武史のプロデュサーとしてのMr.ChildrenやMY LITTLE LOVERでの大成功からやや知名度では劣るものの、この前年の玉置浩二の「田園」の編曲を玉置浩二と共同名義で手掛けるなど直近でもヒット作に関与している凄腕のアレンジャー・プロデューサーだった。どちらかというと必要な場面でサポートするような役回りが多く、ガッツリ単独で1人をプロデュースというのはあまりなかったようなので広末涼子での一連のプロデュースはかなり代表的な仕事の1つといえるのではないだろうか。様々なシンガーソングライター提供の楽曲を取りまとめる総合的なプロデューサーとして確かな手腕を発揮していたんだなと当時は全然分かっていなかったが聞き返してみると改めて思う。

冒頭の”渋谷はちょっと苦手”といった歌詞などを例に出し、広末本人もその若々しい歌詞を誉めていた記憶がある。イントロやアウトロの”ワン、ツー、スリーフォーファイブ”のささやきも期待を煽る効果抜群。タイアップ先のポケベルを歌詞中に持ち出したりはせず、チョベリグだのチョベリバだのといった即死語化したギャル用語言葉も入ってないので、2010年に川島海荷、2012年に指原莉乃がカバーした際にもさほど違和感が無くて意外と普遍性のある楽曲だったんだなと感じた。ただまあ若いノリである事は間違いないので後年になって恥ずかしくてカラオケでも絶対歌わないと言い放つのも分からなくもない。本人の言う恥ずかしくて歌えないというのは当時のアイドルノリの楽曲全般を指すものと思われるが、有名な今作と次回作の2曲が真っ先にターゲットにされ視聴者にも想定されてしまうのは竹内まりやと岡本真夜に対しては失礼だとは思うがそれを堂々言えてしまう大物っぷりが広末涼子であるのも確かだ(竹内まりやも寛容で自身のMVに出演してもらったり2020年に再度曲提供したりと関係は良好である)。

竹内まりやのセルフカバーは長年正式に発表されていなかったが(「とまどい」は次のアルバムでセルフカバー)、竹内まりやの提供曲コンピ盤『Mariya’s Songbook」初回盤のみ収録のボーナストラックで実に16年越しでデモバージョンとしてセルフカバーが音源化された。このデモバージョンを歌唱していた当時の竹内まりやは恥ずかしくて歌えないと言い放ち始めたアラサー頃の広末涼子より遥かに年上であり、今作発売から25周年時点でようやく当時の竹内まりやと広末は同い年である。デモバージョンとはいえ堂々たる竹内まりやの姿を見よ。

MVでは何故か犬小屋(?)をDIYしている様子を中心にとにかくテンション高く明るく動き回っている実に健康的元気アイドル感満載。しかしMajiでKoiする5秒前に何故犬小屋をDIYしているのかは全くの謎である。
★★★★☆
1stアルバム『ARIGATO!
ライブアルバム『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』(ライブバージョン)
ベスト『RH Singles &…
リミックスアルバム『RH Remix』(Remixed by 會田茂一(FOE,EL-MALO))
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

MajiでKoiする5秒前
竹内まりや

とまどい

作詞作曲プロデュース:竹内まりや、編曲:十川知司
編曲:藤井丈司(back to the summer version)

一応正式な両A面扱いでシングルの裏ジャケはこの曲仕様となっていてMVも制作されているがほぼC/W扱いされていてこっちが取り上げられた記憶がない。正直当時C/Wだと思っていた。本来の竹内まりやの王道イメージに近い3連ミディアムな友情ソング。幼馴染と成長に伴って距離が出来ていく10代半ば頃の心情を歌っているが、十川知司のアレンジに全体にノスタルジック感が漂っているので大人になってから聞いてもなんだかとても懐かしい感じがする。女同士というよりは男女の幼馴染の微妙な距離感のような内容だが、オリジナルバージョンでは最後のサビ前に「いつまでもずっとずっと友達でいようね」と語りかける台詞が挟まれていて主人公側の友情を強調している。

『ARIGATO!』収録時はback to the summer versionとして藤井丈司がリアレンジ。いくつかあるアルバムバージョンの中でアレンジャーまで変えたのは今作のみだが、実際ガラッと雰囲気が変わった。今作の方が正直地味なアレンジでポップなアイドルソングに挟まれた箸休め的な役割に徹している感じ。また間奏の台詞が消された。『Perfect Collection』収録時はバージョン違いはどっちかしか収録されなかったが今作はシングルバージョンが選択された。

しかしよく考えるとこの曲は台詞無しの方が優しいかもしれない。この2人の間に出来た成長に伴う微妙な距離感が相手の方は主人公を異性として意識してのものだとしたら永遠に友達のまま宣言されたら涙目であろう。

竹内まりやは2001年の『Bon Appetit!』で正式にセルフカバー。やはり間奏の台詞はカットされている。
★★★☆☆
1stアルバム『ARIGATO!』(back to the summer version)
ベスト『RH Singles &…
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

とまどい
竹内まりや

2nd 大スキ!

B00005HJ3W
97年6月25日
結果的に唯一の1位獲得作。この時期は強力な新譜が無く、前々週は上昇したMOON CHILD「ESCAPE」が、前週はロングヒットしていたEvery Little Thing「For the moment」が返り咲き1位を記録して2週連続初登場じゃない曲が1位を取るような状態でその前のELTが1位だった時も今作よりは低かったため、ここまでの4週間であればどこでも1位は取れていた事になりラッキー1位というほどではなかった。ただこの週にはLe Couple「ひだまりの詩」が2万枚差まで上昇してきており、翌週以降は9月半ばくらいまで今作の初動で1位取れるタイミングは無かったので発売がこれ以上遅かったら2位とか3位、ヘタしたら4位だったかもしれない。少なくとも翌週だったら華原朋美とLe Coupleに続く3位になってしまっていた。前作より数万枚初動売上は高かったが累計売上では及ばず50万に届かず自身2番ヒット。

今作ではC/W曲が用意されず、別アレンジとCMバージョンとカラオケだった。

大スキ!/original version

作詞作曲:岡本真夜、編曲:藤井丈司
自身出演の三ツ矢サイダーCMタイアップ。ほとんど広末のPVみたいなCMだった。岡本真夜は自身の曲でも明るい曲もそれなりにあったが、基本的にはミディアム~バラード系の人でその許容範囲を軽く越えていったブリブリのアイドルソングっぷりに当時のけぞった。”とってもとってもとってもとっても…”と連呼とするサビの破壊力も抜群。唯一の紅白でもこっちが歌唱されたので当時はこっちの方が筆頭代表曲っぽさもあった。

友人によればカラオケでこの曲を歌唱するという罰ゲームが実行され、歌わされたその少年は真っ青な顔をしながらこの曲を歌っていたとのことで、当時の中学生男子の間では罰ゲーム扱いされる始末。80年代からアーリー90’sのアイドルが絶滅していて間もなくモーニング娘。が出てくるこの谷間の時期、97年当時のヒットチャートにこういったザ・アイドルソングな女性アイドルの曲はほぼ無く、今になってみればそんなでもないんだけどこの曲のようなアイドルノリは経験した事が無かったのが大きい。アイドル慣れしてない無菌状態からの”とってもとってもとってもとっても…”の衝撃は前後の世代に比べると深かったんじゃないかと思う。なので当時は正直これはやりすぎ…というちょっと無理目な曲だった。このため早くもレンタルスルーで見送り、この曲を聞いたのは1stアルバムが最初だった。

岡本真夜もチャレンジャーだったのかシャレだったのか翌年には『Hello』でセルフカバーを収録。無理があるのではないか?というのが周囲の一致した見解だったが、その後のベスト盤にも「未来へのプレゼント」と双璧の提供ヒットでもあるので普通に選曲していたので本人は割とお気に入りなのかもしれない。

MVは前作に続いて明るく元気に飛び回っているテンション高めの内容だが、何故かアイスホッケー場が舞台になっており、エキストラの男性陣がアイスホッケーの試合をしているというシチュエーション。しかも広末無関係のホッケーの試合模様の単独カットが頻繁に差し込まれる始末で謎にアイスホッケーをフューチャー。広末は掃除係をやっていてコート外の通路を掃除する役回り。よく『CDTV』で流れていた1番サビ部分ではまさにアイスホッケーの試合が左隅に映り込んでいる中で掃除しながら前進している広末の姿が出てくるが実は掃除しているのはこの時だけでこれ以降は試合にみとれて掃除は終始サボっている始末。最後はケンカが始まってしまい、見かねた広末は靴のままリンクに飛び込んでいき漫画のようなダッシュ&ブレーキストッピングを繰り出して笛を吹いて仲裁する…がそれ以上描かれずに終わってしまう。何故アイスホッケーの試合なのか、これの何がとってもとってもとってもとっても大スキなのかは全く分からない。ホッケー部員の1人がとってもとってもとってもとっても大スキな裏設定でもあったのだろうか。

さらには夏が近かったためか海辺のビーチ用具一式をリンクに広げてリゾート気分という何がしたいのか全く分からないカットが差し込まれたり、唐突に爽やかな青空の下での映像も出てくるが、これは三ツ矢サイダーのCM用の映像素材をぶち込んだだけと思われる。wikiに”CMでは一部、プロモーションビデオを使用している”と書かれているが明らかに逆っぽく、CMとジャケ写用の素材は明らかに同じだが、MVではこの場面だけ浮いているのでMV用ではないと思う。
★★★★☆
1stアルバム『ARIGATO!
ライブアルバム『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』(ライブバージョン)
ベスト『RH Singles &…
リミックスアルバム『RH Remix』(Remixed by 岸田繁 from くるり)
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

C/W 大スキ!/sun-deck version

編曲:西田正也
アコースティック南国調にリアレンジしたバージョン。この曲をよくこういうリアレンジしようと思ったな…というくらい予想外のアレンジに戸惑う事必至だが明るいノリにはまあまあ合っている。正しくオリジナルあっての遊びの別アレンジといった趣き。
★★★☆☆
ベスト『RH Singles &…
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

C/W 大スキ!/CM version

編曲:西田正也
50秒程度のCMバージョン。縮めたBメロ~サビで構成されている。オリジナルとはアレンジが異なり、パーカッションが咲き乱れるトロピカルな雰囲気になっているがやや簡易な感じもあり、フルサイズで制作せずにCM用のサイズだけ制作したところで本アレンジは藤井丈司に託されたものと思われる。sun-deck versionと同じ西田正也の編曲だが、このバージョンでのパーカッションを駆使した方向性でさらにまったり南国風味に仕上げたのがsun-deck versionだったのかなと。

シングル盤限定のオマケ扱いされているのか何故か全C/Wの中で唯一『RH Singles &…』にスルーされている。前述のようにこのシングルはスルーしてしまったので長年聞いた事が無い最後の音源になっていた。
★★★☆☆
アルバム未収録

3rd 風のプリズム

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97年10月15日
初登場6位で前作より累計売上はさらに大きく落として25万枚を越えた程度に留まった3番ヒット作。既に1ヶ月後に1stアルバム発売が控えていたのも影響して2週目以降が伸びなかったというのもあり、実は初動売上は前作をわずかに上回って自己最高であった。前作とほぼ同等の初動で1位が6位になってしまったのは伝説のSPEED/globe/L’Arc~en~Ciel/河村隆一/JUDY AND MARY/広末涼子が一斉に初登場1~6位という激戦週だったためで、SPEED「White Love」が50万近く叩き出し、globe「Wanderin’ Destiny」、L’Arc~en~Ciel「虹」、河村隆一「Love is…」は30万台で1万刻みで並ぶ接戦、JUDY AND MARY「LOVER SOUL」も20万に迫る初動売上だった。15万でも最後尾につくしかなかったのである。なお前週1位のB’zはこの下の7位まで落ちてしまったがそれでも10万枚を越えていた。

前作に続いてC/W曲が用意されず、別アレンジバージョン。

風のプリズム

作詞作曲:原由子、編曲:藤井丈司
サザンオールスターズの原由子の提供。あまり曲提供をしないというか産休前の81~83年、復帰後の87~91年までは積極的なソロ活動を展開、夫の桑田佳祐の曲も多かったがシンガーソングライターとしての才能も見せていた…が、以降は散発的なソロ活動に留まるようになっていてこの時点で既に最後のオリジナルアルバムとシングルから6年が経過、同時期に久々の新曲「涙の天使に微笑みを」が朝ドラ主題歌に起用されこの1ヶ月後にシングル発売されるというタイミングだった。結局この後ますますソロ活動しなくなってしまったので、広末涼子が歌手活動をしていたわずか数年の間にたまたま原由子がソロで曲を作っているタイミングだったのはけっこう奇跡的だったのかもしれない。96年でも98年でも前後1年ズレていたらどっちの年にもサザンとしてしか活動していなかったので依頼しても動いてくれたかどうか…。

竹内まりやと岡本真夜が自身の作品ではやらないような広末涼子のアイドル性に振り切った楽曲を用意したのに対して今作はほんわか落ち着いたまさに原由子のイメージそのままのような曲。暑さが去って、風が心地よくなっていく秋に風を感じながら聞きたい1曲。残念ながらセルフカバーする機会すらなく、本人バージョンは世に出ていないが、セルフカバーしてもかなりいい雰囲気になるんじゃないかと思う。

前述のチャートアクションも相まって前2作ほどのインパクトも無いのでやや地味な存在感にはなってしまったし、当時もそこまで印象には無かったが(アルバムが控えてたのでアルバムで聞けばいいやと今作もシングルをスルーしたのもある)、年月を経ても色褪せずに聞ける上に久々に聞いたら名曲だこれ。恐らくこの曲は「恥ずかしくて歌えない」枠には入らない最初のシングル曲でもあると思う(シングルA面では他に「とまどい」「明日へ」「果実」辺りは恥ずかしくて歌えない枠からは外れて歌ってくれそう)。

MVでは広末が文字通り風を感じながら自転車に乗って街を進んでいく内容で1番を構成。この夏のドラマ『ビーチボーイズ』の1話ので広末涼子が学校帰りに自転車に乗って走ってくるのが最初の登場カットでフレッシュさが印象的だったがその印象が反映されて自転車に乗る広末をMVでも採用したのだろうか(妄想)。しかし前2作に比べれば変なところのないMVだと思ったのも束の間相変わらずカオスな世界観でなんと自転車のままコンサートホールの関係者入口から中の廊下まで自転車で突入して疾走していくという謎映像に…。いや降りろよ…。その後はメイクアップしてステージへ向かい2番サビからは誰もいないステージで伸びやかに歌唱。当時はライブをやっておらず、結果的に99年のデビューツアー以外ライブをしていないので貴重なライブしている風の映像となった。自転車乗ったまま突入シーンの謎以外はMVも1,2を争う仕上がり。
★★★★★
1stアルバム『ARIGATO!
ライブアルバム『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』(ライブバージョン)
ベスト『RH Singles &…
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

C/W 風のプリズム~unplugged~

編曲:藤井丈司
タイトル通りアンプラグドバージョン。イントロ無しのいきなりの歌入りで1番はアコースティックギターのみ、2番からピアノが入り、間奏からストリングスも加わり、段階的に楽器が足されていくがリズム隊は最後まで入らない。前作とは違って楽曲のイメージをそのまま生かしながらA面ではちょっと出来ない引きの方向で伸ばした感じ。元の曲がいいだけにシンプルな形でもいい。
★★★★☆
ベスト『RH Singles &…
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

4th summer sunset

B00005HJ4M
98年5月13日
本来春くらいには1作出しそうなものだが、1stアルバムからも半年、シングルとしては7ヶ月ぶりの98年1作目。初動は12万に届かないくらいまでやや落とし、急逝したhideの「ピンクスパイダー」は50万オーバーの猛烈な勢いで1位を獲得した週で、GLAYの「誘惑」「SOUL LOVE」もまだまだ勢いがあり、やや落としつつある中での起死回生のヒットとなったMY LITTLE LOVER「DESTINY」にも僅差で及ばずの初登場6位。ただし翌週であればhideには及ばないが2位を取れていた。夏の曲だしもう少し発売を遅らせていれば1位を取れる週も少し先にあった(ブリグリが上昇1位になった週)。累計売上は前作を下回りストレートに4番ヒット作。

summer sunset

作詞作曲:広瀬香美、編曲:藤井丈司
既に冬のイメージが定着していた広瀬香美による夏曲提供が話題に。前年1997年広瀬香美は夏に真っ向勝負で挑んでおり、TUBEや山下達郎の夏曲をカバーした夏のカバーアルバムに加えてシングル「夏だモン」を発売。この曲は同じクールの夏ドラ主題歌に起用されながらも大コケ。そして冬になって改めてリリースした「promise」(通称ゲッダン)は大ヒットして自身2番ヒットを記録、「夏だモン」はそのまま全部冬仕様にリメイクしたヤッパ…冬だモンVer.としてアルバムに収録され、以後広瀬香美は冬の女王として完全に冬に開き直った活動を展開していく事になる。

そんな前年の夏の大敗に対するまさしくこれは広瀬香美の夏へのリベンジであった。前年『ビーチボーイズ』に出演していた広末だが、「夏だモン」がコケたのを知ってか知らずか、発売時のインタビューでは「(冬のイメージが強い)広瀬香美さんの夏は私が歌います!」などと頼もしいコメントをしていた。こうして冬の女王広瀬香美は夏の曲でのトップ10ヒットを1作残すことに成功

広瀬香美が得意としていたウキウキしたテンションの高い恋模様を綴った歌詞や元気な曲調はそのままアイドルソングとも相性が良かった。今作では「ロマンスの神様」のような自意識過剰方面にやりすぎる事も無く、高音すぎることもなくちゃんと合わせて書かれていて作家性の高さがちゃんと出ていたんじゃないかと。ただそれでもきつかったのか、割とブレなく堂々と歌いきっていた日本武道館でのライブにおいても今作の後半はややヘロヘロ気味になっていた(映像のみ収録でライブCDには未収録)。

MVはかなり別の意味でアイドルファンには残酷仕様。花屋の娘(?)の広末がモデル系ロン毛のイケメン彼氏と海へのドライブデートという内容なんだけど内容が攻めまくり。序盤の花屋店員しているシーンの何故に花屋?という必要性も謎だが、彼氏と出発後はハイパーいちゃつきデートムービーと化し、一応彼氏役の男性はハッキリとは顔を映さないようにしているがそこまで徹底してないので割と何度か顔が見えるくらい映り込んでくる始末。こういうデート風の内容って普通は疑似デートのようにアイドル本人だけ映して画面の向こうの視聴者を彼氏に見立ててラブラブするというのがセオリーだと思うんだけど、このMVにおいて視聴者は完全に蚊帳の外であり、彼氏といちゃついてラブラブ感満載の広末を延々見せつけられる。広末にMajiでKoiしているMKF(マジ恋ファン)には敗北感しかない地獄映像である。

別に広末にMK(マジ恋)してなくても今作の内容は何をしたかったのか分からないくらいリアルにいちゃついているので 一 体 我 々 は 何 を 見 せ ら れ て い る の だ ろ う か という無の境地になる。しかも頻繁に白黒映像を駆使した上に最後のサビでは一気に夕暮れから夜の海になって白黒映像になるので、背景漆黒の波打ち際でボディータッチ全開(広末を抱えて振り回す彼氏なんて映像も)でますますいちゃつきだす映像は最早ホラーである。なんでそんな漆黒背景で…。

当時もあまりのいちゃつきリアルっぷりに、クラスメイトの誰かがが「広末はあの男とマジで付き合っているらしい」と言い出し、一時期クラス内であのイケメンロン毛モデルがリアル広末の彼氏だという怪情報が飛び交う始末であった。
★★★★☆
2ndアルバム『private
ベスト『RH Singles &…
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

C/W NNNN~キッス!

作詞作曲:広瀬香美、編曲:藤井丈司
こちらも非常にウキウキしたポップなラブソング。タイトルはエヌエヌエヌエヌではなくん~ん~キッス♪と歌われる。これもなかなか広瀬香美らしいキャッチーなヒット曲然とした1曲でC/Wにはもったいないが、よりアッパーで勢いがあった「suumer sunset」をA面にしたのもまた必然か。C/Wの中ではけっこうトップクラスにキャッチーな1曲だと思うが同時にC/Wで「恥ずかしくて歌えない」が速攻発動しそうなのがこの曲だったりもする。元気いっぱいに“L・O・V・E 愛してる♪”だもんな。
★★★☆☆
ベスト『RH Singles &…
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

5th ジーンズ

B00005HJ4V
98年10月7日
最後の8センチCDジャケットが2種類存在する唯一のシングル。顔の向きと視線が異なるというもので右下にある「ジーンズ」のタイトルの方向に視線が向いているものが初回限定盤。『RH Singles &…』の初回特典の1つである歴代シングルジャケットステッカーには2種きちんと掲載されていてそちらが初回限定盤である旨も注記されていた。オークション等見ると通常盤の方が数が出回っているが、初回限定盤が最初から数が少なく通常盤と一緒に店頭に並んでいたか最初から通常盤の方が多かったように記憶しているが前作と今作はレンタルで済ませているのであまり覚えていない。売上は右肩下がりで初動は7万台まで落として4位。またしても上位にはL’Arc~en~Ciel「snow drop」が50万超えで1位、4連続リリースのglobe「Perfume of love」が大差とはいえ20万叩き出して2位、それにT.M.Revolution「THUNDERBIRD」が迫って3位というトップ3で、4位の今作と「THUNDERBIRD」は10万程度の差があった。今作に関しては週を選んでも1位は無理で、良くて2位3位、これより後だともっと悪くなっていたのでまあ4位は順当か。

直後の『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips』にもこの時の別カットが流用されている。

ジーンズ

作詞:相田毅、作編曲:朝本浩文
アニメ『金田一少年の事件簿』エンディング曲。堂本剛版の初代ドラマが95,96年に連ドラとして放送され、97年12月の映画で完結するのと前後して97年4月からアニメ版が開始され2000年まで放送されていた。曲によって前後したがOPは概ね2クール、EDは1クール程度で交換になっていて今作は9~12月まで使用された。並んで放送されていた『名探偵コナン』が主題歌ヒットを連発する中でこちらはさほどヒットせず、ほぼ自力人気の売上だった。人気の面でも同じミステリーモノとして双璧のように扱ってはいたものの、金田一が人気だったのはドラマ版の爆発的ヒットに引っ張られていたところが大きく、そもそもこの時点での原作ストックは大体堂本剛版で映像化されてしまい、改変も多かったとはいえ、犯人知っているという事件を3週も4週もかけて放送するというのは原作準拠のアニメ化とはいえかなり厳しく、ドラマ版で盛り上がったブームは周囲では一気に消失していた。

個人的にも既にアニメ版は見なくなっていたので(開始当初はコナンと一緒に録画していたが、当時は原作もノベライズも関連本も揃えていたので意欲が失せてしまい見なくなってしまった)、今作がエンディングだったのもあまり記憶していない。普通に広末の新曲として聞いていた。今回はUAのヒット曲で知られていた朝本浩文を起用。ただ広末涼子に合わせたのかストレートに爽やかなアイドルポップとなっていて、「情熱」「悲しみジョニー」「甘い運命」の人という感じは全くなく、個性派な感じも皆無。朝本浩文はけっこう凝った感じのプロデュース曲が多かったイメージだが、今作はストレートに売れ線ヒット曲だなぁと思う。

ジーンズはそのままの服のジーンズではなく、“ジーンとする”の複数形であり、この事を曲紹介の時によく説明していた。実際歌詞中ではジーンとする、ジーンときたとノーマルジーンは連呼される複数形のジーンズは一切出てこない。作中で大量に登場するジーンとすることを総括してタイトルがその複数形「ジーンズ」という仕掛けのようだ…が、ジーンズって言ったらやっぱり着る方を想像しちゃうから難しいところ。かといって“グッとくる”にして複数形にするとグッズになってしまうし、この感動を示す言葉にズをつけて複数形にするという発想自体が斬新過ぎたのかもしれない。

1999 Mixの方がやや演奏ががっしりしている感じがする。とはいえ意識して聞かないと分からないくらいの違いだが、アウトロが15秒ほど長くなっているという分かりやすい変更もある。

今作以降はMVに謎演出が入る事も無く、シンプルに広末が歌っているものになった。今作ではこれまでよりも少し大人っぽくなった感じがする。本人の年齢や成長と求められるアイドル性にズレが出てきたのもこの時期だったのかもしれない。
★★★★☆
2ndアルバム『private』(1999 Mix)
ミニアルバム+クリップ集VHS『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips』(THIS IS BIG BEATZ RADIO MIX)
ライブアルバム『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』(ライブバージョン)
ベスト『RH Singles &…
全曲集『Perfect Collection』(1999 Mix)
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

C/W プライベイト

作詞作曲:シーナ・リンゴ、編曲:斎藤有太
シーナ・リンゴとは椎名林檎の事で、同年「幸福論」でデビューし、「歌舞伎町の女王」をリリースした後だったので、まだシングル2枚で売れていないド新人だった。この翌年から「ここでキスして」でブレイクした椎名林檎と、今作のシーナ・リンゴのイメージがだいぶ違っていたのでしばらく同一人物だと気付かなかった。あれ?そういえば椎名林檎と「プライベイト」の作者のカタカナの人って読み方が同…え!?本人!?みたいな。

落ち着いた雰囲気の今までにないアーティスト路線感のあるミディアムナンバー。これまでの明るく元気なアイドルポップ路線とは真逆で派手さも無く地味ではあるが、妙にメロディーは印象には残ってくるなというのが当時の印象で、まあこの後あれだけブレイクした人なんだから当然だったかと後で納得した。

翌年の2ndアルバム『private』のタイトル作にもなっているだけに本人の思い入れが深そうでやりたい方向性って確実にこっちの方向性だったし、本当はこっちが表題曲になるような歌手活動をやりたかったんだろうなとは思う。それにしても椎名林檎に目をつけたのはスタッフだったのか本人だったのか。ブレイク後だったらちょっとお忙しいところ悪いけど広末に1曲くれない?とは頼みにくかっただろうし絶妙な売れる寸前のタイミングだった。当時やってたラジオ『広末涼子のがんばらナイト』でもテーマ曲にして使用していた記憶がある。いつかもう1度ライブでもやる事があったら確実に披露される1曲だろう。
★★★★☆
2ndアルバム『private
ライブアルバム『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』(ライブバージョン)
ベスト『RH Singles &…
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

プライベイト
椎名林檎

なんてったって 今日はクリスマス!

B00005HIGM
作詞作曲:岡本真夜、編曲:藤井丈司
Once in a christmastime mix:Nozaki Takaro

元々は1stアルバム『ARIGATO!』収録曲で単なるアルバム曲だったが、1年後の98年にクリスマス向け年末商戦アイテム『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips』にてメイン曲として再利用された。1曲目が新規リミックスのOnce in a christmastime mix、4曲目にオリジナルバージョン、5曲目に初収録カラオケバージョンが収録された。

今作は彼氏とラブラブなクリスマスではなく、彼氏がいなくて友人たちとパーティーするクリスマスの楽しさを描いた内容。「大スキ!」のクリスマスバージョンみたいなノリのハイテンションナンバーで明らかに同じような感じでもう1曲作ってみた感じだが(タイトルは「なんてったってアイドル」を意識?)、インパクトは強い。

ただリミックスバージョンは解体され過ぎた「ジーンズ」よりはマシという程度でわざわざ1曲目に置かなくても…。そしてオリジナルとカラオケと何度も回り込んでこなくても…。
★★★☆☆
1stアルバム『ARIGATO!
ミニアルバム+クリップ集VHS『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips
ミニアルバム+クリップ集VHS『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips』(Once in a christmastime mix)
ミニアルバム+クリップ集VHS『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips』(original instrumental)
全曲集『Perfect Collection

青い空に浮かぶ月のように

B00005HIGM
作詞作曲:平岩英子、編曲:島田昌典
『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips』に唯一収録されていた新曲。しかし「なんてったって 今日はクリスマス!」「ジーンズ」のリミックス2曲の後というミニアルバムのど真ん中に配置され、そもそもにメイン扱いも「なんてったって 今日はクリスマス!」だったのでなんかしれっと新曲入っている程度で全くリード扱いもされていなかった。

「プライベイト」にも通じるような落ち着いた雰囲気のポップス。最初に聞いた時は唯一の新曲がこれかよ地味だな…と思い、2ndアルバムにもミックス変更で収録した際は引っ張ってくるような曲なのかと思いあまり好きな曲ではなかったんだけど、その割にはけっこうしっかり覚えていて、改めて聞いたら凄くいいなぁと。2ndアルバムは一気に落ち着いた曲が増えたが、今作や「プライベイト」みたいな路線を本人発信で増やしていきたいと主張してそれに沿って大ヒットはしていないが新たな女性シンガーソングライター陣へ依頼していったのではないかと思う。

島田昌典のアレンジも後年と違ってけっこうライトだなぁ…。どっしりしてなくて軽めなんだけどこれがけっこう聞きやすい。オリジナルバージョンは『Happy Songs』にしか収録されず、『Perfect Collection』では「ジーンズ」と共に1999 Mixが採用された。大きな変更は無く意識して聞かないと同じに聞こえるが「ジーンズ」同様に1999 Mixの方が音の輪郭がハッキリしている感じがする。

VHS再生環境消失と共に『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips』『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』は共に倉庫の奥底へと眠りについていて長く聞いていなかったが今回Amazon Musicで配信されていたので久々に聞けた。
★★★★☆
ミニアルバム+クリップ集VHS『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips
ライブアルバム『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』(ライブバージョン)
2ndアルバム『private』(1999 Mix)
全曲集『Perfect Collection』(1999 Mix)

6th 明日へ

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99年2月3日
今作よりマキシシングルへ移行(正確には今作より前の『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips』のCD『Happy Songs』がマキシシングル仕様だった)。これに伴いC/Wが1曲増えて2曲になった。2ndアルバム『private』先行シングルという扱いだったが、今作直後の6日7日に日本武道館、11日名古屋レインボーホール、14日大阪城ホールという広末史上唯一のライブ「RH DEBUT TOUR 1999」を決行し、17日『private』発売。『private』からの先行披露は無く、今作収録曲までの持ち歌でセットリストを組むという内容だった。何故アルバム発売目前でアルバム新曲をやらない初ライブツアーを組んだのかは謎である。4月からの月9ドラマ『リップスティック』の撮影日程とか色々スケジュールの都合があったのだろうか。

最初からアルバムに3曲中2曲が収録されることが判明しており、さらに右肩下がり傾向は続いて初動は5万台まで落としたのでもう上位争いをできる状況ではなくあえなく初登場9位。8位のTHE ALFEE「希望の鐘が鳴る朝に」とはわずか100枚差だった。確か『CDTV』ではトップ10落ちして11位となってしまい、おいおい一気にトップ10落ちかよ…と思ったのを記憶している。

上記のように3曲中2曲入るほとんど意味ないシングルだったのに当時『WINTER GIFT’98 Happy Songs&Music Clips』に続いて何故か今作も購入。結果的にシングル購入は今作のみとなったが『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』『RH Singles &…』とこの99年はCD購入が増え始めた時期と個人的広末ブームの最終期だったのもあって全購入を決行しており、単にシングルリリースが止まっただけでシングルが出ていれば00年序盤くらいまでの間だったら購入を継続していたと思われる。

明日へ

作詞作曲:岡本真夜、編曲:有賀啓雄
再度の岡本真夜提供で結果的にシングル2回提供は唯一。広末自身の高校卒業に合わせ、広末の友人たちとの学生時代の思い出話を聞いた岡本真夜がそれを盛り込んで歌詞を書いたようなので思い入れも深かったものと思われる。残念ながらいよいよヒットしなくなってきてヒット曲としてはあまり記憶されていないと思われるが、かなり本人にとっては大切な1曲なのではないかと思う。何せ初ライブの終盤で延々観客は知らない友人の実名を出して感謝を語るという個人的すぎる超MCをぶちかましたくらいだし(映像化されているが感動的なようでけっこう置いてけぼりにされる迷MCだと思う)。

今作の方がいかにも岡本真夜っぽいバラードだが、この時期まではヒットを連発していただけあってさすがの名曲。サビでファルセットまで駆使する高音とかけっこう地味に難易度も高そう。作中で宣言しているように10年後に友人達とは会ったのだろうか。

Album Versionでは演奏が終了すると同時に雑踏の音がインサートされてもう1回アウトロが復活してしばし続いた後にフェードアウトしていくため1分以上長くなっており6分半近い長さに…。これは完全版というよりかは蛇足であり『private』収録のみとなり、『Perfect Collection』収録時もシングルバージョンに戻されている。
★★★★☆
2ndアルバム『private』(Album Version)
ライブアルバム『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』(ライブバージョン)
ベスト『RH Singles &…
リミックスアルバム『RH Remix』(Remixed by STEREOLAB)
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

C/W ハッピィバースディ

作詞:相田毅、作曲:CHiBUN、編曲:山本拓夫
3曲の中で唯一『private』に収録されなかったどころか直後のツアーでも3曲の中でこの曲だけ演奏されなかった。タイトル通りのハッピーなバースデーソングシングルでは最後の明るいアイドルポップ調の楽曲となった。普通に明るいノリなので当時はそれくらいしか感じていなかったが、山本拓夫のアレンジはなかなか豪華でバンド+ホーンセクション+ゴスペル風味のコーラス隊と何気に演奏が豪勢。間奏でベースソロが展開したり、ドラムやホーンが躍動したりと地味に渋く、コーラスは控えめではあるがもっと派手にコーラス隊入れてビルボード辺りのライブ会場で生演奏したらけっこう映えるのではないか(ミディアム続いた後の盛り上げどころで演奏するポジション)。

初期からバックのオケもかなり豪華だったが後期もなんか無駄に演奏凝った曲が多いんだよな…。後のBank Bandのほぼ固定メンバーの1人であり多くのJ-POPミュージシャンの主にホーン・ブラス系アレンジや演奏を手掛けている山本拓夫をC/Wで起用した上に、前述のアルバム入れねぇ、ライブでもやらねぇってすごい贅沢な…。
★★★★☆
ベスト『RH Singles &…
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

C/W あのつくことば。

作詞:広末涼子、作曲:かの香織、編曲:藤井丈司
初の自作詞。先行して収録されたこの曲が2ndアルバム『private』の締めとなったが、1曲目は同じく自作詞の「向日葵」、そして9曲目に収録された友人の篠原ともえが作曲した「大人にならないように」の3曲が本人作詞だった。ライブでも最終曲として披露されたシンプルなバラードナンバー。

「あのつくことば。」すなわちリスナーへのありがとうの感謝を込めたバラード…なのかと思いきや作中で答えが示されているように普通に恋人との関係を歌ったラブソング。答えは「あいしてる」だったというオチ。拍子抜けすると同時にこっち(ファン)の事はあまり見てないよなぁ…となんとなく感じたし、「summer sunset」MVでいちゃついてたアイツかアイツの事なのかァァァァ!!!!!とはならなかったけど改めて関係者友人への感謝ばかり長々語ったライブMCの後の締めの曲がこれではう~ん…って感じではある。
★★★☆☆
2ndアルバム『private
ライブアルバム『広末涼子ファーストライブ~RH DEBUT TOUR 1999~』(ライブバージョン)
ベスト『RH Singles &…
リミックスアルバム『RH Remix』(Remixed by 會田茂一 (FOE,EL-MALO)+NARGO+北原雅彦+GAMO+谷中敦+大森はじめ)
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

真冬の星座たちに守られて

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99年11月25日
作詞:久保田洋司、作編曲:島野聡
早くも暗雲立ち込めた感あるベスト盤となった『RH Singles &…』に収録された新曲。ベスト盤のタイトルからして「&…」に該当するのがこの曲と思われる。同年にデビューして『ビーチボーイズ』でも共演した反町隆史も沈黙の末にやっぱりオリジナルアルバム2枚からのベスト盤になっていて共に歌手活動末期の予感が漂っていたのが切なかった(反町はその後3rdアルバムも出したが年1でダラダラ企画作が続いた広末より若干早く歌手活動撤退)。今作も元々はベストの前にシングル発売を告知していたのが中止になってベスト盤だけとなった。しかもけっこう発売ギリギリまでシングルの告知が出たままになっていて、シングルの方はどうなっているんだ…?と謎だったのを記憶している。シングルの内容は公表されないままだったと思ったけど、C/Wは用意していたはずだからお蔵入りになった曲が存在するのだろうか。

2ndアルバムを最後に藤井丈司が離れたようで、今作は作編曲の島野聡がプロデュースもそのまま担当。これまでとは一風変わった雰囲気となったが、ストリングスっぽい音色が北風のような役割を果たしているセツナ系ウィンターソング。落ち着いたアーティスティックな雰囲気を出しつつも、一聴して耳に残るような切ないメロディーラインも素晴らしく、全く期待していない状況からなんかとんでもない奇跡の名曲が来てしまった!という感じ。既に広末熱が冷めつつあり、ファン補正が限りなく効かなくなってきている中でビビッときたほどなので相当だったと思う。

改めて聞くとアレンジも凝ってて聞き応えがあるな…。ライブなんてやる予定も無かったのにストリングスのラインで盛り上がった後にラストサビではなくキーボードの人の見せ場みたいにオシャレにキーボードソロまで挟んでくる凝りっぷり。
★★★★★
ベスト『RH Singles &…
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

7th 果実

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00年11月8日
『RH Singles &…』(新曲としては「真冬の星座たちに守られて」)からも1年ぶり、シングルとしては1年9ヵ月ぶり結果的にラストシングル。ドラマ出演は好調でこの時期もTBS日曜劇場『オヤジぃ。』に出演中(親父が田村正和で母が黒木瞳で子供が水野美紀、広末涼子、岡田准一というすげぇ家族構成当時の黒木瞳が40歳で水野美紀26歳だったので黒木瞳に成人の子持ち設定はまだ無理がないかというツッコミも多かったが母だけ年齢不詳設定だった)だったが、早稲田入学時の過熱報道からのバッシングイメージダウンにより、広末人気のブーム自体は急速に去りつつあった。

長期のブランクにより歌手活動自体はもう末期状態となり、初登場20位。この結果ストレートに1st~7thシングルまでのディスコグラフィーがそのまま売上順となり、1度も巻き返すことは無かった(初動は1st~3rdまでは上昇)。

前作のC/W「ハッピィバースディ」を作曲していたCHiBUNが今作では作曲はしていないが全編曲を担当。バンマス的役割も果たしており、自身はギターとプログラミングも担当、3曲とも生のバンド編成で制作された(シングル盤歌詞カードにのみ演奏メンバー表記あり)。

今作が最後の新曲になるかと思いきや、全曲集『Perfect Collection』には東京スカパラダイスオーケストラ提供による新曲「睡蓮の舟」が1曲だけ収録され、そちらが停止前最後の新曲となった。この全曲集『Perfect Collection』に3曲とも収録されたが、2013年には『RH Singles &…』に今作3曲を追加収録した『RH Singles &…~edition de luxe~』としてリニューアル、シングルコレクションとして完全版を作り直した。

果実

作詞:mikiko、作曲:菊池達也、編曲:CHiBUN
20歳となり、アイドル扱いに相当ストレスが溜まっていたのかこの辺りから少し雰囲気が変わりつつあったが、楽曲面では振り切ってアーティスト路線に。凝りまくったバンド編成で制作された今作はメロディーというよりアレンジに集中しまくったような構成で、躍動するギターベースドラムの演奏がガシャガシャしているもののキャッチーさは薄め。クセのある楽曲をクセのある歌い方で歌っているので歌だけ聞こうとするとどうにも耳に残りにくい。右でアコースティックギターが終始リズミカルに、左ではエレキギターがガシャガシャとサビでは右からスライドギターも鳴り始めて前面で鳴っているギターが終始歌を喰う勢いだし、ベースもドラムもひたすら動き回ってるしでバックの主張が強い。当時全然良さが分からず、なんかこじらせちゃったなーこりゃ売れないなーで終わってしまっていて長年今作は最後にやりたい放題やった1曲くらいのイメージしかなかった。前回2013年に過去曲回顧で取り上げた際には最後を“今トータルで聞くとこれも意外と面白い曲”と締めていたのでその時点でも少し見えてきてはいたが…。

今回当時は録音しなかったカラオケ(Instrumental)をAmazon Musicで聞いたらいやこれ演奏がいいな。メインそっちだった。インストが聞けるのはこの曲だけだが、このシングル3曲ともメロディーとか歌より演奏陣の皆さんが激熱だったんだわ…とこのシングルの聞き方がようやく分かった気がする。
★★★★☆
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

C/W Crescent River~三日月の舟に揺られて~

作詞作曲:梶原秀剛、編曲:CHiBUN
「果実」と同様のバンド編成だが、ギターのガシャガシャが無いので全体に落ち着いている。サビではそれなりに広がりを見せていくようなメロディー展開となり、「果実」よりは聞きやすいが地味ではあるので派手な「果実」がA面になるのもまた納得。しかしR&B系が流行っていたような時代に生バンド編成でC/Wまで統一するなんて時代と逆行していて随分ロックだったんだな…。
★★★☆☆
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

C/W LETTERS

作詞作曲:かの香織、編曲:CHiBUN
「あのつくことば。」を作曲していたかの香織提供によるミディアムバラード。それこそ00年当時ならこの手のメロウな曲はみんなチキチキタカタカした軽めの打ち込みでアレンジするのが主流だった中でこれも前2曲同様に生バンド編成で丁寧な作り。今作の中では最もメロウで落ち着いた曲。アーティスト路線でもう少し歌手活動を続けていればこういう落ち着きも馴染んできたんだろうけど、当時はやはり急に振り切った上に辞めちゃったからなぁ…。抑えた落ち着いた曲調での広末のボーカルの魅力というのもあったと思うんだけど、なんだかんだ20歳でまだ若く、磨けば光るところもあったのでは。

この路線のままアルバムまで爆走したら多分全く売れなかったけど現在でも隠れた名盤と言われるような1作が出来上がっていたかもしれない。
★★★☆☆
全曲集『Perfect Collection
追加収録ベスト『RH Singles &…~edition de luxe~

配信 キミの笑顔

B08NZ8T7KJ
20年12月4日
作詞作曲:竹内まりや、編曲:増田武史
NHKみんなのうた(2020年12月・2021年1月)。全曲集『Perfect Collection』ラストに収録されていた「睡蓮の舟」以来18年9ヵ月ぶり、シングルとしては00年の「果実」以来20年1ヵ月ぶりの新曲。唐突な歌手復帰作となり、竹内まりやの再提供が実現。子供たちへ向けた優しくポップなメッセージソングとなっていて、竹内まりやっぽいスタンダード感のあるポップス。恥ずかしくてカラオケで歌わないと言い放った曲を提供してくれた竹内まりやにもう1度曲を頼み快諾されるという双方の別の意味での大物っぷりが凄い。

とりあえずアーティストちっくなものではなく、いわゆる年齢を重ねて普遍的なポップスで落ち着くという良くあるパターンとはいえ声もあまり変わっていなくて聞きやすい。継続的な活動ではなくあくまで企画的なモノだったのか、本当はもっと活動予定があったが新コロで無くなってしまい、決まっていたこれだけの単発で終わってしまったのかは分からない。
★★★★☆

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