1st アポロ
1999年9月8日/2006年3月29日(12㎝化再発)
作詞:ハルイチ、作編曲:ak.homma
勢いよくドカンとデビューしていきなり大ヒットしたようにも思えるが、実際にはデビューまでにかなり紆余曲折があったようだ。地元因島の同級生だったメンバーだが大阪に拠点を移したタイミングの1994年(メンバーが20歳頃)にドラマーも含めた4人組バンドとして結成され、インディーズで活動していたとされるがこの時代の音源はデモテープ数本とCDに至っては1996年の『ポルノグラフィティvsリンカーン』という2バンドのスプリット作品(2曲ずつ)1枚ポッキリしか出ていない。1997年にソニーのオーディションに合格してSMEと契約し事務所もアミューズと共に大手採用が決まりこのタイミングで3人組となって上京したが…1997年に契約が決まっていたのに今作は1999年9月である。準備期間に2年ほど費やしていた。恐らく大人の判断で自作ではもう1つ曲が弱いという事でプロデューサーをつけてプロデューサー主導の曲作りに移行する事になりその過程でやはり自作で行きたいメンバーの葛藤もあって時間がかかったのではないかと思われる。当初は吉俣良がプロデュースについた時期もあったようで、今作のC/Wにして1stアルバム表題曲でもある「ロマンチスト・エゴイスト」は作曲がRyo(吉俣良)名義である。しかし違うという事になったのか、新たに田村充義をプロデュースに、本間昭光をak.hommaとして作曲・編曲のサウンドプロデュースにつける体制へ移行。この田村充義と本間昭光のコンビは直前まで広瀬香美を手掛けていた(田村充義は最初から現在まで、本間昭光はこの数年のみ)。本間昭光は1989年にアイドル系のアレンジ仕事を中心にキャリアをスタートさせ、1991年から1998年まで槇原敬之のライブサポートキーボードとしても活動(槇原が逮捕される前まで)、1996年から広瀬香美のアレンジャーとして活動しており、「promise」「ストロボ」などのアレンジを担当していた。ここまで主にアレンジャーとして知られており、作曲家・プロデューサーとして表に出てくるタイプではなかったが…ak.hommaとしていきなり作家生活のピークに達した感がある。プロデューサー主導の体制を受けいれたメンバーの決断、そしてak.hommaのキャリアハイに当たったのは巡り合わせが凄く良かったように思う。
モーニング娘。「LOVEマシーン」が初登場1位で年末にかけて大旋風を巻き起こしたのと同じ週に初登場76位。引っ張りに引っ張ってのデビューだった事もあってか割と新人バンドにしては最初から売り出す気満々な感じであちこちで曲がかかっていたような印象で2週目にはさっそく28位に急浮上すると16位、14位、5位と5週目でトップ10入りし、8位、7位、9位、10位と刻みながらロングヒットし、100位以内24週40万越えのヒットを記録。前述の「LOVEマシーン」筆頭にヒット曲が多い時期ではあったが確かな爪跡を残した。次回作と並んで8センチCDだったため、2006年に2作まとめてマキシシングル化されており、この際には別集計で初登場29位から4週ランクインしている。
ド頭からキャッチーなメロディー、アポロを題材にしたユニークな歌詞の組み合わせがいきなり秀逸。デビュー曲候補は他にもあったようだが、なるほどこれは確かに最良のデビュー作だ。インパクトがありすぎてザ・1発屋感も同時に漂いまくり、実際多くのリスナーがグループ名もなんだかアレだし、ネタ的な1発屋になりそうだと思ったのではないか。
当初はアポログラフィティ、ポルノグラフィー、アポログラフィーなど正式なバンド名が覚えてもらえなかったりもした。グループ名で言うと略称として”ポルノ”が定着したものの、元々ポルノと言えば18禁なイメージが一般的であったため、2003年既に広く知られていた時期であっても大学の教授が「女子学生から提出されたレポートに「私はポルノが好きです」と書いてあり非常に驚いたがどうやらそういう名前の若者に人気のグループ名らしいと分かった」とか学生との世代差を感じる話を語っていたので世代間ギャップはずっとあったのかもしれない。
なおアポロが月に行ったのは”僕らが生まれてくるずっとずっと前”とされており、実際1969年、発売当時で30年も前なので確かにずっとずっと前ではあるが、メンバーは1974年生まれなのでそんなに生まれてくるずっとずっと前というほど昔ではなかったりもする。まあ生まれる前なんてもう全部”ずっとずっと前”という感覚ではあるのかもしれない(1985年生まれの筆者は1979年のサザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」を”生まれてくるずっとずっと前”の曲だという認識ではあるし)。しかしこの曲からさらに25年も経過したが、その後誰も月に行かないのは一体どういうことなのだろうか。そろそろ”アポロが月に行った”という熱狂を体感した世代の高齢化が進み、伝説・神話化してきている上にアポロ100号どころか2度目の月が無い事でイマイチ歌詞の意味合いが伝わりにくくなってくる頃合いに変わりつつあるのではないかとも思う。
シングルバージョンは発射音から始まるが、New Apollo Project Versionでは発射音の前に英語の会話とカウントダウンの音声が追加されていてよりアポロ発射の臨場感(?)が増している。またエンディングがフェードアウトしていくシングルバージョンに対して、ちょうどシングルバージョンのフェードアウトが始まるくらいのタイミングでビシッと曲が終わりすぐ次の曲に繋がる仕様に変更されている。
★★★★☆
1stアルバム『ロマンチスト・エゴイスト』(New Apollo Project Version)
2ndベスト『PORNO GRAFFITTI BEST BLUE’S』
5thベスト『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary”ALL TIME SINGLES”』
6thベスト『ポルノグラフィティ全書~ALL TIME SINGLES~』
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