24th 息もできない
98年3月4日
前作に続く初登場3位、今作以降98年の間は20万台で下げ止まる状態となった。新曲としては織田哲郎のビーイングでの最終関与作。織田哲郎本人は97年にビーイングを辞める事になった(理由は語らないとしている)と後に振り返っており既に提供もストップしていたと思われ、今作はその直前に残されていた最後のストック曲だった可能性が高い(ストックなら他にもありそうだがあまり円満な辞め方にならなかったのは明らかであり、カバーやリメイクはありだがストックは使わないという裏ルールはありそう)。
ジャケットは緑が印象的だが実は紅葉の時期に撮影したもので新緑っぽく加工しているとのこと。
息もできない
作曲:織田哲郎、編曲:葉山たけし
アニメ『中華一番!』OP。この頃はシングル1曲にアルバム1枚分に及ぶほどの労力をかけていたらしく、多数のミックス違いを重ねたミックス数最多楽曲だったと後に明かされている。しかし結局アルバム『永遠』収録時に試みた更なるリミックスもシングルバージョンのままという事に落ち着いたため、生前出ていたのはTVバージョンとシングルバージョンだけ。相当細かい違いも試しまくっていたようだが、正直もう正解が分からないくらいこねくり回していたんじゃないかとも思う。
前作同様にド派手な名曲というわけではないがロックバンド的なサウンドで安定感があり、意外と何度聞いても飽きない。曲の最後でコートを脱いで新しい季節が動き出すというくだりがあるように、春の訪れと共に聞きたくなる。
『中華一番!』は全52話と毎週放送すれば丸1年だったが野球中継等での中止が多かったため1年半かけて放送され、OP/ED共に3曲ずつ変わった.
最後にサントラ盤がリリースされていて、OP/EDバージョンのTVサイズ6曲が全て収録された。TVサイズとシングル版で最もアレンジが激変していたのはDEEN「君さえいれば」でこの曲ほどまるで異なるわけではないが、今作もそれなりに違いがある。シングル版に比べるとギターよりもシンセが強めだったり、細部が異なる。といっても大雑把な印象はそれほど違うものではない。またサントラ収録時には普通にTV MixとなっているだけだったがOA当時は「息もできない~Now I can breath~」だったらしい。
アルバム『永遠』で個別の演奏表記がされたことで、Additional Guitar枠でアレンジャー葉山たけしだけではなく、綿貫正顕と既に休止状態だったT-BOLAN五味孝氏も参加していた事が判明した。
『Request Best~beautiful memory~』では無表記でしれっとリアレンジ。原曲と同じく葉山たけしのままになっているこのリアレンジバージョンはTV Mixに近いがTV Mixともやはり細部が異なっている。丸っきり別物ではないがかなり変わっている部分もあり、ちょうど下記視聴音源では違いが良く分かる部分が聞ける。同アルバムでアレンジを変えた他の曲と違ってこれに関しては当時試行錯誤した延長にあるようなイメージ。
★★★★☆
8thアルバム『永遠』
2ndベスト『ZARD BEST~Request Memorial~』
1stBOX『ZARD PREMIUM BOX 1991-2008 Complete Single Collection』
2ndBOX『ZARD SINGLE COLLECTION~20th ANNIVERSARY~』
4thベスト『Request Best~beautiful memory~』(リアレンジ)
5thベスト『ZARD Forever Best~25th Anniversary~』
C/W Vintage
作編曲:徳永暁人
この頃多かった少し王道を外しつつも、大きくは外れていない少し変わったタイプの楽曲。こうして聞いていくと徳永・古井をアレンジャーとして招いてから徐々に実験を開始して新たな方向性を模索していたことが分かる。おなじみの作家がどんどん去っていったのもあるけど、99年のシングルで突然迷走が始まったわけではなく、徐々に試行錯誤し始めていたんじゃないかと思う。
また「My Baby Grand~ぬくもりが欲しくて~」の一部より今作こそが“坂井さんが当時悩んでいた”を象徴する歌詞だと言われた方がしっくりくる。冒頭から優等生であることに疑問を呈し、サビは“もうちょっとで止まりそうなんです”と歌うなど歌詞はほぼ全面的にここまでZARDとして走り続けてきた疲弊をストレートに歌詞に落とし込んでいるように思える。“古いバイクのようにヴィンテージになれたらいいな”というのもヒットチャートの頂点を見てそこから明確に下降してきた段階で行き着いた心境としては偽らざる本音だったんじゃないかなぁ…なんて改めて思う。
ヒットチャートにおけるヴィンテージの定義は難しいがまあ売れなくなってそのまま忘れ去られて懐メロ歌手、たまにTVに出ても代表曲の繰り返しで新曲なんて歌えないというのではなく、売上は全盛期から見る影もなくヒット曲も出ていないが新譜が出ればそれでもそこそこ話題にはなり、大御所として一定以上の存在感を保ち続け、例えばたまにTVに出てくれば大物扱いされ往年のヒット曲だけでなく新曲もしっかり歌っていく、みたいなそんなイメージだろうか。
★★★☆☆
1stBOX『ZARD PREMIUM BOX 1991-2008 Complete Single Collection』
2ndBOX『ZARD SINGLE COLLECTION~20th ANNIVERSARY~』
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